2022年4月11日(月) 配信
東京商工リサーチはこのほど、2022年3月の宿泊業倒産状況を発表した
東京商工リサーチがこのほど発表した2022年3月の宿泊業倒産は8件(前年同月13件)だった。前月に引き続き7カ月連続で前年同月を下回り、負債総額も同51・4%減の48億1500万円と、2カ月ぶりに前年同月を下回った。このうち、新型コロナウイルス関連倒産は5件。負債10億円以上の大型倒産が3件だったが、5億円以上10億円未満が発生なし、1億円以上5億円未満が1件と、大幅に減少した。
地区別では関東の4件が最多となり、次いで九州2件、近畿と四国が1件発生した。
3月の宿泊業倒産のおもな倒産事例として、偕楽園観光(徳島県徳島市)が3月11日(金)、徳島地裁から破産手続の開始決定を受けた。負債総額は約23億円。
同社は、1914年に料理旅館として創業し、56年2月に偕楽園観光に法人化した。眉山東側のふもとに日本庭園を持つ、徳島随一の老舗旅館として知られた「徳島グランドホテル偕楽園」を経営。本館建て替え後は、多目的ホールやレストラン、結婚式場などを備える県内最大規模の旅館となった。98年12月期には売上高8億5000万円を計上した。
しかし、その後は同業他社との競争などで売り上げ規模は徐々に縮小していき、客室などのホテル施設のリニューアル資金や運転資金としての借入が負担となり、資金繰りが悪化。新型コロナの感染拡大による宿泊客減少や、各種会合の中止が相次いで、2020年12月期には売上高が5000万円を下回った。
長引くコロナ禍で今後の回復が見通せないことから、このほど事業継続を断念した。
山梨県甲府市の湯村温泉郷入り口付近にホテル「湯村ホテルB&B」を営んでいた湯村ホテルは2月28日(月)、甲府地裁へ民事再生法の適用を申請し、保全命令を受けた。負債総額は約11億円。
同社は、大手ビジネスホテルチェーンの進出や湯村温泉郷全体の低迷などが原因で客室稼働率が低下し、近年の売上高は2億円台半ばで推移していた。一方、改装工事や施設修繕などによる借入金が負担となり、債務超過に陥るなか、新型コロナの影響を受けて20年12月期には6668万円の赤字決算となり、先行きの見通しが立たないことから今回の措置となった。なお、営業は継続している。
今年3月の旅行業倒産は1件発生し、2カ月ぶりに前年同月(3件)を下回った。負債総額は1億9000万円で、こちらも2カ月ぶりに前年同月を下回った。
同社は、「雇用調整助成金や、中小企業を対象とした休業支援金などの各種支援策により企業倒産抑制され、低水準となった」と分析している。
一方で、貸切バス運営業者の倒産は1~3月にかけて5件発生した。
いずれも新型コロナによる受注低迷が一因としたうえで、同社は、「4月からは各地域の県民割支援の適用範囲が地域ブロック内での旅行に拡大され、今夏には政府によるイベントワクワク割などが実施される予定。宿泊を伴う人出に期待が高まるが、感染者数は高止まりが続く」と状況を注視している。「宿泊・旅行会社各社の経営も、先行き不透明な状況が続く」と危機感を示した。