11年度は“仕掛ける”、WEB取扱7%→12%へ(JTB)

JTB・田川博己社長
JTB・田川博己社長

 JTBグループは1月20日、東京・新宿の京王プラザホテルで2011年新春経営講演会を開き、JTBの田川博己社長は「2011年は時代の変化に即応した大きな構造改革に着手する年」と語った。

 11、12年度の新中期計画の重要推進事項として、(1)リテール事業の強化とWEB事業の拡大(2)国内旅行の構造改革(3)法人事業の強化(4)グローバル事業の強化の4つを挙げ、「自ら仕掛け、新たな需要を創造する」とアピールした。

 リテール事業強化では、国内815店舗による販売力の最大化とトラベランド分割による地域一元管理体制を構築し、「積極的な出店と客に選ばれる店舗づくりに注力する」と話した。また、店舗機能の強化をはかるため、ホスピタリティ、信頼性、コンサルティングをポイントに、ライフスタイルマーケティングを導入するCRM戦略の強化について触れた。WEB事業では「オンラインエージェントの地位を確立する」とし、WEBの取扱シェアを現在の7%から12%まで増やしたいとした。

 グローバル事業ではインバウンドの強化をあげ、「日本旅館を世界にアピールしていく。この分野はまだまだ発展途上。新しい仕掛けの余地があるので、マーケットに提案していきたい」と話した。アウトバウンドでは、旅の品質を追求していく旨を話し、チャーター便の拡大についても触れた。

 講演会には作家の村上龍氏が登壇し、地域活性化や日本の観光ブランド、経営者の理想像と人材育成などについて、独自の視点から語り、エールを送った。

 あわせて行われた第6回JTB交流文化賞の贈呈式では、交流文化賞最優秀賞には若狭三方五胡観光協会(福井県三方上中郡若狭町)の「『若狭三方五胡わんぱく隊』が地域の誇りへ…」、優秀賞には信州せいしゅん村(長野県上田市)の「日帰り農村生活体験―ほっとステイ」と、信州いいやま観光局なべくら高原・森の家(長野県飯山市)の「交流は地域との連携から―地域資源は誰のもの?」、選考委員特別賞にはNPO法人市民創作「函館野外劇」の会(北海道函館市)の市民創作「函館野外劇」が選ばれた。

 交流文化体験賞最優秀賞には野口翠さんの「パラオでみつけたニッポン」、優秀賞には保坂美季さんの「スープのレシピ」と、上浦未来さんの「『過剰的親切・チャイナ』深夜の北京西駅での出来事」が選ばれた。

障がい者も高齢者も旅をあきらめない、UTの全国組織が誕生

「日本ユニバーサルツーリズム推進ネットワーク」の設立総会
「日本ユニバーサルツーリズム推進ネットワーク」の設立総会

 全国各地で障がいのある人やお年寄りなど、さまざまな介助が必要な人の旅行をサポートし、介護する家族も一緒に楽しめる旅を推進するNPO団体の代表者らが1月27日、兵庫県神戸市に集まり全国組織の「日本ユニバーサルツーリズム推進ネットワーク」を設立した。

 発着地相互の連携を強化し、ノウハウを共有化してサポート体制のレベルを向上させ、ユニバーサルツーリズム(UT)の活動を全国に拡大して、多くの人が旅を楽しめる環境づくりを目指す。

 参画したのは北海道から沖縄まで7道県13団体の代表者らで、同日11人が出席して設立総会を開催。設立趣意書を確認し、定款、事業計画、収支予算を決定。6人の理事と監事1人の役員を選出した。

 理事長には発起人代表のNPO法人ウイズアス (鞍本長利代表、兵庫県神戸市)が選ばれた。ウイズアスは6年前から行政、観光・交通事業者、福祉団体、大学などと連携して神戸ユニバーサルツーリズムを実践。現地でのサポート体制を整え、発地からの介助者同行の経費負担を削減して、気軽に神戸観光が楽しめるようにした。

 滞在中のケアを障がい者や高齢者を持つ家族などと打ち合わせ、宿泊施設へ情報提供や必要に応じた入浴、食事の介助人派遣、観光時のリフト付タクシーなどの手配、車イス、吸引器などのレンタル、緊急時の医療サービス、コンシェルジュ、手話通訳などさまざまなサポートを行っている。

 昨年10月には情報発信や旅行案内、どこでも車イスレンタルなどの業務を1カ所で提供する「神戸ユニバーサルツーリズムセンター」を神戸市内に開設。全国各地のNPOとも連携した活動も積極的に進めている。

 昨年12月7日には長年のUT推進に尽力した功績が認められ、内閣府の2010年度バリアフリー・ユニバーサルデザイン推進功労者表彰で、内閣府特命担当大臣表彰優良賞を受賞している。

 鞍本さんは「現在の参加会員地域は7道県だが、ノウハウの共有で互いにレベルアップできる。土佐清水や大阪、西明石、仙台などにもNPO設立の動きがあり、連携でさらに充実するだろう」と話す。

 ネットワークは5月ごろにNPO法人格を取得する見込みで、夏に神戸で推進フォーラムを開催予定。行政や観光業者、福祉・医療関係者を対象のUTやホスピタイティの研修会などの事業を計画する。情報誌の発行やホームページ開設も予定する。

 なお、事務所は神戸市中央区波止場町の神戸UT内に設置する。会員は個人とし入会、年会費それぞれ1万円。賛助会員は個人が入会、年会費3千円、法人が同1万円。

日観振協とは区分けと連携、VJ落札企業をサポート

JNTO・間宮忠敏理事長
JNTO・間宮忠敏理事長

 1月26日に行われた日本政府観光局(JNTO)の定例記者発表会で間宮理事長は、同じインバウンド事業に取り組むことが予想される、日本観光協会(西田厚聰会長)と日本ツーリズム産業団体連合会(TIJ、舩山龍二会長)の合体組織「日本観光振興協会」とのすみ分けや連携について「同じインバウンドでも、海外プロモーションや国内の受入環境整備など中身は多々ある。JNTOは主に海外プロモーションを実施。事業がダブらないよう、区分けしつつ連携できるところはしていくことになるだろう」と話した。

 また、12月7日の閣議決定による、VJ事業の一般入札からの撤退については「今後は落札した一般企業のサポートがメインになる」とした。

 JNTO直営のツーリスト・インフォメーション・センター(TIJ)の廃止については「事業を引き継ぐ受け手組織はまだわからないが、サービスがしっかりと引き継がれるようバックアップしていきたい」とコメントした。

11年訪日客1100万人へ、「中国と韓国が大きな柱に」

 観光庁の溝畑宏長官は1月26日に定例会見を開き、2011年の訪日外国人数を「1100万人に限りなく近く」と目標設定した。

 2010年の訪日外客数が発表され、前年比26・8%増の861万1500人となり、大阪万博が開催された1970年(同40・4%増)以来の伸びを記録。溝畑長官は「今後のインバウンド促進への大きな前進」と語った。

 しかしながら、観光立国推進基本計画の目標であった「2010年までに1千万人」には届かず、中国漁船衝突事件や大幅な円高などの外的要因による不足分を除くと、厳しく見て約90万人足りないと報告。要因として(1)プロモーションの効果発現までのタイムラグ(2)プロモーション戦略・体制などの不十分さ(3)国内受入環境整備の遅れを挙げた。

 11年についてJTBが920万人と予想するなか、「1100万人に限りなく近い水準」と強気の目標を設定。「13年に1500万人」という目標達成から逆算しての11年の目標設定だが、溝畑長官は「無理な数字ではない」と力を込める。09年の東アジア太平洋地域の国際観光市場は1億8千万人、これが2020年には4億人にも増加。中国の10年の海外旅行者は4790万人だが、2020年には最低でも1億人、場合によっては2億人まで増えるとの検証を紹介。「大幅に拡大する中国のシェアをおさえ、韓国の240万人(10年)を300万人台ぐらいまでもっていければ十分勝算はある」と語った。中国を大きな柱に据えるリスクの分散にも触れ、「経済成長著しいタイ、マレーシア、ベトナムの取り込みや、リーマンショック後落ち込んだアメリカ市場の復活にも尽力したい」と話した。

 11年は(1)プロモーションの強化(2)受入環境の整備(3)他省庁との連携をポイントに進める。

●MICE推進まったくぶれず
予算見送りとされたMICEについては、「推進の姿勢はまったくぶれない」とし、VJ予算内でMICEのプロモーション、セールス、環境整備の支援、人材育成などに注力。「地方自治体・民間レベルでも高まるMICE意識をさらに大きくしたい」と話した。

●与党案ベースにS・W先行で検討
休暇分散化については、第2回休暇改革国民会議の結果を受け、シルバーウィーク先行で、ブロック分けについては再検討を進め、議論中の与党案をベースに国民の意識調査や、各関係団体や地方自治体へのヒアリングを実施し詰めていくという。

10年訪日客861万人に、韓国54%増、中国41%増

 日本政府観光局(JNTO、間宮忠敏理事長)が1月26日に発表した、2010年の訪日外客数(推計値)は前年比26・8%増の861万1500人と、世界各国の景気回復や訪日旅行の宣伝効果、10月末からの羽田空港の国際定期便就航などによる追い風を受けた結果となった。

 前年比の伸び幅としては、この半世紀の間で、大阪万博が開催された1970年(同40・4%増)に次ぐ数値となり、重点15市場すべてで前年比増となった。

 地域別では、最大市場の韓国が、新型インフルエンザの流行や景気低迷で大きく落ち込んだ前年からV字回復をし、同53・8%増の243万9800人となった。次いで、地域別で台湾を抜いて2位に躍り出た中国が同40・5%増の141万3100人。好調な経済成長や訪日個人観光査証(ビザ)の発給条件緩和などの好影響を受け、爆発的な伸びを記録するも、10月以降は中国漁船衝突事件の影響で一転、落ち込んだ。

 そのほかでは、タイが同21・0%増で初めて20万人を突破し、シンガポールは同24・6%増と躍進。好調な経済を反映したドイツが同12・4%増と欧米で唯一の2ケタ増を記録し、経済成長著しいマレーシアが同27・9%増と過去最高の伸びを記録した。

 JNTOの間宮理事長は、目標の1千万人に139万人足りなかった結果を踏まえ、「リーマンショックや円高、尖閣問題、上海万博の影響で座席の供給量が足りなくなったことなどが原因」とした。

 また、重点15市場で訪日外客全体の90%以上を占めることを挙げ、「15市場の選定やプロモーションの効果は出ている」と話した。

 今後の課題としては、中国内陸地の需要の取り込み、中国個人客やリピーターへのプロモーション強化、ターゲットセグメントへのプロモーションの質向上、SNSやフェイスブックなどの新しい宣伝ツールの活用などを挙げた。

 11年に関して本紙の取材に対し、「中国・韓国の重要性に加え、中国の投機マネーで潤うマレーシア・タイ・シンガポールなどの東南アジア諸国がキーになる。訪日需要がなかなか回復しない米国も、今後の政治による日米関係強化によっては復活もありうる」と語った。

 一方、出国日本人数は同7・7%増の1663万7千人と、4年ぶりに増加した。

第36回「100選」表彰式開く、パーティーに550人出席

総合1位に輝いた加賀屋の小田真弓女将(右)
総合1位に輝いた加賀屋の小田真弓女将(右)

 旅行新聞新社が主催する「第36回プロが選ぶ日本のホテル・旅館100選」および「第31回プロが選ぶ観光・食事、土産物施設100選」「第20回プロが選ぶ優良観光バス30選」の表彰式と祝賀パーティーが1月21日、東京・新宿の京王プラザホテルで開かれ、観光関係者約550人が出席した。

 主催者あいさつで石井貞徳社長は「私たちが観光業界で一番古くから手掛けたこのイベントも36回と歴史を刻んできた。今や業界のみならず、一般の旅行者まで発表を待ち望んでくれているイベントに、大きく育ち本当にうれしい。みなさんも大いにこのイベントを利用して、お客様にPRしてほしい」と強調。また、「厳しい時代、誰も助けてはくれない。一人ひとりが足元を見直し、事業の意義を考え、自信と誇りを持ってがんばってほしい。みんなで観光業界を盛り上げましょう」とエールを送った。

 石川県和倉温泉の加賀屋の手島孝雄総支配人は「36年という歴史ある賞の重みを感じている。この賞は、女将を筆頭に社員一人ひとりが1年間努力した結果。受賞をさらなる励みに、今年も笑顔でがんばりたい」と語った。

 「優秀バスガイド」「もてなしの達人」の表彰式は2月18日、東京都港区の世界貿易センタービル内・浜松町東京會舘で午後1時から開く。

No.269 旅館・ホテル現代考 - 旅館の強みをホテルに

旅館・ホテル現代考
旅館の強みをホテルに

 日本のマーケットにおいてうまく併存してきた和風旅館とホテル。宿泊施設の形態は細分化され、出尽くしたともいわれるが、ここ数年、東京都内に旅館とホテルを融合させた新しいスタイルの宿泊施設が生まれてきている。2009年5月オープンの「庭のホテル東京」(東京・千代田)と同年6月オープンの「ホテル龍名館東京」(東京・中央)。ともに基本はホテルだが、長年、旅館で培ってきた強みを活かす。さりげない和を感じるホテルが今後、増えていきそうだ。

【沖永 篤郎】

「居心地のいい和を追求」

 水道橋駅東口から徒歩3分、日本大学経済学部の隣に建つ「庭のホテル東京」。09年5月にオープンした。近隣は大学や出版社が多い場所柄、一見ビジネスホテルのようにも見えるが、館内に一歩足を踏み入れると、明らかにそれとは違う温かな雰囲気が感じられる。中庭からエントランスに続く水の流れ。ふんだんに日の光が差し込むフロントロビー。そこに配された巨大な行灯のような照明。いたるところに和のおもてなしの心がさりげなく表現されている。

 木下彩社長は、この場所で1935年に創業した旅館、森田館の3代目。旅館は1970年代の高度成長期、東京グリーンホテルという名でビジネスホテルに転身。日本のビジネスホテルの先駆けとなった。庭のホテル東京は、そのホテルの1つ東京グリーンホテル水道橋を施設の老朽化に伴い建て替えた。

 「今の東京で新しいホテルを建てるのであれば、どういう形が望ましいのか。大手ホテルチェーンと同じ土俵で張り合っても、やがては価格競争するしかなくなってしまう。10年、20年とたったときに何で勝負できるのかといろいろ考えました」(木下社長)。新しいホテルの構想を作り上げるまでには5年近い歳月を費やした。1つのヒントになったのが事業の原点である旅館だ。70年以上にわたる伝統や、スタッフの家庭的な雰囲気、ホスピタリティといった強みを活かせないかと考えた。若い世代の間や海外では日本の伝統美や和のデザインが見直されてもきている。そしてたどりついたのが和の趣と現代人のニーズに見合う機能性を併せ持つ「美しいモダンな和」というコンセプト。「難しかったのは、どのくらいの和にするのか。京都の雅な和ではなく、さっぱりとした江戸の和。今の東京で居心地のいい和を追求しました」(木下社長)。

 

※ 詳細は本紙1409号または日経テレコン21でお読みいただけます。

伊東で山焼き

 国の天然記念物に指定されている大室山で2月13日に「第53回大室山山焼き」を行う。山焼きは700年の伝統がある。当日は午前9時30分からは山頂のすり鉢上の傾斜部を焼く「お鉢焼き」、11時からの式典後、正午に山肌全体を焼く「全山焼」の順で行われる。

 問い合わせ伊東観光協会電話:0557(37)6105。

成徳大・秋山教授が景観セミナー

千葉県と県内の鎌ケ谷市は、1月30日の午後2時から鎌ケ谷市総合福祉保健センターで、景観セミナー「魅力あるまちづくりと景観」を開く。第1部は鎌ケ谷市の事例紹介、第2部は講演会を行う。

 第2部の講師は東京成徳大学観光文化学科長・教授で旅行作家の秋山秀一氏。「『居心地のよい景観』とは・世界中の旅の中で考えたこと」と題して講演する。秋山氏はNHKラジオで旅番組のプレゼンターを務めるほか、旅作家としての著書も多い。

 セミナーの参加費は無料。定員は先着順の50人。申込みは1月26日まで。

問い合わせ=千葉県公園緑地課景観づくり推進室 電話:043(223)3998。ホームページ(http://www.pref.chiba.lg.jp/kouen/index.html)。

船橋でダイヤモンド富士が見られる日

千葉県船橋市のふなばし三番瀬海浜公園は、秋から冬の天候に恵まれた日の朝と夕刻に、美しい富士山を望める。また2月15日は、「ダイヤモンド富士」を見られる日にあたる。

 気象条件が整えば、ふなばし三番瀬海浜公園で午後5時10分に、富士山の頂きへ沈む夕日がダイヤモンドのように輝く光景を見ることができるという。

ダイヤモンド富士は、富士山の山頂部と太陽が重なる大気光学現象のこと。湖面にダイヤモンド富士が映って2つに見える場合は「ダブルダイヤ」と呼ばれている。