八代生姜を使った料理、飲料の提供にも注力 熊本県八代市・日奈久温泉でON・ガスイベント開催

2024年3月25日(月)配信

.レトロな面影が残る日奈久の温泉街

 

 熊本県八代市・日奈久温泉で1月14日、ONSEN・ガストロノミーウォーキングが行われた。

 参加者は、狭い路地が縦横無尽に伸び、路地にせり出した竹輪屋や明治に建造された木造3階建ての旅館などレトロな面影が残る日奈久の温泉街を散策。ゴール後は、約600年前に孝行息子の夢のお告げで発見された熊本県最古の温泉・日奈久の湯を楽しんだ。

 各ガストロノミーポイントでは、山女の塩焼や日奈久みそおにぎり、八代産トマトを使ったブルスケッタ、晩白柚のシフォンケーキなどで参加者を歓迎した。

ジンジャーボールと日奈久みそおにぎり

 肉団子に生姜を効かせたジンジャーボールやホットジンジャーなど八代の特産品でもある八代生姜を使った料理、飲料の提供にも力を入れたほか、前回のウォーキングで好評だった参加者が自分で魚のすり身を竹の棒に巻いて焼く「竹輪焼き体験」も用意した。

日奈久グルメを堪能

 参加者からは、「まちも素敵で、住民の方やスタッフの皆様がとても親切に対応してくださったので、機会があればぜひまた参加したいと思いました」「食のメニュー構成が和洋中とバランス良く、日奈久温泉エリアの名産も詰まっていたので、食の魅力がわかり易く伝わってきた」など高評価だった。

 主催者は「今回の参加者の半数以上が八代地域外からお越しの方で、地域住民にとっても日奈久温泉の魅力に気付くことができたと思っています。これからも、八代の歴史・地域文化に紐づいた食文化をガストロノミーウォーキングを通して全国に発信していきたいです」と展望を語った。

北陸応援割が開始、19年3月の予約人泊数上回る(髙橋観光庁長官)

2024年3月25日(月)配信

髙橋一郎観光庁長官

 観光庁の髙橋一郎長官は3月19日(火)に会見を開き、16日(土)から開始した「北陸応援割」について、「能登半島地震による風評被害を早期に払しょくするべく、キャンセルによって失われた分の旅行需要を新たに喚起することを目的とした制度」と強調した。利用状況について「大手旅行会社からの聞き取りによると、3月の予約人泊数が2019年同月を大きく上回るなど、北陸応援割の政策効果が現れている状況にあると認識している」との考えを示した。

 北陸応援割は、令和6年能登半島地震により観光需要の落ち込みが見られる被災地域に向けて、旅行・宿泊料金を割引支援する旅行需要喚起策。ゴールデンウイーク前を念頭に観光需要を喚起するもので、国内・訪日旅行者を対象に4月26日(金)宿泊分まで、1人1泊当たり最大50%を割り引く。

 対象は石川県、富山県、福井県、新潟県の4県。甚大な被害を受けた能登地域は、復興状況をみて改めて、より手厚い旅行需要喚起策を実施する方針としている。

 既に一部の宿泊施設が予算上限に達して締め切ったことについて、髙橋長官は「現在も予約を受け付けている宿泊施設や今後に予約受付を開始する宿泊施設もある。引き続き、北陸応援割の予算を活用して旅行需要の喚起がはかられるよう期待をしている」と話した。

 他方で石川県の宿泊施設では、現在も多数の2次避難者の受け入れが続いているため、北陸応援割の実施と2次避難をいかに両立させるかが課題となっていた。そこで、避難者を受け入れる施設の予算配分を配慮するとともに、予算の範囲内でGW以降も第2弾として実施できるようにすることで、2次避難者の受け入れを継続しつつ、北陸応援割を十分活用できる制度設計が行われた。

 髙橋長官は「2次避難に支障が生じないカタチで他3県とともに、16日(土)の北陸新幹線金沢―敦賀間の延伸開業に合わせて一斉に北陸応援割を開始できた。これを契機に北陸4県の観光振興が大きく進むと期待し、しっかり後押しする」と力を込めた。

 加えて、15日(金)から日本観光振興協会を中心とした「行こうよ! 北陸」キャンペーンが足並みをそろえて開始。さらに、日本政府観光局(JNTO)を通じて、北陸地域へのインバウンド誘客を促進すべく、北陸地域の集中的なプロモーションも取り組むとしている。髙橋長官は「こうした取り組みを通じて、引き続き官民一体となって切れ目なく取り組んでいくことで、北陸4県の観光振興につながることを期待している」と述べた。

訪日客数が過去最高、19年比7%増に回復

 2月の訪日外客数は、前年同月比89.0%増の278万8000人と2月として過去最高を記録し、9カ月連続で単月当たり200万人を超えた。コロナ前の19年同月比は7.1%増となり、5カ月連続で単月でのコロナ前水準に回復。うるう年で日数が1日多かったことに加え、旧正月(春節)が2月中旬となった影響がみられた。

 23市場のうちアメリカやシンガポールをはじめ19市場が2月として過去最高を記録したほか、台湾、ベトナムでは単月過去最高を更新した。

 一方、2月の出国日本人数は97万8900人となり、コロナ前の19年同月比は36.2%減。髙橋長官は「全体として回復基調にあるものの、コロナ前水準と同等である年間2千万人の目標達成に向けては、アウトバウンドの促進に相当力を入れて取り組まなければならない。引き続き、関係業界や各国・地域の政府観光局などと連携し、本格的なアウトバウンドの回復に向けて双方向交流の活性化に取り組んでいきたい」と語った。

横浜コンベンション・ビューロー、4月22日(月)から「横浜市観光協会」へ名称変更

2024年3月25日(月) 配信 

横浜市イメージ

 横浜観光コンベンション・ビューロー(岡田伸浩理事長、神奈川県横浜市)はこのほど、財団名を「横浜市観光協会」(英語名・Yokohama City Visitors Bureau)に変更する。

 同協会は、2022年度に観光地域づくり法人(登録DMO)となり、横浜の観光まちづくりの旗振り役として活動してきた。

 DMOの活動を分かりやすく伝える名称に改め、地域が一体となり、観光MICE都市としての認知の向上や来訪を促すブランディングに取り組む考え。

今回の名称変更で、同協会は、「さらなる横浜の発展を目指して、訪れる人々と地域に住む人々が新たな発見と出会いに感動する上質で洗練された『観光まちづくり』を推進する」と意気込みを述べた。

 名称は、2024年4月22日(月)に変更する。

工藤哲夫氏「旭日双光章」受章祝賀会盛大に開く 「業界や地域の発展へ尽力していく」

2024年3月25日(月) 配信

工藤哲夫氏が出席者に謝辞を述べた

 2023(令和5)年秋の叙勲で「旭日双光章」を受章した工藤哲夫氏(東京都ホテル旅館生活衛生同業組合理事長)の受章を記念した祝賀会が3月23日(土)、東京・日本橋のロイヤルパークホテルで盛大に開かれた。

 祝賀会には200人を超える出席者が参加。発起人を代表して、東京都ホテル旅館生活衛生同業組合顧問の潘桂華氏が、ホテル旅館業の発展と、生活衛生の普及向上に貢献された今回の受章の経緯と、工藤氏の人となりを紹介し、出席者への御礼を述べた。

 来賓として、小池百合子東京都知事、辻清人衆議院議員(外務副大臣)、和田政宗参議院議員(自民党広報副本部長)、菅野弘一東京都議会議員(都議会自民党幹事長)、石島秀起東京都議会議員、山本泰人中央区長、瓜生正高中央区議会議長、海老原崇智中央区議会議員(自民党議員団幹事長)、塚田秀伸中央区議会議員、井上善博全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会会長、涌井恭行日本橋一の部連合町会長、山田正中央大学教授がそれぞれの立場で、工藤氏の功績を称えた。

小池百合子東京都知事も出席

 お孫さんから工藤夫妻に花束贈呈が行われたあと、工藤氏が出席者に対し、「平成元年に家業のホテルかづさやに入り35年間、これまでに数多くの試練があったが、皆様に支えられて乗り越えることができた。今後は業界や地域の発展に寄与できるよう力を尽くしていきたい」と謝辞を述べた。

 三田芳裕全国料理業生活衛生同業組合連合会会長の乾杯の音頭で祝宴に入った。

鹿児島・奄美群島12市町村が広域で旅先納税導入 周遊促進を

2024年3月25日(月) 配信

会見には塩田知事(左から2人目)らが出席

 鹿児島県奄美群島12市町村は3月25日(月)から、広域連携で地域経済を活性化するため、旅先へふるさと納税を行う「旅先納税®」を導入した。12市町村で利用可能な共通返礼品として電子商品券「奄美群島eしまギフト」の発行を開始し、群島内の周遊促進をはかる。九州で初の旅先納税の導入となり、複数の島を結ぶ広域連携は今回が初めての事例となる。

 奄美群島が実施する旅先納税は寄付者が12市町村から寄付先を自由に選んで寄附をすると、寄付額の3割分にあたる電子商品券が即時に受け取れる。商品券は12市町村すべての加盟店で使うことができる。開始時点での加盟店数は飲食店や宿泊施設、土産店など152店舗。納税は1万円~100万円の枠で、返礼品は3000円~30万円までの7種類。

 

 旅先納税や電子商品券発行はギフティ(太田睦・鈴木達哉社長、東京都品川区)が提供する「e街プラットフォーム®」を採用する。また、同事業には日本航空(JAL、赤坂祐二社長、東京都品川区)が鹿児島県から受託した「令和5年度 奄美群島誘客・周遊促進事業」を一部活用。加盟店募集や管理業務、精算業務、プロモーションなどはジャルパック(平井登社長、東京都品川区)が担う。

 

 同日に鹿児島県庁で開いた会見で、塩田康一県知事は「奄美群島への入込増や地域経済の活性化につながれば」と期待した。JALの久見木大介鹿児島支店長は「従来のふるさと納税で恩恵が受けられなかった観光事業者や飲食事業者が対象になり、経済効果が見込まれる」と喜んだ。さらに、ギフティの森悟朗常務は「広域連携として今回は全国で3事例目。旅行者に自治体の行政区分は関係ない。奄美全体で取り組まれることで周遊を促す。今回の旅先納税導入が人と人、人とまちがつながるきっかけになれば広域返礼品型の価値が伝わるのではないか」と展望した。

認知率よりも実践意欲の方が高い傾向に 「サステナブルツーリズム・オーバーツーリズムへの生活者意識」

2024年3月25日(月) 配信

サステナブルツーリズムとオーバーツーリズムの認知率と実践意欲

 ソーシャルプロダクツ普及推進協会(APSP、江口泰広会長、東京都中央区)とSoooooS.カンパニー(木村有香代表、東京都中央区)は合同で、「生活者の社会的意識や行動を探るためのアンケート調査」を実施し、この結果を報告した。13回目となる2024年度は、新たに観光分野でのソーシャルプロダクツについて調査した。

 ソーシャルプロダクツは、社会的課題の解決につながる商品・サービスを指し、フェアトレードやオーガニック、環境配慮、復興支援など、SDGs達成につながる商品・サービスの総称。

 調査結果によると、旅行する際に「サステナブルツーリズム」を意識したい生活者は39・9%、「オーバーツーリズム」を避けたい生活者は51・5%となった。

 「サステナブルツーリズム」「オーバーツーリズム」をまったく知らない人はいずれも4割程度となり、同協会は、「この2つの概念について浸透の余地がうかがえる」とした。

 サステナブルツーリズムやオーバーツーリズムについて、認知率よりも実践意欲の方が高い傾向がみられるとして、同協会は、「概念は認知していないが、このような考え方を実践してみたい生活者は一定数いると考えられる。これらの概念が今後さらに普及していくことで、旅行スタイルが大きく変化していく可能性がある」と分析した。

連携する3自治体を舞台に結婚式プロデュース 八芳園がコンテスト実施

2024年3月25日(月) 配信

プレゼンテーションのようす(宮崎市チーム)

 八芳園(井上義則社長、東京都港区)は3月18日(月)、ブライダル企画を競う「ベストプロデューサーコンテスト」を実施した。ブライダル業界を盛り上げるため、企業間の垣根を超えたチーム力や提案力を高め合う場として2022年から開いているもの。今回は初の試みとして、八芳園と連携協定・パートナーシップ協定を結ぶ3自治体を舞台にした結婚式のプロデュースを行った。ファイナリスト18人が宮崎県宮崎市と福島県・鏡石町、栃木県那須塩原市の3チームに分かれ、それぞれの企画をプレゼンテーションした。

井上義則社長

 発表前に登壇した井上社長は画一的な昨今の結婚式に触れ、「昔、結婚式は地域文化に溢れたものでお国自慢だった」とし、「今後、婚礼業界で大切なのは、両手を広げて手を取り合い、足元の泉を見ること。泉は地方にある。地域文化を資本にして再構築する時期にきた」と言及。事業を通して若い世代や世界にも広く地域の魅力を発信していきたい考えを示した。

 関本敬祐総支配人は今後の同社の方向性として、首都圏市場だけではない地方エリアの市場活性化と、次世代のニーズを満たすウェディングの価値を生み出していくことを挙げ、これに伴う新たな取り組みを紹介した。

 3月1日、福岡県福岡市に新たな施設として「THE KEGO CLUB by HAPPO-EN」をオープンした。400年以上の歴史を持つ天神の「警固神社」を新たな交流創造拠点として「食」をメインに、多彩な集いをプロデュースする。「八芳園が進出していくというイメージではなく、地元に愛され支持を得られるよう法人を立ち上げた」とし、地域に根差した伝統と文化を重んじる施設として運営していく。

 4月1日から開始するのは「FURUSATO WEDDING PROJECT by HAPPO-EN」。地域を舞台に「結婚を通じて新郎新婦とまちを幸せで包み込む」をコンセプトにした事業で、今回のコンテストのようにウェディングやイベント、フォトウェディング、ギフトプロデュース、料理開発、プロダクト開発などを行う。関本総支配人は「地域と連携した婚礼事業で地域活性化を目指す」と意気込んだ。

ベストプロデューサーコンテスト

 コンテストはブライダルプロデューサーとクッキングコーディネーター、サービスコーディネーター、フラワーコーディネーター、ドレスコーディネーター、ヘアメイクコーディネーターの各3人、計18人が3チームに分かれて企画を練った。実際に現地に入り、自治体や地域の事業者らの協力を得て、会場となる素材や特産品などを視察した。

 それぞれ地域の物産品などの特徴を前面に出す一方、3地域の企画に共通していた魅力は“人”。現地で出会った人の魅力を企画に反映させようと工夫していた。

 会場には自治体関係者もゲストとして招いた。そのなかで、那須塩原市の渡辺美知太市長は「合併した自治体なので素材が多く絞り込むのが大変だったと思う。企画には市民も知らないような那須塩原の魅力が採用されていた。今後もぜひ外から見た魅力やアドバイスをお願いしたい」とコメントした。

ロボット「Keenbot T5 Laser」を活用した新たな配膳スタイルを披露

 また、会場では各チームが開発した婚礼用の食事メニューから1品ずつ試食として提供した。この舞台で同社はソフトバンクロボティクスが展開する配膳・運搬ロボット「Keenbot T5 Laser」をデビューさせた。同社によると、8台同時稼働は日本初の試みで、宴会場で同ロボットが稼働するのも初という。労働人口が減少するなか、披露宴や各種パーティーでロボットの活用を提案していく。なお、最終的にゲストの席に配膳するのは人の手で行うという。

観光庁、旧家のツアー造成を促す 旅行会社などにガイドツアー

2024年3月25日(月) 配信

旅行会社やメディアを対象に行った

 旧家などが観光資源として活用されていないなか、付加価値の高い観光資源の活用事例を広く発信しツアー造成につなげようと、観光庁は3月21日(木)、旅行会社とメディアを対象に旧安田楠雄邸庭園(東京都文京区)でガイドツアーを行った。

 同庭園を所有する日本ナショナルトラスト(安富正文会長)の根岸悦子事務局長は「維持費は寄付や入館料で賄っている。より多くの人に訪れてもらうことで、次の世代に残していきたい」と話した。

根岸悦子事務局長

 日本ナショナルトラストは文化財を保全し、利活用しながら後世に承継していくことを目的に1968年、前身団体が設立した。現在は白川郷(岐阜県白川村)の合掌造り民家2軒を取得。SLと客車3両も所有し、一部を大井川鉄道で走行させている。

 同庭園は、遊園地「豊島園」の創始者である実業家藤田好三郎氏が1920年に建てた。邸宅と庭園で構成される。旧安田財閥の創始者・安田善次郎氏の女婿である安田善四郎氏が23年に買い取った。長男の楠雄氏が37年に相続した。関東大震災や太平洋戦争などの被災を免れ、台所を除いて創建当時のまま残されていることが特徴だという。

旧安田楠雄邸庭園の外観

 当日は、同庭園で実施される薩摩琵琶奏者の川嶋信子さんによる音楽公演からスタート。楽曲「平家物語」や「壇ノ浦の戦い」などを披露した。

 川嶋さんは「琵琶を叩いたり、弦を擦る音で当時のようすを表現していることが特徴」と説明した。

川嶋信子さんと琵琶

 建物内の風呂場には、結った髪を洗うための水槽や、金箔や銀箔を細かく粉状にした金銀砂子が用いられた襖、氷で冷やす冷蔵庫などが残されている。

髪を洗う水槽

 1923年に製造された蓄音機を用いて、毎月第3水、土曜日に当時のレコードを流している。大正時代の音色を当時のまま楽しめるという。

 戦時下の42年につくられた防空壕も現存。毎年4、8月に公開している。

防空壕の内部

 また、春にはシダレザクラ、秋には紅葉を観賞することができる。

純利益3・4%増の83億9300億円と増収増益に 日旅連結23年決算

2024年3月25日(月) 配信

日本旅行はこのほど、2023年度連結決算を報告した

 日本旅行(小谷野悦光社長)がこのほど発表した2023年度(23年1~12月)連結決算によると、売上高は前年同期比25・8%の2288億600万円を計上した。営業利益は、同41・3%の94億5700万円、経常利益は同35・3%増の101億700万円、当期純利益は同3・4%増の83億9300万円と、増収増益となった。

 中期経営計画2022~2025に基づき、ソリューションとツーリズムの両事業本部を両輪とした事業ポートフォリオ経営を本格化し、新たに設置した営業コンプライアンス推進部を旗振り役として、営業活動における法令遵守の強化をはかってきた。23年5月、11月にコンプライアンス問題などが発生し、ガバナンス推進部の設置や役員・監査役の体制強化、内部統制システムの基本方針を改定するなど、グループ全体でのリスクマネジメント強化に取り組んだ。

 また、JR西日本グループやアライアンスパートナーとの連携によって社会課題解決メニューの充実をはかり、教育事業や起業ソリューション事業との連携で、総合的提案の推進に取り組んできた。

 部門別にみると、国内旅は、JRセットプランのWeb販売の拡大に注力した。また、SDGsの取り組みの一環として「カーボン─ゼロ」の展開強化や、地方誘客事業拡大などに努めた。この結果、国内旅行の売上高は前年同期比29・5%増の1481億4800万円、売上総利益は同27・7%増の270億8400万円となった。

 海外旅行では、個人旅行で円安や不安定な国際情勢の影響を受けたものの、団体旅行や起業出張などの単品商品で需要が回復し、売上高が同436・8%増の140億8400万円、売上総利益が同269・2%増の24億8000万円となった。

 インバウンド部門は、コロナ禍からの回復や、円安をきっかけとした訪日外国人観光客の需要の取り込みに取り組み、売上高は同651・1%増の202億7600万円、売上総利益は同657・4%増の51億7400万円となった。

「観光人文学への遡航(45)」 ライドシェア導入に対する疑問③

2024年3月24日(日) 配信

 十分な議論もなしにあっという間に決まってきたライドシェアに関して、観光関連産業としても無関心ではいられない。むしろ、これは公共交通、観光事業にとどまらず、日本の今後のあり方を左右する大きな分岐点であるにも関わらず、政府は単なるデジタル化の一環のような扱いでいつの間にか導入しようとしている。

 

 私はライドシェア導入の政策決定過程に疑問を持ち、この問題を各方面にヒアリングをして掘り下げて来たが、そこまでして分かったことは、我が国では、公共交通の担い手としての矜持と覚悟を持ったタクシー会社がドライバーを正社員として雇用して、運行の結果は会社が責任を持つというかたちで発展してきたことで、世界で類を見ない安全安心なタクシー運行が実現できていたということだ。

 

 世界ではタクシーのぼったくりや犯罪が後を絶たないが、これは多くの場合、個人営業を基本としていてタクシー会社があっても配車をしたり、車両を貸与したりしているのにとどまっているためである。だから海外ではタクシードライバーへの信頼度が低かったことで、ライドシェアの登場で一気に市場を席巻することができたのである。

 

 2023年3月22日に行われた第211回国会、衆議院国土交通委員会にて、一谷勇一郎議員の質問に対する堀内丈太郎政府参考人の答弁によれば、日本のタクシーは、輸送回数が約5・5億回あったなかで、交通事故の死者数は16人、身体的暴行による死者数は0人、性的暴行の件数は19件である一方、米国のライドシェア(UBER)は、輸送回数が約6・5億回あったなかで、交通事故の死者数は42人、身体的暴行による死者数は11人、性的暴行の件数は998件にものぼる。

 

 ここまでの差があるということが議会で公的に明らかになっているにも関わらず、メディアではほとんど報道されず、議論ではライドシェアの問題点として見逃されている。

 

 ライドシェア業者は、乗客による評価システムがあるからこそ、犯罪を抑止することができ、ドライバーの質を担保できると言っているが、評価システムというのはあくまでも事後である。犯罪に遭ってしまった人が実際にこれだけいるということは、その犯罪被害者の視点がすっぽり抜けている。犯罪被害者を生んでからでは手遅れである。

 

 これだけの犯罪がライドシェアで実際に起こっているということは、評価システムは「やり逃げ」を抑止できていないと言っていい。また、ドライバーが事故を起こした際、タクシーであれば会社として責任を負う。だからこそ、会社は自社の評判を下げないために全力で事前に社員教育をする。一方、ライドシェアではその責任はすべて個人に帰す。それが、犯罪が抑止できていないことの最大の要因なのではなかろうか。

 

島川 崇 氏

神奈川大学国際日本学部・教授 島川 崇 氏

1970年愛媛県松山市生まれ。国際基督教大学卒。日本航空株式会社、財団法人松下政経塾、ロンドンメトロポリタン大学院MBA(Tourism & Hospitality)修了。韓国観光公社ソウル本社日本部客員研究員、株式会社日本総合研究所、東北福祉大学総合マネジメント学部、東洋大学国際観光学部国際観光学科長・教授を経て、神奈川大学国際日本学部教授。教員の傍ら、PHP総合研究所リサーチフェロー、藤沢市観光アドバイザー等を歴任。東京工業大学大学院情報理工学研究科博士後期課程満期退学。