ANAグループが「こどもまんなか応援サポーター」宣言

2023年9月19日(火) 配信

片野坂社長と(右から3人目)と小倉將信前内閣府特命担当大臣(中央)

 ANAホールディングス(片野坂真哉社長)は9月19日(火)の「育休を考える日」に、「こどもまんなか応援サポーター」となることを宣言した。明るい未来ある社会づくりや、子連れ客も安心して利用できるサービスの提供、社員が働きやすい環境の整備を進めていく。

 同社は将来を担う子供たちが健やかで、幸せに成長できる社会の実現に向け、こども家庭庁が掲げる「こどもまんなか宣言」の趣旨に賛同。9月7日には、小倉將信前内閣府特命担当大臣と片野坂社長が「男性の育児参画・少子化・ジェンダーギャップ」に関する対談を行った。このようすは社員にもオンラインで配信し、ANAグループ全体で育児や育休について考える機会を創出した。

 同グループでは、空港や機内のサービスとしてベビーカー貸出や事前改札サービス、搭乗支援教室、見学ツアーなど小さい子連れ客への対応を行っている。また、社員の働く環境づくりとして、多様なライフプランや働き方を支援する制度の拡充や企業内保育園、家族が楽しめる「ANAグループ感謝祭」の開催などを実施している。 

 今後は「こどもまんなか応援サポーター」として、社会、顧客、社員のためのさらなる取り組みの充実と機運醸成に努めていくという。なお、同サポーターとは子供たちのために何がもっともよいことかを常に考え、「こどもまんなか宣言」に賛同し、自らもアクションに取り組んでいる個人、企業・団体、自治体のこと。

「もてなし上手」~ホスピタリティによる創客~(152)お客様を知りたい想いから接客は生まれる 「こなす」よりも「知る」

2023年9月18日(月) 配信

 

 初めて訪れた東京のレストランで、テーブル担当スタッフに「あちらのビル群が丸の内ですか」と尋ねました。「そうです。あの高いビルが○○です。その横にある青い光のビルが○○です。高いビルの間にあるのは、東京駅です」。そのときの会話は、大きな感動の時間になりました。

 目を凝らすと、間違いなく東京駅が見えました。皇居の暗い樹々の向こうに、オレンジ色の光に照らされた東京駅を見つけたときの感動は、忘れることができません。私がそれほど感動した理由は、東京駅を設計した辰野金吾氏が書いた「東京、はじまる」という小説を、読み終えたばかりだったこともあります。

 また、東京駅に隣接する東京ステーションホテルは、私の大好きなホテルのひとつです。最近は宿泊する機会も減っていますが、打ち合わせで利用するときは、スタッフがいつも素敵な笑顔で迎えて、気に掛けてくれます。本当に感謝しかありません。東京駅を眺めながら、ホテルスタッフの笑顔が目に浮かび、思わず感動の声を上げてしまいました。

 そのレストランでは、私が到着してからのスタッフの落ち着いた接客が、カッコよくスマートで、店の威厳と格式を感じさせました。そうした雰囲気は、食事機会の内容やご一緒する人たちに、好まれて使われるレストランだろうと想像できます。フレンドリーな雰囲気が好きな私には、正直、ここは合わない店だと感じていたのですが、スタッフとの会話で、一瞬にして心を掴まれたのです。

 これまで、「これが私たちの流儀」とばかりにその店のやり方を押し付けるような接客も経験してきました。今回は初めての利用なので、店側は私のことを知りません。初めは迎え入れから飲み物のオーダーなど、雰囲気から探るように接客が始められました。

 気軽に質問をするような雰囲気を持っていない店だと思っていたのです。しかし、何気なく顔を上げて店内全体に目をやった時、担当スタッフと目が合ったのです。

 そして「今すぐに伺います」といったように笑顔で手を上げて、テーブルにやって来てくれたのです。そして「いかがなさいましたか」と、初めの感じとは少し違った、フレンドリーな笑顔で声を掛けてくれました。私を見ていてくれたといううれしさを感じて、これが冒頭の会話へつながっていったのです。

 接客する人にとっては、初めてのお客様とは怖いものです。苦情がこないように教えられた接客を、上手くこなすことに思考が行きがちです。しかし、そのレストランスタッフはそれ以上に私を知ろうと考えて、私に注意を向けてくれたのです。お客様を知りたいと興味を持つことが接客の第一歩なのです。

 
 

コラムニスト紹介

西川丈次氏

西川丈次(にしかわ・じょうじ)=8年間の旅行会社での勤務後、船井総合研究所に入社。観光ビジネスチームのリーダー・チーフ観光コンサルタントとして活躍。ホスピタリティをテーマとした講演、執筆、ブログ、メルマガは好評で多くのファンを持つ。20年間の観光コンサルタント業で養われた専門性と異業種の成功事例を融合させ、観光業界の新しい在り方とネットワークづくりを追求し、株式会社観光ビジネスコンサルタンツを起業。同社、代表取締役社長。

 

 

 

「提言!これからの日本観光」 “ヘッドマーク”

2023年9月17(日) 配信 

 JRの前身旧国鉄(日本国有鉄道)では1978(昭和53)年から、全特急急行列車の前頭部に場合によっては列車後尾にその列車の種別と沿線の景観などを象徴するイラスト入りの“ヘッドマーク”を掲げることとなった。このマークは好評で当時、缶ビールやネクタイ、風呂敷などのデザインにも導入され、ちょっとしたヘッドマークブームを巻き起こしたことを当時の国鉄の担当者として懐かしく思い出す。

 一方、千葉県に「いすみ鉄道」という第3セクター経営の鉄道(旧国鉄木原線)がある。この会社は社長を公募し、そのアイデアを活かしたユニークな誘客をすることで知られている。

 最近就任した古竹孝一氏は、四国のタクシー会社の社長を務めた知見を活かし、かつて四国の旧国鉄(現JR四国)の急行列車前頭部の“ヘッドマーク”が好評だったことを思い出し、JR四国との相互送客などの連携を始めたのを機に、四国から800㌔離れた房総のいすみ鉄道の大原~上総中野間で路線に急行「四国」号と銘打った観光列車の運行を始めた。四国からの観光客誘致も目指して話題となっている。

 この列車の前頭部に、かつてJR四国各線に使用した丸形の“ヘッドマーク”を掲げて運行したので、多くの“撮り鉄”の方々が訪れた由である。鉄道会社が提携して、それぞれの沿線の方々を相互に送客することは珍しいことではなく、観光路線ではその例も多い。

 しかし、それを象徴する方法としてそれぞれのヘッドマークを借用・交換し列車名もそれに因んだものとしたのは初めての試みで、多くの“撮り鉄”の方々の関心の的となったり、実際このマークは観光客の誘致にも効果があったことが報告されている。
 鉄道車両は車両に詳しい“鉄道マニア”の方々はともかく、一般のお客様にとっては移動の手段に過ぎず、車両の型式や塗色などにも関心を持つ方は少ない。

 しかし“ヘッドマーク”を付けたため、写真撮影の対象となり、旅の思い出が残せること、また列車の性格が明示できるため、案内面での効果も大きく、最近の観光列車はほとんど何らかの“ヘッドマーク”を取り付けている。また、鉄道会社が交換して施策を展開したり、協力して誘客したりする場合の象徴ともなるなどマークの果たす役割も大きい。

 近年整備された特急列車などの“ヘッドマーク”は、案内効果のほかに優れたデザインを得た場合、大きい宣伝効果もあることが分かり、急速にほとんどの優等列車に普及した。

 ちなみに列車のイラスト入りの“ヘッドマーク”の始まりは昭和初期の旧国鉄東京~下関間の特急“富士”で当初はイラスト入りのテールマークのみであったが、戦後の49(昭和24)年ごろの復活後、間もなく機関車にも“ヘッドマーク”を取り付けたのが始まりで、これから数えても既に70年の歴史を持つに至っている。

須田 寛

 

日本商工会議所 観光専門委員会 委員

 
須田 寬 氏
 
 
 
 

「観光革命」地球規模の構造的変化(262) ピース・インダストリーへの期待

2023年9月16日(土) 配信

 日本ではあまり知られていないが、9月21日は国際連合で定められた記念日「国際平和デー(通称ピースデー)」である。1981年にコスタリカの発案によって国連総会で満場一致で採択された。国際平和デーの目的は、すべての国々と人々の共通の理想である国際平和を推進していくことであった。2002年に国連総会は国際平和デーの取り組みをさらに前進させ、グローバルな停戦と非暴力の日と定め、この日1日は敵対行為を停止するように全世界に呼び掛けている。

 いずれにしても、ピースデーは世界中の国々や人々が平和について考え、行動する日である。「世界中から争いがゼロになる日をつくろう」とさまざまな取り組みが行われている。日本でもピースデーには各地でさまざまなイベントが行われる。

 例えば、国際平和映像祭は平和を願う世界中の若者が、映像によって互いを知り、国を超えたつながりを持ってほしい、という願いに基づいて、11年から毎年ピースデーに開催されている。この映像祭は5分以内の映像製作を通して、世界中の若者たちが平和について考え、平和実現のために行動していくことが期待されている。

 国連はかつて1967年を「国際観光年」に指定し、「観光は平和へのパスポート」というスローガンを定めた。改めて指摘するまでもなく、観光産業は「平和産業(ピース・インダストリー)」と呼ばれており、人々の円滑な相互交流や相互理解を促すことによって、さまざまなかたちで平和の実現に貢献している。

 私は業界の動きを詳細に把握できていないが、観光業界は9月21日のピースデーに「国際平和観光祭」などのイベントを行っているのであろうか。もしくは国際平和映像祭に対する支援などを行うのであろうか。

 観光産業が本当に「ピース・インダストリー」としての明確な自覚を有しているのであれば、ピースデーのような絶好の機会に積極的に社会的アピールを行うべきであろう。ウクライナでは戦争状態が継続されており、日本を取り巻く東アジアの情勢も軍事的衝突の危険性を秘めている。世界の分断化が進んでいるからこそ、ピース・インダストリーとしての役割を積極的にアピールすることが必要不可欠であろう。

石森秀三氏

北海道博物館長 石森 秀三 氏

1945年生まれ。北海道大学観光学高等研究センター特別招聘教授、北海道博物館長、北洋銀行地域産業支援部顧問。観光文明学、文化人類学専攻。政府の観光立国懇談会委員、アイヌ政策推進会議委員などを歴任。編著書に『観光の二〇世紀』『エコツーリズムを学ぶ人のために』『観光創造学へのチャレンジ』など。

 

 

24年の初日の出をモンゴルの大平原で JATAツアーグランプリ審査員特別賞(阪急交通社)

2023年9月15日(金) 配信

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 阪急交通社(酒井淳社長)はこのほど、JATAツアーグランプリ2023(日本旅行業協会主催)で審査員特別賞を受賞した「NEW YEAR! モンゴル4・5・6日間」を売り出した。モンゴルの大平原を貸切列車で走行し、24年の初日の出を迎える12月29(金)、31日(日)発の限定企画となる。

 取り組み例の少ない真冬のモンゴルツアーとして評価され、受賞につながった。

 同商品では、真冬は朝晩マイナス30度を超えるモンゴルで、日本にはない極寒を体験できる。元旦にウランバートルから「白銀の大平原」を走る貸切列車でハンガイまで移動し、キャンプファイヤーを焚きながら地平線から昇る初日の出を観賞するプラン。

 前日の大晦日には、年越しのカウントダウンや花火のイベントが開かれる。また、年明けの2日(火)には星空観賞を予定するなど、さまざまなコンテンツを用意した。

 出発日は12月29日(金)が5・6日間。12月31日(日)が4日間。

 料金は4日間が16万9900円。5日間が19万9900円。6日間が21万9900円。すべて2人1室利用時、大人1人当たりの基本ホテルプラン利用の料金。なお、ホテルグレードアッププランも用意している。

HIS、香港ディズニー開業のアナ雪エリアへ先行入園 1日80人の特別ツアー催行へ

2023年9月15日(金) 配信

ワールド・オブ・フローズンのイメージ

 エイチ・アイ・エス(HIS、矢田素史社長)は11 月17 (金)~19 日(日)、香港ディズニーランドに11月20日(月)に世界で初めてオープンする映画「アナと雪の女王」のテーマエリア「ワールド・オブ・フローズン」へ、先行入園できる特別ツアーを催行する。最大募集人数は、各日80人。

 同テーマランドは、映画の登場キャラクターオラフとトナカイのスヴェンと一緒に、作中に描かれたアレンデールの森を駆け巡る香港ディズニーランド限定アトラクション「ワンダリング・オーケンズ・スライディング・スレイ」をはじめとする3つのアトラクションを設置。北欧風の建築様式のレストランとショップも設ける。

 先行入園は1人につき、いずれかの日程の1日のみ参加できる。オフィシャル・ホテルに宿泊するプランや、1 デー・2デー・チケット付きなどのプランも用意している。

 同ツアーでは、「ワールド・オブ・フローズン」先行入園特別体験用リストバンドや「アナと雪の女王」のショッピングバッグ、非売品のポストカード・セットをプレゼントする。

ケアンズ観光局が日本人客誘致に意欲 SNSキャンペーンも

2023年9月15日(金) 配信

オルセン氏(右)、坂本氏(左)のほか、ケアンズ観光大使の”リーマントラベラー” 東松寛文氏(中央)らも出席した

 ケアンズ観光局(マーク・オルセンCEO、オーストラリアクイーンズランド州ケアンズ)はこのほど、最新の観光動向を発表した。2023年6月の日本人観光客は70%まで回復しており、2025年に25万人の日本人観光客数を目指す。

 同局は9月14日(木)にオーストラリア大使館で会見を開き、オルセンCEOが「日本は非常に重要な市場の1つ」と強調した。同局によると、2019年に日本からオーストラリアを訪れたのは45万7852人で、そのうちの30%の10万5237人がケアンズへの観光客。ケアンズへの海外旅行者数では日本よりも中国や欧州が上回るが、世界中でケアンズに関するインターネット検索をした人のエリアで最も多いのが「大阪」で、東京なども含め日本がトップ10のうち1、3、6位を占めているという。

 ケアンズへの直行便は6月時点で、週19~21便となっており、日本の3つの空港から直行便が運航するのはオーストラリアではケアンズのみだ。オルセンCEOはケアンズの魅力を「常夏で、小さい子供から大人まで楽しめる。コンパクトな街でありながら、世界遺産が2つもある」とアピールした。

 観光客を誘客する一方、ケアンズは自然遺産を抱える地域として持続可能な観光の取り組みも進んでいる。坂本統セールス&マーケティングマネージャー・アジアは「グレートバリアリーフツアーには環境保護税が含まれており、調査や研究、保全に使われる。来ていただければ保護につながる」とした。

 街中はマイボトルへの給水所や多くのごみ箱の設置など、ハード面での整備が進んでいるほか、1日の入場規制がある無人島や原住民居住地域への立ち入り禁止、“責任ある贅沢”を提唱するプラスティックゼロのホテルの取り組みなどを紹介。「旅行中にできることはたくさんある」と呼び掛けた。

SNSキャンペーンを開始

 同局は9月15日(金)から、「ケアンズ サステナ旅 プレゼントキャンペーン」を開始した。30日(土)までの2週間、インスタグラムで展開する。同期間中はケアンズが未来のために取り組んできた持続可能な活動や取り組みなども発信していく。

 期間中、ケアンズ観光局の公式インスタグラムをフォローし、キャンペーン投稿投稿の「なぜケアンズに行きたい?」にコメントすると参加できる。抽選で3組にケアンズ往復航空券やホテル、ディナークルーズ、グレートバリアリーフツアーなどが当たる。

 A賞は往復航空券やツアーなど7商品、B賞はホテルやディナークルーズなど6商品、C賞はホテルやグレートバリアリーフツアーなど5つの商品が贈られる。

台湾観光庁に昇格 初代長官に周永暉氏が就任

2023年9月15日(金) 配信

周永暉長官(写真は2018年9月19日に撮影したもの)

 台湾の交通部(日本の国土交通省に相当)は9月15日(金)に組織改編を行い、交通部観光局から交通部観光署に昇格した。

 この組織昇格により、日本市場に向けて表記してきた名称も、台湾観光局から台湾観光庁に変更する。台湾観光庁の初代長官には、2016~20年まで台湾観光局の局長を務めていた周永暉(シュウ・エイキ)氏が同日付で就任した。

 台湾交通部の組織改編は、同部管轄の観光局と中央気象局の2つの局を「署」として昇格させたもので、台湾観光庁は「より多くのより良い業務を創出していくことに努める」とコメントを表明している。

日本旅館協会、コロナから完全脱却へ 秋保で初の金融懇談会開く

2023年9月15日(金) 配信

行動宣言書を国に手渡した

 日本旅館協会(大西雅之会長)は9月7日(木)、伝承千年の宿 佐勘(宮城県・秋保温泉)で宿泊業界における観光と金融に関する全国懇談会を初めて開催した。会員宿の約4割が債務超過となるなか、同協会の会員や金融機関、行政の関係者など計300人が意見を交わした。基調講演には菅義偉前首相が登壇。コロナ禍からの完全脱却をはかり、夢のある宿泊業界の実現に向けて、行動宣言を採択した。

 大西会長は「コロナ禍で宿泊業界は存亡の危機に追い込まれた。経営努力では対応しきれないコロナ禍からの立ち直りに向けた息の長い支援が欠かせない」と語った。

大西雅之会長

 そのうえで、「コロナ禍から立ち直り、夢のある宿泊業界の実現に向けた具体策を打ち出すために、活発に議論してほしい」と呼び掛けた。

 また、「震災の影響が残るなか、処理水の問題で風評被害の解決をはかるため、魚介類の消費拡大に取り組む」と力を込めた。

 来賓の西村明宏環境大臣(当時)は、環境省で国立公園へ誘客する国立公園満喫プロジェクトを実施していることを説明。これまで国立公園は人の手を触れさせない方針だったが、自然保護の理念だけでは、国民の理解は得にくいという。

 これを踏まえ、「素晴らしい自然を知ってもらうことで、保護への理解を促したい。国立公園訪問時に宿泊施設は欠かせない。国としてできる限りの支援をする」と話した。

 地元から村井嘉浩宮城県知事と、郡和子仙台市長も出席し、祝辞を述べた。

 基調講演では、菅前首相が「これからのインバウンド観光と期待」をテーマに登壇。菅氏は「地方創生を訴える我が国で、地方を支えているのは観光業界の皆さんだ。苦難の中にあることは承知している。政府は中小企業応援パッケージなどで広く要望を受け止めているところ」と述べた。

菅義偉前首相

 訪日旅行については、「宿泊客数が10の県で6割以上を占めており、それ以外の地域で拡大の余地が残っている。インバウンドの受入環境を地方の隅々まで広げる必要がある」と話した。受入強化で、国内旅行の閑散期にも需要を獲得できるため、「事業や雇用の安定につながる。全国の宿泊施設でインバウンドの受入環境が整備されることを期待する」と語った。

 全国でタクシーなどの交通手段が不足し、日常生活に影響をもたらしていることにも触れ、「解決に向け、ライドシェアを含めた交通手段のあり方の結論を先送りするべきでない」と強調した。

 「観光立国推進基本計画と今後の観光政策」をテーマに掲げた観光庁の髙橋一郎長官は、3月に閣議決定した観光立国推進基本計画で「持続可能な観光」、「消費額拡大」、「地方誘客促進」の3点をキーワードに掲げていることを説明。「(訪日観光客数などによる)オーバーツーリズム対策やマナー啓発、交通手段の機動的な確保に努め、持続可能なあり方で観光を再生する」と語った。

髙橋一郎長官

 これを踏まえた24年度の概算要求では、「宿泊業界が強く要望していた宿泊施設の改修や景観改善に資する廃屋の撤去の予算を計上した。面的に徹底的に改善してほしい」と話した。

 処理水の放出による風評被害対策のための予算を要求したことについて、髙橋長官は「宿泊施設での水産物の提供イベントも対象になる。消費拡大を全面的にサポートする」と強調した。

借換で融資期間延長 負担減で業績も改善 中小企業庁

 「地域再生と中小企業政策」をテーマに掲げた中小企業庁の須藤治長官は、日本公庫のコロナ融資の返済開始時期のピークは21年と22年の6月、民間のコロナ関連の融資の返済開始時期は23年7月~24年4月に集中していることを説明した。

 このうち、宿泊業については「6月末時点で約5割が返済中となっている。厳しい財務状況を受け、24年3月までコロナ借換保証制度を取り扱っている」と紹介した。

 同制度は最長10年の融資に借り換えられ、そのうち最長5年を元本の返済が猶予される据置期間に設定できるため、融資期間や据置期間を延ばす効果を発揮する。

 業績改善事例として、全国旅行支援の効果によって、コロナ禍前の90%ほどまで業績が回復した一方、光熱費のなどの高騰で経費負担が増で、運転資金の調達と資金繰りの安定のため同制度を利用した旅館を紹介。同旅館は返済負担の減少で業績の回復につながったという。

 須藤長官は「コロナ借換保証制度の活用で業績改善事例も挙がっている。皆様の状況を注視しながら、資金需要に応えていきたい」と話した。

金融機関と未来へ 「深い融資の話を」 金融庁

 金融庁の伊藤豊監督局長は「アフターコロナにおける金融行政」について語った。「宿泊業界は設備改修や人手の確保に向けての投資が求められるが、財務は厳しい状況だ」と指摘。「金融機関は融資によって共に未来へ進んでいくことが非常に重要になるので、宿泊業の皆様は出席している金融機関と深い話をしてほしい」と呼び掛けた。

 パネルディスカッションは第1分科会で「今後の持続可能な観光振興のあり方」と第2分科会で「コロナ禍を乗り越えるための地域の金融機関との連携」、第3分科会で「東北の復興と観光振興に向けて」をテーマにそれぞれ実施した。

第1分科会
第3分科会

 このうち、「コロナ禍を乗り越えるための地域の金融機関との連携」では、日本旅館協会新型コロナウイルス対策本部副本部長の永山久徳氏が冒頭、登壇した各金融機関の観光振興に対する取り組みを聞いた。

第2分科会

 商工組合中央金庫常務執行役員の中塩浩幸氏は「22年10月、専門人材が在籍するコンサルティング室を設置し、集客力の向上に努めている。変化に強い社会の実現へ、精一杯取り組んでいく」と語った。

 日本政策金融公庫常務取締役の佐々木祐介氏は「20年8月に新型コロナ対策資本性劣後ローンを始めた。これまで事業者8335先、1兆296億円融資した」と話した。

 仙台を中心とした地域の事業を支援する七十七銀行頭取の小林英文氏は「コロナ関連融資は162件、67億円となる。個人客へのシフトをはかるための集客力強化へ事業再構築補助金の活用支援を講じた」と説明。「宮城県の人口が減るなか、県外の需要を取り込める観光業への支援に力を入れていく」とした。

 これを受け、中小企業庁事業部金融課長の神崎忠彦氏は「旅館業は幅広く地域経済を支えている。各金融機関と連携して支援したい」と語った。

 財務省大臣官房政策金融課長の芹生太朗氏は「(金融機関は)宿泊業に金利に納得してもらうため、経営改善ノウハウを指導するなど付加価値の提供することが求められる」とした。

 金融庁監督局長の伊藤豊氏は「コロナ禍からの回復への希望が見えるなか、今は再起に向けた知恵を絞るとき。旅館業、金融機関と連携していきたい」と述べた。

 日本旅館協会の永山氏は「官民一体となった金融課題の解決へ連携し、支援の充実に努めていくことを確認できた」とまとめた。

 会の最後には、地域における宿泊業界の役割は大きいことから、官民一体となった金融問題の解決でコロナ禍からの完全脱却をはかり、「再び夢のある業界」にすることを目指して、それぞれの立場で最大限努力をする行動宣言を採択した。

神戸空港と大阪駅結ぶ 初の直通リムジンバス運行開始

2023年9月15日(金) 配信

運行するリムジンバス

 大阪バス(西村信義社長、大阪府東大阪市)は9月15日(金)、神戸空港(兵庫県神戸市)と大阪駅(大阪府大阪市)を結ぶ直行リムジンバスの運行を始めた。

 同空港発着のバスは兵庫県内や徳島を結ぶ便があるが、同駅からの路線開設は初めて。

 バスは1日4往復。所要時間は片道70~80分。同駅の乗降場所は桜橋口大阪バス停留所。運賃は片道大人1000円、子供500円。バス車内での先払いで、現金のほか交通系ICカードが利用できる。

 ダイヤは同駅発が午前8時50分、10時30分、午後2時30分、3時50分。空港発が午前10時50分、午後1時10分、4時30分、5時50分。