国内、国際線とも減、国内は最近10年で最低(09年の航空輸送統計)

 国土交通省がまとめた2009年の航空輸送統計速報によると、国内定期航空の輸送旅客数は前年比9・6%減の8395万人で、国際線も6・3%減の1539万人となりいずれも前年割れ。国内線は2000年以降の10年間で最も低く、国際線も新型肺炎(SARS)が影響した03年に次ぐ2番目の低さだ。

 国内線の搭乗旅客数は3年連続の減少で、8359万人は最近10年間で最低を記録した。景気低迷の影響によるものと思われる。月間でもすべての月で前年を下回った。なお、1999年以降08年までの10年間はいずれも年間9千万人を上回っていた。旅客数に搭乗距離をかけた人キロベースは、9・2%減の752億640万人キロとなる。

 幹線(新千歳、羽田、成田、伊丹、関西、福岡、那覇の7空港を結ぶ路線)とローカル線(その他の路線)別でみると、幹線が8・6%減の3489万人、ローカル線が10・3%減の4906万人になる。人キロベースでは幹線が8・4%減の353億6984万人キロ、ローカル線が10・0%減の398億3656万人キロ。

 路線別では大阪―那覇線の横ばい1路線を除いて羽田―大阪線や同―福岡線、同―那覇線、同―新千歳線など軒並み前年割れに終わった。落ち込み幅が最も大きかったのは中部―福岡線の35・6%減。  路線別ランキングのトップは羽田―新千歳線の約902万6千人。次いで同―福岡線の約750万9千人、同―伊丹線の約525万人、同―那覇線の約511万7千人、同―鹿児島線の約215万7千人と続き、上位5路線の順位は前年と同じ。6位以下では前年9位だった羽田―関西線が13位にまで順位を下げ、代わって前年10位だった羽田―長崎線が9位、同11位の羽田―松山線が10位に上がった。

 11位までの羽田―宮崎線まで、いずれも羽田と地方都市を結ぶ路線が占める。

 12位は福岡―那覇線で13位は羽田―関西線だが、14位が那覇―石垣線となり、沖縄リゾートの根強い人気を示している。なかでも那覇―石垣線は離島路線ながら100万人を維持し、健闘している。

 一方、国際線は経済危機や新型インフルエンザなどで訪日外国人観光客が落ち込み、6・3%減の1539万人にとどまった。人キロベースも7・7%減の672億343万人キロ。月間では6月を底に回復し、8月以降は前年を上回った。

 方面別の搭乗客数は、すべての方面で前年を割り込んだ。落ち込み幅の最も大きかったのはオセアニア(オーストラリア、ニュージーランド)の14・3%減。次が米大陸(南米、北米)の9・4%減。搭乗客数の最も多い方面は中国、韓国を除くアジアで466万4千人(前年比3・3%減)、2位が中国で305万8千人(1・1%減)、3位は韓国で229万5千人(3・1%減)。以下、太平洋(ハワイ、グアムなど)が203万6千人、米大陸が160万1千人、欧州が147万8千人、オセアニアが26万人と続く。

 航空貨物の輸送量は国内線が重量ベースで6・0%減の94万699トンとなり、7年ぶりの落ち込み。国際線も10・9%減の117万348トンで2年連続のマイナスを記録した。

会長に西田氏(東芝会長)国、地方、民間との橋渡し役に(日観協)

 日本観光協会(中村徹会長、741会員)は6月10日、東京都港区の東京プリンスホテルで第47回通常総会を開き、任期満了による役員改選で、東芝取締役会長の西田厚聰氏を会長に選任した。

 4期8年にわたり会長を務めた中村前会長は「観光というのは地域主権で、自分のまちをどうしたいのか地域の人たちが現実に形にしていくお手伝いをするのが任務だと思い、努めてきた」と振り返り、「新しい観光の切り口という観点から、経団連副会長の西田氏に後任をお願いする」と新会長に引き継いだ。西田新会長は「これまでの経験を生かし、国や地方、民間の橋渡し役などの果たすべき役割を遂行していきたい」と意気込みを語った。

 今年度事業は、(1)観光地域づくりと人材の育成(2)観光需要の喚起(3)外国人訪日旅行の促進と双方向交流の推進――を重点項目に掲げる。新規事業としては、海外観光宣伝事業のなかで、台湾向けプロモーションサイトの運営に加え、今年から2年の日台観光交流年を契機に、交流年事業を実施する。また、ニューツーリズムの活用と人材育成のセミナーなどを開くほか、新たな観光地域づくり基盤の整備や促進事業を行う。

 なお、日本ツーリズム産業団体連合会との合体も総会で承認し、今後は来年度総会までに新組織を設立して事業を開始する。法手続上は、日観協が存続法人となる。

日観協と合体、年内に詳細決定、第10回TIJ総会で承認

「観光立国の強力なエンジンに」

 日本ツーリズム産業団体連合会(TIJ、舩山龍二会長、183会員)は6月8日、東京都千代田区のグランドプリンス赤坂で第10回通常総会を開き、日本観光協会との合体などを承認した。

 10回目という節目を迎えるにあたり、舩山会長は「この10年は観光業界の飛躍に携われ充実した10年だった」と述べ、日観協との合体については「これから始まる10年は、新しい組織となり、観光庁の強力なパートナー、観光立国推進の強力なエンジンとなれれば」と思いを語った。

 10年度は「ツーリズム産業の連帯と拡大をはかり、観光立国の実現を目指す」ことを基本目標に、「休暇改革事業」「ツーウェイツーリズム事業」「広報・啓発事業」「産学連携事業」の4本柱の強力な推進と組織強化に取り組み、観光立国の実現へ向けTIJが主体的な役割を担うことを確認した。

 09年12月の理事会から検討を続け5月19日に合意書を交わした日観協との合体も、本総会で承認。合体準備協議会(仮)を立ち上げ、年内を目途に新組織名、制度設計、業務運営方針など、実務協議を重ね、結論を出していく予定だ。

 また、役員の一部改選も行われ、大西賢日本航空社長、小川矩良日本ホテル協会会長、佐々木隆之西日本旅客鉄道社長、新堂秀治全国空港ビル協会会長、太田耕造日本ツーリズム産業団体連合会事務局長の計5人が新任理事として就任し、大西氏は副会長に就いた。

国内宿泊旅行1.42回、宿泊数は2.31泊(09年度観光白書)

 国土交通省はこのほど、「2009年度観光白書」(09年度観光の状況・10年度観光施策)をまとめた。それによると、09年度の国民1人当たりの国内宿泊観光旅行回数は、前年度比6・0%減の1・42回(暫定値)、宿泊数は同2・1%減の2・31泊(同)だった。

 08年度の国内旅行消費額は同0・3%増の23兆6千億円。この結果、生産波及効果は51兆4千億円、雇用誘発効果は430万人と推計される。観光庁の矢ケ崎紀子参事官は「少ない回数、少ない日数で料金をかけて旅行していると想像する。消費額は横ばいだが、家族旅行が減少しているのでいつまで維持できるか。各世代で旅行回数0回が3―5割という数字もある」と所感を述べた。

 また、「宿泊旅行統計調査」によると、09年1―12月の延べ宿泊者数は2億9295万人泊で、このうち日本人延べ宿泊者数は2億7520万人だった。月別では、8月が3081万人泊と最多。昨年固有の要因としては新型インフルエンザ、また景気低迷の影響などから、シルバーウイークで好調だった9月を除くすべての月でマイナスだった。

 一方、海外旅行者数は同3・4%減の1544万6千人。8月以降、燃油サーチャージの廃止や円高などで回復基調に転じたものの全体では減少。また、訪日外国人旅行者数は景気後退や円高の継続、新型インフルエンザの感染拡大などで、同18・7%減の679万人と大きく減少した。

 2010年度の主な新施策は、「国際競争力の高い魅力ある観光地の形成」で、観光地域づくりプラットホームの立ち上げを支援し、共通の課題・解決策を整理する。「観光産業の国際競争力の強化及び観光振興に寄与する人材の育成」は、産業の新たなビジネスモデルの構築などに取り組む。「国際観光の振興」の国際会議(MICE)誘致では、今年を「Japan MICE Year」として積極的に海外にアピールする。また、「観光旅行の促進のための環境の整備」は、文化観光や医療観光、スポーツ観光の促進を行うほか、観光に関する統計調査として、観光事業者などの売り上げや就業実態などの調査手法を検討する。

医療機関とも連携、温泉地で現代湯治プラン(鳥取県・三朝、岡山県・湯原、鹿児島県・指宿の温泉地)

 温泉と健康・医療など組み合わせたヘルスツーリズムへの取り組みが盛んになっている。古くからある湯治の現代版で、入浴の指導やヘルシーメニューの開発、近隣の医療機関との連携、ITを使った科学的分析など病気予防の効果が「現代湯治」に期待される。そこで、鳥取県・三朝、岡山県・湯原、鹿児島県・指宿の3温泉地の取り組みを取材した。

「ITでストレスチェックも」

 鳥取県・三朝温泉は、世界屈指の高濃度ラドン含有量を誇る放射能線の泉質を生かして健康増進をはかる「現代湯治」に取り組む。同温泉の13軒の旅館が2―5連泊の滞在型宿泊プランを設定し、2泊目割引やカロリー・塩分など表示の夕食を提供。温泉入浴指導員「ラヂムリエ」の資格を持った旅館スタッフが、入浴方法などをアドバイスする。

 近隣の医療機関とも連携し、健康チェックも行う。温泉療法を行う岡山大学病院三朝医療センターと三朝温泉病院の2医療施設では、95度に温めた温泉泥をタオルでくるみ、約30分間患部にあてる「鉱泥湿布療法」や「温泉プール療法」などが受けられる(各種療法利用には医師の診察が必要)。

 3泊以上の滞在型プラン「湯食健身」を販売する「三朝薬師の湯 万翆楼」では、昨年9月から今年5月末まで湯治目的の宿泊が約1千泊あったという。50代後半から70代の年齢層が中心で、地域は西日本エリアが多いが、首都圏からも少なくない。

 県の「健康づくり応援施設」事業の認定を受け、夕食メニューにカロリーとたんぱく質、塩分を計算した栄養成分を表示。長期滞在客には地元食材を使った日替わりメニューを用意する。例えば水曜日は「すっぽんスープ小鍋仕立て」「鯉の洗い、酢味噌和え」「鯖の煮付け」など10品で、総カロリー687キロ、たんぱく質33・6グラム、塩分7グラムに抑える。

 同館の高島稔支配人は「旬の食材も使いながら、今後はヘルシーメニューの昼食も対応していきたい」と話す。

 また、岡山県の湯原温泉では2004年から地元の真庭国民健康保険・湯原温泉病院と連携し、人間ドッグと旅館の1泊2食をセットした「湯けむりドッグ」を発売し、お湯が豊富な温泉と健康保養でイメージアップをはかる。セット料金を2万9千円からと格安設定し、旅館スタッフが正しい温泉の入り方も指南する。

 検査は医師による問診・診察から身体計測、循環器、呼吸器、血液、肝機能、脂質、腎機能、糖代謝、消化器などの項目で行う。希望で直腸がんや乳がんなどの検査もできる。とくに同病院では、血液検査で消化器系のがんを発見できるペプシノゲン法を取り入れており、受診者は朝食を摂って検査に臨める。検査も午後1時から約2時間で終了。30分後には医師の説明がきけ、夜には旅館で通常の夕食が食べられる。600キロカロリー以下に抑えたヘルシーメニューも用意した。

 同病院よると09年度の「湯けむりドッグ」受診者数は66人。温泉組合の古林伸美理事(プチホテルゆばらリゾート)は「夫婦や家族で予約し、そのうち1人が利用するケースが多く、宿泊者数にすれば200―300人になる」と話す。

 課題は「滞在しての楽しみ方」(古林理事)で、懐かしい射的場を復活させたり、ボランティアガイドによる散策、ロンドンタクシーでの周遊、そば打ち道場での体験などメニューをそろえている。

 一方、砂むし温泉で知られる鹿児島県の指宿温泉では、ホテル・旅館10軒が温泉保養・滞在のリラックス度を測定する「平成版IT湯治」の無料お試しキャンペーン(実証実験)の第1回を昨年9月20日から今年2月7日まで、4月からは通年で実施している。

 IT湯治は、ホテル・旅館に用意されたベルト型の計測器(小型心電モニター)を胸につけて(砂むしや温泉入浴ははずす)、朝から夜まで約12時間の行動を30分間隔で記録してリラックス度(ストレス変化)を計測する。ホテル旅館に設置のパソコンで、その記録をチェックして、結果をプリントアウトして持ち帰り、日常のストレスと健康のコントロールに役立ててもらおうというもの。

 主催は同温泉のホテルや県、大学、医学財団など産官学で構成する「鹿児島県健康保養地域活性化協議会」で、旅館・ホテルが共催する。対象は指宿温泉に原則2泊以上する滞在客で、各旅館・ホテルで5人ずつの1日50人の限定利用とした。

 第1回のキャンペーンでは約200人が利用。そのうち168人にアンケート調査し、結果をまとめた。全体の約4割が50―60歳代だったが、働き盛りの30―40代も3割を占め、職業では「仕事でのストレスを感じている」と思われる会社員が全体の6割を占めた。

 体験の感想では「ストレスの変化が見られ、体調管理など日常に生かせる」などおおむね好評だった。主催者の1人、指宿ロイヤルホテルの細川明人社長は「計測器の使いやすさと有料の場合の価格設定(アンケートでは3千円以上5千円未満が1位)、検査データの表現を面白く、分かりやすくする」などを今後の課題に上げる。

 IT湯治はJTB九州が旅行商品のオプションとして組み入れており、医療、健康組合、生保などの企業団体からも関心が集まっているという。

 主催者は地元食材を生かした低カロリー食の開発とウォーキング、砂むし入浴などを組み合わせた滞在型プログラムに、身体状況計測器・ICTを活用した滞在者の健康チェックを組み込み、商品化の定着を目指す。

Lonely Planet Japan、40%の支持でNo.1に

「外国人に人気の日本ガイド本、ウェブでアンケートを実施」

 外国人が最も好きな日本を紹介するガイドブックは、「Lonely Planet Japan(米:1990年初版発行)」であることが、外国人のための日本情報ポータルサイト「ジャパンガイド」を共同企画・運営するエクスポート・ジャパン(本社・東京)の調査で分かった。

 昨年12月31日―今年2月19日まで同サイトのユーザー向けにアンケートを実施し、期間中欧米、日本、東南アジアなど在住者2374人から回答を得た。設問は「どのガイドブックが1番好きですか」で、Lonely Planet以外に「Rough Guides Japan」「Fodor’s Japan」「Frommer’s Japan」「Let’s Go Japan」「Michelin Japan」など9種類からの選択肢・自由記述方式。

 Lonely Planetは全体の40%を占め1位に支持された。同社では、幅広い地域情報や詳細な交通案内など、旅行に便利で必要不可欠な情報が多く掲載されているのが1番の支持を得たと分析する。

 2位は軽く小さいサイズで人気の「Let’s Go Japan(米:2003年初版発行)で13%を獲得。多くの高級旅館やホテルをあらかじめ掲載しない配慮が、リーズナブルに旅行を楽しみたい旅行客に人気という。ただ、マレーシア在住者だけはLet’s Goが1位(52%)の支持。一方、ミシュランを生んだフランスでは「Michelin Japan(仏:09年初版発行)が2位(16%)となった。

物販スペース拡大、新生「やまなし館」オープン

 山梨県(横内正明知事)は6月1日、首都圏のアンテナショップ「富士の国やまなし館」(東京・日本橋)をリニューアルオープンした。オープニングイベントでは、横内知事とフリーアナウンサーの中井美穂さんらがテープカットを行った。  横内知事は「日本一のパワースポット富士山以外にも、ワイン、ブドウや桃、ジュエリーなどを積極的にPRしていく拠点にしたい」と、新生アンテナショップに期待を寄せる。

 観光情報などの案内を中心に展開していた同館は、運営を電通ファシリティマネジメントに委託。特産の野菜なども販売するほか、ワインの試飲コーナーなど販売スペースを広げた。スタッフは全員が女性。

 同時に開かれた「ビタミンやまなし2010キックオフイベント」では、中井美穂さんが「やまなし大使」に任命された。また、お笑いタレントのふかわりょうさんや山梨県出身の林真理子さんなどが、同県の魅力を語るトークイベントに参加した。ふかわさんは「山梨は心のすき間を埋めてくれます。今日もこれから山梨に帰ります」とフリークぶりを披露していた。

 「ビタミンやまなし」は、主に30代から40代の女性をターゲットにする。美容や健康、癒しなどに関連するキーワードを、ビタミン「A」から「Z」のアルファベットで表して情報提供を行っていくという。

旅行商品の販売も、新潟館ネスパスが改装

 東京・表参道にある新潟県のアンテナショップ「新潟館ネスパス」が、6月5日にリニューアルオープンし、旅行商品の販売を開始した。リニューアルしたのは2階の観光パンフレットコーナーなどを置いてあったスペース。新たに旅行カウンターを設置し、新潟の旅行商品の販売を開始した。旅行商品は日本旅行の協力を得て企画したものを販売する。

 当日のオープニング式典では新潟県観光協会の吉川孝之常務理事が「ネスパスには、年間100万人以上が来館している。今回のカウンター設置によって、その場で新潟への旅行商品が提供できるようになった。このサービス提供を通じて1人でも多くの人に新潟に来ていただきたい」とあいさつした。関係者らの鏡割りの後、地元旅館組合の女将さんらが、通行人に振る舞い酒を提供した。

 さらに同日と翌6日には、女将さんたちによる抹茶とお菓子のサービスや、旅行カウンターで商品契約した人にもれなく魚沼産コシヒカリをプレゼントした。

 旅行カウンターの営業時間はネスパスと同じで午前10時30分―午後6時30分。年末年始を除き年中無休。

美しいまちなみ賞、大賞に金山町と倉敷市

 2010年度の都市景観大賞「美しいまちなみ賞」(都市景観の日実行委員会主催)がこのほど決まったが、最高賞にあたる大賞(国土交通大臣賞)には金山町金山地区(山形県金山町)と倉敷市倉敷美観地区(岡山県倉敷市)の2地区が選ばれた。このほか優秀賞には南木曽町妻籠地区(長野県南木曽町)など4地区、特別賞には葛飾区葛飾柴又帝釈天参道周辺地区(東京都葛飾区)など2地区がそれぞれ選定された。

「優秀賞に南木曽町など、特別賞など合わせて8地区選定」

 同賞はNPOなどのまちづくり組織と行政が協力して、ハードとソフトの両面を含めて美しい街並みの形成に取り組んでいる地区を表彰するもので、2001年度に創設された。表彰は6月1日に東京で開かれた「日本の景観とまちづくりを考える全国大会」で行われた。

 金山地区は〝金山杉〟の産地で知られる町の中心部に位置し、江戸時代に羽州街道の宿場町として栄えたところ。取り組みは1960年代の「全町美化運動」から始まり、83年の「街並景観づくり100年運動」を基本にHOPE計画、景観条例・景観形成基準の制定、景観助成制度の創設などにより、「金山式住宅」の街並み整備を行ってきた。こうした全町あげた景観形成の取り組みを評価した。

 また、町民の定住意識が周辺の市町村に比べて高いことから、「景観形成の効果が新たな段階にまで至ってきているという点」が高く評価できるとしている。

 一方、倉敷市倉敷美観地区は江戸期以来の歴史的な町並み景観が保全され、年間300万人以上の観光客が訪れる県内有数の観光地。1979年に重要伝統的建造物群保存地区に選ばれ、これを機に歴史的建造物の修理・景修に対する助成、建築基準法の緩和、固定資産税の減免などが積極的に行われた。「倉敷町家トラスト」などのまちづくり組織も設立され活動も活発だ。

 講評では保存された古民家の再利用方法が洗練され、創造的であるとするとともに、町づくりの活動の担い手がいずれも市民または後継者が多いことから、「財産の再投資運用によるライフスタイルの発展継承という点で、都市文化の再生産システムがうまく機能している」と高く評価している。

 優秀賞と特別賞は次の通り。

【優秀賞】
函館市都市景観形成地区(北海道函館市)▽会津若松市七日町通り地区(福島県会津若松市)▽横浜市中区山手町地区(神奈川県横浜市)▽南木曽町妻籠地区

【特別賞】
葛飾区葛飾柴又帝釈天参道周辺地区▽金沢市武蔵ヶ辻第四地区(石川県金沢市)

研究成果など発表、千歳大会に約80人(日本国際観光学会)

 日本国際観光学会(香川眞会長=流通経済大学教授)は6月12、13日、第12回全国大会(千歳大会)を北海道千歳市で開き、研究者らが特別プレゼンテーション・研究発表したほか、千歳市近郊の視察会を行った。テーマは「変貌する経済状況と観光 打開の道、地方への提言は?」。地方開催は昨年の金沢大会(石川県)に次いで2回目で、開催地事務局を千歳観光連盟が担当。全国から約80人が参加した。

 歓迎のあいさつに立った山口幸太郎千歳市長は、観光は今や国の重点施策の一つに位置付けられ、経済発展や地域振興にとっては欠かせない要素だとし、「課題も多いが、この大会で観光の大きな方向付けができれば幸いだ。期待したい」と述べた。

 この後、香川会長が「新たな観光の視座」と題してスピーチ。インバウンドへの適切な取り組みや住民が主体となった観光まちづくりなどの重要性に触れながら、「いま一度、観光が世界の平和につながっていることの再認識をすることだ」と結んだ。特別講演は原祥隆国際観光サービスセンター専務理事による「観光の危機 打開の道は」。インバウンド振興には経済危機をはじめ多くの阻害要因があるものの、人材の活用と育成が不可欠とし、「国際力と専門力、現場力」の必要性を強調した。

 午後は26のテーマについて、それぞれの研究者が特別プレゼンテーション・研究発表。このなかで千歳高校流通科の生徒たちも「地域との連携による商業教育の新しい可能性」について発表した。クーポンマガジン発刊やメーカーとタイアップした各種商品開発事例などを紹介。「地元の素材がプロデュース次第で宝石になる」とし、商業高校としての視点から地域活性化への可能性を示唆した。

 同学会は産官学の観光関係者で1993年に設立された。会員は約400人。次回の開催は東京・東洋大学の白山キャンパス。テーマは「日本からの魅力発信」。期日は10月23日を予定している。