「産業観光」で連携、観光協会が協定調印(川崎市と米子市)

 工場夜景見学ツアーで話題の神奈川県川崎市観光協会連合会(斎藤文夫会長)と、「大人達の社会見学」と称し地元産業施設を新しい観光の目玉として売り込む鳥取県米子市観光協会(杵村善久会長)は6月25日、川崎市内のホテルで「産業観光に関する協定書」を交わした。相互の交流を進め、取り組みの発展につなげる。

 川崎市観光協会連合会事務局の亀山安之次長が、米子市観光協会の「首都圏観光大使」としても活躍していることが縁で、今回の連携が実現した。

 協定の調印に先立ち、米子市観光協会の宇田川英二副会長ら11人は、JFEスチールや川崎マリエン、工場夜景などを視察。「京浜工業地帯に観光のイメージはなかったが、参考になる取り組みも多い」(宇田川副会長)と実感した。

 川崎市には産業文化財から実際に稼動している工場まで、多くの企業が立地する。市では07年からホームページを開設し、「スタディー・ツーリズム」として広報に力を入れている。なかでも工場夜景の見学は、はとバスの定期観光コースに採用されるなど話題を集めている。

 一方の米子市も07年から、王子製紙米子工場や米子市水道局、サントリー天然水のブナの森工場などで工場見学を行い、名水の街をアピールしている。旅行商品としても採用されるなか、昨年度末までに73件、約2千人の参加があった。

 調印後開かれた交流会では、川崎市の斎藤会長が館長を務める「川崎・砂子の里資料館」が所蔵する六十余州名所図会(歌川広重)の1枚に「伯耆 大野大山遠望」があることから、「これらを米子市美術館で展示できないか」(斎藤会長)と提案があり、早速交流の輪が広がった。

第1種会員の入会金値上げ、ANTA、一般社団法人への移行

 全国旅行業協会(ANTA、二階俊博会長、5541会員)は6月22日、東京都内のホテルで第46回通常総会を開き、一般社団法人への移行や第一種会員の入会金改定などについて承認した。

 昨年から対応を検討してきた公益法人制度改革については、認定要件の一つである公益目的事業比率の50%をクリアできないとして、公益社団法人ではなく、一般社団法人への移行を決定。木村茂男副会長は「条件がそろえば、一般社団法人から公益社団法人への移行も可能なので、他の法人の状況などをみながら検討していく」と将来的な公益社団法人への移行にも含みを持たせた。また、全旅協旅行災害補償制度を廃止し、新たな見舞金制度を創設することを取り決めた。

 入会金の改定については、第1種会員と2・3種の規模・資金の差などを考慮し、第1種会員の入会金80万円を150万円とした。第2種会員の65万円、第3種会員の55万円は据え置きとなった。

 また、口蹄疫の影響を被った宮崎県を支援する決議が承認され、二階会長は冒頭あいさつで「事が起こった際には皆で立ち上がることが大切」と強調し、「この問題の根本的解決後には、宮崎・鹿児島を元気づけるために、多くの観光客を送り込むことが我われにできる重要な任務だ」と呼びかけた。

 10年度は、「国内観光活性化フォーラム」の開催など着地型旅行の推進と地域活性化への貢献、地域資源を利用したエコ・グリーン・ヘルスツーリズムや高齢者に優しい旅行、バリアフリー旅行などの推進、インバウンドの強化などに力を入れる。

 なお、第8回国内観光活性化フォーラムは来年4月26・27日に富山で行う。 「第1種の被申出人ナシ、ANTA09年度弁済業務」  全国旅行業協会の09年度の弁済業務については、被申出人13社に対する認証申出人は1754者(社)、申出額1億1381万6千円に対し、認証決議された申出人は1746者(社)、認証決議額は5249万9千円。被申出人13社の種別は第1種0社、第2種9社、第3種4社。昨年度認証決議額の6割を占めた第1種が0社となった。

一般社団へ移行承認、JATA 金井会長を再任

 日本旅行業協会(JATA、金井耿会長、1183会員)は6月16日、東京都千代田区の経団連会館で第53回通常総会を開き、公益法人制度改革への対応として、一般社団法人に移行することを承認した。また、任期満了に伴う役員改選では金井会長と佐々木隆副会長を再任し、ワールド航空サービスの菊間潤吾氏を新副会長に選任した。

 金井会長は昨年度の状況を「景気の低迷や4月の新型インフルエンザによる過剰な旅行自粛など、厳しい1年だった」と振り返った。一方で事業については、海外旅行のVWC事業の継続や国内旅行の「もう一泊、もう一度(ひとたび)」キャンペーン推進、外国人旅行の訪日外国人受け入れフォーラム実施などに加え、国内航空コミッション問題や登山ガイドラインの策定など「会員に共通する課題に取り組み、一定の評価が得られた」とした。今年度は「成田の発着枠拡大や羽田の本格的な国際化、青森新幹線の延伸など業界に追い風が期待できる。反転攻勢の年にしたい」と意気込みを語った。

 来賓として出席した観光庁の溝畑宏長官は「首相が変わり、新成長戦略を策定しているが、観光は重要な柱に位置付けられる予定だ」とし、「逆境こそチャンスとして皆さんと一緒に、まずアジアで1番、そして世界を目指し、観光の将来の大きな展望を描きたい」とあいさつした。

 今年度事業は、3つの重点項目のもと、各種取り組みを実施する。まず「旅行需要の拡大」は(1)チャーターコーディネーター(2)VWCビジット・ワールド・キャンペーン(3)「もう一泊、もう一度(ひとたび)」CP(4)訪日外国人受入促進地域フォーラム(5)JATA国際会議・世界旅行博2010――の5つで展開。また「ビジネス環境の整備」は(1)約款合同検討委員会(2)インバウンド取扱業者の適正化の推進(3)外国人・訪日旅行の基盤整備への取り組み――の3つ。さらに、「業界人材力のレベルアップ」は(1)デスティネーション・スペシャリスト(D/C)講座の充実・拡大(2)マネジメントセミナー、デスティネーションセミナーの2つを強化する。

 なお、一般社団法人化へ向けての今後の取り組みは、定款の内容を適合させ、公益目的財産額を公益事業で消費し、最終的に0円にするための計画を作成して年内に臨時総会を開く。また、支部は本部と統一的な運営のもとで、正式な支部に位置付ける。

ヘリコプターで空から見る、スカイツリー見学新ツアー(はとバス)

 はとバス(東京都大田区)は、墨田区向島に建設中の東京スカイツリーを見学する新ツアーを7月から5本運行する。3月から運行する「東京、ただ今工事中」は、6月末分まですべて満席。キャンセル待ちも出るほど注目が集まっている。

 新ツアーは、同社のオープンバス「オー・ソラ・ミオ」から見上げる、船から見る、ヘリコプターから見る、電車から見るコースのほか、東京タワーや横浜マリンタワーと併せて見学するコースなど、特徴を持たせた。

 このうち、船から見るツアー「東京スカイツリー&運河探検クルーズは」は問い合わせが増えていることを受けて6月19日限定で前倒して運行した。コースは船上から越中島―隅田川―北十間川間のベストビュースポットを見学。料金は大人が8900円、子供が7900円。7―9月の特定日に運行する。

 ヘリコプターから見る「東京スカイツリー ヘリコプター大遊覧とシンフォニークルーズ」は上空からしか見られないスカイツリーの建設現場を約20分のフライトで見学。その後、東京湾のサンセットクルーズで洋上のバイキングを楽しむ。料金は大人が1万9800円、子供が1万7800円。7、8月の特定日に運行する。

 東京タワーと二大タワー競演を見学するコースは定期観光で設定。7―9月の毎日(7月30・31日、8月1日運休)。料金は大人が8400円、子供が4650円。

 3月から運行しているツアーも7月以降も継続する。団体専用見学場所(現場敷地外)から東京スカイツリーを見上げることができる、このツアーならではの特典が付く。

5月の訪日外客数48.6%増に、出国日本人数は24.0%の増加

 日本政府観光局(JNTO)がこのほど発表した2010年5月の訪日外国人数(推計値)は、前年同月比48.6%増の72万2000人と7カ月連続の増加となった。昨年5月は円高、景気低迷、新型インフルエンザ感染拡大などの影響で大きく落ち込んだが、その反動が生じて大幅なプラスとなった。

 市場別では、主要15市場はすべて前年を上回った。また、中国、香港、カナダ、フランス、ドイツ、インドは5月として過去最高を記録した。

 一方、出国日本人数は、同24.0%増の128万5000人と3カ月連続の増加となった。

山陽・九州新幹線「さくら」を公開、車内は木材生かして温かみ演出

 2011年春の九州新幹線(鹿児島ルート)全線開業に合わせ、新大阪―鹿児島中央駅間を直通運転する山陽・九州新幹線「さくら」の車両が6月15日、マスコミ関係者に公開された。

 新幹線車両はN700系をベースとした8両編成で、「凛(RIN)」をキーワードに和のもてなしを意識してデザインされた。車体の色は陶磁器の青磁のような「白藍(しらあい)」色を使用し、車体横には濃藍と金色のラインが伸びる。

 車両は1―3号車が2―3列シートの自由席で、客室は若桜調の木目を生かした柔らかな雰囲気。指定席は4―8号車で、6号車の一部がグリーン席となる。指定席は朱桜調の木目の客室で、座席はレールスターの2&2サルーンシートをブラッシュアップ。長時間の座席にも快適な新リクライニング機構を採用。手すりやテーブルにも木を使用した。

 グリーン席は手すりやテーブル、デッキに古代桜調の木材を使用。座面、背もたれ連動のリクライニングシートにレッグレストと枕を設置し、航空機の特別シートに匹敵する快適さを追求。シートを濃藍色の生地、通路には金色の花唐草模様のじゅうたんを敷くなど、プレミアム感を演出している。

 5号車には女性に優しい専用トイレや、全身の写る三面鏡をつけたパウダールームも設置。7号車には多目的室や多機能トイレも完備した。喫煙ルームも4カ所設けている。

 12月からは九州での試験走行を行う。全線開通後は、新大阪―熊本駅間が3時間20分前後、同―鹿児島中央駅間が4時間前後で結ばれる。

個人旅行拡大推進の年に、中連協 新会長に山崎氏

 中華人民共和国訪日団体観光客受入旅行会社連絡協議会(中連協、山崎道徳会長代行、212会員)は6月8日、東京都内で第11回通常総会を開いた。山崎会長代行は7月から中国人向け観光ビザの発行条件が大幅に緩和され、中国指定旅行会社や、発給地域も拡大されることをあげ、「中国の旅行会社の情報提供など、我われの活動も強化していかなければならない。積極的な予算組も行った。今年は中国人個人旅行拡大を推進していく年にしよう」とあいさつ。今後の重点的な取り組みとして、中国指定旅行会社との速やかな関係拡大、煩雑な個人旅行の手続きの簡素化、団体旅行における自由行動の制限緩和――の3点をあげた。

 とくに個人旅行の手続きについては、団体と同じくらい手間がかかり、中国指定旅行会社からの不満の声も多いという。また、日本の受け入れ側旅行会社も帰国の報告に関する諸手続きがあるなど、改善をはかるべき課題は多い。山崎会長代行は「中国指定旅行会社やお客様の声を真摯に受け止め、直接観光庁に報告し、改善の努力を続けたい」と話した。

 これについては中国国家観光局の范巨レイ主席代表も「一部国内メディアでは自分でビザ申請し、自由に行き来ができる『自由行』と報道されている。煩雑な手続きを考えると利益にならないと現地旅行会社の抵抗も強い。場合によっては逆効果。中身がどうなのか、もっと説明すべき」と危惧を示した。

 10年度の主な事業計画は、関係諸機関への要望書の提出、中国での研修旅行の実施、マーケット情報の会員向けセミナー、研修会などの実施、トラベルマーケット出展への協力。そのほか、ホームページ改定も行う。

 役員選任では、山崎道徳会長代行(JTBグループ本社執行役員・グローバル事業本部長)が会長に選任された。また、昨年7月から個人観光ビザの自由化が始まったことに伴い、協会名から団体を削除するとともに、規約のなかの団体にかかわる文言を変更する。

 副会長以下の役員は次の各氏。

【副会長】
土屋雅彦(日本旅行・VJC訪日推進室担当部長)

【幹事】
是川清人(中国巨龍旅行社・部長)▽吉野一男(ニュージャパントラベル・代表取締役会長)▽後藤順(近畿日本ツーリスト・中国・アジアセンター・センター長)

【監事】
足立成雄(トップツアー・経営管理本部経営企画部インバウンド推進部長)▽野口英夫(農協観光・旅行事業部国際交流課・課長)

05年度以降最多に、7.8%増の674件、「居酒屋・バー」がトップ

「外食産業の倒産動向調査」(帝国データバンク)

 帝国データバンクがまとめた2009年度の外食産業の倒産(負債総額1千万円以上)件数は、前年度比7・8%増の674件。現行の方法で調査を始めた05年度以降、最多の倒産件数となった。負債総額は765億6200万円で、大型倒産の減少から前年度を17・7%下回った。今後の見通しについては、10年度に入っても4月が50件、5月も57件と高止まりのうえ、口蹄疫の影響などといった懸念材料もあるとし、今後も高水準での推移が続く見込みだという。

 日本フードサービス協会によると、09年の外食産業の売上高は新規店を含めた全店ベースで03年以降、6年ぶりに前年を下回ったという。消費者の外食離れに加え、牛丼チェーンに代表される値下げ競争なども影響。市場が縮小するなか、一部の好調な大手を除き、厳しい経営環境下にあるとみている。

 倒産件数は05年度以降、ガソリン高や原材料高などの影響を受け増加基調が続き、09年度はリーマン・ショック後の不況で客離れが深刻化し、さらに増加した。ちなみに09年度は外食産業を除き全業種とも前年度割れとなっている。

 業態別で最も倒産件数が多かったのが「居酒屋・バー」の212件。前年に比べ14%増。07年9月から飲酒運転に対する罰則が強化されたことなどから、高水準で推移している。次いで多いのが「一般飲食店、食堂」の138件(前年度比17・9%増)。3番目は「日本料理店、料亭」の84件(21・7%増)。企業の接待交際費などの抑制から法人需要が落ち込んだ。倒産件数の増加率ではトップ。

 一方、中華料理店や西洋料理店、そば・うどん店は、前年度比2ケタ減だった。

 倒産の主な原因は販売(売上)不振、業界不振とする〝不況型〟が542件。構成比は80・4%となり、過去5年間で初めて80%を上回った。来客数や客単価を維持できず、新規で店や改装費用の借入金、店舗のテナント料などが重荷となって倒産するケースが多いと分析している。

 地域別では、近畿が266件でトップとなり、全体の4割を占めた。関東(214件)と九州(40件)は過去5年間で最多。増加率トップは中国で約2倍。傾向として広島や東京、神奈川、福岡など各地域の都市部での増加率が目立つ。

 東北や北陸、中部の3地域は、2ケタの減少となっている。

訪日旅行取扱の登録制度を、観光庁に訪日外客増加への要望書(JATA)

 日本旅行業協会(JATA)の外国人旅行委員会(委員長=田辺豊農協観光社長)は6月22日、観光庁に「訪日外国人客の増加に向けた要望書」を提出した。昨年の要望書は9項目だったが、今回は14項目に増やし、そのうち「訪日旅行取扱業の登録制度の新設」などを求める内容など、7項目を新たに要望した。

 新規は(1)インバウンド取扱業者の適正化の推進(2)通訳案内士関連問題への取り組み強化(3)中国関連問題への取り組み強化(4)人材育成の強化(5)訪日外国人観光客に便利な観光案内所の設置(6)航空路線の拡充及びチャーター施策の推進(7)海外でのプロモーション活動予算のさらなる増額――の7項目。一方、昨年から要望しているものの、成果があまり感じられない「訪日教育旅行の受入体制の強化」「MICEへの取り組み強化」などの5項目については、改めて記載した。また、「その他」で1項目設けた。

 このなかで、とくに新規(1)では、アジア市場の日本旅行の実態は、低品質なサービスでクレームを発生させ、国際競争力の低下などを招いていることや現在の業法では無条件で参入可能な自由な業界になっており、旅行者の保護に十分ではないことなどを問題点として列挙。観光産業の健全な育成と訪日旅行者保護の観点から、「訪日旅行取扱業(仮称)」の登録制度新設を求めた。また、これが困難な場合には、ランドオペレーターへの適切な指導と事故発生時の適切な対応のため、最低限の法整備として届出制を導入してほしい旨の妥協案も併記した。

 これに関して、国内・訪日旅行業務部の興津泰則部長は「これは規制強化ではなく、消費者保護や健全な商取引の観点から、緩和のなかで安心・安全に拡大していくためのもの」と述べた。

新会長に高橋氏「時代の潮流見極め事業」、東北観光推進機構が総会

 東北観光推進機構(幕田圭一会長)は6月18日、宮城県仙台市内のホテルで第3回通常総会を開き、みちのく冬祭り創造事業などの今年度事業計画案を承認。幕田会長の東北経済連合会会長の退任を受けて、新会長に高橋宏明東北経済連合会会長を選任した。

 今年度の事業計画のうち、新規事業は2007年に実施した海外マーケット調査を再度行い3年間の成果を検証するとともに次期実施計画策定の基礎データとして活用するほか、豪州向けのスキーパンフレット、中国富裕層向けの認知度向上事業などをあげている。

 また、旧正月行事を観光資源として育成するために東北冬祭り創造研究会(仮称)を立ち上げ、地域連携に関する提言を実施する。観光セミナーは関西圏、中京圏、九州圏に加え今年度は北海道でも開く。  このほか国内・海外向けのポータルサイトの運営やFIT向け招聘、豪州の旅行会社招聘、タイやロシアなどへのプロモーション、海外からの教育旅行誘致として広州と上海の教育関係者招聘、東北の観光素材を主要テーマにした番組制作などに取り組む。

 幕田会長は「昨年度は08年に3カ年計画で策定した中期実施計画の2年目ということで東北観光の認知度向上を重点課題として取り組んだほか、海外PRで香港や台湾など東アジアを中心にプロモーションを行った」と述べた。退任にあたって「東北各県が一致団結して東北観光の振興に努力し、東北の観光産業振興と経済の発展に寄与することを心に抱いていた」と機構への思いを披歴し、「今年は東北新幹線の全線開業もある。高橋新会長のもと一層の事業展開を進めてほしい」とエールを送った。高橋新会長は「観光の振興は東北経済の発展には欠かせないものであり、機構が果たす役割は大きい。幕田会長の築かれた路線をしっかりと受け止め、新たな時代の潮流も見極めながら事業に取り組むのでご協力を」と抱負を語った。