2022年6月16日(木) 配信
エイチ・アイ・エス(HIS、矢田素史社長)が6月13日(月)に発表した2022年第2四半期(21年11月~22年4月)連結決算によると、当期純損失は創業以来、過去最大の269億1100万円の赤字となった。電力調達価格の高騰などで債務超過に陥った電力小売業HTBエナジーの売却で、特別損失30億円を計上したことが主な原因。
同社は今期から、燃油サーチャージや空港使用料などを除いた会計基準に変更した。売上高は684億9100万円。人件費や広告費を削り、コスト削減に努めたが、営業損失は281億3000万円、経常損失は281億1100万円。
旧基準では、売上高が前年同期比57・4%増の1022億7500万円、営業損失は282億6300万円(前年同期は316億6900万円の損失)、経常損失は282億4400万円(同306億5200万円の損失)、当期純損失は270億4600万円(同235億970万円の損失)。
また、自己資本比率は同4・1㌽減の5・8%と悪化し、債務超過に陥る可能性もあり、矢田社長は「日本政策投資銀行からの借り入れやコスト削減などあらゆる選択肢で改善していく」と強調した。HISは同銀行と情報を共有したほか、22年度の設備投資額は19年度の計画から71・1%減額した88億円を見込んでいる。
□旅行売上は104%増 国内も事業の柱に
事業別では旅行事業の売上高が前年同期比104・4増の538億6000万円、営業損失は147億4200万円(前年同期は180億円の損失)。4月から県民割とブロック割が拡大され、春休みやゴールデンウイークの需要が増加したが、利用客の旅程を管理できないため、主力の海外旅行で4月末まで全方面の企画旅行を中止し、赤字となった。
旅行関連事業は今後、新たに国内旅行市場も事業の柱に据え、バランスの取れた収益構造を確立していく。具体的には、仕入れを強化し、全国約5500施設のホテル・旅館と連携し、観光や食事付など同社オリジナルプランとして提供。ウェブサイトも利便性を向上させ、販売を強化する。国内旅行市場における今期の売上高は、19年度比52億円増の435億円となる見通し。24年度は同300%増の1300億円に引き上げる。
海外旅行市場は現地法人を通じて、最新の情報を発信するほか、感染時に日用品の買い物をサポートするサービスRE:Travel SUPPORTなどを展開し、安心・安全な旅を提供することで、集客をはかる。
6月13日(月)現在、39の国地域への主催ツアーを再開。19年度に4197億円だった同市場の売上高は24年度に、3500億円まで回復させる。
澤田秀雄会長は「海外旅行事業は立て直し、もう一度ナンバーワンの座を確立したい」と意気込んだ。
非旅行事業は官公庁や自治体などの業務受託として、マイナンバーカードのコールセンター業務や出張申請所を運営する。さらに、薄型太陽光パネルの開発やそば店「満天ノ秀そば」、農業、人材派遣業などを展開。旅行関連事業と同等の利益の確保を目指し、経営を安定化させる。
なお、通期の業績予想は、コロナ禍の影響で合理的な算定が困難であるため、未定とした。