2022年2月9日(水) 配信
東京商工リサーチがこのほど発表した2022年1月の宿泊業倒産は4件(前年同月9件)だった。5カ月連続で前年同月を下回り、1月では過去20年で最少となった。負債総額は12億6400万円(同41億円)。負債10億円以上の大型倒産がゼロとなり、過去20年間で初の10億円台にとどまった。同社は、「書き入れ時の春に向け観光需要は未だ不透明感が強い」と予断を許さないようすだ。
今年1月は負債1億円以上5億円未満が2件となり、前年同月の6件から大幅に減少した。
形態別として、消滅型の破産と特別清算がそれぞれ2件。
宿泊業の倒産4件のうち、3件が有数の温泉地に立地する老舗の施設で、長引く新型コロナ禍で客足の低迷や、過去からの債務整理のための倒産となっている。
おもな倒産事例として、「橘」(東京都新宿区)が1月26日(水)に東京地裁から破産開始決定を受けた。負債は9億9400万円。
同社は、一般学生向けに東京、神奈川、埼玉で学生寮「橘・学生会館」を7棟経営し、2006年3月期には売上高約7億9700万円を計上していた。しかし、学生数や入寮者の減少で21年3月期は約4億2000万円に落ち込んだ。新型コロナ感染拡大の影響で、21年11月から12月にかけての入寮手続者数が大幅に減少し、資金繰りが逼迫したことにより、同年末に事業を停止した。
なお、同社の学生寮を利用していた学生は既に退寮済み。
1958年創業の「つるや旅館」を経営していたTR(長野県松本市)は、前年12月21日(火)に、東京地裁から特別清算開始決定を受けた。
長野県・白骨温泉で温泉旅館を営み、全室渓流に面した客室28室に露天風呂を備えるなど人気を博していた。ピーク時の2003年12月期には、約1億6200万円の売上高を計上していた。
しかし、設備の老朽化や借入金返済の負担などがあり、改装工事で長期休業を余儀なくされた。
2019年から外部業者に運営を委託していたものの、21年5月に業者が撤退。同年7月に会社分割で事業を新会社に移し現商号へ変更。
同社は前年8月31日(火)に解散し、温泉旅館は新会社で事業を継続している。負債総額は約3億円。
今年1月の旅行業倒産は21年10月以来、発生しなかった(前年同月は2件)。
旅行業の倒産はゼロだったものの、1月は沖縄や北海道で観光客向けレンタカーを手掛けていたトラベルレンタカー(沖縄県)が倒産した。負債23億3700万円。また、インバウンド客など旅行者を対象にバス事業を展開していた総和観光(茨城県)が負債7億円で破産開始決定を受けるなど、周辺の関連事業者の倒産が続いた。