2022年4月11日(月) 配信
宿泊業の倒産月次推移(東京商工リサーチデータから作成)
東京商工リサーチがこのほど発表した2021年度(21年4月~22年3月)の宿泊業倒産は、前年度比44・0%減の71件となり、過去20年間で最少件数を更新した。このうち、新型コロナ関連倒産は42件で、宿泊業の倒産の過半数(59・1%)を占めた。前年度の68件から減少したものの、構成比は5・6㌽上昇した。負債総額は1333億600万円(同101・1%増)で3年ぶりに前年度を上回った。
2021年度の宿泊業倒産は、形態別で見ると破産が54件で、構成比は76・0%と全体の7割以上を占めた。次いで、特別清算が13件、民事再生法3件、内整理1件だった。
負債額別では、10億円以上の倒産が12件、5億円以上が5件、1億円以上が25件、5000万円以上が11件、1000万円以上が18件となった。1000億円以上の倒産が発生したものの、大型倒産件数は前年度を下回り、10億円以上の倒産も前年度の18件から12件へ減少した。
地区別では、関東が21件と最多に。次いで九州14件、中部13件、近畿・東北が各7件となった。
同社は、「新型コロナ感染症の急速な感染拡大による活動の制限で10年ぶりの水準まで落ち込んだ前年度の反動もあり、21年度の倒産件数はコロナ前と同水準にとどまった」と分析。
コロナ禍での外出自粛や、近場外出の定着で、宿泊事業者は引き続き厳しい経営を強いられているとして、「今後雇用調整助成金の助成減額など、政府による支援も縮小が見込まれ、宿泊業の倒産は来年度にかけて再び増勢する可能性がある」と警鐘を鳴らしている。
旅行業の倒産月次推移(東京商工リサーチデータから作成)
一方、21年度の旅行業の倒産は27件(前年度は23件)となり、18年度から3年ぶりに前年度を上回った。しかし、19年度から3年連続で20件台が続き、全体の倒産件数は低水準を保っている。
このうち、新型コロナを原因とする倒産は22件発生し、旅行業全体の81・4%を占めた。
倒産件数が増加した一方で、負債総額は同85・6%減の42億4000万円と、2年ぶりに前年度を下回った。過去20年間で最大となった旅行業の倒産で、ホワイト・ベアーファミリーの負債278億円が大きな反動減となった。
同社は、コロナ禍も3年目に突入し、海外渡航の制限の継続や、国内の移動自粛など、「旅行会社を介した観光需要は低調な状態が続く」と現状を見ている。
また、同社の「旅行業業績動向調査」によると、コロナ感染拡大前の19年度から21年度の間に、国内の旅行業者1110社で約2兆円の売上が消失したことが分かった。
21年の最終損益も、判明している587社中、65・4%が最終赤字となったこともあり、「資金調達難によるあきらめ倒産の増加が懸念される」と危機感を示している。