第100回記念全旅連全国大会へ―歴代会長がメッセージ(祝辞) 山口 英次 氏(在任 2001~2003年)「『メタバース』に注目を」

2022年9月10日(土) 配信

山口英次氏

 全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会が結成され以降、ここに100年を迎え、その一端を担わせていただいた私も大きな喜びを感じております。同時に次の100年に向かってのスタートの年でもあります。さらなる発展を期待しております。
 
 私が会長に就任しましたのは、21世紀の始まりの2001年でした。この2年間で最も印象に残った思い出は、JRのホテル問題といえます。 
 
 それは02年の福井県で行われた全国大会を欠席したことです。その理由は大会当日、自由民主党の中小企業分野調整法の分科会においてJRホテル問題での結論を出すということで、出席要請があり福井から東京へ戻ったのです。
 
 当日の会の出席者は国土交通省と東日本旅客鉄道(JR東日本)、九州旅客鉄道(JR九州)、自民党関連議員で、結論は私などから要求していたJR側に対しての「見直し、変更」が認められ大きな成果を得たと思ったのですが、その後、問題が生じた旅館組合の報告はほとんどが満足を充たすまでに至らなかったことを聞き、政治の限界を知り得た思いがいたしました。
 
 さて、明るいニュースは1900年代の終わりごろから登場したインターネットです。正に世界の情報システムが変わり、全旅連も大きな成果を挙げることが可能になりました。
 
 20年以上のインターネットの再来といわれるメタバースが本格的に始動してきました。メタとは高次元、バースは世界の造語です。基本は「VR」(バーチャルリアリティー)、つまり仮想現実の世界です。
 
 現実をデジタルコピーでない自分の分身(アバター)が旅をし、あるいは「モノ」や「コト」の魅力的な場を提供してくれれば、次はアバターではない自分自身が現地に行きたくなるのは必然といえます。世界中の人々がメタバースの情報によって「動く」という現象が起こるでしょう。いずれにせよメタバースが必ずや宿泊業を潤す大きな存在となることが期待できると確信しています。
 
 どうぞメタバースに注目してください。

航空科学博物館、9月10~11日に部品など販売 航空に関心を高めてもらう

2022年9月9日(金) 配信

 航空への関心を高めてもらう趣旨で設定された9月20日の「空の日」と9月20~30日の「空の旬間」の記念事業として、航空科学博物館(千葉県・芝山町)は9 月 10 日(土)~ 11 日(日)、航空関連部品やエアライングッズなどを販売する航空ジャンク市を開催する。

 10月23日(日)までは、企画展示「YS-11 初飛行 60 周年展」 も行う。戦後初の国産旅客機YS-11 が1962 年に初飛行してから、今年で60年を迎えたことから、開発から初飛行までの歩みや量産されてからの活躍などを紹介する。

 また、9月30日(金)まで、「2022 年度航空キッズアート展」に展示する作品を募集している。テーマは 「未来の空で飛ぶひこうき」。未来の航空機を予想して描いてもらう。掲示期間は11月1~30日まで。

福島県、観光学科の指導職員募集 受験申込は2022年10月3日(月)まで

2022年9月9日(金)配信

写真はイメージ

 福島県は、観光ふくしまの復興を担う人材を育成するため、県立テクノアカデミー会津の観光プロデュース学科において、学生指導を担当する福島県職員(職業訓練指導員[観光])を全国から募集している。受験申込は2022年10月3日(月)まで。

 受験資格は、1976(昭和51)年4月2日以降に生まれた人で、「観光関連業務の実務経験を10年以上有する」など。試験は10月21日(金)に、福島県庁で実施する。採用は2人程度で、採用予定日は2023年4月1日(土)。

 詳しくは、福島県人事課のホームページから受験案内を確認するか、福島県商工労働部商工総務課(☏024-521-7269)へ。

旅のUDアドバイザー「スペシャルサポーター」に三代達也氏(車椅子トラベラー)と古今亭菊千代氏(手話落語)を任命(ケアフィット推進機構)

2022年9月9日(金) 配信

古今亭菊千代氏(左)と三代達也氏(右)

 資格「旅のユニバーサルデザイン(UD)アドバイザー」を認定するケアフィット推進機構(冨樫正義代表理事)は、開講2周年を機にUDの社会的認知度向上を目指す目的で、車椅子トラベラーの三代達也氏と、手話落語の古今亭菊千代氏を「スペシャルサポーター」に任命した。

 今後2氏は、それぞれの活動やSNS(交流サイト)を含む、さまざまなメディアを通じて、ケアフィット推進機構と共に、障害のある人の旅行環境整備と、その必要性に関する情報を発信していく。

 ケアフィット推進機構は「旅のUDアドバイザー」をはじめ、「シニアフードアドバイザー」や「生活習慣病予防プランナー」、「准防災介助士」など資格認定を行っている。

三代達也氏

 三代達也(みよ・たつや)氏は、2017年に車イスで9カ月間、単独世界一周の旅をきっかけに「車椅子トラベラー」を名乗り始める。「誰かの一歩に繋がる旅」をテーマに、全国の観光地におけるUD化の監修を行いながら、自身のYouTubeでも車イス目線の旅を発信している。

 現在は沖縄県に移住し、当地の魅力をSNSで発信しながら、小学生から大学生までユニバーサルツーリズムや心のバリアフリーについて授業を行い、リハビリテーション学校の非常勤講師も務める。

 三代氏は「旅×ユニバーサルデザインは今後さらに重要視されるテーマだと思います。スペシャルサポーターとして、これまで以上に旅の魅力が伝えられるよう尽力いたします」とコメントしている。

 

古今亭菊千代氏

 古今亭菊千代(ここんてい・きくちよ)氏は、1984年古今亭円菊門下に入門し、93年江戸では初となる女性真打に昇進する。「聴覚に障害のあるお客様にも落語を楽しんでもらえるように」と、手話落語を始めて32年になる。世界一周クルーズのピースボートでは2000年から水先案内人として度々乗船し落語の公演やワークショップを開催している。

 菊千代氏は「仕事柄旅に出ることも多く、障害のある方への配慮の必要性を日々感じておりました」とし、「スペシャルサポーターとして微力ではありますが、すべての人が気持ち良く旅に出られる環境を整える仕事のお手伝いをさせていただきます」と意気込みを語る。

SAWADA FOUNDATION、経営道場の第9期生募集 HIS澤田会長が経営者の経験伝える

2022年9月9日(金) 配信

澤田秀雄理事長

 エイチ・アイ・エス(HIS)の澤田秀雄会長が理事長を務めるSAWADA FOUNDATIONは10月31日(月)まで、澤田経営道場の第9期生を募集をしている。

 澤田経営道場は2015年、澤田理事長が経営者として学んだことや経験を後進に伝え、世界で活躍できる起業家や次世代リーダー、政治家を生み出すことなどを目的に設立。22年3月までに6期34人が卒業した。道場生は月20~30万円の研修資金や上限80万円の活動資金を受けることができる。

 在籍期間は2023年4月から2年間。最初の半年間は講師を招いて起業や経営、政治などの素養を修得する。次の1年間は、カリキュラム最大の特徴である実地研修として、澤田経営道場が協力を仰ぐ企業などでの実践トレーニングを通し、経営の要諦学ぶ。最後の半年間は自主研修期間で、法人化や事業計画の策定など実務知識を学習しながら道場生それぞれが起業や選挙戦などに向けて準備する。

 求める人材像は、「志・ビジョンを持ち、既成概念に捉われず夢の実現や問題解決に向け皆を引っ張っていく将来の国家や企業のリーダーとなる人材」としている。募集人員は10人前後。対象者は原則2023年4月1日時点で満22~40歳の人。2回の面接を経て決定する。

 澤田理事長は「厳しい時だからこそ何事にも動ぜず、落ち着いて行動する失意泰然のマインドを持ち、実践力などを養う。高い志を持つ皆様に挑戦してほしい」と呼び掛けた。

WILLER EXPRESS、「アク和リウム」チケット付き周遊バス 3日間限定で

2022年9月9日(金)配信

東京レストランバス×アク和リウムキービジュアル

 WILLER EXPRESS(平山幸司社長、東京都江東区)は10月7日(金)・9日(日)・21日(金)の3日間限定で、東京レストランバスとお台場で話題のアク和リウム「UWS AQUARIUM GA☆KYO」のチケット付きプランを運行する。これに先駆けて、9月9日(金)から予約サイト「WILLER TRAVEL」にてランチとディナーの各プランの販売を開始した。

 今回の特別プランは、東京駅からレストランバスに乗車し、食事を楽しみながら東京の観光スポットを巡ってお台場へと向かい、今年7月にオープンしたアク和リウム「GA☆KYO」を楽しむ特別プラン。アク和リウム「GA☆KYO」では、特別プランの参加者限定ガイドが付き、繊細な流木・盆栽・水晶を取り入れた作品や生きたアートである金魚を花魁に見立てた作品など、「和」をコンセプトにした数々のアート作品の解説を聞きながらツアーを楽しめる。

ランチプランの豚肩肉のコンフィ―

 レストランバス車内では、本格的なフレンチを堪能しながら、透明で開閉式のオープンルーフによる開放感と、いつもとは違う高さ約3メートルの目線から、都内の観光スポットを楽しめる。

 ランチプランは運行日が10月7日(金)、21日(金)の2日間、東京駅丸の内口丸ビル前から11:00に出発する。料金は大人1万800円(税込)、小学生以下7800円(同)。

 ディナープランは運行日が10月9日(日)のみ、東京駅丸の内口丸ビル前から17:30に出発する。料金が大人1万3800円(同)、小学生以下1万800円(同)。

ディナープランの牛フィレ肉のローストシャリアピンソース

 どちらのプランも、レストランバス乗車時間は約2時間。出発後、国会議事堂、表参道、東京タワー、レインボーブリッジと食事を堪能しながら都内を周遊する。そして、最終目的地のアクアシティお台場に到着後、アク和リウム「GA☆KYO」のガイド付きツアーとなり、その後は.現地自由解散となる。

 このほか、大切な人との記念日やお誕生日などのお祝いに利用できるオプションサービスとして、デザートプレート(10月限定ハロウィンバージョン)と記念日用ブーケを用意している。記念日プレートへのアップグレードは1600円(同)、記念日用ブーケが3800円(同)。

近畿日本ツーリストCB、日韓交流促進のため 3社での連携協定を結ぶ

2022年9月9日(金)配信

左からDMZENTのSang-HO LeeCEO、近畿日本ツーリストコーポレートビジネスの髙川社長、ワールドふれんどの劉CEO

 近畿日本ツーリストコーポレートビジネス(髙川雄二社長)は9月1日(木)、DMZENT(本社=韓国ソウル城東区)とワールドふれんど(本社=東京都荒川区)とで「日韓交流促進のための連携に関する協定」を結んだ。

 韓国アーティストのプロデュースを手掛けるDMZENTと、同アーティストの日本でのファンクラブを運営するワールドふれんどの3社で連携。エンターテインメント分野で連携し、日韓の文化振興やエンターテインメント市場の活性、人的交流促進、次世代エンターテインメント人材育成などに取り組む。

 近畿日本ツーリストコーポレートビジネスはこれまで、韓国アーティストをはじめとする海外アーティストのファンクラブイベントなどの運営のほか、イベントやコンサートのアクセスツアーなど取り扱ってきた。新型コロナウイルスの感染拡大につき、従来のようなイベントやツアーの実施が難しい状況のなか、今回連携協定を締結した2社とも連携し、日韓交流の促進に努める方針だ。

 同社らは今後、開催するファンクラブイベントやツアーの実施などに関しては、「KNTエンタメ」ホームページやツイッターにて発信する。

10人に1人豪華宿泊券など当たる 山形の老舗旅館「日本の宿古窯」手がけるプレミアムおせち 9月9日(金)販売開始

2022年9月9日(金)配信

古窯プレミアムおせち三段重

 山形県かみのやま温泉の老舗旅館「日本の宿古窯」は2022年9月9日(金)、グループ旅館のペア宿泊券など豪華商品が抽選で当たる「古窯プレミアムおせち三段重」の販売を始めた。

 例年、高い満足度からリピーターが増え続けている古窯のおせち。2005年に販売を始めてから毎年完売し、これまで通算1万個以上の販売実績があるという。同館が昨年10月、創業70周年を迎えたことから、今回は限定700個のおせちを公式オンラインショップで販売。そのうち70個に「日本の宿古窯」ペア宿泊券やあつみ温泉「萬国屋」ペア宿泊券(各3万5000円相当)などの豪華賞品引換券を封入する。10人に1人が当たる、新年の運試しにぴったりのおせちだ。

 古窯が届けるのは「冷蔵」おせち。冷凍が主流となるなか、冷蔵にこだわり、食材のもつ旨味を最大限に引き出している。おせちの定番料理はもちろん、芋煮や玉こんにゃく田舎煮など山形独自の料理もふんだんに入れ、郷土色も大切にしている。盛り付けの大変な一の重と二の重は盛り付けをした状態で届けられるので、プロの盛り付けのまま楽しめる。三の重は温かいおせちを食べてもらおうと、全て真空パックにお詰めしているので、正月に食べ切れなくても保存が可能だ。

 販売価格は3万5000円(送料・消費税込、10月31日まで早期割引で2000円引き)。お届け日は2022年12月31日(土)。目安人数は4~5人前。

〈旬刊旅行新聞9月1・11日合併号コラム〉第100回「全旅連全国大会」――さまざまな問題に直面した1世紀の歴史

2022年9月9日(金) 配信

 「第100回記念 全旅連全国大会in東京」が9月13日、ホテルニューオータニ(東京都千代田区)で開催される。

 

 昨年、一昨年は新型コロナウイルスの感染防止のため、大幅に規模を縮小して開催されたが、今年は東京を舞台に、3年ぶりに1000人規模の大会となる。観光政策に影響力を有する多くの国会議員も出席し、現場の声を届ける場となるだろう。

 

 全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会は100年前の1922(大正11)年に第1回全国大会を開いており、さまざまな問題に直面しながら1世紀の間、宿泊業界の発展に尽くされてこられたことに敬意を表したい。

 

 

 大会テーマは「全旅連SDGs元年 未来の宿づくりに向けて~プラスチックの資源循環と食品ロス対策~」を掲げ、省エネや食品ロスなど喫緊の課題に取り組む決意を、内外に強く表明する機会にしたい考えだ。

 

 本紙は、全旅連100周年を記念して、全旅連の多田計介会長と、旅行新聞新社の石井貞德社長との対談を企画。宿泊業界の歴史を振り返りながら、今後の旅館・ホテルの方向性などについて語り合った。また、14面には、全旅連歴代会長のメッセージ(祝辞)も掲載している。

 

 

 山口英次氏(在任2001~03年)、小原健史氏(同03~07年)、佐藤信幸氏(同07~15年)、北原茂樹氏(同15~17年)の会長経験者が、会長在任時に立ち向かった問題を再度、評価や検証しながら、これからの世代にエールを送っている。

 

 山口氏は、公的宿泊施設やJR駅ホテル建設などの対策に奔走した当時を回顧しながら、一方で「メタバースが宿泊業を潤す大きな存在になる」との見方を示す。

 

 小原氏は対策本部長として「特別地方消費税」の廃止を勝ち取ったことを、最大級の政治闘争の成果と語っている。会長在任中には、小原氏独特の、引き込まれる話術に心地よさを感じながらも、「旅館業界の地位向上」について常に触れていたことを思い出す。

 

 佐藤氏は4期8年と長期にわたって会長を務め、NHK受信料問題や、耐震改修促進法の改正問題などにも精力的に取り組まれてきた。なかでも11年3月に発生した東日本大震災による未曾有の災害時に、東北出身の会長として被災者の受け入れを即座に決断し、迅速な行動をとられたことがとても印象的だ。

 

 その後、各県や各市町村と各地の旅館・ホテルが災害協定を結んでいるが、佐藤氏は県を跨ぐ大災害の場合は、「全国一律でなければ調整が必要になる」として、より迅速な対応のために、国と全旅連が災害協定を結ぶことを提言している。実際に多方面と関係を築き、腐心した佐藤氏の言葉だけに重い。

 

 国策でインバウンド拡大の最中に会長を務めた北原氏は、規制緩和のなかで民泊という新たな業態が生まれる激動期に、宿泊客の安全性や法の平等について、さらには旅をすること、宿泊することは何かという根源まで問い続け、旅館・ホテルの立場を、気迫を込めて訴えた。

 

 

 そして現在の多田会長は長引くコロナ禍の非常に難しい舵取りの中で、時代に沿うように旅館業法の改正や、省エネ、SDGsにも取り組んでいる。

 

 全旅連の101年目がスタートするなかで、本紙は宿泊業界の動きを的確に伝えていきたいと思う。

 

(編集長・増田 剛)

【PR】農家民宿 一棟貸しログハウス冨ちゃんち 宿泊予約サイトのAirbnb活用し、新規顧客を獲得へ

2022年9月9日(金) 配信

一棟貸しログハウス 冨ちゃんちの外観

 福井県・越前町の「農家民宿 一棟貸しログハウス 冨ちゃんち」は、開業から1年が過ぎた昨年の夏、グローバルに展開するオンライン宿泊予約サイトに登録したことで稼働率が上昇し、新しい顧客を獲得している。薪ストーブやアクアリウム、ステレオ設備など、大人の憧れを凝縮させた築22年のログハウスがどのように周知されていったのか。本紙はこのほど、兼業農家でオーナーの冨田剛生氏に農家民宿での取り組みや考え方、今後の展望について聞いた。

オーナー・冨田剛生氏

ホストとゲストのコミュニケーションの場、今後も出来る限りのサービスを提供したい

ゆっくりと寛げる庭で楽しめるBBQ体験が人気

 ――運営施設の特色やアピールポイントなどをお聞かせください。

 7人まで宿泊できる一棟貸しの農家民宿で、夏の時期はほとんどのお客様がバーベキュー(BBQ)セットの貸し出しを希望します。BBQは縁側で春から秋に掛けて提供しており、とくに夏は希望者が多く、午後4時半から5時までにチェックインするお客様はそのままBBQを楽しまれます。食事の提供は原則していませんが、農家民宿から歩いて行けるところにスーパーやドラッグストア、コンビニなどがあり、具材はそちらで調達してもらいます。食器はキッチンにある調理器具やお皿を使って頂けるようにしています。

 冬になれば薪ストーブを貸し出しています。2階が吹き抜けになっており、薪ストーブ1つで家全体が暖かくなります。薪ストーブが初めてというお客様がほとんどで、部屋に置いている案内を見ながら利用されます。私は薪の販売もしているのですが、農家民宿の薪に関しては、いわゆる販売できない半端なものをストーブに使ってもらいます。そのため、お客様から薪の金額は頂いていません。このような出来る限りのサービスをしたいと考えています。

 また、お客様との現地での接点は、チェックインとチェックアウトのとき、あとはリビングの魚に餌をやる早朝の3回だけになります。チェックアウトのときに感想を伺うのですが、そのときはどんな意見が返ってくるかドキドキしますね。私はお客様と話すのが好きですが、若い人と喋る機会も中々ないので、最近の若い人たちが皆さんしっかりしていると安心します。お客様とのコミュニケーション。この時間が今の楽しみでもあります。

アクアリウムやステレオ設備が大人の空間を演出するリビング

 売り上げのことはほとんど考えておらず、今のままで十分楽しいと感じています。家を提供するだけでこれだけのお金を頂けること自体が有難い。発火材やお皿はこちらで用意していますから、お客様は自分の食べたい物や飲みたい物を用意されるだけでいいですよと、事前に伝えます。おかげさまで今はリピーターが増えています。

 ――リピーターにとって、季節で体験できるものが変わるのも嬉しい。

 福井県・敦賀湾の無人島「水島」には船でしか行けませんが、絶景が見られます。それを体験して欲しくて自前の船を活用し、今年7―8月は敦賀湾の海水浴とクルージング体験を計画しました。春と秋はバラが庭を彩り、夏はクルージング体験、冬は薪ストーブを楽しめ、4―11月まではBBQが味わえます。

 今年の春休みはとくに忙しかったですね。今まで予約は週1件程度でしたが、春休みは平日から入りました。しかし、4月になると暇になり、5月の連休になるとお客様が増えるなど波がある。6月は落ち着き、7月になると盛り返す。8月は半分以上が埋まっている状態でした。

リビングダイニング

 ――農家民宿を始めたきっかけは。

 きっかけは母親が認知症を患い、どうしても実家に戻り同居しなければならず、住み慣れた自宅(現在の農家民宿)を手放す判断を迫られたからです。しかし、今まで住んでいたログハウスを人に貸せない理由もありました。私の妻は庭で趣味のバラを育てていて、人に貸すということは建物だけではなく、その庭も貸し出さなければいけない。県に空き家対策を相談していくうちに、農家民宿の話を頂いたのが始まりです。

 ログハウスなので通常の民宿や旅館は出来ず、料理も出せませんが、農家民宿であればそれらの問題も解消できる。振り返るとこの申し出が良かったなと思います。

 ――宿泊客の年齢層は。

 20代から30代初めの人がほとんどです。若い人のグループ利用が多く、年配者は家族利用で、BBQをはじめ、広い庭でゆっくりと過ごされているようです。

 夏は畑でスイカやトウモロコシ、ピーマン、なすびが採れるので、お客様にプレゼントしています。家庭菜園の延長みたいなものなので、採れた野菜をスーパーで販売するようなことはしていません。それならばお客様に提供し、BBQの食費を少しでも安くしてもらい、そして、また来てくれたら嬉しいなという気持ちです。

 ――本当に出来る限りのサービスを提供しているのですね。

 商売目的で建てた建物ではなく、子供が出来たので田舎に戻り、自分の好きなように家を設計させてくれと妻に頼んで建てた家ですから。

 当初は丸太のログハウスを考えており、それを手掛ける設計士が鳥取県にいると知り、相談に行ったこともありました。そうしていくうちに、丸太は部屋が狭く見えて埃が多く、角材の方が良いと教えてもらい、福井県でその建築をやっているところを探してそこに全部任せて建てました。

 そして、今から2年程前に農家民宿を始めました。恥ずかしい話ですが初めはまったくお客様が入りませんでした。ホームページも作りましたが効果が無く、当時は不安に襲われました。農家民宿の宣伝方法がまったくわからなかったのです。

2階寝室

リピーター増加につながる転換期迎える

 ――そして昨年夏、転換期を迎えた訳ですね。

 きっかけは昨年8月、宿泊予約サイトのAirbnb(エアビーアンドビー)さんからの「掲載させてもらえないですか」というお電話でした。私はほとんど素人ですのでどのような会社か知らず、ホームページを見たらしっかりしているところだなと思い、「いいですよ」と軽い気持ちで返事をしました。

 以前、他のOTA(オンライン旅行会社)に掲載した際は全然反響がなく、ほとんど宿泊につながりませんでした。最初はほかのOTAと同様、あまり期待していなかったのです。

 ですが、ひと月で宿情報がAirbnbのサイト上に公開され、まもなくお客様が入り始めました。登録時の初期設定も簡単で、運用に関しても難しく感じることはなかったです。

 それから本当にビックリするくらいお客様が増加しました。Airbnbさんに頭が上がらないというくらい予想外の出来事に驚くばかりでした。本当に嬉しく、お客様をなるべく選ばず、出来る限りのサービスで対応したいという気持ちが高まりました。最初の電話が私にとって本当に転機でしたね。今まで自分がどんなに努力しても、私の農家民宿を周知できなかったのですから。

 ――他の旅行予約サイトと異なるメリットなどはいかがでしょうか。

 大きなメリットは、他のOTAでは通常ひと月後の月末払いのところ、直ぐに入金されるという点です。それと掲載手数料がお得なほか、お客様の支払金額と私どもの受取金額をしっかりと提示してくれるのが非常に有難いです。お客様がいくらで宿泊されているのかを知ることでオーナー側も安心でき、金額相応のことをしなければならないという気持ちが生まれます。

 それとオンラインのクレジッドカードでの決済システム利用により、領収書が要らないのも有難い。当日支払いはお客様が急にいなくなったらと、やはりお金をもらうまで不安が生まれてしまう。そういう面では、領収書が一切要らないことは精神的にものすごく楽に感じます。

 ――実際に宿泊されたお客様はどうでしたか。

 お客様は本当にゴミや缶を分別して帰られるので、いつも感心します。

 越前海岸が近いため旅館や民宿が周囲にたくさんあるのですが、その人たちに聞くと宿泊後、畳が傷んでしまったり、缶の飲みっぱなしがそのままだったりと、酷いお客様も結構いると聞いていました。覚悟はしていたのですが、涙が出るのではと思うくらい綺麗にして帰られます。

 今年が2回目の宿泊というお客様も増えてきていますね。昨年の冬に宿泊された人たちが、今年の夏も宿泊に来ましたと声を掛けて頂きました。

 この前は3連泊された家族連れのお客様がいまして、どこに行かれるのかを聞いたら予定がないと言うのです。話を聞くと、コロナ禍で実家に帰れないため、このような宿を借りて家族でゆっくりと過ごされているそうです。そんな需要があるのかと印象的でした。

 ――Airbnbのお客様から高い評価を頂いていますね。

 非常に有難いことですが、正直私がやっていることは普通の農家民宿のおじちゃん、おばちゃんの対応と変わらないと思います。来て頂いたお客様が喜ばれればそれで良いなという感覚です。

 また、建物を貸すというカタチが基本で、目立ったサービスは提供していません。チェックアウトは午前10時としていますが、次の予約が入っていなければお昼過ぎまで居ても構わないなど、柔軟に対応する方針です。

 それに1人当たりの金額も安いと思いますが、妻と相談し、値段を高くしてお客様が減るなら現状で良いのではないかと決めました。私たち2人が片手間でやっている状況なうえ、食事を出していないので、キャンセルされても減るのは売り上げだけです。それならば、お客様に来てもらう回数が多い方が良いということです。

 家族連れは子供の大きな声を気にせず過ごせ、グループでは薪ストーブの火を2人でおこしてすごく良かったという意見がありました。冬は雪が降っても肌着で居られる程暖かく過ごせると喜んで頂き、楽しませて頂きましたという声を頂きました。それだけでも嬉しいなと思います。

 ――ありがとうございました。

「Airbnb(エアビーアンドビー)」概要

「農家民宿 一棟貸しログハウス 冨ちゃんち」概要