名阪近鉄旅行、バス座席生地を柄に 「クワッドバッグ」発売

2022年2月8日(火) 配信

クワッドバッグと小物ポーチ

 名阪近鉄旅行(田端英明社長、名古屋市中村区)はこのほど、名阪近鉄バスが運行する観光バスと同じシート生地を使った「クワッドバッグ」を売り出した。バスのシート生地メーカー「市岡」との共同企画で、名阪近鉄バスのシート生地を使ったオリジナル商品の第3弾。手持ちサイズのバッグと小物ポーチのセット商品となる。

 今回の柄は、2005年に誕生した観光バス・現行セレガのデビュー当時に標準シートとして採用され、メーカー呼称で「ジャスティス」と呼ばれる柄を採用した。日野セレガがマイナーチェンジするたびにジャスティスも細部の意匠を変えたものの、現在もメルファなどで採用されている。全国の観光バス、高速バスで採用され、日本で最も採用された柄という。

 クワッドバッグは、底面が四辺となったオリジナルバッグ。サイズは、クワッドバッグの底面が幅180㍉・マチ190㍉、側面が高さ205㍉・幅330㍉で、ポーチが幅200㍉・高さ155㍉(マチなし)。

 価格は9500円(税・送料込)。3セット以上を購入の場合、「シークレットグッズ」が付くまとめ買い特典もある。送料は商品代金に含まれているが、北海道、沖縄への発送の場合、別途追加送料が掛かる。

 購入申し込みは、名阪近鉄旅行Webサイト内の注文フォームから。

日本専門新聞協会、新春講演会に茂木健一郎氏 「コミュニケーション力と創造性を」

2022年2月8日(火) 配信

茂木健一郎氏。「人間の脳は他人とのコミュニケーションによって『やりがい』などの個性を把握し、幸せを認知している」と説いた。

 日本専門新聞協会(入澤亨理事長)は1月27日(木)、東京都内で新春講演会を開いた。講師には脳科学者の茂木健一郎氏が「ウィズコロナの時代でこそ活きる、人間の脳の可能性」をテーマに登壇した。

 茂木氏は冒頭、台頭するネットニュースはアクセス数を意識して記事を発信し、一方受け手も自分に関心のあるニュースしか読まない傾向があると危機感を示した。さらに、「驚くべきことに若者はもはやヤフーニュースさえも読まない」と、かつては老若男女が共有していたコモンセンス、共通知が社会から失われている弊害を指摘した。

 このような状況で新聞の持つ利点として、「長年の経験から、生きるうえで知るべき『共通の知』を提供していることに価値がある」とエールを送った。

 画一的な能力に優れたAI(人工知能)が発達した時代で、人間に求められる能力については、「コミュニケーション力と創造性」と茂木氏は断言。「ペーパーテストの点数では測れない、さまざまな人間の個性がこれからの時代、もっと生かされるべき」と述べた。

 脳科学の研究を基に、「人間の脳は他人とのコミュニケーションによって『やりがい』などの個性を把握し、幸せを認知している」と説いた。例えば、保有するお金の多寡や、子供の出産前後で幸福度が変化しない研究結果を紹介し、「幸せは特定の条件に依存しない」と脳の特性を語った。

JTB、湯河原に観光型MaaSを 「梅の宴」期間に実証実験

2022年2月7日(月) 配信

旅行者がスマホで快適に移動・滞在できるサービスを提供する

 JTB(山北栄二郎社長)は、神奈川県・湯河原町の春の風物詩「梅の宴」期間中の2月5(土)~20日(日)まで、観光型MaaSを導入した実証実験を行っている。湯河原町と湯河原温泉の観光関連事業者の協力のもと、「こころ湧く、梅薫る湯河原 お得な街巡り」と題して、湯河原町エリアで実施している。

 約4000本の梅の花が紅白の美を競い合う「梅の宴」に合わせて、感染症対策ガイドラインを遵守のうえ、町内の回遊性向上をはかるバスや、箱根からの観光客の流入を促すためのアクセスバスなどを運行し、温泉地での過ごし方や食の楽しみの選択肢を増やした。併せて、町全体での需要喚起を目的としたAIオンデマンドタクシーや、観光関連事業者の着地型旅行商品も用意し、湯河原温泉観光協会HP内の特設ページで販売している。

 また、湯河原町内にディスプレイを設置し、観光地やレストランの魅力をPRすると共に、湯河原温泉観光協会HP内の特設ページへの予約導線とした。「日帰りでは楽しみ切れない街へと昇華」をコンセプトに、「域内周遊促進の向上」や「日帰り観光客の宿泊化」を目指す。

 湯河原町観光課では、①事業者間の連携構築②湯河原エリア周遊の仕組みづくり③宿の泊食分離を通じた地域経済の活性化――の3つを検証することを目的とする。「梅の宴」の会場となる湯河原梅林と温泉街がエリアの両端に位置することから、両エリアを観光MaaSの仕組みでつなぎ、駅前など中間エリアの活性化も目指す。

 湯河原町観光協会の久能木孝一企画課長は、「湯河原を知っているけれども来たことがない若い人に興味を持ってきていただく。そして生の声をSNS(交流サイト)で発信してもらうきっかけになれば」と、今回の実証実験への期待感を語った。

Go To不正調査報告 旅工房など不正受給疑い(観光庁)

2022年2月7日(月) 配信

観光庁はこのほど、Go Toトラベル給付金不正受給問題について調査報告を行った

 観光庁は2月4日(金)、ミキ・ツーリスト、ジャパンホリデートラベル、JHATによるGo Toトラベル給付金の不正受給問題について、調査状況を報告し、今後の対応を明らかにした。

 調査によると、JHATはミキ・ツーリスト社員の名義を使用し、宿泊の実体のない契約にも関わらず、計2856万円の給付申請を行い、うち428万4000円を受給した。地域共通クーポンは1224万円分の発行を受け、うち1223万円分を実際に使用した。また、2021年10月22日(金)~12月21日(火)の期間で、本来4800人泊のところ、実際に宿泊されたのは114人泊分だったことが分かった。

 ジャパンホリデートラベルは、法人顧客4社の社員の名義を使い、合計7億7074万2000円分を申請し、うち3億1249万4000円を不正に受給した。地域共通クーポンは、3億3031万8000円分の発行を受け、うち3億1963万6000円を使用した。本来5万5053人泊分のところ、少なくとも9302人泊分の宿泊が行われていなかった。

 調査では、ジャパンホリデートラベルと契約した法人顧客4社についても、一部の宿泊しか確認できていないことから、観光庁は「宿泊実体について、今後さらなる調査を継続する」とした。

 

新たな不正受給疑い 調査と再発防止急ぐ

 Go Toトラベル事務局とエイチ・アイ・エス(HIS)の調査の中で、旅工房やトラベル・スタンダード・ジャパンにも不正受給の疑いが明らかになったため、事実関係の全体像解明に向け調査を進めていく方針だ。

 今後の対応について、①給付金や地域共通クーポンの不適切な使用分の返還②今後再開するGo To事業に3社の参加を停止③刑事告訴も視野に入れ捜査機関と連携し調査を進める④親会社であるHISのガバナンス改善策実施への注視と調査への協力を求める⑤旅行・宿泊業業界団体から出された再発防止の取組方策と実施スケジュールについて徹底を求める──とした。

 また、今後再開される新たなGo Toトラベルにおいて、審査リストの項目を見直し、給付金支払いについての審査を厳格化する。不正利用の疑いありと判断する基準を厳格化し、調査対象を拡大する。さらに、不適切な受給申請を行い参加停止となった事業者は、事務局が公表できることとした。

 このほか、調査にあたる人員を93人から少なくとも110人以上に増員する。外部通報制度の強化として、Go To事業公式サイトの「外部通報窓口専用フォーム」に加え、事務局に電話で通報できるように整備を進める。

近ツー、親子でSDGs学ぶオンライン料理教室開く 3月13日

2022年2月7日(月) 配信

フードロスについて学べる料理教室をオンラインで開く

 近畿日本ツーリストコーポレートビジネス(髙川雄二社長、東京都千代田区)は2月7日(月)、オンライン料理教室「規格外野菜を使って親子で楽しむ学ぶオンライン教室」を売り出した。実施日は3月13日(日)の午前9:30から2時間半を想定し、動画共有サイト「Zoom」を利用して生中継で配信する。参加費は4950円。

 今回の企画は、SDGsへの取り組みの一環として食品ロス解消・社会貢献グルメアプリ「tabekifu」(タベキフ)を企画、開発、運営するtabekifu(坂入千佳社長、東京都渋谷区)との共同企画。全国農業協同連合会埼玉県本部(JA全農さいたま)、埼玉県農業協同組合中央会(JA埼玉県中央会)の協力を得て企画し、実施する。

 同オンライン教室では、子どもの心と健康を守る会代表・食学ミネラルアドバイザーの国光美佳氏を講師に招き、「SDGs食育」に関する講演を開く。さらに、東京・赤坂にあるイタリアンレストラン「grigio la tavola / b&r」料理長の松浦裕大シェフを講師に招き、規格外野菜を使ったレシピで学ぶ料理教室も実施する。規格外野菜は、JA全農さいたまからオンライン料理教室の実施前日までに参加者へ配送されたものを使用できる。

 詳細や申し込み方法は、近畿日本ツーリストのニュースリリースから。

「3・11」を忘れない ジャルパック、三陸応援ツアーを発売

2022年2月7日(月) 配信

南三陸町旧防災対策庁舎

 ジャルパック(江利川宗光社長、東京都品川区)はこのほど、東日本大震災復興応援と地域活性化に向けて「未来につなぐ!三陸応援歌4日間 ~『3・11』を忘れない~」を売り出した。出発日は3月28日(月)。

 ツアーでは、大川小学校や奇跡の一本松、南三陸町旧防災対策庁舎など代表的な震災遺構を巡り、語り部から当時のようすの説明を受ける。ジャルパックならではのポイントとして、震災当時孤立した仙台空港の状況や体験談を聞いてもらう時間を設定した。また、三陸鉄道で人気の「こたつ列車」を貸切運行し、JALふるさと応援隊が同乗する。

 さらに、道の駅 高田松原や南三陸さんさん商店街に立寄り、地元の水産物・農産物・特産品に触れることで復興を応援する。松島や浄土ヶ浜、龍泉洞、是川縄文館などの人気観光地を巡るほか、ラグビーワールドカップ開催地の釜石鵜住居復興スタジアムを見学。普段見られないバックヤードツアーも設定している。

 宿泊は3月28日(月)が南三陸ホテル観洋、29日(火)が浄土ヶ浜パークホテル、30日(水)がダイワロイネットホテル八戸(グレードアッププランで星野リゾート 青森屋を用意)の設定。

 料金は東京発が10万3300円(大人4人1室利用の1人代金)から、大阪発が9万6800円(同)から、仙台発が8万3800円(同)から。なお、旅行代金には「三沢空港振興会」の助成金が適用されている。

 参加条件として、出発日の3日前以降に検体採取したPCR検査または抗原定性検査の結果が陰性を証明できることが必須となる。PCR検査はジャルパックが用意するという。

津田令子の「味のある街」「かんころ餅」――草加家(長崎県佐世保市)

2022年2月6日(日) 配信

「草加家」のかんころ餅1本(260㌘)756円▽長崎県佐世保市重尾町210▽☎0956(38)3808。

 
 この時期になると取り寄せているのが「かんころ餅」だ。かつて長崎県を旅した折に出会って以来、冬の定番として欠かせない。「かんころ」とは薄切りにしたサツマイモをゆでて干したもので、長崎県五島地方の方言だ。昔から長崎地方に伝わる郷土の名物なのだが、素朴でどこか懐かしい、一度食べたら忘れることのできない一品だ。

 
 長崎の太陽の下で育ったサツマイモに、ゆでて、潮風に吹かれたのちにもち米・砂糖などをまぜてつくったもので、もち米が入ることで、もっちりした食感に仕上がるのだ。

 
 元々は保存食として用いられていのだが、今では長崎伝統菓子として、また人気の手みやげ菓子としても食べられている。

 
 長崎には、かんころ餅を作り販売している店は幾つかある。今回は草加せんべい(埼玉県)を由来としている草加家を紹介しよう。草加屋があるのは佐世保市重尾町。創業者は草加せんべいを作って、小さな三輪トラックで九州を駆け巡ったという。やがて長崎の伝統的な食文化を商品にして全国に届けたのが「かんころ餅」。月日は流れ、今では多くの生産者に支えられ、「懐かしさを味に込めて」商品作りを続けているという。

 
 さて、届いたばかりの例のものを、袋から取り出しパッケージを開封すると、どっしり重いかんころ餅のお目見えだ。1㌢ほどに切ってオーブントースターで5―6分軽くあぶって食べるのが、我が家の習わし。あぶることで芋の風味が際立ってより美味しいのだ。もちろん、そのまま食してもグッドである。アツアツのかんころ餅を手に取り、口へと運ぶ。一瞬で甘くて香ばしいふるさとの味に包まれる。

 

 最近は上にホイップクリームを載せたり、ゴマや餡をまぶしたりする人もいるというが、やっぱり軽くあぶってシンプルに食べるのがおすすめだ。常温でも長持ちするようにレトルト殺菌しているので賞味期限が180日と長いのもうれしい。

 
 かつて長崎県長期構想委員のメンバーに選ばれ、会議のために毎月長崎を訪れていた日々を思い出しながら、今日も「かんころ餅」を食べている。

 

(トラベルキャスター)

 

津田 令子 氏

 社団法人日本観光協会旅番組室長を経てフリーの旅行ジャーナリストに。全国約3000カ所を旅する経験から、旅の楽しさを伝えるトラベルキャスターとしてテレビ・ラジオなどに出演する。観光大使や市町村などのアドバイザー、カルチャースクールの講師も務める。NPO法人ふるさとオンリーワンのまち理事長。著書多数。

【精神性の高い旅~巡礼・あなただけの心の旅〈道〉100選】-その10- 頼朝が鎌倉入りした道を歩く(神奈川県鎌倉市) 「頼朝と鎌倉の出会い」を想う 静寂の亀ヶ谷坂切通で

2022年2月5日(土) 配信

 NHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」が満を持してスタートした。

 
 セリフが現代語すぎるとか、長澤まさみのナレーションが聞こえないとか色々指摘する人は指摘するが、新しい試みをするときに批判はつきものだ。そんなものに恐れをなしていたら何もできない。平安時代の言葉でドラマを作ったらそれこそ誰も理解不能で、結局ニセの時代劇言葉にするくらいだったら、坂東武士たちは現代人と同様フツーに人間として悩みながら生きているその想いを知るために、わかりやすい現代語でドラマを作って何が悪いと思うし、長澤まさみのナレーションはものすごく心地よくていいではないか。

 
 最近のNHKは周りの意見に耳を貸しすぎて迷走が過ぎる。素人をリーダーに据えると、こういう意思決定になる典型だが、最前線では堂々と自分たちがやりたい番組制作を続けてほしいものである。

 
 頼朝のともすれば監視役にいつ殺されるかわからない苦悩と、強かに生き延びる術こそがドラマ序盤の見どころであり、その本質を三谷幸喜の脚本と芸達者な俳優陣が見事に仕上げてきている。

 
 視聴者にとって馴染み深くない平安時代末期で、登場人物もほとんど知名度がないなかで、一人ひとりの登場人物をここまで生き生きと描ききっているから、きっとこれから鎌倉幕府への関心もおのずと高まってくるだろう。戦国時代と明治維新だけでない、日本の歴史の奥深さを世に問うきっかけになるドラマだと断言できる。

 
 ここまで本連載で4回にわたり頼朝ゆかりの地を巡ってきたが、これだけの予習でドラマの背景が理解でき、そのシーンが生き生きと脳内で立体化される。

 
 死と常に隣り合わせに自分の運命を他人に預けつつ、大志をまっとうしようと祈りながら生きる頼朝の想いを想像しながら、今回からは鎌倉を歩いてみたい。

 
 頼朝と鎌倉の地との出会いは、石橋山の合戦での敗戦後、房総半島に逃げ延びて、そこから体勢を立て直した際に合流した房総の有力者千葉常胤からのアドバイスであるという。父義朝が拠点としていた鎌倉を常胤が勧めて、頼朝もそれにならってこの地に入ることとなった。今回はその道をたどってみる。

 

亀ヶ谷坂切通

 
 鎌倉駅まで行かず、一駅手前の北鎌倉駅で降りる。建長寺方面に800㍍ほど歩くと、右手に足利尊氏ゆかりの長寿寺が見られるので、その先の道を右折する。ここが、亀ヶ谷坂切通と呼ばれる道である。この道を通って頼朝は鎌倉入りしたと言われている。

 
 鎌倉は三方を山に囲まれた天然の要塞である。切通は7つに限定され、しかもどの切通も狭いので、防御がしやすい。

 
 現在、亀ヶ谷坂切通は車が通れない。小町通、若宮大路等の喧騒が嘘のように人通りも少なく、野鳥の声が澄んで聞こえる。

 

寿福寺裏山にひっそりとある北条政子の墓

 
 亀ヶ谷坂切通を抜けると、政子と実朝が眠る寿福寺がある。鎌倉五山のうちの第3位に位置づけられるのに、参拝客は多くなく、静寂に包まれている。政子の墓もひっそりと崖に作られた横穴の中にあり、見過ごしてしまいそうである。このスタイルの墳墓を鎌倉では「やぐら」と呼ぶ。禅寺だけあって、華美な装飾はなく、いたってシンプルである。頼朝の死後、尼将軍と呼ばれ、承久の乱の前には名演説で人々を鼓舞した政子に対し、私は勝手に我が強い人とのイメージを抱いていたが、この墓所を見る限り、その生涯は自分のために生きたのではないという印象を受けた。

 
 寿福寺に隣接して、英勝寺という寺院がある。ここは江戸時代の創建であるが、竹林が美しく、静かに自分を見つめ直すにはおすすめの場所である。

 

旅人・執筆 島川 崇
神奈川大学国際日本学部国際文化交流学科教授、日本国際観光学会会長。「精神性の高い観光研究部会」創設メンバーの1人。

 

貸切バス事業「総和観光」(茨城県古河市) 負債は約7億6400万円

2022年2月4日(金) 配信

 貸切バス事業の「総和観光」(田續勇人社長、茨城県古河市)は1月19日(水)、水戸地裁下妻支部から破産手続き開始決定を受けた。帝国データバンクによると、負債は約7億6400万円。

 同社は、1998(平成10)年12月に設立。大型バスを中心に30台以上の車両を有し、インバウンド客の輸送のほか、地元事業所や学校関係、地域団体などの送迎を手掛け、18年3月期には年間収入高約8億6400万円を計上していた。

 しかし、近年は同業者との競合や、燃料高の煽りを受け収益が悪化。営業所の撤退などを余儀なくされていた。厳しい経営環境を強いられるなか、新型コロナウイルス感染拡大の影響により、インバウンド需要が蒸発。緊急事態宣言発令に伴う外出自粛などもあり、21年3月期の年間収入高は約6800万円に落ち込み、大幅欠損を計上するなど業績は急激に悪化していた。

 車両の売却をはじめ、各種補助金や金融機関からの融資を利用して事業継続を模索していたが、期待していた東京オリンピック・パラリンピックの送迎需要が振るわず、先行きの見通しが立たなくなった。

「もてなし上手」~ホスピタリティによる創客~(133)違和感を持ったお客様をそのまま帰してはいけない 素早くリカバリーを

2022年2月4日(金) 配信

 

 東京にあるとても有名なレストランを、久しぶりに訪ねました。3時間を超える食事はどの料理も美味しく、フロアースタッフの動きも自信に満ちあふれ、テーブルの間を流れるように歩く姿に、カッコ良さを感じました。各テーブルには笑顔があふれていました。

 十分に満足しての帰り際、コートを預けたレセプションに立ち寄りました。数人のスタッフがコートの手渡しに忙しく、しばらくその場で順番を待ちましたが、一向に私に声が掛かりません。

 ふと気付くとレセプションカウンター横のデスクに、私のコートが置いてありました。それを自分で手に取って羽織り、お願いしておいた土産の紙袋もあったので「これは私のものですか」とスタッフに尋ねると「違います」と否定されました。

 「では、私が預けたものをお願いします」と伝えると、しばらく台帳を調べた後に、バツの悪そうな顔で先ほどの紙袋を持って「申し訳ありませんでした」と差し出してきたのです。

 せっかく楽しい時間が過ごせたのに、この出来事でとても残念な想いとなってしまい、寂しい気持ちでレストランを後にしました。そしてタクシー乗り場まで無言の案内を受け、ホテルに戻りました。

 最も大切なことは、お客様のようすに何か違和感を持ったら、そのまま帰してはいけない、ということです。何に対して不快な想いをしているのか分からなければ、同様のことがまた現場で起きてしまいます。

 私が残念に思ったのは、スタッフが土産品を間違えたことではなく、10分以上も待たされ、私に声すら掛けてもらえなかったことです。さらに、その後に連絡もなく、終わったことになってしまったことです。

 こうしたお客様に気付かなければ、日々の仕事を一生懸命に実行しても、リピーターを創り出すことはできないし、企業文化も育ちません。

 失敗は誰にでもありますが、大事なのはその瞬間のスピーディな対応です。

 あるホテルで、入口で違和感を持ってチェックイン手続きしていると、そのようすの報告を受けた上司がやってきて、「ぜひ私にお部屋までご案内させて下さい」と申し出ました。

 部屋に着くと、「先ほどは入口で不快な思いをさせて申し訳ありませんでした。お話を伺わせて下さい」と、完璧な対応をされて感動したことがありました。

 時には、自分でリカバリーできない問題もあります。だからこそチームワークが必要で、それを強くするには、問題を見過ごさず、感じた違和感を直ぐに報告してシェアする。そこにお客様への想いが育つのです。

 

コラムニスト紹介

西川丈次氏

西川丈次(にしかわ・じょうじ)=8年間の旅行会社での勤務後、船井総合研究所に入社。観光ビジネスチームのリーダー・チーフ観光コンサルタントとして活躍。ホスピタリティをテーマとした講演、執筆、ブログ、メルマガは好評で多くのファンを持つ。20年間の観光コンサルタント業で養われた専門性と異業種の成功事例を融合させ、観光業界の新しい在り方とネットワークづくりを追求し、株式会社観光ビジネスコンサルタンツを起業。同社、代表取締役社長。