約200人が絶景と食を堪能 国立公園指定90周年記念しON・ガスウォーキングイベント(小豆島)

2024年4月8日(月) 配信

瀬戸内海とオリーブ畑

 香川県・小豆島町で3月16日、国立公園指定90周年を記念し、2回目のONSEN・ガストロノミーウォーキングが行われ、全国から約200人が集まった。

小豆島の恵みを堪能

 穏やかな内海湾沿いと約400年続く醤油造りの歴史のある醤の郷を巡る約7㌔のコースを歩きながら、島の味覚と絶景を堪能。

 加えて、ゴールまでの道のりが映画「二十四の瞳」の作中に登場することから、観光スポット「二十四の瞳映画村」の入場券がプレゼントされ、ロケツーリズムも楽しんだ。

 永井順也実行委員長の「食を通じ島の魅力を堪能し、ゆっくり歩いていただくことで島時間を感じて下さい。そして、温泉で最後は疲れを癒していただければ幸いです」との呼び掛けでスタートした今回のイベント。

オリーブ地鶏のアヒージョとオリーブの新漬け、箱寿司

 各ガストロノミーポイントでは、オリーブ飼料で育った「オリーブ地鶏」のアヒージョや「オリーブ」の新漬け、小豆島で毎日水揚げされる「島鱧」の天ぷら、一年中食べられる「小豆島天領真牡蠣」を地酒で酒蒸しにした一皿、郷土料理の箱寿司、ふし汁など多彩なラインナップで参加者をおもてなし。

地元グルメでPR

 料理と共に、島唯一の酒蔵「小豆島酒造」の吟醸生貯蔵酒森や、オリーブサイダー、参加者から「フルーティで後味がピリッとして美味しい」「お土産に買って帰りたい」など好評だった島の米や麦を原料に醸造する「まめまめびーる」などがふるまわれた。

醤の郷を散策

 「1日では巡り切れないほどの魅力があった。次は2泊の予定で来たい」「地元の隠れた場所や食を知ることができるのがこのイベントの魅力。今回もビールや島鱧などに出会えました」「自然が豊かで、過ごしやすそうな気候なので、移住しても快適に暮らせそう」「プライベートでもまた来てみたい」などそれぞれ感じた島の魅力を語った参加者は、イベント終了後も島の人気観光スポット「二十四の瞳映画村」を見学したり、温泉に浸かりながら内海湾の絶景を堪能したりするなど、島での時間を満喫した。

イベント担当者の声

 ONSEN・ガストロノミーウォーキングイベントは、課題となっていた閑散期(冬場)の誘客の一助になる新たな観光コンテンツとして、一昨年の12月、初めて開催しました。

 今回のコース設定に際しては、前回の参加者の皆様の声を受け、スタートとゴールを逆にしたのに加え、7カ所のガストロノミーポイントの半数以上を観光施設や店舗に設定することで、イベントで食べた商品をその場で購入できるようにし、出店事業者自らの商品の販促にもつながるように工夫しました。

 初開催で「ONSEN・ガストロノミーウォーキング表彰」開催地特別賞を受賞したなかでの第2回ということでプレッシャーを感じていましたが、イベントに携わって下さった町内事業者の皆様のおもてなしのおかげをもちまして、今回も目標としていたイベント満足度2年連続100%を達成することができました。

 今後は、イベントを小豆島全体に波及し、新たなコースやメニューの選定を行い、「食」を始めとする小豆島の魅力をより多くの方々に楽しんでいただきたいです。

【小豆島町商工観光課 主任主事 片岡 琴未】

特定技能制度解説セミナー、4月23日開催 バス・タクシーなど新分野もカバー(国際人材協力機構)

2024年4月8日(月) 配信

国際人材協力機構は4月23日(火)、特定技能制度に関する解説セミナーを開く

 国際人材協力機構(JITCO、八木宏幸理事長)は4月23日(火)、特定技能制度に関する解説セミナーを開く。

 特定技能は、労働力が不足する分野へ外国人労働者を受け入れる制度で、2023年末時点で約20万8000人が在留している。

 さらに、24年4月からは、制度の対象に「自動車運送業」「鉄道」「林業」「木材産業」の4分野が追加され、計16分野で受け入れが可能となった。

 既存の分野でも、新たな業務が追加されることになっており、政府は24年度からの5年間で82万人の受け入れ枠を設定している。

 同セミナーでは、急激に拡大しつつある特定技能制度の概要や、今回の変更点、分野別の運用方針などについて解説する。

 JITCOは、「今回初めて加わったトラックやバス、タクシーなどの貨物と旅客の自動車運送などの分野に携わる関係者や、外国人材と共に働く環境づくりを目指す皆様に有意義なセミナーとなる」とした。

 同セミナーは、4月23日(火)午後2時から午後3時まで。参加費は無料。定員は500人。

 Web配信での開催となり、事前申し込みが必要。申込期限は4月19日(金)まで。

休暇村奥大山で4月下旬からサンヨウカ開花 雨で花びらが透明になる珍しい花

2024年4月8日(月) 配信

サンカヨウの花びらは通常の白色(左)から雨など水に濡れると透明になる(右)

 休暇村奥大山(金田直也支配人、鳥取県・江府町)では、4月下旬から眼前の擬宝珠山(ぎほしやま)や近くの小谷沢渓流で「サンカヨウ」が見ごろを迎える。雨が降り水に濡れると花びらが透明になる珍しい花で、時期には一目見ようと多くの観光客が訪れるという。

 サンカヨウは冷涼な高知で湿度が高く、緑に囲まれた山腹に生える多年草。同ホテルが位置する鳥取県の大山や秋田県の白神山地などで群生が見られる。特徴は雨に濡れると白い花びらがガラス細工のような透明な花びらに変わること。花は一週間ほどで散ってしまうため、見られたら幸運だ。

 自生のサンカヨウは世界的にも珍しいが、奥大山では4月下旬から5月ごろに開花する。この時期はカタクリやダイセンキスミレなどほかの山野草も見ごろを迎え、たくさんの草花に出会えるという。

 同ホテルはオプションとして、木谷沢渓流散策ツアーを用意する。4月下旬~11月上旬の水曜に開催するもので、午前10:30~11:30の約1時間にわたり、現地ガイドと散策する。料金は1人1100円(税込)。

 宿泊プランでは、ゴールデンウイーク期間限定で特別ビュッフェプランを展開する。地元ブランドの「大山豚」「大山鶏」など、地産地消にこだわった料理が並ぶ。期間は4月26日(金)~5月6日(月)。料金は大人1人1万5000円から。

舎人公園でネモフィラをライトアップ 「花と光のムーブメント」

2024年4月8日(月) 配信

5月6日まで実施中

 東京都足立区の舎人公園は4月5日(金)から、イベント「花と光のムーブメント 舎人公園×ネモフィラ」を実施している。夜は幻想的なライトアップも行う。5月6日(月)まで。

 同園は、昨年に続き芝生広場にネモフィラ花壇を創設。この時期だけの青く彩られた園内が楽しめる。

 午後6~9時はストリングスライトを活用した波打つ光の演出で幻想的なライトアップと、モニュメントへのプロジェクションマッピングを行う。また、お花見広場寄りの噴水では、6:30から30分ごとに5分間のスモーク&レーザーショーも楽しめる。

 ネモフィラ花壇近くの売店「パークス夕日の丘店」では、ネモフィラをイメージしたソーダやソフトクリームなど期間限定商品を販売する。会期中の週末にはキッチンカーも出店し、軽食を売る。

 なお、「花と光のムーブメント」は小金井市の「小金井公園×サクラ(4月14日まで)」と北区の「浮間公園×チューリップ(4月21日まで)」でも行われている。

Instagram投稿CP「#花と光_私とキミが見た景色」

 会期中、同園内での写真を募集するインスタ投稿キャンペーン「#花と光_私とキミが見た景色」を実施している。指定のハッシュタグ「#花と光のムーブメント」「#花と光_私とキミが見た景色」「 #舎人公園」の3つを付けて「花と光のムーブメント」の会場で撮影した写真を投稿すると、抽選で5人に賞品をプレゼントする。応募には東京都公園協会公式アカウントのフォローが必要。

全旅連青年部、エスカレータ安全利用呼び掛け 約200人が全国9カ所で

2024年4月8日(月) 配信

博多駅での活動のようす

 全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会青年部(塚島英太部長)は3月26日(火)、全国9カ所でエスカレーターの安全な利用を呼び掛けた。訪日外国人客の増加などによって大きなカバンを持った旅行客が増えたことで、エスカレーターでの歩行が大きな事故を起こす危険性があるなか、安心・安全な旅を実現させたい考え。混雑緩和にもつなげる狙い。

 全旅連青年部は2023年10月2日、愛知県名古屋市で「エスカレーターの安全な利用の促進に関する条例」の施行を受け、金山総合駅(愛知県名古屋市)で開催されたキャンペーンにも参加している。

 当日は約200人の全旅連青年部の部員のほか、自治体と交通機関の関係者などが参加。すべての人が安全に使用できるよう、止まって乗ることや、2列で利用することを求めた。開催場所は、大通駅(北海道札幌市)、新宿西口駅(東京都新宿区)、六本木ヒルズ(同港区)、海浜幕張駅(千葉県千葉市)、金山総合駅(愛知県名古屋市)、京都駅(京都府京都市)、地下鉄京都駅(同)、博多駅(福岡県福岡市)。

 全旅連青年部は「これからも自治体や交通機関と力を合わせ、エスカレーターの正しい乗り方を訴求する」とした。

伊豆・松崎町で「わさびジオツアー」開催 収穫したわさびを昼食で堪能

2024年4月8日(月) 配信

手ぐわを使ってわさびを抜く

 伊豆半島ジオガイド協会は、静岡県・松崎町を舞台にわさび田散策とわさび採り体験を楽しむ「わさびジオツアー」を実施している。

 伊豆半島ジオガイド協会と池代地区の11軒のわさび農家がタイアップして開催している。ツアーは松崎町から約10キロ離れた池代活性化センターに午前10時に集合し、ジオガイド協会会員から世界農業遺産「静岡水わさびの伝統栽培」の歴史などを聞きながら池代地区を散策。その後、わさび田で長靴に履き替え、手ぐわを使いわさび採りを体験する。

 昼食では、釜で炊いたごはんにおかかを載せ、さらに収穫したてのわさびを添えていただく。わさびの二杯酢やわさび漬け、わさびの味噌漬けなど、わさび尽くしを堪能し、午後2時に解散する。

 参加費は大人6000円。ツアーは4月20日(土)、5月18日(土)、6月15日(土)の実施予定。申し込みは、伊豆バス旅行部(電話0558-43-2015)まで。

旅行ライター&エディター 三堀 裕雄

GWにキッズ・ベビールーム泊でオセロプレゼント 蓼科グランドホテル滝の湯100周年記念

2024年4月8日(月) 配信

カラーオセロ「ビタミンオレンジ」

 蓼科グランドホテル滝の湯(長野県茅野市)は4月29日(月・祝)から5月6日(月・祝)までのゴールデンウイーク期間に「キッズデラックスルーム」「ベビーデラックスルーム」に宿泊した子供に「カラーオセロ」をプレゼントする。合計100個で先着順となる。

 同宿は、2023年10月に創業100周年を迎えた。今回は記念コラボ企画の第3弾として、メガハウス(佐藤昭宏社長、東京都台東区)の人気商品で23年に発売50周年を迎えた「オセロ」と24年に発明50周年を迎える「ルービックキューブ」とコラボレーションする。

 オセロの日である4月29日からオセロ50周年とのコラボとして、冒頭の2部屋の宿泊でカラーオセロの「ビタミンオレンジ」か「インディゴブルー」のいずれかを先着100個プレゼントする。

 また、5月3~5日の3日間は「こどもの日」にちなんで、宿内の子供向け有料遊戯施設「蓼科キッズルーム」を利用すると「ルービックキューブ」などの玩具をもれなくプレゼントする。なお、個数限定につきなくなり次第終了という。

津田令子の「味のある街」「黒糖ドーナツ棒」――かどの駄菓子屋フジバンビ(熊本県熊本市)

2024年4月7日(日) 配信

かどの駄菓子屋フジバンビの「黒糖ドーナツ棒3本×6箱」1080円▽四方寄総本店:熊本県熊本市北区四方寄町1445-1▽☎096(245)5350。

 先日、細川家下屋敷の庭園の跡地をそのまま公園にした肥後細川庭園(東京都文京区)を訪ねた。池泉回遊式庭園で目白台台地が神田川に落ち込む斜面地の起伏を生かし、変化に富んだ景観を作り出している。

 

 湧水を利用した流れは「鑓り水(やりみず)」の手法を取り入れて、岩場から芝生への細い流れとなり、その周辺に野草をあしらっている。池はこの庭園の中心に位置し広がりのある景観を作り出し、池をはさんで背後の台地を山に見立てている。

 

 斜面地は深い木立となっていて池に覆いかぶさるようにヤマモミジやハゼノキの一群が、秋には真っ赤に紅葉した姿を水面に映し出し、多くの見物客が訪れる。樹林の中の山道をしばらく登れば、主に細川家のお宝を展示する永青文庫に辿り着くことができる。

 

 今回ご紹介するのは、こちらの庭園で売られていた黒糖ドーナツ棒だ。

 

 かわいいくまモンのパッケージに魅かれて買ったのだが、「安くて美味しい、一度食べたら虜になりますよ」と言われ、試しに買ってみてあまりの美味しさにびっくり。

 

 外はサクッと、中はしっとり。優しい甘さが人気の秘密だ。沖縄の含蜜黒糖と選び抜いた小麦粉を使用した「黒糖ドーナツ棒」は、揚げ菓子とは思えないほど油っぽさが少ない。硬いような柔らかいような絶妙な食感に沖縄の黒糖が染み込み、食べていくうちに優しい甘さが口の中に広がっていく。

 

 1986(昭和61)年の発売以来、年配の方から子供まで世代と年齢を問わず愛され続けてきたこの一品は、「全国菓子大博覧会」をはじめ数々の受賞歴を誇り、郵便局ふるさと小包全国版では人気商品ランキングお菓子部門11期連続販売数量1位を記録したほどだ。

 

 そんな熊本銘菓を生み出した製菓メーカーが、「フジバンビ」(熊本県熊本市)だ。創業75周年を迎えた今でも「黒糖ドーナツ棒は、おいしくて身体に優しい」と評判を呼び、人々から愛され続けている。その理由を、「単純明快、おいしいからだ」と地元の方は、胸を張って言う。

(トラベルキャスター)

 

津田 令子 氏

 社団法人日本観光協会旅番組室長を経てフリーの旅行ジャーナリストに。全国約3000カ所を旅する経験から、旅の楽しさを伝えるトラベルキャスターとしてテレビ・ラジオなどに出演する。観光大使や市町村などのアドバイザー、カルチャースクールの講師も務める。NPO法人ふるさとオンリーワンのまち理事長。著書多数。

「提言!これからの日本観光」 「情報」は「観光」の「血液」

2024年4月7日(日) 配信

 「観光」にとって「情報」は「血液」としての役割を果たすといわれるほど、その果たす役割は大きい。

 これまでの「観光」はその主な情報源はいわゆる観光雑誌や、とりわけ観光ガイドブックなどによるものが中心であった。

 しかし、この種の「情報」は主に東京などいわゆる観光客の「発地」から出される情報であった。各地の観光と経験取材したガイドラインなどの編集者(観光地などを代表する)の目線によるものが中心となっていたと考えられる。

 観光(客)が真に必要とする観光(地)情報はむしろ観光地(着地)発のまた、観光地の目線に立ったいわば生きた「観光地情報」ではないかと思う。この着地別情報が流通していなかったためにまた、観光情報誌などが発地目線の記者の取材による情報が中心であったために発地側目線の情報がほとんどであったと考えられる。

 従って、観光に出掛けようとする人が目的地で選ぶ場合の情報にともすれば、偏りが生じていたのではないかとも推察される。

 観光(地)情報は観光地発の(観光地の目線に立った)いわば生きた情報が不足していたように思われてならない。

 観光地からの観光地目線での観光情報が発地目線の観光地への観光客への情報の陰に入っていたような感じさえするのである。

 その結果、特定の観光地に偏った観光客の集中が見られ、観光効果を滅殺するような観光行動が目立つようになった。また「観光」の場合、特定時季に特定観光地へ観光客も過度に集中して、混雑を招き、観光効果を滅殺する状況が目立つのであるが、そのような傾向をむしろ観光情報が助長するような結果を招いているのではないかとさえ思う。

 有効な観光情報はこのような特定地への情報集中による逆効果を防ぐべく、あくまでも観光客のニーズを正確に把握。そのうえで、観光客が必要とする情報を着地発のもの、発地からのものまた、地元観光団体や自治体などからの公式の情報などその発信源は多岐にわたるが、観光に入る動機を提供する適確なものを中心とすることが求められる。

 即ち観光客数を増やすための単なる誘致情報からの脱皮である。観光客の観光する心に訴えるいわば、観光地(着地)と観光客の心を結びつけるような着発地が連携した観光地情報こそが必要なのではなかろうか。

 数の増加もさることながら観光客の心に訴える情報が提供できるならば、観光客と観光地の観光する心(一致が見られるならば)その情報は観光客に一過性でない観光客を誘発し、同じ観光地の持続的リピーターとなって幅広く持続性のある観光行動に誘引することが可能になると思われる。

 観光は人の心に訴えるものであるだけに、このような幅広いかつ奥深い情報の編集発信が求められる。即ち、「情報」は「観光」にとってまさに「血液」としての役割を果たすものであると確信する。

 

須田 寛

 

日本商工会議所 観光専門委員会 委員

 
須田 寬 氏
 
 
 
 

【精神性の高い旅~巡礼・あなただけの心の旅〈道〉100選】-その36-田谷山瑜伽洞(神奈川県横浜市) 無言の説法が聞こえてくる ローソクの手燭台を持って入洞

2024年4月6日(土) 配信

 「私たちの歩みは、ちょっと速すぎるのではないか」。

 

 田谷の洞窟と呼ばれる霊場が神奈川県横浜市栄区、ちょうど戸塚と大船の間にある。うちの娘が藤沢の中高に通っていたので、あるとき起床が遅くなって学校まで車で送ったことがある。大渋滞していた国道1号線を避けて脇道に迷い込んだときに、この「田谷の洞窟」という看板を見つけ、ここはなんだろうとやけに気になった。

 

 

 12月の回で善通寺(香川県)を参詣した際、御影堂の地下通路をめぐる「戒壇めぐり」をした。真っ暗な中を南無大師遍照金剛と唱えながら左手を壁伝いに進み、その中央には大日如来像が安置されたところに辿り着くものであった。その経験をしたときに、ふっとこの田谷の洞窟の存在を思い出し、同じ真言宗だからと思い、改めて参拝しようと心に決めたのだった。

 

 田谷の洞窟は、正式名称を田谷山瑜伽洞と称する。瑜伽洞の瑜伽とは、ヨガだ。究極の悟りを開き、即身成仏に至るのが、密教におけるヨガの本質だ。もともとヨガは古代インドにおいて瞑想を主体とする静的な修行であったが、密教に伝播してからは、陰(月)と陽(太陽)との合一を目指し、宇宙との一体感を感じるという動的なものと変化した。この秘儀こそが密教の本質だという人もいる。

 

田谷の洞窟がある定泉寺本堂と弘法大師像

 

 田谷の洞窟の開創は鎌倉時代初期と伝わっている。ここは、弘法大師とともに全国一八八札所を巡拝するという霊場で、上下3段という不思議な構造を持つ。本尊弘法大師、四国、西国、坂東、秩父の各札所の本尊、両界曼荼羅、十八羅漢等、行者が壁面に刻んできた仏様たちが今も無言で説法を続けている。一般公開されている箇所以外にも洞窟は続いている。

 

 お参りに来られた近隣のご婦人とお話をしたのだが、NHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」でも人気を博した和田義盛が和田合戦で敗北したときに、和田一族の中でもとくに勇猛果敢で知られる義盛の三男、和田(朝比奈)三郎義秀がこの洞窟に逃げのびたという言い伝えがあるそうだ。さらに、かつては鎌倉までこの地下道は続いていたが、地震などの天災と劣化でもう埋まってしまったという言い伝えがあるということも教えてくれた。

 

 朝比奈義秀の逃避行は、安房から川越へ逃げたとか、宮城県・大和町に逃げたとか、西国和歌山県・太地町に逃げ、捕鯨法を伝えたとか、興味がそそられる伝説が各所に残されている。また機を改めて、源義経の逃避行とともにここで取り上げてみたい。このことからも、史実に忠実であることよりも、地元の言い伝えに耳を傾け、想いを馳せることができるのが精神性の高い旅の醍醐味だ。

 

洞窟の入口。なお、洞窟内は撮影禁止なので、入ってみてのお楽しみ

 洞窟に入るには、まず入口でローソクを手燭台に立てることから始まる。その手燭台を持って入洞していくと、普通の生活をしているときの速さで歩いていたらローソクの炎はすぐ消えてしまう。この炎を消さないためには、意識的にゆっくりと歩かなければならない。そこで、冒頭に記した「私たちの歩みは、ちょっと速すぎるのではないか」との思いを感じることになる。ゆっくり歩くからこそ、この岩を手掘りで掘り、その上でノミで仏様や梵字を丁寧に彫ってきた歴代の名もなき行者たちの信仰心を痛いほどに感じる。

 

 途中まで歩みを進めると水の滴る音が聞こえてくる。ここに鎮座するのが土佐の一つ亀。これは土佐清水氏の金剛福寺に伝わる弘法大師を乗せた亀の言い伝えによる。洞内には音無川という川も流れていて、湿潤さを保っていることがこれだけ長期にわたって崩れなかった要因のようだ。

 

 お大師さまと同行二人を感じたいときにこそ訪れたい場所だ。

 

旅人・執筆 島川 崇
神奈川大学国際日本学部国際文化交流学科教授。2019年「精神性の高い観光研究部会」創設メンバーの1人。