〈観光最前線〉昭和40年男

2022年3月21日(月) 配信

昭和40年男VOL.43

 雑誌に影響されたのだろうか、最近とにかく懐かしいものに目がいってしまう。

 人造人間キカイダー、ロボット刑事、プロレススーパースター列伝、マカロニほうれん荘、ブラック・ジャック、エコエコアザラク、魔太郎がくる、包丁人味平、トイレット博士、ドーベルマン刑事、1・2の三四郎、リングにかけろ、熱中時代刑事編、池中玄太80㌔、俺たちは天使だ、さらば国分寺書店のオババ、川口浩探検シリーズ、加トちゃんケンちゃんごきげんテレビ、天知茂の「江戸川乱歩の美女シリーズ」、花王名人劇場、うしろの百太郎、空手バカ一代、霊感ヤマカン第六感、蘇える金狼、野獣死すべし、あのねのね、ツービート、横浜銀蝿、アグネス・ラム。

 8割以上理解できた人には「昭和40年男」の称号を贈呈したい。

【古沢 克昌】

【対談】金沢大学・山崎光悦学長 × 加賀屋・小田禎彦相談役 観光ビジネスを担う人材育成へ

2022年3月20日(日) 配信

金沢大学 山崎光悦学長(左)と加賀屋 小田禎彦相談役

 金沢大学(山崎光悦学長)は2021年3月、立教大学と観光産業分野の中核人材育成に向けて連携・協力協定を結んだ。仲介役を果たしたのが加賀屋の小田禎彦相談役。昨年9月には小田氏は金沢大学から名誉博士号を授与された。金沢大学は今年4月、融合学域に「観光デザイン学類」を創設し、新たな観光価値をデザインできる人材育成に取り組む。長年人材育成に取り組んできた小田相談役と、山崎学長が観光ビジネスを担う人材育成や地域の活性化について語り合った。

    【司会進行=本紙社長・石井 貞德、構成=増田 剛】

 ――小田相談役が仲介役となって、金沢大学と立教大学が「観光」というキーワードでコラボレーションして、地域活性化していく取り組みが始まりました。

 小田:大したお役にも立てなかったのですが、私は立教大学のOBとして、地元の金沢大学とのご縁で、両大学が「観光」によって結ばれたことは、大変ありがたく、うれしいことです。
 我われ観光業界はこれまでどちらかと言えば物見遊山的な、製造業などと比較しても正当に価値が認められない時代もありました。そういう意味でも、観光業に携わる人たちが、地域の活性化や社会的、経済的にも大きな貢献を果たしている役割を自覚して、「地域全体、さまざまな産業に波及効果を与えうる産業である」と胸を張れるように、全力で奉仕していきたいと考えています。
 金沢大学から名誉博士という大変光栄な称号をいただき、これから具体的に、どのように進めていけば社会のお役に立てるのか、コロナ禍の難しく激変の時代ですが、ひたすら考えています。

 ――名誉博士号を小田相談役に授与した経緯につきまして。

 山崎:小田相談役の講義をこれまで2度ほど拝聴する機会があり、大変感銘を受けました。
 私自身は工学部出身で機械工学が専門です。「地域の産業を担うのはものづくり」との矜持を抱きつつ、時代が大きく変わるなかで、ものづくりに従事する人の比率はそれほど高くありません。北陸、あるいは石川県、金沢市を見ても、サービス産業の従事者が7割ほどを占め、圧倒的に多いのが現状です。
 そのようななか、金沢大学の改革の中核として、今年4月に融合学域「観光デザイン学類(学科に相当)」を創設します。新たな観光価値をデザインし、観光ビジネスを牽引する人材を育成・輩出することが目的です。
 文部科学省が進める「トビタテ! 留学JAPAN日本代表プログラム」のなかに、地域人材育成プログラムという柱があります。石川県内の大学や高等教育機関が連携して、学生たちに海外留学をさせるという取り組みを5、6年前から実施しており、加賀屋さんにも支援をいただいています。
 そのご縁もあり、地域創造学類の中の観光学・文化継承コースの学生(2年生)15人中5人が本日、加賀屋さんで研修を受けています。地域への定着度なども重視しながら、人材育成のプログラムをさらに充実し、人数の拡大をしていきたいと考えています。
 小田相談役のお話にもありましたが、昨年3月に立教大学と、観光産業分野をはじめとする中核人材育成のため連携・協力協定を締結しました。この仲人役を小田相談役に担っていただき、感謝しています。
 観光に関わるビジネスが今後、日本の成長産業の柱にならなければならないと思っています。その意味でも小田相談役には先導役として、ホスピタリティの真髄について教えを請いたいと思い、昨年9月に本学において、観光業界では初めて名誉博士の称号をお受けいただきました。

 小田:振り返ってみますと、立教大学在学中はホテル研究会に入って、さまざまな経験をさせていただきました。自宅が旅館で両親の苦労も見てきていましたので、「大学を卒業したら旅館の跡継ぎをするのだ」という思いを強く持って、60年間旅館業にどっぷりと浸かってきました。
 旅館業と併せて、石川県観光連盟の理事を21年、理事長を8年間務めました。なかでも2015年3月14日に開業した北陸新幹線が「北陸活性化の千載一遇のチャンス」と、知事からも命を託されました。
 観光客を受け入れる方々のサービス向上や、人材育成のセミナーだけでなく、県民の皆様にも受け入れる意識の向上へのご理解を深めていただきました。
 地域一帯でウェルカム運動を展開した結果、アンケート調査で86・3%が「北陸を訪れてよかった」と回答されまして、知事からも感謝されたことで自信や誇りを感じることができました。
 観光事業が北陸にもたらした力が相当に大きかったことを県民の皆様にもご理解をいただきました。
 金沢大学も「観光によってもっと北陸を活性化していける」とのお考えのなかで、今回のような評価をいただけたのだと捉えています。高齢ではありますが、何とか一肌脱いで地域が元気になるように、お引き受けし決意をしているところであります。

対談は2月23日、石川県・和倉温泉「加賀屋別邸 松乃碧」で行われた

 ――立教大学との連携について。

 山崎:観光デザイン学類を創設する以前に、日本における観光分野の人材育成や歴史などを調べたところ、観光教育の草分け的な存在であり、知の蓄積の大きな立教大学には学ぶべきものがたくさんあると感じております。

 小田:国立大学の金沢大学に、我われの観光産業の重要性を認めていただいたことはとてもうれしく思いました。

 山崎:地方にある国立大学は、医学部、工学部、法学部、経済学部などが同じようにあって「金太郎飴」と揶揄されることもありました。金沢大学も以前から「特色のある大学にしていこう」という議論が行われていました。その一つが「観光デザイン学類」の創設です。そのほかにも、能登町には魚の養殖に関することを学び研究できるコースを設置しています。
 近年、どの大学もさまざまな特色を出しているなかで、本学はホスピタリティや観光デザインの分野でも第一歩を踏み出したところです。
 これまでは、人文系と理工系、生命系の3学域しかありませんでしたが、今年度から文理融合した「融合学域(学部に相当)」をスタートさせました。
 文系と理系の学生を半分ずつ集めて、アントレプレナー(起業家)教育を軸とした新しい教育を始めました。観光デザインにも通じるところが大いにあります。
 これをベースに2つ目として、人文系の知識やスキルを3分の2、残り3分の1は理工系の知識やスキルを教え込んだ学生を育てていこうとしているのが観光デザイン学類です。
 これからの観光はホスピタリティの真の理解と、数理データサイエンスが必要で、人の動きや経済活動などデータに基づいて分析し、ビジネスを展開することがとても大事になってきます。金融や不動産も絡めた幅広い視点から地域活性化に取り組む人材を育て、新しい価値を生み出していくことがミッションだと考えます。

 ――人材育成は小田相談役もライフワークとして、長い間取り組まれてこられました。

 小田:立教大学の野田和夫さんとともに、米国の大型レジャー施設の研修に誘われたことがありました。
 そのときに、「もっと地元の若者に世界を見せていく必要がある」と感じて、青年会議所の若者を20人ずつ20班、加賀屋の社員20人ずつ20班、社員には1人10万円ずつ負担していただき、米国でさまざまな研修を行ってきました。
 ピーター・ドラッガー教授が登壇する大学院や、カリフォルニア大学バークレー校でルイス・バックリン教授の授業を受けさせたりもしました。
 また、当時JTB社長だった田川博己さんにもご支援をいただき、旅館・ホテル経営者の若い後継者を募って、20人ずつ10班ほどの研修も行いました。振り返ってみると30年間で1千人、5億円を投資したことになります。
 私も若かったので「一生懸命勉強しろ」と荒っぽいことも言いました。リッツカールトンに宿泊して世界一流のサービスを実際に体験したり、七尾市と姉妹提携しているカリフォルニア州のモントレーや、カーメル・バイ・ザ・シーなどの町で交流を実施したりしてきました。
 また、ジュニアウイングス・イン・アメリカといったかたちで、中学生をモントレーの家族に預かってもらう取り組みも地元の青年会議所のプログラムとして20年間実施してきました。子供たちは2週間程度の滞在が終わり、帰るときにモントレーの家族が親切で「帰りたくない」と泣き出して、「英語を勉強してもう一度モントレーに行くのだ」と世界に目を向ける大きなきっかけづくりにもなりました。
 地方の若者に海外での体験をしてもらうことを続けてきましたが、金沢大学の学生にも海外から金沢や、能登を見るという視点も養ってほしいと考えています。
 学びの大切さを感じるなかで、インターンシップというかたちで金沢大学の学生にお返しをしていくことが、地域活性化の人づくりの面で寄与できるのではないかと考えています。

 山崎:金沢大学の1丁目1番地は「地方創生」です。他大学にはない観光デザインや、観光ビジネス、そこに加賀屋さんのお力も借りて、ホスピタリティや、おもてなしを学生に学んでもらいたい。まずは地域に定着し、一部は世界に羽ばたくようなグローバルな人材を育成したいですね。

 ――旅館業に若く優秀な人材が多く集まらない現状について。

 小田:大きな要因としては、“たすき掛け”や“中抜け”など勤務時間の不規則さがあると思います。働き方改革のなかで、いかに時代に即したかたちにしていくかが問われています。
 旅館業の勤務時間を一番難しくしているのは、夕食と朝食を提供するなかで、時間が離れすぎているという点です。2度のピークに人が必要なため、働き方改革のなかでルーティンワークを真剣に見直しながら、生産性を上げ、もっと良い待遇にしていくことが最優先課題となっています。
 例えば、朝食の3時間勤務のあと、グループや提携する製造業で午後5時間勤務するなどの試みを考えています。
 旅館・ホテルで長年従事する人材は、消耗品ではなく、「リタイア後の生涯を通じての人づくり」についても考えていかなければならないと痛感しています。

 山崎:私のモットーは「生涯現役」です。大学も65歳になると教員は定年になりますが、定年後もノウハウを持っていらっしゃるので、生涯を通じて学び直す「リカレントスクール」などさまざまな機会で講師としてお話をいただいたり、インターンシップのお世話をしていただいたりしています。
 ボランティアを含め、生きがいや社会貢献のための活躍の場を作っていくことが大事だと思っています。生涯現役とはそういうことだと思います。

 ――ありがとうございました。

「ZOOM JAPON(ズーム・ジャポン)(3月号)」

2022年3月19日(土) 配信

http://zoomjapon.info

特集&主な内容

 本誌は毎年パリで開催される国際旅行博にも併せて、3月号では日本の都道府県の一つを特集しています。国際旅行博はコロナ禍のため、2019年以来の開催になりました。今年は、本土復帰50周年を迎えた沖縄特集です。玉城デニー沖縄県知事の独占インタビューをはじめ、日本で唯一の女性編集局長がいる沖縄タイムスの紹介、また琉球新報の松本剛編集局長のインタビューもあります。カナダ在住で沖縄についての著作もあるジャーナリスト、乗松聡子さんには、沖縄が抱えている問題についてお話を伺いました。文化面では、現在は観光に利用されている伝統的な木造舟サバニや、戦後から伝統的泡盛を作っている石川酒造所を取材しました。旅行ページでは、本誌ライターが国道58号線を軸に沖縄本島を縦断した旅を語っています。

〈フランスの様子〉フランスの春の嵐

3月5日、パリでのウクライナ支援のデモを伝える民放TF1の夜のニュース。「デモ:青と黄に染まるフランス」

 フランスのメディアではウクライナ関連の話題が完全にコロナウイルスの話題から置き換わった。◆幸いにも、フランスではワクチンパスの活用と順調に進む追加ワクチン接種で、オミクロン株の波も収束に向かっており、3月14日からは公共交通機関など以外でのマスク着用義務もワクチンパスの運用も解除され、日常がほぼ再開する。◆感染症は完全に制御できた訳ではないが、ワクチン接種とワクチンパスというツールを既に使いこなすフランスでは、状況次第ではこのツールを再稼働すればよいだけの状態のようだ。◆そして、フランスでは5年に一度の大統領選挙が4月10日に第1次投票を迎え、ぎりぎりで再出馬を表明した現大統領のマクロン氏を含め12人の候補者がそろった。◆現大統領は、緊迫する国際情勢を理由に、第2次投票の決選投票までは他の候補者とは討論などはしないとし、異例の大統領選挙戦となっている。ただ、世論調査でも現大統領の再選もほぼ確実とされている。◆この春のフランスは不安定に見えるが、冬のバカンスシーズンを終えて観光業界はわりと好調で、3月9日からは夏のバカンスの鉄道予約もいつも通りに始まった。

ズーム・ジャポン日本窓口 
樫尾 岳-氏

フランスの日本専門情報誌「ZOOM JAPON」への問い合わせ=電話:03(3834)2718〈旬刊旅行新聞 編集部〉

富山県内最大級の天然温泉施設を運営「ゆらら」 負債は8億4662万円

2022年3月18日(金) 配信

 富山県内最大級の天然温泉施設を運営する「ゆらら」(相澤行広社長、富山県砺波市)は3月4日(金)、富山地裁から破産手続き開始決定を受けた。帝国データバンクによると、負債は約8億4662万円。

 同社は、富山県の有力建設業者「相澤建設」の事業多角化の一環で、2005(平成17)年11月に設立。翌12月にオープンした天然温泉施設「湯来楽 砺波店」の運営を手掛けていた。露天風呂やサウナ、腰掛け湯などバリエーション豊富な県内最大級の設備を有し、アクセスの良さからも一定の集客を得て、06年11月期には年間収入高約5億2900万円を計上していた。

 19年6月にはフランチャイズに加盟して焼肉店の経営に参入。その後、2店舗に増やしていたが、本業である温泉施設は同業者との競合が激しく、同年11月期の年間収入高は約3億4900万円に落ち込んだ。

 その後、新型コロナウイルス感染拡大の影響で来客数は減少し、温泉施設や焼肉店の投資に伴う借入金が重荷となっていた。こうしたなか、相澤建設が21年4月に自己破産を申請。「ゆらら」は事業を継続していたが、コロナ禍が長引くなか金融債務返済の見通しが立たず、今年1月20日付で温泉施設を休業していた。

【特集No.606】 鼎談 地域ファンの作り方 地域と観光客“相思相愛”の関係を

2022年3月18日 (金)配信

 アフターコロナの観光は、「テーマ」のある旅が好まれると予想されている。一方で、その地域ならではの魅力の発掘、発信を多くの自治体が十全に行えていないという指摘もある。カギを握るのは、「シティプロモーション」。市長自らが先頭に立ちシティプロモーションの陣頭指揮を執る長崎県島原市の古川隆三郎市長と、全国で地域活性に取り組むロケツーリズム協議会の藤崎愼一会長が、観光庁観光地域振興部観光資源課の星明彦課長と「地域のファンづくり」、「地域ブランドの生かし方」について話し合った。

 ――新型コロナウイルス感染症の収束が見通せないなか、疲弊する地域経済の立て直しが喫緊の課題になっています。このような状況のなか、観光庁は「稼げる地域づくり」を目的に掲げ、「第2のふるさとづくりプロジェクト」を進めています。始めにこの政策について教えてください。
 

 星:「第2のふるさとづくりプロジェクト」は、観光庁が進めている施策の柱の1つです。

 コロナ禍で旅をする人、大都市圏に住む人のマインドが変化し、「自分だけの旅」を求める動きが顕著になりつつあります。これに加え、リモートワークを通じ、今一度自分自身の生き方や暮らし方、仕事との関わり方を見直し、本当に自分にとって必要なこと、家族にとって大切なことを求めて東京から地方に出ていく人も増えています。

 コロナ禍から立ち直るにあたっては、こうした需要に応える旅のスタイルの提示と、それに即した宿や交通手段などを地域に実装し、何度もその地域を「ふるさと」に帰るように訪ねるファンづくりが必要と考え、仕組みづくりのための支援を進めています。

 ――「自分だけの旅」というキーワードが出てきました。島原市では「ロケ」や「ジオ」などさまざまな切り口でシティプロモーションを展開しています。

 古川:島原市は歴史ある城下町で、海や山、温泉、グルメなど人を惹きつけるさまざまな素材を持っています。しかし、これまで本市ではテレビ番組や映画のロケを多く受け入れておりましたが、ロケ後の有効活用ができていませんでした。

 そこで2019年度からロケツーリズム協議会へ参画し、シティプロモーションを強化しています。21年度はロケ実績が18件、広告換算効果約15億5千万円(市独自の試算)、宿泊費や交通費などの直接経済効果も約460万円という成果を上げることができました。

 島原という言葉と風景が、映像作品やSNSを通じ拡散され、関心を持っていただけていることはさまざま数字からも見ることができます。例えば、番組で紹介された島原の特産品、農水産物などを返礼品としたふるさと納税は、ふるさとプレミアムの全国自治体ランキングで5位、納税額も過去最高額となり10億円を突破しています。

 また、映像作品に取り上げられることで町の魅力が再認識され、住民の地域に対する誇りを生むきっかけにもなっています。そういった面でも「映像作品」に取り上げられることはありがたいです。

 ――その地域ならではの魅力に気付いていない地域、うまく活用できていない地域は多いと思います。各地で地域活性に取り組まれている藤崎会長は、こうした現状をどう見られていますか。

 藤崎:いくら地域に魅力的な素材があったとしても、それを有名にする、また継続的に人を呼び続けるということは簡単なことではありません。私がかつて所属していたリクルートが「市場を分析し、誰に向けてという視点で地域に貢献する」ために調査研究機関じゃらん総合研究所(現在のじゃらんリサーチセンター)を05年に立ち上げたように、大事なのは「誰に向けて」という視点です。それに加え、「どう発信するか」、ここも疎かにしてはいけないところです。

【全文は、本紙1864号または3月28日(月)以降日経テレコン21でお読みいただけます。】

〈旬刊旅行新聞3月21日号コラム〉激動期に入った―― 平和は能動的に築かなければ存在しない

2022年3月18日(金) 配信

 新型コロナウイルス感染拡大対策として18都道府県に適用中の「まん延防止等重点措置」が3月21日をもって全面解除される見通しである。

 

 3月15日、斉藤鉄夫国土交通大臣は4月から「県民割」を近畿や東北など地域ブロックに拡大するようなステップを踏み、感染状況を見極めたうえで、Go Toトラベルを再開していく見解を示した。コロナ禍の停滞ムードから抜け出す契機にしたいところであるが、事態はそう簡単にはいかない。

 

 

 2月下旬からロシアのウクライナへの軍事侵攻により、国際情勢は一気に緊迫化している。日々、戦火を交える映像や情報が流される。原発への攻撃や市街戦の激化、米国や英国、EU、日本などによる経済制裁に対する、ロシア側からの報復などのニュースも伝わってくる。

 

 貨物を含む航空機はロシア領空を迂回するため、ノルウェー産サーモンやウニなどの輸入にも影響が表れ、小麦や蕎麦などの価格高騰も予想される。併せて、既に高止まりしていた原油の高騰も当面続くことが見込まれ、日本の経済も大きな打撃を受けることは間違いない。

 

 

 暗雲垂れ込める状況ばかりだが、百年単位で歴史を眺めると、激動期に入ってしまったことを実感する。

 

 前世紀(20世紀)をみると、1904年日露戦争、14年には第一次世界大戦が始まった。18年からスペイン風邪(パンデミック)、23年9月1日に関東大震災、29年10月24日(暗黒の木曜日)から世界大恐慌、37年日中戦争、39年ドイツによるポーランド侵攻、さらに41年から独ソ戦、太平洋戦争など、第二次世界大戦が45年まで続く。

 

 21世紀初頭は2001年9・11米国同時多発テロ、08年リーマン・ショック、11年3月11日に東日本大震災、19年末から新型コロナウイルス(パンデミック)、22年ロシアのウクライナ侵攻と続く。リスクとしては、世界的なロシアへの経済制裁が引き金となっての金融危機や、戦火拡大という、最悪のケースの想定も必要だ。

 

 

 1990年8月のイラク軍によるクウェート侵攻から湾岸戦争が勃発した。同年11月にイラクへの武力行使容認決議を米ソが一致して可決。冷戦終結の象徴的な出来事となった。

 

 日本は人的貢献の代わりに、35カ国が参加した多国籍軍に135億㌦(約1兆7500億円)の財政支援を行った。当時バブル経済の絶頂期にあり、世界第2の経済大国(金満国家)であった日本は、巨額な資金的な支援を行ったにも関わらず、国際社会から「お金だけか」という誹りも受けた。

 

 91年のソビエト連邦崩壊への過程にあり、唯一の超大国・米国は世界の警察官を自認し、英国、フランスなどのプレゼンスは現在よりも強大で、当時の日本は経済大国でありながら、「どこかの国が平和への道筋をつけてくれるだろう」と他人事で、やり過ごすだけだった。

 

 しかし、あれから30年が経過した。中国の台頭の一方、米国や英国、フランスなどの相対的な国力低下を鑑みて、日本は好むと好まざるとに関わらず、国際社会の表舞台で一定の役割を果たさなければならない立場となった。平和というものは受動的に与えられるものではなく、能動的に築き上げなければ、「そもそもこの世には存在しない」という覚悟を持たなければならない。

 

(編集長・増田 剛)

DMOの財務の自立促す 自主財源開発手法ガイドブック作成(観光庁)

2022年3月17日(木) 配信

自主財源開発手法ガイドブック・表紙(観光庁HPから)

 観光庁は3月17日(木)、観光地域づくり法人(DMO)における財源の自立を促すため、多様な財源確保の手法についてまとめたガイドブックを作成した。DMOの財務責任者をはじめとする地域の関係者間で重要性を共有し、新たな財源開発に生かせる内容を載せている。

 同書は、地方税(宿泊税、入湯税)などの特定財源や、負担金などの自主財源、公物管理受託、収益事業(物販、着地型旅行商品の造成・販売)──における、行政からの補助金について幅広く解説している。

 DMO財源の基礎、種類と特徴、法人格の種類による財源の特徴、CFO(最高財務責任者)の役割と必要な知識・スキル、財源導入事例、Q&A、用語集──など、7章立て。

 内容は観光庁ホームページで全ページ閲覧可能。

 観光庁は、「DMOの職員だけではなく、登録予定の民間団体などの担当者にも活用してもらえる内容。観光地域づくりに熱意を持って取り組む皆様が、ガイドブックを活用することでさらに自立的、継続的になってもらえれば」と期待を寄せている。

日本バス協会、新たなPVを公開 安心安全なバス移動喚起で

2022年3月17日(木) 配信

写真はイメージ

 日本バス協会(清水一郎会長)は3月16日(水)、同協会の特設Webサイト内で新たにプロモーション動画を公開した。動画を通して、コロナ禍でのバスの安全・安心、利便性向上に向けた取り組みや、バスの社会における役割を示し、バスによる移動を喚起する。

 今回公開された動画は、①路線バスの一日②貸切バスの一日③利便性向上への取組み④もしも、バスがなかったら――の4本。安心・安全な運行をするために徹底している準備や運行のようすのほか、キャッシュ化やMaaS、バリアフリーなどのさまざまな取り組みをまとめた。

 バス業界は、新型コロナウイルス感染症の影響が長期化し、人流抑制などの影響により、戦後最大の危機にある。このなかで、日本バス協会はバス事業の苦境と、バス業界が取り組むさまざまな課題について広く紹介するため、特設Webサイトを公開し、順次コンテンツを追加している。

比・プヤット観光大臣が来日 外国人観光客受入再開などPR

2022年3月17日(木) 配信

ベルナデッド・ロムロ・プヤット観光大臣(中央の女性)

 フィリピンのベルナデッド・ロムロ・プヤット観光大臣がこのほど来日し、3月15日(火)に東京・帝国ホテルで記者会見を開いた。4月20~22日にマニラで開催される、観光国際会議「WTTCグローバルサミット」に先立ち、外国人観光客の受入態勢などを紹介した。

 フィリピン観光省によると、日本の報道関係者と交流の場を設けたのは約2年ぶり。プヤット観光大臣は、フィリピンではコロナ禍で厳しい水際対策を取ってきたが、2月10日から、ワクチン接種済みの外国人観光客の受け入れを再開したことを報告。「国民の大半が予防接種を受け、新規のコロナ感染者数が激減したことから、安全に旅行が再開できると判断した」と述べた。再開から1カ月の間に約1600人の日本人がフィリピンを訪れたことについて、「少ない人数だと思われるかもしれないが、前向きなスタートだと捉えている」と評価した。

 「各国それぞれパンデミックへの対策があり、日本政府の立場を尊重している」とする一方、日本も徐々にではあるが国が開いてきたことに期待を示し、「2019年には年間約68万人の日本人観光客が訪れていた。再開後はこれを上回ることができると思っている」と述べた。

 また、「日本の国際観光が再開した際には、我われにも期待してほしい。両国間の観光交流の強化はそれぞれの文化、生活様式への理解を促進し、さまざまな分野でのパートナーシップと支援の機会をより広めることになると考えている」とフィリピンからの送客にも協力する姿勢を示した。

 WTTCサミットについては、「旅の再発見がテーマ。各国の観光のトップが集い、効果的な観光再生への戦略を打ち出す場とする」と宣言。日本企業の参加や支援にも謝意を述べた。

 日本側ゲストを代表してあいさつを行った、日本観光振興協会の皆見薫常務理事は「WTTCが日本の厳しい水際対策に風穴を開けるイベントになれば嬉しい」と期待した。

イーグル観光企画(北海道苫小牧市)負債は約2億円 道内観光バスツアーなど

2022年3月17日(木) 配信

 イーグル観光企画(松原真市社長、北海道苫小牧市)は3月8日(火)までに事後処理を弁護士に一任し、自己破産申請の準備に入った。帝国データバンクによると、負債は約2億円。

 同社は1975(昭和50)年創業、92(平成4)年8月に法人改組した観光バス運行業者。大型バスや中型バスなど車両11台を保有し、台湾や韓国など海外からの観光客を中心とした道内観光ツアーをはじめ、企業行事や学校行事などを受注し、道内全域で運行していた。

 近年の年間収入高は1億円内外を計上していたが、20年以降は新型コロナウイルス感染拡大の影響により、観光バスの予約キャンセルが頻発。さらに、オミクロン株の感染爆発によって、今シーズンに見込んでいた予約も得られず大幅な減収を余儀なくされ、資金繰りが悪化していた。債務返済の見通しも立たず、事業継続を断念した。