2022年5月3日(火) 配信
群馬県・伊香保温泉といえば、石段街にもみられるようにレトロ情緒豊かで、草津温泉と並ぶ、とても人気の高い日本有数の温泉地。
今回の精神性の高い旅では、その伊香保温泉を挟むようにして、堂々たる存在感を持っておられる、水澤観音と榛名神社をご紹介します。
温泉と神社仏閣といえば、「湯垢離」という言葉が浮かびます。古くから人々は神社仏閣に参拝する前に、手水舎で手や口を水ですすぐだけでなく、全身を水で禊をしました。温泉なら「湯垢離」、冷水なら「水垢離」、海なら「潮垢離」と呼ばれています。現在でも、水垢離や瀧行など山伏修行の1つとしても、行われています。ぜひ、水澤観音&榛名神社へ参拝する前に温泉に入って、心身を洗い清めて、神仏巡礼の旅を満喫してみてはいかがでしょうか。
ある本によると、先に水澤観音から参拝してから、榛名神社に参拝すると運の吸収がより良くなるとのこと。渋川市の水澤観音までは、伊香保温泉からバスで約10分程度。
こちらは、坂東三十三か所観音霊場の16番札所の天台宗の古刹。推古天皇の勅願により開かれ、上野国司高光中将が創建しました。ご本尊は、千手十一面観音菩薩様。千の手を持つ観音様は、どんな人も平等に漏れ落ちなく救えるように、千の手をお持ちなのです。苦しいときほど、観音様の母性的なお力を借りるといいでしょう。こちらの観音様は、高光中将の妻、伊香保姫の御持仏。
水澤観音と伊香保姫には、こんなエピソードがあります。伊香保姫は先立った夫への愛しさのあまり、伊香保沼に入水しました。その後、僧侶の夢の中に伊香保姫が現れ「お寺の鎮守となって、人々を救いたい」と語ったといわれています。
古来、神仏が現れるのは、夢の中でありました。人々は神仏からのメッセージをいただくために、「聖地」に赴き、何日も籠って霊夢を見ようとするのです。あの聖徳太子が奈良県の法隆寺に建てた夢殿は、まさにそうした神仏との交流の場であったそうです。また、日本における観音信仰は、聖徳太子が夢殿に聖観音菩薩様を祀ったことが始まりといわれています。
水澤観音のなかで、一番注目したいスポットは、「六角堂」。日本における地蔵尊信仰の代表的な建築物。地獄道、餓鬼道、畜生道、修羅道、人間界、天人界の六道を守る地蔵尊を祀り、六道輪廻を表しています。回転する地蔵尊を左に願い事を唱えながら3回廻してみるといいようです。ここではお線香をあげて、自分の願いというよりも、亡くなった大切な人やご先祖様のご供養を行うことが、今後の幸福につながるのではないかということを感じました。
さて、伊香保温泉からバスに乗車し、約1時間程度で、榛名湖を経由して、高崎市の榛名神社へ。日本の中でも指折りの開運スポット。壮大な願いが叶いやすいとのこと。主祭神は、火の神の火産霊神(ほむすびのかみ)、土の神の埴山毘売神(はにやまひめのかみ)。
本殿までの長い参道には、七福神あり、自然あり、滝ありと、日ごろの溜まったものを取り除いてくれる、浄化の道のようです。本殿に参拝した後に、背後にある「御姿岩」が最高に良いお力があるとのこと。
榛名神社は歴史的には、戦国時代に1度衰退しましたが、江戸時代に天海僧正により、寺院として復興。そして、明治時代の神仏分離令により、仏教色が排され、榛名神社になりました。また太平洋戦争中に、榛名神社のご神体を載せた軍艦「榛名」は敵軍の弾が当たらず無事であり、歴代の艦長は全員生還しました。
群馬での神仏巡礼の旅をすることで、ご先祖様への供養や今後の未来への安泰祈願など、自分と故人の幸福が授かるのではないでしょうか。
■旅人・執筆 石井 亜由美
東洋大学国際観光学部講師、カラーセラピスト。精神性の高い観光研究部会メンバー。グリーフセラピー(悲しみのケア)や巡礼、色彩心理学などを研究。