観光庁は9月29日、有識者などで構成する「感染症発生時における観光関連産業リスクマネジメント検討会」を開いた。第2回となる今回は、同庁が作成した「観光関連産業における感染症風評被害対策マニュアル」の素案や、マスコミの報道姿勢などについて意見を交わした。
同会は、観光団体や各省庁、地方自治体、学識者、報道機関などが委員となり、新型インフルエンザ発生で影響を受けた観光関連産業が、今後の感染症発生時の影響を最小限に食い止める方策を検討するのが狙い。感染症に対する業界共通のマニュアルを作成し、関係者がとるべき対策を共有する。 会議は、まず類似事例の調査結果や対策マニュアルの素案について観光庁側が説明した。また、マニュアルができるまでの対策として「観光関連産業において直ちに取り組むべき対策」(案)も発表し、(1)情報収集の徹底等(2)さらなる感染拡大に備えた対応の検討(3)予約客等に対する的確な情報提供――を提案した。
これを受けた意見交換の場では、日本旅行業協会(JATA)理事・事務局長の奥山隆哉氏がマニュアルについて、「旅行者の過剰反応への対応」や「取消料収受の原則の確認」などを盛り込むことを要望した。また、「お客様への情報発信をどのように行っているか、旅館・ホテル側と旅行会社でお互いに協調して共有する場が現在ないので、BtoCに関する情報交換にも触れてほしい」とした。パームコンサルティング・グループ代表の伊原正俊氏は、「知識の部分とアクションプランが混在している」と指摘。とくにアクションの部分は「もっと具体的にしないと、マニュアルにならないのでは」と述べた。
また、読売新聞東京本社編集局社会部次長の原口隆則氏は「『風評』というのは、ありもしない噂のことでマニュアルのなかで『繰り返される報道による風評被害』と記すのは、マスコミが助長して報道する前提で書かれている。現場の観光関係の方が、風評被害と感じて作成するマニュアルならいいが、国が出すマニュアルで記すと、報道機関は反発を覚える」と語った。これに対し、全国旅館生活衛生同業組合連合会厚生委員会委員長の野澤幸司氏は「実際に報道で被害に遭ったと感じている側からすると、発生当初は仕方ないが、その後、収縮する報道も考えてほしい」と意見した。また、新型インフルエンザに対しては「通常の季節性インフルとの比較などを併せてだしてもらうと分かりやすい。皆が安心するような発表、情報を」と要望した。
一方、NHK報道局社会部デスクの小林潤氏は「とくに新型インフルエンザの場合は、当初は得体が知れなかった。国民を守る報道の視点からすると、最悪の事態を想定した報道にならざるを得ない」と語った。マニュアルのなかでは「平時の対応を充実させるべき。平常時に報道機関とのパイプや話し合いの場を作るというような具体的なことを記したほうがいい」とアドバイスした。