ゆのごう美春閣 鉄道ジオラマ設置 ラウンジリニューアル

2022年5月18日(水) 配信

ノスタルジックな鉄道ジオラマ

 岡山県美作市の湯郷温泉の「ゆのごう美春閣」(永山久徳社長)は4月23日、同館創業20周年企画の一環で、同館1階の団体向けラウンジ「フロール」内に鉄道模型ジオラマを設置するなど、大人向けのコンセプトスペースとしてリニューアルした。

 鉄道模型事業「鉄道模型 亀屋」を手掛けるFGRC(大阪府大阪市)とのタイアップ企画で、製作に6カ月間をかけたジオラマは西日本最大級の11㍍×3㍍の大きさ。実物の80分の1サイズの車両が走る「HOゲージ」専用の4線あり、線路の総延長は約120㍍だ。沿線には津山城など美作市を中心とした県内の名所などを再現した。

 利用は貸し切りで、宿泊と日帰りの2種類のプランを設定する。宿泊プランは午後4―午前0時と7―9時の計10時間、日帰りは午前10時から午後3時の計5時間それぞれ利用できる。料金は宿泊プランが4万円(税込)、日帰りプランが2万5千円(同)。鉄道を走らせる車両は利用者による持ち込みのみで、レンタルはない。室内は防音のため、DCC搭載の機関車でも大音量で楽しめるという。

 隣接する「夜食処B級グルメコート花車」からアルコール類や食事が注文できるほか、飲食物の持ち込みが可能だ。

 企画イベントも随時開催する。貸切営業がない場合は、これまで通りラウンジとして営業する。

 同館は「大人の趣味スペースとしてじっくり楽しめる空間をつくることができた。一般の宿泊者も楽しめるように工夫しているのでぜひ利用してほしい」とアピールしている。

島の宝観光連盟、旅作家・小林希さんを島旅アンバサダーに 離島観光の魅力PRへ

2022年5月17日(火) 配信

池田高世偉会長(左2番目)と小林希さん(左4番目)

 島の宝観光連盟(会長=池田高世偉・隠岐ジオパーク推進機構理事長)は5月17日(火)、旅作家で日本旅客船協会の船旅アンバサダーを務める小林希さんに島旅アンバサダーを委嘱した。小林さんは離島観光の魅力をアピールするほか、観光協会や自治体などに連盟への加入を呼び掛けていく。

 同日に表参道・新潟館ネスパス(東京都渋谷区)で開かれた委嘱式で、池田会長は「加盟者数を増加させ、島の観光をより盛り上げ、地域を活性化させてほしい」と期待を寄せた。

 小林さんは2014年に離島観光に興味を持ち、ゲストハウスをオープンする過程で、近隣の文化の似た島にも感心を持ったことを話し、「まさに取り組みたかったことで、光栄に思う」と語った。

 今後は、島で活動するガイドなどが魅力を発信するオンラインイベントのほか、隣接する島を周遊できるコンテンツを造成していく予定だ。

 同連盟は佐渡観光交流機構(新潟県佐渡市)と隠岐ジオパーク推進機構(島根県・隠岐の島)、壱岐市観光連盟(長崎県壱岐市)五島観光連盟(同五島市)、天草四郎観光協会(熊本県上天草市)、天草宝島観光協会(同天草市)で構成する。各島の観光組織が連携して、観光資源をアピールし、来訪を促している。

訪日観光再開に向け、5月中に実証事業開始(観光庁)

2022年5月17日(火) 配信

観光庁は5月中、今後の訪日観光再開に向けて実証事業を行う

 観光庁はこのほど、日本旅行業協会(JATA、髙橋広行会長)と連携し、今後の訪日観光再開に向けて必要な検証をするための実証事業を5月中に実施する。

 日本の旅行会社が行動管理を行う少人数のパッケージツアー形式で、添乗員が同行する旅行形態を対象とする。変異株に対する非指定国で訪日重点市場である米国や豪州、タイ、シンガポールなどを出発地に設定。

 受け入れ地域は、緊急事態宣言などが発令していないことに加え、都道府県が同意した地域を条件とした。対象者は、新型コロナワクチン3回目の追加接種を受けた人とし、民間医療保険への加入が必要。

 検証項目は、①効果的な感染防止対策の遵守方法②陽性者発生時を含む緊急時の対応③陽性者の発生状況──など。

 なお、この事業は2021年11月末の水際対策の強化を受けて実施を見合わせていたもの。

 実証事業について観光庁は、「3項目を検証し、旅行会社や宿泊事業者などが留意すべき点をまとめたガイドラインを策定し、関係者間に周知する」考え。

「Go To早期再開など継続的な支援を」全旅連青年部が自民国会議員に要望 宿泊・旅行業代表して

2022年5月17日(火) 配信

(左3番目から)星永重部長と高市早苗政務調査会長

 全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会青年部(星永重部長)は5月12(木)~15(日)、自由民主党衆参両院の国会議員に、宿泊業4団体と旅行業2団体を代表して「観光産業に対する継続的な支援要望書」を提出した。

 政府による経済財政運営と改革の基本方針と成長戦略の策定を前に、観光地と観光サービスの高付加価値化推進事業の制度拡充をはじめ、Go Toトラベルキャンペーンの早期再開と期間延長、予算拡充のほか、観光目的による国際往来の早期再開を求めた。

 今回は全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会(多田計介会長)、全日本ホテル連盟(清水嗣能会長)、日本旅館協会(浜野浩二会長)、日本ホテル協会(森浩生会長)、日本旅行業協会(髙橋広行会長)、全国旅行業協会(二階俊博会長)と連名で手渡した。
 
 コロナ禍で宿泊施設が食材の仕入れやリネン発注数を減少させたことで、卸売り業者やクリーニング店などの関連企業が廃業するなか、全旅連青年部は「多くの宿泊施設が自らが倒産した場合、地域経済に与えてしまう影響を強く認識している」という。

 一方で、昨年10月に全国の宿泊施設を対象に行った調査で、コロナ禍での新規借入額の平均債務償還年数は17・5年となったことから、「コロナ以前の売上に戻ったとしても、同期間の利益はすべて債務返済に充てなければならない」と危機感を示した。
 
 こうしたことから、要望書では観光庁が実施する「地域一体となった観光地の再生・観光サービスの高付加価値化事業」の補助を毎年度、予算化すること要求した。宿泊施設の改修と廃屋撤去への補助上限を1億円から5億円以上に引き上げることと、宿泊施設をはじめとする運輸・観光関連事業者を含めた地域ぐるみで行うDXなどへの投資も対象にすることも求めた。

  Go Toキャンペーンについては、今年3月31日(木)に失効した4600億円と同程度額、またはそれ以上の予算計上と制度の詳細の早期発表を希望した。
 
 観光目的による国際往来の早期再開は、「日本が厳しい対策を続ければ、既に始まっている世界的な誘客競争に負け、世界に必要とされない『観光孤立国』となりかねない」(全旅連青年部)との危機意識を示した。さらに、世界各国の旅行会社は日本に入国できない場合、タイやベトナムなどほかのアジア方面の販売を強化する方針だという。

 このため、全旅連青年部は「今、水際措置を大幅に緩和することが、コロナで痛んだ地域経済のV字回復にとって重要なポイントとなる」と訴えた。

Airbnb、旅の目的で探す機能追加 より多くの地域を活性化へ

2022年5月17日(火) 配信

Airbnb検索カテゴリのイメージ

 Airbnb(エアビーアンドビー、田邉泰之代表)は5月11日(水)、民泊物件を旅の目的で探すことができる機能「Airbnb検索カテゴリ」を追加した。過去10年で最大規模の変革になるという。世界の約10万都市に位置する民泊物件を載せる同社は観光地でない地域でもユニークな民泊物件を見つけてもらい、より多くの地域を活性化し、オーバーツーリズムの解消もはかる。

 検索カテゴリは、素敵なプールや田園地帯、サーフィン、歴史ある建物など56項目を用意した。物件は選択後、マップ上に一覧で示す。カテゴリに関連する写真は物件のトップページに掲載する仕様に変えた。

 またワーケーションなど長期滞在の需要が増加するなか、希望する日程の一部が満室のため宿泊できない利用者にも、旅へ出掛けてもらおうと、Airbnbは同日から、日程を分割したうえで、2つの宿を提案するシステムも導入した。

 同機能はカテゴリや日程、場所など利用者が希望する条件を基に民泊物件を表示し、両宿泊先の距離も示す。

人気児童書の世界観を再現 西武園ゆうえんちに新アトラクション 「ふしぎ駄菓子屋銭天堂ザ・リアル」

2022年5月17日(火)配信

紅子からオリジナル駄菓子を受け取り、園内で冒険を楽しめる

 埼玉県所沢市の西武園ゆうえんちに2022年4月27日(水)、“ふしぎ体験”ができる「ふしぎ駄菓子屋銭天堂(ぜにてんどう)ザ・リアル」がオープンした。

 児童書としてシリーズ累計発行部数380万部を突破し、小学生を中心に絶大な人気を誇るアニメーション・児童小説の「ふしぎ駄菓子屋 銭天堂」の世界観を圧倒的なクオリティで再現した体験型アトラクションで、夕日の丘商店街の一角に登場した。

 店内に入ると店主の紅子が迎えてくれる。さらにふしぎ駄菓子が至る所に置かれ、ゲストは紅子からオリジナルのふしぎ駄菓子「運まねくっきー」を渡され、1対1のコミュニケーションが体験できる。「運まねクッキー」は使い方によっては幸運に導いてくれるが、間違えると不運な運命をたどってしまう不思議な駄菓子。この駄菓子を食べたり使ったりしながら、どんな願い事も叶えてくれる不思議な場所を探して、夕日の丘商店街、さらには園内全域で冒険を楽しめる。

 【旅行ライター&エディター 三堀 裕雄】

【当選者発表】第47回「プロが選ぶ日本のホテル・旅館100選」プレゼント

■第47回「プロが選ぶ日本のホテル・旅館100選」
プレゼント当選者 発表!!

今回もたくさんのご応募をいただき誠にありがとうございました。
締め切り後、厳正なる抽選をいたしました結果、下記の皆様がご当選されました。
ご当選おめでとうございます。

ご当選の皆様には、各宿泊施設より宿泊券をお届けさせていただきました。

旅館名   都道府県 当選者  
 結びの宿 愛隣館  秋田県  佐藤  様 
 悠の湯 風の季  岩手県  福岡  様 
 ホテル鹿角  秋田県  吉本  様 
 鶴の湯温泉  大阪府  宮嶋  様 
 萬国屋  宮城県  喜多  様 
 匠のこころ 吉川屋  東京都  岡崎  様 
 花月ハイランドホテル  福島県  柴田  様 
 八幡屋  福島県  添田  様 
 野地温泉ホテル  神奈川県  小田桐  様 
 熱塩温泉 山形屋  新潟県  波多野  様 
 日光千姫物語  東京都  豊田  様 
 鬼怒川パークホテルズ  栃木県  外間  様 
 益子舘 里山リゾートホテル  茨城県  増澤  様 
 乃木温泉ホテル   埼玉県  柳沢  様 
 あさや  千葉県  佐藤  様 
 鬼怒川グランドホテル夢の季  埼玉県  内山  様 
 舌切り雀のお宿 磯部ガーデン  東京都  酒井  様 
 宝川温泉 汪泉閣  東京都  志田  様 
 満ちてくる心の宿 吉夢  千葉県  飯沼  様 
 水が織りなす越後の宿 双葉  新潟県  竹石  様 
 大牧温泉観光旅館  東京都  山分  様 
 日本の宿 のと楽  京都府  富田  様 
 加賀屋  鳥取県  徳永  様 
 若草の宿丸栄  千葉県  柏崎  様 
 浪漫の館 月下美人  愛知県  高木  様 
 美ケ原温泉 翔峰  東京都  境  様 
 ホテルアンビア松風閣  東京都  持田  様 
 稲取銀水荘  埼玉県  井ケ田  様 
 堂ヶ島ニュー銀水  千葉県  藤平  様 
 今井荘  静岡県  落合  様 
 ホテル竹島  岐阜県  松原  様 
 おもてなしの宿 渓山閣  大阪府  宮本  様 
 ホテル清風館  広島県  田中  様 
 阿蘇の司ビラパークホテル&スパリゾート  広島県  窪田  様 
 指宿フェニックスホテル  福岡県  濱口  様 
 いぶすき秀水園  静岡県  鈴木  様 

※土産物名産品のプレゼントは商品の発送をもって発表に代えさせて頂きます。

ひがし北海道 フリーパス継続へ 2次交通や体験観光など

2022年5月17日(火) 配信

説明会後に行われた商談会のようす

 ひがし北海道自然美への道DMO(上野洋司会長)は4月27日、東京都内で旅行会社やマスコミ関係者向けに「観光素材説明会」を開き、2次交通や体験観光フリーパスの継続発売を伝えた。

 今年1―3月に発売した「ひがし北海道バス乗り放題パス」の利用実績を踏まえ、夏季は道東を2エリアに分け、乗り放題パスを設定する。「帯広・北見・旭川エリア版」はノースライナー(帯広―富良野・旭川)や石北号(旭川―北見)などの都市間バスや十勝や北見エリアの路線バスで利用できる。「釧路・網走・知床エリア版」は定期観光バスの釧路知床号やピリカ号、空港ライナー、網走オンデマンドバスなどで利用可。両パスとも発売は6月上旬―10月下旬。価格は3日間7800円、4日間9800円、5日間1万1800円。

 一方「ひがし北海道まるごと体験パスポート夏・秋版」は、約20施設の入場に加え、3千円程度の食事・体験メニューが楽しめる。6月上旬―10月下旬の発売で、価格は3日間4800円。道東全域版に加え、「釧路十勝版」「オホーツク版」も発売する。

 各地の話題では、摩周湖第一展望台のレストハウスが今夏、湖と星空を眺めるビュースポット「摩周湖カムイテラス」としてオープンする。

 晴れた日は、摩周湖や摩周岳、遠くに斜里岳を一望。早朝、条件が合えば雲海が見られることも。夜は360度視界が開けた自然のプラネタリウムとして、漆黒の夜空に星々を眺めることができる。

【特集No.610】エクセルイン名古屋熱田 稼働率40%でも収益出せる経営

2022年5月17日(火) 配信

 高品質のおもてなしサービスを提供することで、お客の強い支持を得て集客している宿の経営者と、工学博士で、サービス産業革新推進機構代表理事の内藤耕氏が、その人気の秘訣を探っていく対談シリーズ「いい旅館にしよう! Ⅲ」の10回目は、愛知県「エクセルイン名古屋熱田」社長の苅谷治輝氏が登場。稼働率40%でも収益を出せる“危機に強い経営体質”に変えていく過程で、取引業者の全面的な見直しや、清掃業者を立ち上げるなど、さまざまな改革を進めてきた苅谷社長と内藤氏が科学的な視点から語り合った。

【増田 剛】

 苅谷:1999年2月に父がビジネスホテル「エクセルイン名古屋熱田」を開業しました。元々は代々続く卸問屋で、私は5代目になるはずでした。
 当時は年商70億円ほどあったようですが、卸問屋を取り巻く経営環境が難しくなってきていたので、営業権を譲渡して倉庫を取っ払い、その土地に両親はさまざまな職種の中から、ビジネスホテル経営を選択しました。
 当時この付近にはビジネスホテルがほとんどなく、愛知万博(2005年)への期待や、近隣にある工場関連で、ビジネス需要を見込んでいたようです。開業から間もなく稼働は安定し、愛知万博のころは満室が続いていました。内部はボロボロでしたが、高稼働率で推移していました。
 その後、08年のリーマン・ショック、11年3月の東日本大震災で経営が悪化していきました。企業の出張が減るなかで、経営にも大きく影響が出ていたのです。 

 内藤:内部がボロボロとはどういう状態だったのですか。

 苅谷:例えば、レジのお金を盗むとか、夜勤のスタッフがパチンコに行っているとか、簡単に言うと、モラリティの欠如です。父もスタッフに任せきりで、内部の状態には無関心でした。でも、離職率はほぼゼロで、逆に言うと、スタッフにとって生ぬるく、あまりにも居心地が良過ぎる“最悪”の職場でした。
 震災後の11年5月に私は「FRINGE(フリンジ)」というWeb制作会社を立ち上げました。手始めに父が経営するホテルのホームページのリニューアルをやらせてもらおうと営業に行ったときに、従業員とも話す機会がありました。
 そのとき、愚痴や不満などが山ほど出てきて、一番中心的なスタッフから「このままではまずい。ホテルに帰れないか」と聞かれたほどでした。

 内藤:フリンジを立ち上げるまではホテルに入ることは考えてなかったのですか。

 苅谷:まったく考えていなかったですね。

 内藤:当時は何をされていたのですか。

 苅谷:大学を卒業してからは、主に大手製造業向けのコンサルティング会社で新規事業開発や中長期経営戦略のようなコンサル業に携わっていました。

 ――大学院では航空宇宙工学を専攻されていたのですか。

 苅谷:企業との共同研究で配電盤やモジュールの最適設計など、生産工学に近い研究をしていました。やがて、論文のための研究に没頭するのは、自分の中では「やりがいに乏しい」と感じ始め、外資系のコンサル会社や証券会社も受けて内定はもらっていました。なかでもコンサル業は「自分が想像していた以上に泥臭いことをやっている」という印象で、魅力的に感じました。
 その後、ベンチャー企業の手伝いなどもしながら、フリンジという会社を自分で立ち上げました。

 内藤:商売として成り立ってきたのはいつぐらいですか。

 苅谷:半年が経過したくらいからです。2年ほど経ち、ようやく軌道に乗り始めた13年の12月に、父から「ホテルの経営が厳しい」と相談されました。
 私が承継する条件として、「父が事業から一切手を引くこと」で受けました。32歳でした。
 翌14年のゴールデンウイークに準備をして6月に代表としてホテルに入りました。

 内藤:さまざまな問題があるなかで、どのように乗り越えていかれたのですか。

 苅谷:一番大きかったのは、人の問題です。社内ではモラリティの欠如、社外では取引先とのコスト意識のない契約ばかりでした。
 社内はコンサルの手法でいきなり抜本的に改革をしようとしたら、崩壊しました。「人」の案件は、単純に分かりやすい組織図に当てはめようとすると上手くいかないということを実体験として学びました。
 将来を担えそうな中核的な人材を選んで、マルチタスクの仕組みを説明し、「高額な報酬で優秀な人材を集めて最強集団にしていこう」と考え、それに付いていけない人は去っていきました。しかし、抜擢したスタッフも接客が本来得意なのに苦手な管理業務をやらせてしまったりして、結果上手く機能せず、本人も重圧に潰れてしまうなど、ズレが生じてきました。新しく入った人材もそのような環境に馴染めず、すぐに辞めていく悪循環が続いていました。

 内藤:どのくらい続いたのですか。

 苅谷:2年目にようやく少し安定し始めましたが、14年に私が結婚し、結婚式の直前に脳梗塞になりホテルを離れた間に、現場でパワハラなども生じて、再びスタッフが離れていきました。
 そこで、私と妻がホテルに入り、日中は妻が、全体は私が管理する体制で張り付いて変えていきました。
 それ以降、比較的安定していますが、上手く回り始めたと思うと1年くらいで陳腐化していくサイクルが続き、これまでの経験上、適度にスタッフの入れ替えがないと、組織は腐っていくということを感じています。
 一方で、自分自身もあれだけ「改革しよう」と言いながら、安定を求め始めていることに気づきました。だからこそ過去の実績に固定してしまうことを避けるために、さまざまな会社を作り、自ら刺激を求めているのだと思います。ホテルの経営は安定しています。

 内藤:利益が出るようになった一番の原因は何ですか。

 苅谷:父が土地と建物を所有しそれを借りていましたが、法人として買い取り、損益計算書(PL)では億単位で増益となりました。高額な税金を払うかたちになりましたが、貸借対照表(BS)をベースに、いつでも払い戻しができる返戻率の高い生命保険などにも入り、コロナ禍のような危機が訪れた時に使えるように準備をしていました。
 取引先の業者はすべて見直し、収益はⅤ字回復をしました。

 内藤:具体的にどのようなことをやられたのですか。

 苅谷:清掃業者を別会社で立ち上げ自社ホテル以外にも清掃事業を始めました。社会保険労務士や税理士も変えました。アメニティやリネン会社も変え、その過程で新しいリネン会社が進出できていなかった名古屋への市場進出の手助けもしました。すべて全国から相見積もりし、安いだけではなく、一番マッチするパートナーを選定し、結果9割ほど変えました。

 内藤:オーナー企業の場合、相見積もりすらしません。

 苅谷:業種によっては談合があることも知りました。地元の付き合いも大事ですが、本当に品質が優れているのか、対応は迅速か、最新の技術を取り入れているかなどを見極める必要があります。今でも「他社はこんなサービスをやっていますが、どうですか」など、契約更新は厳しく行っています。
 24時間カスタマーサポートのサービスも今必要なければ切っていく。社外の部分でこのリースは本当に必要なのかなど細かく見直しています。

 内藤:慣れ合いではなく、互いの関係に緊張感が持てますね。

 苅谷:コンサルを経験していたことが大きいと思います。

 内藤:清掃を内製化したのは、どこに問題点を感じたのですか。……

【全文は、本紙1859号または5月25日(水)以降、日経テレコン21でお読みいただけます】

〈旬刊旅行新聞5月11・21日合併号コラム〉今年はイベントも再開――女将サミットや旅館経営教室セミナー

2022年5月17日(火) 配信

 今年のゴールデンウイークは3年ぶりに制約のない状態で迎え、久しぶりに全国各地の観光地はにぎわいを見せていた。

 

 全日本空輸(ANA)はGW(4月29日~5月8日)国内線旅客数は前年同期比88・4%増の95万8724人、国際線は404・8%増の6万7375人と大幅に増加した。

 

 一方、日本航空(JAL)の国内線旅客数は同131%・4%増の91万6376人、国際線は同346・3%増の7万3039人とANAと同様に大きく伸ばした。

 

 海外旅行もハワイをはじめ、東南アジアや欧州を旅行する人たちも増え始めた。

 

 政府は新型コロナウイルスの水際対策について、1日当たりの入国者数を1万人から2万人程度まで緩和する方針を示しており、「鎖国」状態にあった国際観光の再開に向けて、ようやく動きだした感がある。

 

 かく言う私は、コロナ禍以前のGWの過ごし方に戻り、ほぼどこにも行かなかった。テレビの渋滞情報を見ながら、「糖質、プリン体ゼロ」の発泡酒を片手に、リクガメと遊んだり、読書したり、家具を眺めたり、いわゆる「おうち時間」を楽しんだ。

 

 初夏らしく暖かくなってきたので、バイクをピカピカに磨きながら、旅行新聞バイク部のツーリングコースはどこにするかを考えていた。

 

 

 さて、今年はこれまで中止、延期されていたさまざまイベントも再開される。

 

 「第31回全国女将サミット2022長野」が7月7日、軽井沢町のグランドエクシブ軽井沢を会場に開催する予定だ。19年に東京で開いて以来、3年ぶりとなる。30回という長い歴史を有しながら2020年、21年とコロナ禍で開催ができなかったが、31回目の新しい一歩を踏み出す大会となる。

 

 全国旅館おかみの集い運営委員会の委員長には、湯本英里・湯本旅館女将(長野県・渋温泉)が就任。今大会のテーマは「笑った分だけ幸せに!~あなたの笑顔が誰かの元気に~」。講演会や茶話会を通じて情報交換を行う。多くの女将に参加してほしいと願っている。

 

 

 旅行新聞新社主催、サービス産業革新推進機構(内藤耕代表理事)後援の第4回「旅館経営教室」現地セミナー&館内見学会も6月2~3日に、愛知県名古屋市のエクセルイン名古屋熱田を会場に開催する。

 

 同ホテルの苅谷治輝社長と内藤耕氏との対談は、本紙1面にも掲載している。コロナ禍や国際情勢、天災など、さまざまな危機的な経営環境が今後も予想されるなか、苅谷社長は稼働率40%でも収益を上げられる経営を実践されている。

 

 多くの旅館・ホテル経営者は売上を上げるために、集客につながるサービスを「足し算」で考えてしまいがちである。苅谷社長は低稼働状況でも利益を残すために、対外的な契約をシビアに見直すなど、「引き算」的思考によってムダの削減を徹底している。

 

 エネルギーや食糧などあらゆるコスト高の状況は今後も続くだろう。「なんとなく流行っているから」という潮流に乗って新しい施設やサービスに大きな投資をする前に、今回の旅館経営教室セミナーがもう一度「引き算」の視点で自らの施設を見つめ直すきっかけになればいいと考えている。ご関心があれば、ぜひ参加していただければと思う。

(編集長・増田 剛)