2022年7月12日(火)配信
ルーラ(橋本竜社長、東京都渋谷区)は2月5日、日本初の観光特化型地域デジタル通貨「ルーラコイン」のプロトタイプ版をリリースし、今春に兵庫県・有馬温泉などで実証実験を行った。
導入した3地域42の加盟店の多くで客数、客単価、売上が増加し、チャージ金額が400万円に達するなどの成果を残した。
同デジタル通貨を介し、「地方活性」、「観光振興」を実現したいと考える橋本社長に話を聞いた。
――兵庫県の有馬温泉、福島県の飯坂温泉、静岡県の伊豆伊東エリアでの実証実験の反響はいかがでしたか。
ルーラコインを導入していただいた42の加盟店の多くで客数、客単価、売上が上がりました。1日の平均チャージ金額は7万5000円で推移し、累計400万円となりました。1人当たりの平均チャージ単価は1万5800円、1人当たりの平均消費単価は1万4900円、複数の温泉地で使った人は全体の20%という結果でした。
――導入による地域に変化はいかがですか。
「難しい」イメージを持たれていた「キャッシュレス決済」の「簡易性」を各観光地に実感していただけたことが大きな変化だと思います。
またルーラコインは決済通知音として声優の声がランダムで流れるのですが、この声をきっかけに来店者と店舗の方が会話を楽しまれているという話も聞いています。
――色々な電子マネーが混在するなかで、各店舗の客数などが上がった要因、またルーラコインが選ばれた理由はどこにあるのでしょうか。
温泉むすめのファンである20~40代の男性をそのまま、ルーラコインのユーザーに移行できたことが大きいと思います。
温泉むすめというコンテンツは、「新規の見込み客を獲得するためのきっかけ」になるものです。このコンテンツを活用することで、今まで土産物屋や宿で消費をしなかった人に消費を促すことができました。
今回実証実験を行った有馬温泉では、ルーラコインで1000円以上の買い物をした人に、温泉むすめの書き下ろしイラストを使用したオリジナルポストカードをプレゼントするキャンペーンを展開しましたが、ファン心理として「ここでしか買えない」や「ここでしか手に入らない」というのは、消費行動の大きな原動力になります。
ですから今後は、温泉むすめ以外の、例えばお城や他のアニメ作品の聖地など、その土地だけの魅力的なコンテンツとルーラコインを掛け合わせ、その地に新たな人を呼び込み、消費を促し、地域を活性化させるという流れを、全国で生み出していきたいです。
――他の電子マネーとは違うルーラコインならではの強みは、「コンテンツ」との掛け合わせ以外にありますか。
一番大きな強みは、有馬温泉で実施したプレゼントキャンペーンのように、「販売促進」を運営が主体的に行えることだと思います。ここが、ルーラコインという仕組みを根付かせるうえで肝になる部分でもあると考えています。
ルーラコインの柱は、デジタルコンテンツの販売と観光地への寄付です。デジタルコンテンツに関しては、日本全国にある観光地、温泉地、特産品などの観光資源と、キャラクターやアイドルなどのさまざまなコンテンツとコラボレーションすることで幅広い世代にリーチできる「観光×エンタメ」に特化したNFT(非代替性トークン)の開発を進めています。
もう一つ、地域で利用された決済金額の1%が、その観光地に自動的に寄付される仕組みになっていることも大きな特徴です。
この部分に関しては、今は集まった寄付額を実施主体となる観光協会などにお渡ししていますが、将来的には、各地域の寄付をまとめて、必要な時に、必要な地域が、必要な額を使える仕組みに進化させたいと考えています。
用途も、災害復興や温泉地の景観整備など幅広く設定し、旅館の従業員や観光協会の方々など観光に関わる幅広い人が自由に使い道を提案できる「観光DAO(自律分散型組織)を構築する予定です。
――用途を幅広く設定するということは、「使われる総額」も高額な方がいいですよね。
そのために、当初掲げていた「『観光地特化』という観点から、東京などの大都市圏での使用はできない」という方針も変更を考えています。
重要なのはいつでも使える状態を整備し、利便性を知ってもらい、継続的に利用してもらうことです。なので、今後は、東京などの大都市でも使えるようにする予定です。また観光地に関しても、宿や土産物施設だけではなく、駅やコンビニエンスストアなど、多様な場所で使えるような環境を目指しています。
一方で、「観光特化型」という軸は変えません。ですから、その場所でしか買えない土産、もらえない特典などは引き続き充実させていきます。手軽に旅行へ出掛けてもらうために旅行会社と連携し、ルーラコインでのみ決済可能な旅行商品の販売や、旅行会社の窓口で相談した際にルーラコインを特典としてプレゼントするような仕掛け作りも進めています。
――実証実験を終え、実装に向けた取り組みは現在どこまで進んでいますか。
実証実験終了後、新たに山形県の小野川温泉や島根県の玉造温泉などでも導入していただき、現在は9カ所の温泉地で使うことができます。今後も新潟県の越後湯沢温泉や岐阜県の下呂温泉など20カ所での今年中の稼働も決まっていて、来年には100カ所で稼働できると思っています。
ファンの皆様も次はどこで使えるようになるか楽しみにしてくださっているので、皆様の行動範囲を広げるためにも、また、地域を活性化させる手段として、ルーラコイが使える温泉地を着実に増やしていきます。