野村不動産とJR東日本、新しい働き方提案 芝浦プロジェクト詳細発表

2022年6月3日(金)配信

左からJR東日本の喜㔟陽一副社長、野村不動産HDの沓掛英二社長、松尾大作副社長

 野村不動産(松尾大作社長)と東日本旅客鉄道(JR東日本、深澤祐二社長)は5月23日(月)、共同で推進している国家戦略特別区域計画の特定事業である「芝浦プロジェクト」の計画詳細を発表した。同プロジェクトによって、都心の利便性と、眼前に広がる空と海を有する芝浦エリアならではの立地を生かし、「空と海、世界へひらかれたこの街で、新しい人と社会の未来をつくりだす」ことを目指す。

 同プロジェクトは、東京都港区の浜松町ビルディング(東芝ビルディング)の建て替え事業として、ツインタワーを建設する。区域面積約4.7ヘクタール、高さ約235メートル、延床面積約55万平方メートルのオフィス・ホテル・商業施設・住宅を含む、約10年間に及ぶ大規模複合開発。設計者に世界的建築家・槇文彦氏を迎え、東京湾岸部の新たなシンボルとして、国際ビジネス・観光拠点を目指す。

芝浦プロジェクト外観イメージ

 ツインタワーのS棟は2025年2月、N棟は30年度竣工予定。階数はS棟が地上43階、N棟が地上45階、いずれも地下3階建ての高さ約235メートルとなる。S棟の上層部にホテルとオフィス、N棟には住宅とオフィスのフロアを設け、両棟がつながる下層部に商業施設などを構成している。

用途構成

 オフィスフロアから眼前に空と海が広がり、タワーの足元に広がる芝浦運河と、旧芝離宮恩賜庭園から続く緑など自然を身近に感じられる。プロジェクトでは、都市の利便性と眼前に広がる空と海を有する芝浦エリアならではの立地を生かす。

 その一環として、東京での新しい働き方「TOKYO WORKation(トウキョウ ワーケーション)」を提案する。周辺環境を生かしたウェルビーイングなオフィス専有部や、快適に過ごせる共用部を設定。加えて、施設内のホテルや商業施設、さらに徒歩圏内のさまざまなスポットなどから、好みに合ったワークプレイスを選べる就業環境を用意する。

 さらに、地上約138メートル(28階)に位置するワーカー専用の「スカイラウンジ」も設け、働く人のパフォーマンスや従業員エンゲージメント向上につなげる計画とした。

ホテル「フェアモント」、S棟上層に25年度開業

浜松町ビルディングから撮影した建設中のS棟(5月23日現在)

 S棟の上層階には、フランスのアコーグループが手掛けるラグジュアリーホテルブランド「フェアモント」が日本へ初進出。ホテル名称を「フェアモント東京」として25年度に開業する。地域の歴史や文化に根差したゲスト体験を届け、ワーカーに対するサービス提供も検討。「TOKYO WORKation」の一翼を担う見込みだ。

 スイートを含む全219室の客室、3つのレストランとバー、スパ、フィットネスセンターなどを備える。

 同日に東京都内で行われた記者会見で、野村不動産ホールディングス社長兼グループCEOの沓掛英二氏は「東京湾岸部における最大規模の再開発。浜松町エリアは芝浦プロジェクトにより、日本を代表して世界へ発信できるまちに成長し続けると確信している」と力を込める。周辺の「ウォーターズ竹芝、東京ポートシティ竹芝、浜松町駅西口地区開発計画などとも連携し、浜松町エリア全体の活性化をはかる」と述べた。

 なお同日、事業主体の1つである野村不動産をはじめとする野村不動産グループ各社の本社を、25年2月に竣工を予定するS棟に移転するとあわせて発表した。

ランドーナージャパンほか関連1社破産 負債は計48億円(東京商工リサーチ)

2022年6月3日(金) 配信

ランドーナージャパンと関連1社は5月31日(火)に事業を停止した

 ランドーナージャパン(長谷川雅機社長、愛知県名古屋市、資本金1億円)と、関連のランドーナージャパン京都マネジメント(荒川麻里社長、京都府京都市、資本金8000万円)は5月31日(火)に事業を停止し、破産手続きを岩田香織弁護士(辻巻総合法律事務所、愛知県名古屋市)に一任した。

 負債は、ランドーナージャパンが約26億円、ランドーナージャパン京都マネジメントが約22億円で、2社合計約48億円。

 同社は、ベストウエスタンホテルの日本支部開発運営会社としてライセンスを取得し、岐阜県高山市と長崎県長崎市、青森県弘前市の3カ所でホテルを運営していた。2010年9月期には売上高約28億円を計上していた。

 高山マネジメント(岐阜県高山市)とランドーナージャパン長崎マネジメント(長崎県長崎市)などにホテル運営を任せ、家賃収入や経営指導料などを得ていた。

 しかし、新型コロナウイルス感染拡大の影響で宿泊客が大きく減少し、高山マネジメントとランドーナージャパン長崎マネジメントが経営難となり、同社の資金繰りもひっ迫した。21年9月期は売上高が6億5401万円に落ち込んだうえ、4億8575万円の赤字を計上し、先行きの見通しが立たなくなった。

 ランドーナージャパン京都マネジメントは、京都市でザ・ホテル京都パレスを運営していた。集客が低迷したためホテル運営からの撤退をはかったが、多額の違約金の発生もあり、今回の措置となった。

今夏「家族旅行したい」 約8割の旅行意欲高(楽天LIFULL STAY)

2022年6月3日(金) 配信

楽天LIFULL STAYはこのほど、夏の家族旅行に関するアンケートを行った

 楽天グループの民泊事業会社である楽天LIFULL STAY(太田宗克代表取締役)はこのほど、「楽天ママ割」に加入するメンバーを対象に、夏の家族旅行に関するアンケートを行った。この結果、79・8%が今夏は「家族旅行をしたい」と回答した。調査は5月20(金)~21日(土)の期間中に集まった回答をもとに集計した。回答数は1000人。

 「楽天ママ割」は、出産予定日または子供の誕生日を登録すると楽天グループで使えるクーポンや特典が受けられる、妊娠中や子育て中の人が対象の無料プログラム。

 約8割のメンバーが家族旅行への意向が高いことが分かったが、このうち既に家族旅行の予定が決まっているのは13・0%、決まっていないと回答したのが66・8%となった。また、昨年の夏の家族旅行を「した」と答えたのが21・1%に留まった。

 目的地について、どれくらい遠くへ行きたいかという質問については、「居住地と同じ地域ブロック」が36・0%と最多に。次いで、「居住地の隣県」(25・4%)、「居住地と同じ都道府県内」(18・5%)と、居住地近郊への旅行を望む回答が、合計で79・9%を占めた。

 都道府県別では、1位が北海道(10・3%)、2位が沖縄県(7・5%)、3位千葉県(5・3%)、4位静岡県(5・1%)、5位兵庫県(4・9%)──となった。人気のリゾート地や大都市から近いエリアの人気が高かった。

 宿泊施設に求めるものを聞いたところ、「貸切風呂や家族風呂がある」が51・3%と過半数を占めた。次いで、「部屋で食事ができる」(40・6%)や、「部屋が広い」(37・8%)など、プライベートな空間や広い客室で寛げる旅行を求める傾向が見られた。

津田令子の「味のある街」「子育てもなか」――ときわ木(東京都豊島区)

20221年6月3日(金) 配信

ときわ木の「子育てもなか」1個210円▽東京都豊島区雑司が谷2-8-4▽☎03(3971)6451。

 かつて41系統もの都電が走っていたというが、唯一現役で走り続けているのが荒川線(東京さくらトラム)だ。全長12・2㌔を1時間ほどかけてのゆっくり電車旅は、神社仏閣、下町グルメなど、ぶらっと途中下車しながらめぐるのがおすすめだ。

 

 車窓から、新しく生まれ変わった豊島区役所・高層マンション群・昔ながらの住居が軒を連ねるサマを眺めながら、鬼子母神前駅で下車。安産・子育ての神として江戸時代から信仰を集める雑司ヶ谷鬼子母神堂の参道で100年続く老舗和菓子店「ときわ木(ときわぎ)」(創業1919年)を訪ねた。

 

 店内は、間口も広く清潔感漂う上品な雰囲気だ。入ってすぐのショーケースに最中などの和菓子、左側の壁際には煎餅、その向かいには贈答用の菓子が並んでいる。

 

 看板商品の子育てもなかは、出産祝いに用いる人も多いというが、「鬼子母神に詣でた帰りにお土産に」にと観光客からも人気だ。「安産と子育てのご利益を願い、“子育てもなか”を製造させていただいております」と店の方はおっしゃる。

 

 餡作りからすべての行程が手作りなので、限られた数しか製造できないとのこと。たくさんお買い求めの場合は予約をしておいた方が安心だ。

 

 かわいらしい女の子のイラストが描かれた包装紙を優しく開けると、皮に子育ての守り神であるみみずくの型が浮きあがっている。こぼれおちそうなつぶあんがぎっしりと詰まっている。  

 

 さっと取り出し2つに割って口に入れる。皮のパリット感と、しっとりとしたあんとのコラボが絶妙だ。「これぞ、最中の王道」という感じで1度食べたら、また買いに来ようと思う1品だ。

 

 つぶあんとこしあんがそれぞれ入った二味最中や、季節ごとの生菓子などがケースを彩っていて、どれもこれも買いたくなってしまう。

 

 東京メトロ副都心線の雑司が谷(ぞうしがや)駅からも歩いて1分もかからないので、都電の旅を愉しみながら横浜方面から買いに来てみてはいかが。

 

(トラベルキャスター)

 

津田 令子 氏

 社団法人日本観光協会旅番組室長を経てフリーの旅行ジャーナリストに。全国約3000カ所を旅する経験から、旅の楽しさを伝えるトラベルキャスターとしてテレビ・ラジオなどに出演する。観光大使や市町村などのアドバイザー、カルチャースクールの講師も務める。NPO法人ふるさとオンリーワンのまち理事長。著書多数。

日本の絹産業の始まりを知る旅 群馬県藤岡市が実施

2022年6年3日(金) 配信

世界遺産高山社跡を見学

 群馬県藤岡市が「絹」をテーマに市内を巡る観光コースをつくり、旅行会社へPRするモニターツアーを3月24日に開催した。

【古沢 克昌】

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 藤岡市は、観光客の増加を目指し、世界遺産の「絹」をテーマに市内を巡る観光コースを中小企業基盤整備機構の支援を受けて造成した。同日にはこのコースをPRする目的で、首都圏の旅行業関係者を対象に実際にコースを訪れるモニターツアーを実施した。

 ツアーは高崎駅を出発し、世界遺産の「高山社跡」や工芸体験村「土と火の里公園」などを巡る日帰りコース。高山社跡で参加者は、去年10月から改修工事をしている母屋の中に入り、養蚕方法を教える学校だったことなど施設について説明を受けた。2027年度まで母屋兼蚕室の修復・耐震補強で保存整備が行われているため、その時期限定の体験として、①瓦の洗浄②屋根の板葺きの材料に名入れ③缶バッチプレゼント――などを計画しているという。

座繰り体験
土と火の里公園での昼食はオリジナル「釜めし」

 土と火の里公園繭から糸を取る座繰り体験を行い、地元食材を使用した季節限定のオリジナル「釜めし」の昼食後、桑の木を使用したスプーン作りを行い、自分で作った木のスプーンをお土産に持ち帰った。公園内にあるバーベキュー(BBQ)広場では、BBQの食材と器材がセットになった完全手ぶらのパックプランや、オプションでピザが焼けるプランも用意されていた。

 最後に立ち寄った道の駅「ららん藤岡」は高速道路と一般道路の両方からアクセス可能な人気の道の駅。テイクアウト専門の売店では、地元藤岡産のイチゴ「やよいひめ」を使用した「やよいひめ苺ソフトクリーム」が通年で食べられるようになった。イチゴ本来の優しい甘さが楽しめ、ほかのイチゴソフトとは一味違う逸品だ。

 藤岡市は、この観光コースを「日本の絹産業の始まりを知る旅」と名づけ、新年度から一般向けのモニターツアーとして参加者を市のホームページで募集する予定だ。

 問い合わせ=藤岡市経済部商工観光課 ☎0274(40)2317。

 

JR西日本「銀河」 山陰ルート運行開始 停車駅でおもてなし

2022年6年3日(金) 配信

安来駅での歓迎おもてなし

 西日本旅客鉄道(JR西日本)の夜行特急列車「WEST EXPRESS 銀河」の関西と山陰を結ぶ山陰ルートの今年度運行が5月6日から始まった。

 京都駅(京都府京都市)―出雲市駅(島根県出雲市)間を9月21日まで、週2往復する。山陰ルートでの運行は2020年9―11月と21年3―6月に続く3回目。

 鳥取と島根の山陰エリア停車駅では歓迎のおもてなしを展開している。

 安来駅(島根県安来市)では、停車時間に余裕のある出雲市行きの下り便到着に合わせた火曜日の朝に、安来節保存会による伝統芸能「安来節とどじょうすくい踊り」を披露する。どじょうすくい踊りの恰好をした有志による出迎え隊も出動するなど、地元の熱のこもった歓迎ぶりは従来から人気だ。今回から安来銘菓「清水羊羹」と「安来節屋せんべい」の販売を行う。

 松江駅では甲冑姿の「まつえ若武者隊」が出迎え、下り列車の到着では、乗客に出雲そば発祥の地の「そば湯」を振る舞う。

 米子駅では土曜休日の下り便に合わせ、米子城VRゴーグル体験や淀江傘の展示を行う(運転日によっておもてなし内容が異なる)。

 同駅では土曜日の朝、到着する銀河と3月19日からリバイバル運転を始めた「国鉄色」の特急やくもが並んで停車する瞬間があり、鉄道ファンの注目を集めている。

クラツー、75歳以上向けツアー 「大人のゆるり旅」を刷新

2022年6月2日(木)配信

歩くことに自信がない顧客から好評

 クラブツーリズム(酒井博社長、東京都新宿区)は6月1日(水)、75歳以上向けのツアーブランド「大人のゆるり旅」をリニューアルした。「いくつになっても安心・快適な旅で健康長寿であって欲しい」との想いを込めて、昨年4月から同ブランドを販売。今回の刷新で、ブランドの“お約束”を見直したという。

 同社は、60~70代を中心としたアクティブシニア層の顧客に支えられている。一方で75歳を過ぎるとツアーの参加が減少する傾向があった。そこで、75歳以上の顧客も安心して参加できるブランド「~お身体にやさしい~大人のゆるり旅」を発売し、年齢を重ねても旅を楽しめるように商品ラインアップを拡充した。

 だが、75歳以上の顧客にとって自身の体やそれによる他の利用客に対しての不安があるなど、団体旅行への参加のハードルが高かった。こういったハードルを下げ、「旅行への『不安』『不快』を『安心』『快適』に」をコンセプトに、6つのお約束に沿った商品を展開する。

 6つのお約束とは、①添乗員が同行し、サポート②年齢制限をした出発日を設定③お身体に配慮した安心のバス④ゆったり行程⑤お食事に配慮⑥宿泊コースはベッドの部屋を確約――。さらに、6月1日からツアーの行程を「ゆったり度大・中・小」とレベルを分け、「大人のゆるり旅」は「大・中」を適用。「ゆったり度」を細分化し、顧客が自身に合ったツアーを選びやすくなり、より参加しやすいブランドへリニューアルした。

「自然豊かな智頭へ」 智頭町宣伝隊がアピール

2022年6年2日(木) 配信

(左から)吉村氏、長谷氏、河村氏

 鳥取県・智頭(ちず)町の宣伝隊が5月11日、本紙関西支社に来社した。一行は智頭町観光協会の河村実則専務理事と吉村和朗氏、同町企画課の長谷龍太郎主任の3人。

 県東部に位置し、岡山県北部に隣接する同町は町面積の93%が山林で、国定公園の「芦津(あしづ)渓谷」など自然スポットが多い。

 かつて因幡街道の宿場町として栄え、今も歴史的な町並みが広がる「智頭宿」には、国の重要文化財に指定される「石谷家住宅」など見どころが豊富だ。最近では古民家をリノベーションしたオシャレなカフェやゲストハウスが誕生し、新しい風が吹いている。

 4月17日には、6年に1度の神事「柱祭り」が同町にある諏訪神社で開催された。柱祭りは同神社の本殿の四隅にある柱を取り換える神事で、1782年に始まったとされ、今回で41回目を迎えた。

 河村さんらは「自然豊かな智頭は、密を避ける旅行に最適。ぜひお越しください」と話していた。

NAA、4月旅客数は173%増 緩和でビジネスと留学伸長

2022年6月1日(水) 配信

4月28日(木)~5月8日(日)までの旅客数は19年の90%ほどだった

 成田国際空港(NAA、田村明比古社長)が5月27日(金)に発表した2022年4月の航空発着回数は、前年同月比16%増の1万2672回、旅客数は同173%増の96万6363人だった。入国者数の上限が7000人から1万人に引き上げられ、ビジネスや留学による渡航が認められたことが主な要因。

 国際線旅客数は同325%増の48万8768人。このうち、日本人旅客数は同284%増の11万109人、外国人は同202%増の16万486人。

 乗り継ぎで利用する通過客は同555%増の21万8172人と大幅に増加。コロナ禍前の19年比では同1%減となった。規制が緩和された東南アジア各国から、北米などへの移動する旅客が増加した。

 国内線は月末に3年ぶりの行動制限のないゴールデンウイークに差し掛かったため、発着回数が同69%増の3992回、旅客数は同100%増の47万7596人。

 田村社長は、日本からのビジネス渡航が増加し、各航空会社の5月の予約数が上限に近づいたことや、6月10日から観光目的の往来が再開されることに触れ、「重要な1歩だ。国民が利用客を歓迎できる受入体制を築いていく」と述べた。

コロナ禍前超える GW後順調に推移

 4月28日(木)~5月8日(日)までの国内線発着回数は前年同期比38%増の1736回。19年同期比では、同1%増とコロナ禍前を超えた。旅客数は同約50%増の24万人。19年同期の90%ほどとなった。

 田村社長は同期間以降について、「順調に推移している」と語った。

NAA、連結決算と中期経営計画を発表 民営化後初の連続赤字

2022年6月1日(水) 配信

田村明比古社長

 成田国際空港(NAA、田村明比古社長)は5月27日(金)、2022年3月期の連結決算(21年4月1日~22年3月31日)と次期中期経営計画(22~24年度)を発表した。

 同決算における売上高は、海上コンテナの不足で貨物量の取り扱いが好調に推移したことや、ビジネス渡航や留学生の渡航が認められたことなどにより、前年同期比15・5%増の829億1500万円となった。

 厳しい水際措置が継続される一方で、人件費の削減や運用の効率化をはかり最大限のコスト削減に努めた結果、営業損失は495億2600万円(前年同期は575億2300万円の損失)と79億9600万円縮小した。経常損失は504億1300万円(同573億3800万円の損失)、当期純損失は524億7600万円(同714億5300万円の損失)と、04年の民営化以降初めて赤字を計上した昨年度に引き続き、2期連続での損失となった。

 6月1日(水)から、1カ月間の入国者数の上限が全国で2万人に引き上げられたことや、年度の途中から観光目的の往来が再開されるため、22年度通期の売上高は同55・0%増の1285億円、営業損失272億円、経常損失302億円、当期純損失330億円を見込む。

 コロナ前に発着回数が最も多かった中国線の回復が遅れることも予想し、黒字化は24年度となる見通しを示した。田村社長は「採算ラインは出入国を合わせて年間約2900万人」とし、「月の入国者数の上限が増えない場合、黒字化は難しい」と話した。

水際緩和地から復便へ 災害時一部閉鎖も

 同日に公表した同中期経営計画では、クリエイションとサステナビリティ、レジリエンスを3つの柱に据えた。

 クリエイションでは水際対策の緩和地域に対する集中的な復便を促す。併せて、航空需要の回復時に見込まれる休業や廃業によって減少した警備や清掃スタッフの不足を解消する。

 持続可能な空港づくりをはかるサステナビリティでは、騒音や落下物など環境対策を着実に進めるほか、地域の魅力ある観光資源の発掘や創出で同社から全県域の発展を目指す。

 また、休憩室や空港内保育施設の受入人数の拡大などをはかり、従業員に働き続けられる環境を提供していく。

 レジリエンスでは、新たな感染症や災害などの発生時にも運営を継続するため、航空会社のシステムを各ターミナルで共通化し、需要に応じて一部ターミナルを閉鎖することで、コスト比率の高い固定費を抑えていく。

 田村社長は「抜本的な変革を行い、空港に関わるすべての人に新たな価値を提供する」と意気込んだ。