JTB・田川社長×HIS・平林社長 対論、トラベル懇話会「新春講演会」

 トラベル懇話会(会長=糟谷愼作・西武トラベル社長)は1月7日、東京都千代田区の有楽町朝日ホールで開いた第32回新春講演会で、JTB社長の田川博己氏と、エイチ・アイ・エス(HIS)社長の平林朗氏の対論を行った。日本を代表する旅行会社のトップが顔を合わせ、2010年の海外旅行市場の行方のほか、リアル店舗やウェブ戦略、価格戦略、グローバル戦略などについて、考え方や今後の方針を語り合った。

 新春講演会に先立って、糟谷会長は新年のあいさつで登壇し「2010年を迎えたが、旅行産業はいまだに20世紀の実績を超えられない。今回のJTBとHISのトップ対論は、旅行産業が21世紀型に変わっていく方向性を示してくれるものと期待している。今年も『明るく元気に』をスローガンに進んでいこう」と呼びかけた。

 対論の司会は、ダイヤモンド・ビッグ社「地球の歩き方」会長の西川敏晴氏が務めた。  まず現状認識について、JTB社長の田川氏は「地域密着で営業しないとこれからの旅行業は成り立たないとの認識から、06年4月に15社に分社化した。新しい旅行業のかたちや事業領域を求めて、現在は構造改革と成長戦略を同時に行っている」と述べた。構造改革では店舗ネットワークが最大の問題とし、成長戦略は(1)ウェブ(2)グローバル(3)地域交流――の3つをあげた。

 HIS社長の平林氏は2年前に社長に就任した理由を、「激変する環境には、より若い世代で対応していき、新しいビジネスモデルを作っていくことを任された」と話した。「HISは創業30周年を迎えたが、これまでのビジネスモデルをこの1―2年で大きく変えつつある状況」とし、「日々起こる変化にいかに対応するかを最も重視し、変化に先回りして対応することを心掛けている」と語った。昨年、マニラに100拠点目を展開しており、現地発のアウトバウンドを拡大していくことに力を入れていると説明した。

 ――リアル店舗、ウェブ戦略について

 JTBの田川社長は「昨年の高速道路1千円化によって、急激にインターネット利用が高まり、とくに国内宿泊においては相当に増えた。これがリアル店舗のあり方を考えるきっかけとなった」と話し、JTBグループで200店舗閉鎖と報道された経緯を話した。田川社長は「インターネットは商品の価値を高めることよりも、価格を下げるベクトルに動くようだ。価値を上げ、価格を上げるようには動いていない」と厳しい口調。そのうえで、「店舗ではインターネットを道具として扱うやり方の道筋を考えていく必要がある」と語った。

 HISの平林社長は「96年にホームページを立ち上げて以来、店舗とEビジネスはほぼ均等に力を入れてきた。店舗は統廃合はあるが、基本的には拡大策をとっている」と述べた。さらに、「5―6年前、eビジネスの可能性についての見通しは、総取扱額の1―2割で頭打ちだと予想した。我われは海外旅行が主なので、説明商品という性質柄そこまでeビジネスの比率が高まることはないだろうと見ていたが、今同じ質問をされると、『50%を超える可能性は十分にある』と答えるだろう。この2―3年は店舗が苦戦するなか、携帯(モバイル)による取扱いも急激に増えており、今後どこまで比率が上がるか予想しづらい状況」とした。一方で「ウェブで申し込まれるお客様は海外旅行に慣れたリピーターが中心。店舗を出店していかないと新規顧客の獲得は難しい。また、利益率の高い付加価値をつけた商品を売っていくには、店舗での販売が重要だと考えている」との見解を示した。

「単純な安売りは避けるべき―田川氏」

「「新規顧客」の獲得は店舗で―平林氏」

 ――2010年の海外旅行市場について

 田川氏は「これだけイベントが目白押しの年に、もし需要が伸びなければ、旅行会社を辞めてしまえといわれるような年」とし、平林氏は「数字は伸びると思うが、景況感は09年以上に厳しい年と認識している。成田、羽田空港の発着枠が拡大し、新規エアラインも多数乗入れるなか、ここで需要が拡大しなければ未来はないなと感じる」と語った。

 JTBとHISが共同でチャーター機を飛ばす可能性については、平林氏は「チャーターは旅行会社が負うリスクが高いので、オフラインの新規デスティネーションなどで需要喚起する場合にはぜひ共同でやらせていただきたい」。田川氏は「1社でやるには非常にリスクが高い。あらゆる旅行会社が共同でやるのがいいと思う」と語った。

 お互いをライバルと思っているかについては、両社長とも「そう思っている」と答えた。

 平林氏は「経営する以上は目標がいる。『JTBを追い抜きたい』というのは我われの大きな目標」と語った。一方、田川氏は「HISさんをターゲットにしているのは、FITの分野。いかにFITのお客様を取り込んでいくかという部分で、正直言って(JTBは)負けていると思う。これはJTBグループとして大きな課題。JTBとHISのオペレーションの仕方が違うが、HISさんのほうがスピーディー」と述べた。

 ――価格戦略について

 平林氏は「デフレによって消費者の価格志向が強まっている。しかし、価格を下げることで総需要が広がるとは思っていない。パイを取り合っている印象」と語った。新春格安キャンペーンの「初夢フェア」については「決して主力として出しているわけではない。(あの価格では)会社の経営も成り立たないし、付加価値の高い商品を店舗で販売していきたい」とした。

 田川氏は「価格の設定はそれぞれの会社でポリシーがあると思うが、質的な部分と絡めて常にセットで議論してもらいたい。質的な議論がなければ、価格が単に下がるだけ。業界として質を議論する体質に変わる必要性があると思う。『安い商品』と『安売り』は違う。単純な安売りは避けなくてはならないと思っている」と語った。

「目標は〝JTBを追い抜く〟――平林氏」

「FITの取り込みが課題に――田川氏」

 ――グローバル戦略について

 田川氏は「海外旅行とインバウンドは国内施策。JTBは世界80数カ国にランドオペレーターとしての機能を持っており『世界最大のランドオペレーター』というのが強み。現地で送客事業を行い、日本をはじめ世界にその国からお客様を送り出す機能をしっかりやることがグローバル戦略だと考えている」とした。そのなかで、「とくにアジアなどではその国の商習慣にあわせた進出の仕方が重要になる。たとえば合弁会社や協業などで進出しないとグローバル戦略は上手くいかない。韓国ではロッテと組んでいる。国内の人口が減るなかで、国際交流人口は爆発的に拡大している。インドやブラジルなどの新興国など、マーケットのあるところで商売をするというのは商いの基本」と語った。

 平林氏は「次の30年の成長戦略を考えると、世界に出て行かざるを得ない。アジア圏では現在、ものすごい数の旅行会社が設立されている。何10万社あるのかなという感じを持っている。日本のように産業が成熟していないので、旅行業法や約款もほとんど整備されていない状況。この中でグローバル化するには、我われのスローガンである『Think local, Act global』で思考をローカル化しないと難しい。 我われはメーカーと違って、販売する商品が確たる『製品』ではないので、各国に伝えられていくノウハウは、目に見えないオペレーションのノウハウや、商品造成の考え方などしかない。だから、ベンチャースピリッツをいかに委嘱できるかにかかっているので、並大抵ではないなと感じている。だが、そこに出ていくしか15年後、30年後の成長戦略は描けないと思っている」と語った。「一方でアジアの国々の旅行会社が日本に進出して、日本でビジネスすることも十分考えられる」と危機感も示した。

 田川氏は、「日本にはインバウンドについての法律はない。05年に作ろうとしたが、残念ながらできなかった。私はインバウンド向けの法律もしっかりと作るべきだと考える。今後インバウンド市場で2千万人―3千万人を求めようとするならば確立すべき」と強調した。

 ――旅行会社の価値について

 田川氏は「21世紀に旅行会社が残るなら、海外でも国内でもデスティネーション開発や地域開発をやる姿勢が必要。単に売っているだけでは旅行販売業であり、旅行事業ではない。JTBは旅行事業をやりたい。そのために総合旅行業の名を捨て、交流文化産業という名をつけた。将来的にはライフスタイル産業になりたい」と話した。

 平林氏は「現在情報が過多になり、いい情報を選択することが難しくなっている。旅行会社として、いかに主体的に楽しい旅行をお薦めできるかにかかっている」とし、「参加したお客様が想像していた以上に、感動や楽しみを感じていただけることができる存在でありたいと思う」と語った。

今秋ハワイに新施設、リゾ婚断念層を開拓(ワタベウェディング)

 ワタベウェディングは今秋、ハワイのコオリナ第2ラグーンにハワイ最大規模のハイクラスのウェディングリゾート施設「ホヌカイラニ コオリナ・プレイス・オブ・ウェリナ」をオープンする。12月24日から販売を始めた。施設は同ラグーン内で3番目。

 12月9日の会見で同社の渡部秀敏社長は「考えられる限りのハワイらしさを取り入れている。ここに行かないと実現できないクオリティーを実現する」と意気込みを語った。「国内に流れていた客を取り返しにいく」と、リゾート婚断念層の取り込みを狙う。リゾート婚希望層は約5万組がいるといわれ、そのうち約7割が国内のホテル、ゲストハウスに流れているという。

 施設の特徴は一方通行の自然な導線設定。チャペルの入口から、庭、パーティー会場まで同じ導線を2度通らない。他の挙式者を気にしないで、挙式からパーティーまでゲストハウス同様のプライベートなセレモニーを実現できる。チャペルのデザインは、ハワイアンに大切にされてきた「HONU(ウミガメ)」。海に浮かんでいるような臨場感と、270度の大パノラマが売り。

 サービスコンセプトは「7つのウェリナ」。ウェリナとはハワイ語で「愛を込めて」の意。全米レストラン・ランキングでトップ10、ハワイ・リージョナル・キュイジーヌのマスターシェフ、アラン・ウォン氏監修による料理のほか、パーティーマスターによるパーティーの準備から進行、演出までの手伝い、プロ集団によるウェディング・フォトなど、ハイレベルのサービスコンビネーションを用意する。

 ウェディングプランは原則すべてパーティー付パッケージ。オリジナルプランと新婦のヘア&メイク、ローズマリー衣装プラン、6人分パーティーがセットのスマートプランの料金は52万9千円。

 販売目標組数は2010年下期1千組、11年通期で2千組を目指す。

「飛鳥Ⅱで日本一周」が受賞、クルーズ・オブ・ザ・イヤー2009(JOPA)

 日本外航客船協会(JOPA、今崎慎司会長)は昨年12月17日、東京都内で「クルーズ・オブ・ザ・イヤー2009」を開き、各賞の表彰を行った。2回目の今回はJTB九州と西日本新聞社、郵船クルーズの「燦くる~ず2009 飛鳥Ⅱで航く紅葉の日本一周クルーズ」がグランプリに輝いた。

 冒頭、今崎会長は「クルーズは安定した収益が確保できる一方で、差別化をはかるのが難しい。今回受賞した商品はいかに特徴をだすか工夫され、オリジナリティーがでている商品だ」と受賞商品を評価。「業界を取り巻く環境は必ずしも追い風ではないが、団塊の世代を含め、今後もクルーズに適した年齢の人がでてくるという基本は変わらない。下を向かず、元気をだして頑張っていきたい」と語った。

 同賞は、同協会の創立20周年を記念して創設した事業で、クルーズマーケットの拡大に貢献した商品を企画造成、実施した旅行会社や関係者などを表彰し、業界の発展や向上を目指すとともに、消費者に良質の商品、サービスの提供をはかることが目的。グランプリ以下の受賞は次の通り。

 【優秀賞】
「ぱしふぃっくびいなすチャータークルーズ 今世紀最大の皆既日食観測クルーズ5日間」(読売旅行クルーズ部・NHKプロモーション)▽「ふじ丸チャータークルーズ2009年皆既日食クルーズ」(日本旅行神戸支店・兵庫県立大学)

  【特別賞】
「MSCファンタジアで航く 地中海・北アフリカ7都市周遊クルーズ10日間」(PTSクルーズ&レジャー事業部)▽「高知県」

  【ベスト・クルーズカップル・オブ・ザ・イヤー2009】
宇崎竜童・阿木燿子夫妻

未来遺産に10活動、岩手のイーハトーブなど(日本ユネスコ協会連盟)

 日本ユネスコ協会連盟は12月2日、「プロジェクト未来遺産」の初登録となる10活動に、久保川イーハトーブ世界自然再生事業(岩手県)や日本の記憶が息づく島ОKIを守り伝えるプロジェクト(島根県)などを決定した。同プロジェクトは、各地域の文化遺産や自然遺産を守り後世に伝えようという活動。

 未来遺産委員会(委員長=西村幸夫東大教授)による書類審査、一部現地調査を経て、危機にある遺産と生物多様性を守る活動を優先して選定したという。1回目の公募に対して、全国32都道府県から50プロジェクトの応募があった。

 今後、10プロジェクトに対して登録式典(3月22日開催予定)後、助成金贈呈や広報協力などの支援活動を行っていく。

 登録が決まった活動は次の通り。

 久保川イーハトーブ世界自然再生事業▽神楽坂をますます粋に~「粋益(いきまし)」プロジェクト(東京都)▽いきもの不思議の国・中池見湿地(福井県)▽葵プロジェクト(京都府)▽ならまちわらべうたフェスタ(奈良県)▽孟子不動谷生物多様性活性化プロジェクト(和歌山県)▽日本の記憶が息づく島ОKIを守り伝えるプロジェクト▽このままの鞆がいい!住民の手による歴史的港湾都市「鞆の浦」の歴史・文化・自然の継承と再生(広島県)▽八女福島空き町家と伝統工芸の再生による町並み文化の継承(福岡県)▽現代版組踊「肝高の阿麻和利」と「キムタカのマチづくり」(沖縄県)

人気温泉地ランキング2010、リクルートの「じゃらん」調査

 「もう一度行ってみたい温泉地」で、箱根が4年連続トップ 高湯などが秘湯部門で満点、有名温泉地部門では登別温泉が1位  リクルートの「人気温泉地ランキング2010」によると、「もう一度行ってみたい温泉地」は箱根(神奈川県)で、4年連続トップになった。2位は湯布院温泉(大分県)、3位は草津温泉(群馬県)と続き、ベスト10までの上位の変動は少なかった。また、「満足度」では高湯温泉(福島県)が2年連続の1位。

 調査は今回が4回目となり、対象はリクルートが運営する宿泊予約サイト「じゃらんネット」の利用者。31万7044人のうち有効回答数は5106人。温泉地は全国331カ所を選択肢として設定。

 これまでに行ったことがある温泉地のうち、もう一度行ってみたい温泉地トップの箱根は、首都圏からのアクセスのよさや自然に囲まれた街の雰囲気などが支持されている。2位の湯布院は街の雰囲気が好きだや自然に囲まれているなどの情緒的価値が高く、3位の草津温泉は街の雰囲気が好きだからに加え、温泉の効能や泉質が気に入っているというのが特徴。10位までに今回新たにランクインしたのは有馬温泉(兵庫県)で9位(前回は13位)。

 性別にみると、男性は1位の箱根に続き2位が草津、3位は登別温泉(北海道)、9位に下呂温泉(岐阜県)、10位に熱海温泉(静岡県)が入っている。これに対して女性は9位に有馬温泉、10位に城崎温泉がランクインしている。

 満足度は「最近1年間に行ったことがある」温泉地のうち、満足したと回答した割合。今回から来訪者30人以上の有名温泉地と、同15人以上30人未満の秘湯の2部門に分けた。有名温泉地のトップは登別温泉。2位は黒川温泉(熊本県)、3位は草津温泉。理由のコメントは登別、草津が泉質、黒川は宿泊施設や街中の環境というのが多い。

 一方、秘湯部門は高湯温泉、雲見温泉(静岡県)、湯の峰温泉(和歌山県)の3温泉地が同率(100%)トップ。秘湯なので母数(最近1年で行ったことのある人の数)は少ないものの、訪れた全員が「満足した」と回答している。高湯と湯の峰は泉質の評価が高く、雲見は民宿を中心とした料理と、素朴な雰囲気についてのコメントが多かった。

 「あこがれ温泉地ランキング」(まだ行ったことはないが、一度は行ってみたい温泉地)はトップが湯布院温泉、2位は登別温泉、3位は草津温泉。上位にランクインしている温泉地に共通しているのが、有名なのでという回答。ほかに温泉の泉質や効能に興味があるから、自然に囲まれているからといった理由が多いという。

 また、最近1年間に、行ったことがある温泉地「訪問経験ランキング」のトップは箱根。2位には昨年6位の熱海が入り3位は湯布院。4位は昨年11位から大きく上昇した下呂。

長崎県は210億円、高知県が234億円、「龍馬伝」経済効果を試算(日銀)

 大河ドラマ「龍馬伝」による観光客増加などの経済効果を、日本銀行の長崎、高知の2支店が昨年7月と10月にそれぞれ試算し発表した。長崎支店は長崎県への経済効果を210億円、高知支店は高知県への効果を234億円と見込む。

 長崎では2010年の県観光客数を08年比で5%増(141万2千人増)の2965万3千人と見込み、03年以来の3千万人台回復も視野に入ると予想する。経済効果の210億円は県内総生産の0・5%に相当する。

 主舞台の1つ長崎市の観光客数も08年比で15%増(84万6千人増)の648万7千人と予想し、03年以来の600万人超を期待。経済効果では市総生産の0・9%に相当する137億円と試算する。

 観光客底上げをはかるための対応課題として(1)坂本龍馬と長崎の密接な関係の周知(2)主演の福山雅治さんが長崎出身であることでの相乗効果を高める(3)龍馬伝関連施設へのアクセスの確保――などをあげる。

 観光消費額アップでは、特産物を生かした郷土料理や土産品の開発、飲食・ショッピング場所や雰囲気の提供の必要性を指摘。県内滞在日数の長期化をはかるため、龍馬伝関連施設と既存の観光資源との連携強化した観光メニューの拡充、体験型宿泊プランの提供、東京、大阪など大都市圏でのPR展開なども提案する。

 一方、高知では県外観光客数が08年比で37万3千人増の342万6千人。このうち宿泊客は17万6千人増の237万4千人と試算。消費額も74億円増の851億円と見込む。

 同県では06年に大河ドラマ「功名が辻」の舞台となり、宿泊客数が5%、観光施設入込客数が12%それぞれ増加。今回はそのデータを基に、「坂の上の雲」など四国を舞台のドラマ放映で相乗効果があるとして、3%を上乗せして算出した。

 観光客1人当たりの土産代が500円増加しただけで、60億円の経済波及効果が新たに生み出されると試算。観光客のニーズにあった新商品・サービスの開発・販売と08年の「花・人・土佐であい博」の経験を生かした官民一体の歓迎対策で、試算以上の経済効果を生み出すことが可能と指摘する。

「自分スタイルの旅」が本格的に定着、JTB2010年旅行動向見通し

 JTBはこのほど、2010年の旅行動向の見通しを発表した。これによると、国内旅行人数は前年比0・3%増の2億9千万人、海外旅行人数は同8・9%増の1680万人、訪日外国人数は同17・2%増の790万人と、いずれも旅行市場が拡大する見通しだ。

 国内旅行は、平城遷都1300年を迎えイベントが続く奈良や、大河ドラマ「龍馬伝」の主人公、坂本龍馬ゆかりの地である高知、長崎、京都、ドラマ「坂の上の雲」の舞台の愛媛県松山市など西日本に話題が集中しており、テーマを持って周遊する旅のブームも予想される。

 12月には東北新幹線青森延伸により、北東北周遊や北海道を組み合わせたツアーも注目を集めそう。

 JTBは「『自分スタイル』の旅の本格的な定着」に焦点を当てる。効率重視で閉塞感がある日常から離れ、より豊かで人間的な時間を過ごしたいという欲求が旅の形で現れつつある傾向を指摘。「自転車や徒歩で街を巡る」「町家、古民家での宿泊」「現地での体験ツアー」「一眼レフカメラを持って身近な街を巡る」など趣味やテーマに重きを置いた旅が浸透し、自分の価値観や生活スタイルに合った旅が人気を呼ぶのではないかと分析する。

 海外旅行は昨年5、6月の新型インフルエンザの影響による反動に加え、上海万博の開催、成田、羽田の2空港の発着枠拡大などが追い風となり旅行人数は増加。一方、デフレの影響を受け「安近短」傾向が強まると予想する。

第35回「100選」表彰式、1月22日、京王プラザホテル

 旅行新聞新社が主催し、全国旅行業協会(ANTA)および日本旅行業協会(JATA)後援による第35回「プロが選ぶ日本のホテル・旅館100選」、第30回「プロが選ぶ観光・食事、土産物施設100選」、第19回「プロが選ぶ優良観光バス30選」の表彰式・祝賀パーティーを1月22日、東京・新宿の京王プラザホテルで開催します。1990年からスタートした選考審査委員特別賞「小規模和風の宿」に選ばれた10軒の表彰式も行います。

 表彰式は午前11時から本館5階「コンコードボールルームC」で、祝賀パーティーは正午から本館5階「コンコードボールルームA・B」で開きます。

 今回は表彰式参加者を対象に午前9時30分から1時間、「売場が変わる旅行新聞早朝セミナー」も開きます。現在、本紙で企画している同名のプロジェクトについて、これまで実施した事例も交え学びます。

発表号では宿泊券・土産物を抽選で贈呈

 1月22日の表彰式・祝賀パーティー出席者と本紙読者には、すべてのランキングをまとめた小冊子「100選発表号」をお配りいたします。また、100選発表号のなかで、一般読者を対象にプレゼント企画を実施します。アンケート回答を募り、入選施設からご提供いただいた宿泊券や土産物を抽選で贈呈いたします。例年通り、日産レンタカーの各営業所に加え、一昨年から中日本高速道路会社管轄のサービスエリアで配布する同社の冊子(15万部)でも、プレゼント応募を受け付けます。抽選は5月初旬を予定しています。

 「優秀バスガイド」「もてなしの達人」表彰式は2月19日

 第8回「優秀バスガイド」、第7回「もてなしの達人」の表彰式は2月19日、東京都港区の世界貿易センタービル内・浜松町東京會舘で行います。詳細は後日、発表いたします。

観光庁予算127億円に、訪日外客3000万人事業は3倍増(10年度政府予算案)

 昨年12月25日に2010年度政府予算案が閣議決定され、10年度の観光庁関係予算は09年度予算(63億円)比2・02倍の126億5200万円となった。10月15日にまとめた概算要求では、09年度予算の約4倍の257億円を要求したが、行政刷新会議の「事業仕分け」の結果を受けて、半減したものの前年度予算の倍増を獲得した。

 事業別にみると、「訪日外国人3000万人プログラムの第1期」事業は、前年度予算の2・97倍となる94億7700万円を計上。なかでも、13年までに1500万人の目標達成を目指す訪日旅行促進事業(ビジット・ジャパン事業)に86億4800万円(前年度予算は27億8800万円)をつけた。地域別では、中国をはじめとする東アジア諸国を最重点市場とし、大規模な海外プロモーションを展開する。また、重点12市場に加え、今後大きな伸びが期待できるインド、ロシア、マレーシアの3市場を追加して戦略的なプロモーションを展開する。「MICEの開催・誘致の推進」事業は同1・24倍の4億4900万円とした。

 観光を核とした地域の再生・活性化には、6億4300万円を計上した。主要事業である「観光圏の形成支援等による国際競争力の高い魅力ある観光地づくりの推進」は6億200万円(前年度予算は5億8300万円)と微増。現在認定されている観光圏30地域については、年間平均宿泊数が5年間で約14%アップすることを目標に掲げた。

 また、ワークライフバランスの実現に向けた環境整備として、休暇取得・分散化促進実証事業には前年度予算の3倍となる2800万円を計上。関係省庁や地方自治体、経済界、労働界、教育界などの関係者で構成する有識者会議で連携を取りながら、実証事業などを実施し、効果の検証や取りまとめを行う。

観光庁・新長官に溝畑氏

「訪日外客1000万人早期達成」 「地域に自信と元気と誇りを」

 1月4日付で観光庁長官に就任した溝畑宏氏は同日、国土交通省で観光庁長官就任会見を開き、「いち早く訪日外客1千万人を達成させたい」と抱負を述べた。

 溝畑長官は、サッカー・Jリーグクラブ「大分トリニータ」の運営会社「大分フットボールクラブ」の前社長を務め、同クラブは08年にはJリーグナビスコ杯のタイトルを獲得した経歴を持つ。なお、初代観光庁長官の本保芳明氏は同日付で辞任した。

 昨年末、前原誠司国土交通大臣から観光庁長官を要請された際、「(地方のサッカークラブを)ゼロからスタートして日本一に育て上げたパワーで、日本の地域を元気にしてほしい。それが観光の大きな原動力になる。また、訪日外国人3千万人の早期達成に向け、中国市場を重点的に取り組んでほしい」と2点の使命を託されたという。溝畑長官は、「2002年日韓共催サッカーワールドカップ誘致など、これまで自分が韓国、中国などと深く関わり合ったこともあり、天命だと思い引き受けた」と語った。

 そのうえで、(1)早期に訪日外客1千万人の達成(2)観光立国へ関係省庁との連携、リーダーシップの発揮(3)休暇の分散による国内旅行需要の拡大――を課題にあげた。

 地域を魅力あるものにするためには、「自信と元気と誇りを一人ひとりの住民が持つことが重要」とし、地域間競争の必要性を強調。一方、訪日外客の約7割が訪れる大都市圏については「受入れが整備されているのか、都市政策を含めて考えていく必要性がある」と語った。

 溝畑長官は大分県庁に出向した際、当時の平松守彦知事が推進する、地域にあるものを生かし、付加価値をつけてブランド化し世界に向けてセールスしていく「一村一品」運動の理念に共鳴したという。その後、2002年日韓共催サッカーワールドカップや立命館アジア太平洋大学など、スポーツや学術、文化などを通じて地方を活性化し、世界へ発信するさまざまなプロジェクトを担当した。そして、昨年まで陣頭指揮をとっていた大分トリニータは「地方から日本一、世界を目指そう」という理念のもと、ゼロから立ち上げ、県民、企業、行政が一つになって08年には日本一のタイトルを獲得。残念ながら09年はJ2降格、経営不振などにより11月に経営責任をとって辞任した。

 溝畑 宏氏(みぞはた・ひろし)1960年京都府生まれ。85年東京大学法学部卒業後、自治省(現総務省)入省。北海道庁地方課・財政課、自治省財政局準公営企画室などを経て、90年に大分県に出向。02年大分県企画文化部長、04年大分フットボールクラブ代表取締役に就任。09年12月同職を辞任。