薩長同盟で交流拡大、山口、鹿児島県の観光連盟が姉妹盟約

 山口県と鹿児島県の観光連盟は10月16日、山口県庁で両県の代表者らが出席して姉妹盟約を締結し、双方の連携、交流を今後活発化させることを確認した。

 2011年春に九州新幹線が全線開業すると、両県は約2時間で結ばれることから、修学旅行など相互交流で観光客誘致の拡大を目指す。

 調印式では大谷峰一山口県観光連盟会長と金子万寿夫鹿児島県観光連盟会長が協定書に署名して、固く握手。場所を湯田温泉のホテルに移して懇親を深めた。

 両県では10月10、11日に山口県が鹿児島中央駅で鉄道「感謝の日」に参加。鹿児島県も17、18日に山口きらら博記念会場で開催の物産フェアに参加してそれぞれ観光宣伝した。

クリスマスの過ごし方「家でゆっくり」23%、JTB Webアンケート

 JTBはこのほど、Webアンケートで「今年のクリスマスの過ごし方」を聞いた。これによると、「家でゆっくりと過ごす」が23%で最も多く、「イルミネーションを見に行く」15%、「ホームパーティー」14%と続く。

 一方、「温泉に行く」(10%)、「国内の旅先で過ごす」(8%)、「海外旅行に行く」(4%)などの旅行派は全体のおよそ2割で、身近な場所でクリスマスを楽しく過ごす人が多い結果となった。

 調査は10月にインターネットで行われ、有効回答数は2219件。  クリスマス(クリスマス・イブ)は誰と過ごすかについては、家族が69%でトップ。次いで「ひとり」10%、「カップル」9%、「友人や仲間」7%となった。

 クリスマスらしさが楽しめる場所は、(1)フィンランドなど北欧35%(2)ニューヨーク29%(3)ドイツ19%(4)フランス9%の順。

 国内では(1)北海道34%(2)神戸31%(3)東京(銀座、台場など)19%(4)東京ディズニーランド7%(5)横浜6%などで、ホワイトクリスマスやイルミネーションがクリスマスを楽しむ大きな要素となっているようだ。

全旅連 厚生委員会“ここまでやろう”で予防を、新型インフルのマニュアル作成

 全国旅館生活衛生同業組合連合会の厚生委員会(野澤幸司委員長)はこのほど、旅館・ホテルの新型インフルエンザの対応マニュアルとして「ここまでやろう新型インフルエンザ予防・対策」を作成。日常の感染予防対策から発生時の対応などを掲載し、会員への周知をはかっている。

 マニュアルは、まず新型インフルエンザの感染経路が飛沫・接触感染であることや、症状は季節性インフルエンザと同程度などの特徴を紹介。日常生活のなかの感染予防対策として「手洗い」「手指消毒」「うがい」「マスク」「教育」「健康管理」をあげた。とくに、多くの病原体が手を介するため、手指衛生は最も重要な手段として、洗い方と消毒の方法を図を用い分かりやすく解説。また、従業員の個人衛生として「外出時は人ごみを避ける」「発熱(37・5度以上)がある場合や家族に感染者が出た場合はなるべく出勤を自粛」など具体的な健康管理方法も紹介した。

 一方、発生時の環境衛生管理として物品・環境の清掃はマスクとゴーグル、手袋、消毒液などを用意のうえで、(1)トイレ(2)ドアノブ(3)手すり(4)床(5)たたみ(6)テーブル――の6カ所をポイントとした。さらに、宿泊客が症状を訴えた場合に取るべき行動なども指示。従業員が宿泊客の部屋を訪ねる際に、「マスクを着用することについて理解を求める一言が重要」と細かな配慮まで紹介した。また、あらかじめ客室やフロントに「手洗い、うがいの励行」などを記載した確認書を掲示することや、宿泊客へ健康チェックシートへの記入を促すことも予防対策につながるとしている。

 問い合わせ=全旅連 電話03(3263)4428。URL(http://www.yadonet.ne.jp/influenza/)。

09年度秋の叙勲・褒章、有村氏らが旭日双光章

 政府は11月3日付けで2009年度秋の叙勲・褒章受章者を発表した。本紙関連では、指宿シーサイドホテル代表取締役の有村純弘氏ら旅館関係者3人が旭日双光章を受章した。

 11月6日に、国土交通省の勲章伝達式が東京都内のグランドプリンスホテル赤坂で行われた。登壇した馬渕澄夫国土交通副大臣は「これまでの各界でのご活躍を称え、さらに一層のご健勝とご健闘をお祈りする」と前原誠司国土交通大臣の祝辞を代読し、受章者の功労を称えた。

 本紙関連の叙勲、褒章受章者は次の各氏。

 【叙勲】

旭日双光章 有村純弘(指宿シーサイドホテル代表取締役)=日本観光旅館連盟常務理事 観光事業振興功労▽廣川允彦(松川屋那須高原ホテル会長)=元国際観光旅館連盟副会長 同▽水野壹夫(竹島旅館館主)=日本観光旅館連盟理事 同▽旭日単光章 河原直泰(のがわや旅館代表)=島根県旅館生活衛生同業組合副理事長 生活衛生功労▽萩原敏春(ホテル精養軒代表)=神奈川県旅館生活衛生同業組合副理事長 同

 【褒章】

藍綬褒章 野津洋三(野津旅館代表)=全国旅館生活衛生同業組合連合会副会長 業界向上寄与▽三浦晃裕(ホテル三浦華園代表)=日本観光旅館連盟副会長 同▽黄綬褒章 伏島晴彦(伏島館代表取締役) 業務精励 ▽藤本佐和子(元城西館常務取締役) 同▽近兼早智子(琴平グランドホテル取締役副会長)同▽宇田川富美江(皆生つるや会長)同

「備中高梁元気!プロジェクト」始動

「豊富な観光資源と限界集落の狭間で」

 総務省は09年度の地域力創造アドバイザー事業として、全国で11市町村を認定。同省からアドバイザーを派遣し、地域活性化や人材育成を支援していくプロジェクトを展開している。認定11市町村の一つ、岡山県中西部に位置する高梁市は、備中松山城やベンガラのまち・吹屋など豊富な観光資源を有する一方で、山間地域共通の問題である限界集落問題にも直面する。アドバイザーの篠原靖氏が現地に入り、「岡山県備中高梁市元気!プロジェクト」が始動した。 (増田 剛)

「楽しいまちづくり」の仕組みを

 高梁市(近藤隆則市長)の人口は約3万5千人。2004年10月の1市4町の合併によって広域となり、観光資源にも恵まれた地域。備中松山城は標高430メートルに天守があり、現存する山城のなかでは日本一の高さで国の重要文化財である。また、ベンガラの町として国の重要伝統的建造物群保存地区の「吹屋ふるさと村」、農村型リゾート地・宇治など貴重な観光資源を有している。

 しかしながら、山間地域であるため、若者の流出、少子高齢化、限界集落の問題にも直面している。人口は年々減少し、5年前の合併時からすでに約2千人の減少となっている。また、08年10月時点で高齢化率は35・6%と岡山県内の15市中、最も高齢化が進み、町は活気を失っている。

 このような状況で、高梁市は総務省が展開する「地域力創造アドバイザー事業」に応募し、約2倍の競争率を凌ぎ、09年度事業の全国11市町村の一つに採択された。同事業ではアドバイザー(専門家)として、東武トラベル企画仕入部副部長で、内閣府地域活性化伝道師の篠原靖氏に白羽の矢を立て、高梁市に派遣した。

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 篠原氏は今年7月から高梁市に入り、市民とさまざまな会合を通じて地域再建に向けた問題点の洗い出しや、いかに活性化していくかを議論してきた。また、近藤市長直轄の「備中高梁元気!プロジェクト事業推進協議会」(座長=吉備国際大学社会学部准教授・小西伸彦氏)を設置。メンバーには、備北タクシー社長の小野和夫氏や高梁商工会議所の遠藤正弘氏、備中宇治彩りの山里リゾート施設の大場正康氏ら20人が参加している。

 同協議会では(1)地域間連携部会(2)魅力づくり・プロモーション部会(3)受け入れ態勢・情報部会(4)2次交通部会――の4部会に分かれ、部会ごとに2次交通の不便さの解消や、合併で広域化した地域の連携、「備中高梁ブランド」への取り組みなど、さまざまな課題解決に向けて検討が進められている。また、同協議会は地域ごとの体力差にも配慮し、吹屋・成羽地区、宇治地区、高梁地区の3地区に分かれて座談会も開いていく。

 3年プロジェクトの初年度となる09年度は、課題整理や「やる気を起こす」など意識面から取り組む。アドバイザーの篠原氏は「高梁市は今ある観光資源だけでも、日本中に打って出るだけのポテンシャルを持っている。しかし、高梁市で観光で生業を立てている人は多くない。いきなり『観光を商売に結びつける』という前に、『自分たちが住む高梁市の素晴らしいお宝を皆で楽しく磨こうという』ところから始めればいい。標識を立てるなどは、お金があればできること」と、その地域の現状に沿ったまちづくりの手順を重視する。また、地元の吉備国際大学との連携も視野にいれている。

 一方、課題整理のなかで、意識づけなどお金をかけずに取り組める「先導的プロジェクト」がすでにスタートしているが、今後必要な具体的なプランとして「高梁・宇治・吹屋地区で相互に見学会を開き他地域を知ること」「観光の物語づくり」「テーマを絞った地域観光モデルコースの設定」「観光協会の一本化」なども見えてきた。市は2010年度に策定する「高梁市観光振興ビジョン」(仮題)に、これらを組み込んでいく予定。

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 同プロジェクトをスタートするに当たって、来訪者の意向把握を目的に、今夏「高梁市の観光実態アンケート調査」を実施した。それによると、7割以上が県外からの訪問者で、県外客は近畿地方が4割以上と最も多い。関東地方も2割以上を占めている。また、最も多い旅行者タイプは50歳代の夫婦で、ほとんどが個人旅行。移動手段は7割以上がマイカーということがわかった。

 高梁市の観光に対する評価は、来訪前の印象が71・2点に対し、来訪後の印象は78・9点と、概ね来訪者の期待に応えられている結果が出た。

 一方、不満度が高かったのは、「まち中の休憩スポットづくり」「観光マップ・案内サイン整備」「高梁ならではの魅力的な土産物開発」などがあがった。高梁市内での1人当たりの観光消費額では、日帰り客が2621円(岡山県平均が6463円)、宿泊客が2万111円(同2万7894円)と低く、「魅力的な飲食店が少ない」「買いたいと思うような土産物がない」などの意見を反映した結果となった。

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 10月16日には高梁市内で、備中高梁元気!プロジェクトのキックオフと位置づける「地域観光フォーラム」を開いた。

 近藤市長は「高梁市に年間60万人が来訪している。訪問者アンケートでも高梁を選んだ理由に『あまり混み合わずのんびりできそう』というのがあったが、これも魅力の一つだと思う。ギラギラとした、大手資本が入る観光地化は望んでいない。歴史と伝統文化に育まれた高梁は『心に安らぎや潤いが与えられるようなまち』が、今後進むべき方向だと思う」と語った。そのうえで、近藤市長は「人づくりが一番大切で子供たちに歴史を教え、高梁川にSLや高瀬舟を甦らせるなど、夢を持ちたい。まちづくりは楽しくやらなければならない。楽しくやる仕組みをつくっていきたい」と強調する。

 高梁市商工会議所の遠藤氏は「近隣の倉敷市も滞在時間が短い。総社、高梁、新見での高梁川流域連携も必要」などの意見を提案した。

 本紙は今後も、高梁市のまちづくりの取り組みを追っていく予定だ。

もう一度“人”を見直そう、富岡で産業観光フォーラム

 全国産業観光推進協議会や日本観光協会、群馬県、富岡商工会議所などが主催する「全国産業観光フォーラムin上州富岡2009」が10月22、23日、群馬県富岡市で開かれた。9回目の今回は、過去最高となる約650人が参加。「世界遺産を訪ねて」をテーマにした記念対談や3つの分科会を実施し、産業遺産を生かした交流や地域づくりなどを話し合った。

「過去最高の650人が参加」

 主催者を代表して、日本観光協会の中村徹会長は「各地で産業観光の取り組みが年々加速している。全国で推進されることで、大きな新しい流れとなっていると感じている」とあいさつ。また、同県の富岡製糸場をはじめとする絹遺産群が世界遺産暫定リストに記載されていることなどを紹介した。大澤正明群馬県知事は「2011年に開くデスティネーションキャンペーン(DC)に向け、産業観光という新たな観光素材の掘り起こしを内外に広く発信するうえでも、今回のフォーラムは意義深い」と歓迎した。

 記念対談は、洋画家や女優とさまざまな顔を持つ城戸真亜子さんと全国産業観光推進協議会副会長でJR東海相談役の須田寬氏が登壇。城戸さんは仕事柄、数々の世界遺産や各国を訪れた経験から「日本は説明書きがあればいいというように、大きく看板がでていることがあるが、海外ではデリカシーを持って、景観を損なわないようにしている。一つひとつのディテールに愛情を持ち、美しい世界遺産を」と語った。また、「海外の方のサービス精神は旺盛。それは、自分たちのまちに誇りがあり、世界から来る人にも自分たちのまちを愛してほしいという気持ちがあるから。肩肘を張る必要はないので、自分たちの暮らしに自信を持ってほしい」と述べた。

 分科会終了後は、各分科会から内容が報告され、須田氏が総評を行った。須田氏は「分科会報告やこれまでの産業観光の経緯などを踏まえ、大きな方向性が見えた。それは、産業観光を通してもう一度“人”を見直そうということ。人間性の観点から、人の作り出すものづくりを勉強することで、ものづくりの心、ものづくりの原点に立つことが産業観光のポイントになる」と述べた。これらを通した自身の考えとして、「観光は人と人との触れ合いで、新しい文化を作ること。もう一つの側面の経済は人の営みによって生まれる」と提言した。世界遺産を目指す同市へのアドバイスとしては、「ブームは一過性のものになりがちだが、持続性を持たせるにはまずまちづくり。そして、地域住民と観光客とのコミュニケーションがどれだけ保たれるかに尽きる」と語った。

 翌23日は、エクスカーションとして、4つのコースを設定。各コース共通スポットの富岡製糸場以外は、それぞれのテーマに応じた地場産業や絹産業を巡った。

 なお、来年の同フォーラムは兵庫県姫路市で開く。

宿泊CPに応募1万件、総勢1000人の当選者選ぶ、JATA国内旅行

 日本旅行業協会(JATA)の国内・訪日旅行業務部は10月20日、吉川勝久国内旅行委員長と藤野茂同副委員長が同席し、「もう一泊、もう一度」国内宿泊プレゼントキャンペーンの抽選会を行った。4月1日から10月18日までの応募期間中に、全国から寄せられた約1万件の応募の中から、当選者総勢1千人を選出した。

 キャンペーンは会員会社で国内宿泊旅行を購入する際に、1泊につき1つ獲得できるスタンプ計3つで応募できるもので、宿泊券や各地のお土産などを賞品にした。応募用紙などは、キャンペーンサイトから応募者が応募用紙を出力するクローズド懸賞にしたが、「九州支部などは専用用紙も作成して対応していた」(国内旅行・地域観光振興グループの内山隆雄調査役)と各地で盛り上がりを見せたという。

「JATAの森」植樹祭に180人参加

「埼玉県長瀞町から いずれ全国に」

 日本旅行業協会(JATA)は10月24日、埼玉県長瀞町宝登山で「JATAの森」植樹祭を行った。会員や大使館大使、地元参加者など約180人が参加、約1・3ヘクタールのエリアに約1千本の苗木を植えた。実地研修で会員に環境保全を啓蒙するほか、景観を整備して観光振興につなげる。

 JATAの佐々木隆副会長は「環境問題は深刻な段階にきている。JATAとしても一歩踏み込んで、植樹することになった」とあいさつ。「埼玉県と長瀞町は熱心に環境保全に取り組んでいる。都心から2時間とアクセスもいい。活動はいずれ全国に広げていきたい。何十年後に最初は自分が参加したと思い出になるのではないか」と話した。その後、同協会社会貢献委員会の糟谷愼作委員長、埼玉県の塩川修副知事、長瀞町の大澤芳夫町長も参列して、宝登山神社宮司による祈祷祭が行われた。

 参加者は埼玉県農林公社の職員から、トウグワの使い方や穴の深さなどの説明を受けた後、グループに分かれ植樹。かなり急な斜面もあったが、徐々に慣れて作業スピードも上がり、約1時間で1千本を植え終えた。

 苗木は、実物のヤマグリ、コナラ、花物のヤマザクラ、ヤマツツジ、紅葉物のイロハモミジ、イタヤカエデの6種類。四季折々の景色が楽しめ、動物にも優しいという。

訪日客、中国のみ健闘、出国者は53カ月ぶり2ケタ増、JNTO9月推計値

 日本政府観光局(JNTO)がこのほど発表した2009年9月の訪日外客数(推計値)によると、前年同月比16・4%減の53万5800人と14カ月連続の減少となった。主要11市場が減少するなか、中国が同5・2%増の9万8800人と唯一健闘した。

 市場別にみると、韓国はインフルエンザの流行や、ウォン安の継続などが影響し、同33・9%減の10万5500人と大幅に落ち込んだ。韓国では一部の地方自治体で、厳しい経済情勢を受けて公務員の外国出張や研修を中止する通達を出しているほか、公務員の私的な外国旅行にも自制を呼びかけている。また、3月にソウル市教育庁などが各学校に外国教育旅行の自粛通達を出して以降、訪日教育旅行がほとんど実施されていないことなどが、大きく影響した。

 台湾は同24・2%減の7万7500人と昨年9月以降13カ月連続の減少となった。8月には1ケタ台の減少に留まったが、9月に再び大幅に落ち込んだ。要因として、台湾で旅行や引越し、結婚式などが控えられる「鬼月」が昨年の8月1―30日から、8月20日―9月18日に移動しためにマイナスに作用した。

 中国は個人観光ビザの発給に合わせた訪日旅行の広告宣伝などがプラスに作用し、訪日客が増加した。香港は同16・7%減の3万2700人。豪州は同20・6%減の1万8800人、米国は同9・6%減の5万2300人となったほか、英国、ドイツ、フランスも2ケタのマイナスで推移した。

 今年1―9月までの訪日外客数の累計は前年同期比24・5%減の494万2900人に。  一方、出国日本人数はシルバーウイーク期間中に海外旅行の需要が拡大し、前年同月比15・3%増の158万人と53カ月ぶりに2ケタの増加。

 09年1―9月の出国者数の累計は前年同期比4・8%減の1151万1千人となった。

経営者と女将のトップセミナー、国際観光日本レストラン協会

 国際観光日本レストラン協会(津田暁夫会長)は10月16日、宮城県仙台市の「仙台 勝山館」で「09年経営者と女将のトップセミナー」を開いた。宮城大学大学院の鈴木建夫教授(食産業研究科長)が「国民の盛衰は『食べ方』にあり」を、同協会副会長で勝山館の伊澤平一代表取締役会長が「『一食懸命』これからの食を考える」をテーマに講演した。セミナー直前には、伊澤副会長が理事長を務める「宮城調理製菓専門学校」の見学会。セミナー後の食味会では松島産牡蠣や気仙沼産フカヒレなど地元食材を使った料理が振る舞われた。講演内容を紹介する。

「あなたは食べ物で死にます」

 鈴木氏は「血液のドロドロ、サラサラ」という概念を広めた人物。今回のテーマ名は、フランスの司法家で美食家としても知られる、ブリア・サヴァランの著書「味覚の生理学」(1825年)の一文。「どんなものを食べているか云ってみたまえ。君がどんな人間であるか云い当ててみせよう」と続く。日本で食の重要性を説いた文献を探すとサヴァランよりさかのぼること600年、道元禅師の「法と食は一如。食事作法は仏法そのもの」という言葉が残っているという。

 鈴木氏は、「日本人1人が一生の間に食べる食事の量は約70万トン。いいかげんな食事はいけない」と紹介。そのうえで今の食問題を、家族と一緒でも献立はそれぞれ違う個食、時間帯が違い1人で食べる孤食、血糖値の問題があるパン食中心の粉食、同じものばかり食べる固食、濃い味付けばかりを好む濃食、と5点上げ「誰もが毎日摂っていることからくる傲慢」と指摘した。

 鈴木氏は、一食ぐらい適当でいいだろうという人に対して、「あなたは食べ物で死にます」と釘をさす。日本人の死亡率の65%はガンや心臓疾患などのいわゆる、生活習慣病。厚生労働省が出す、生活習慣病を防ぐ12カ条は、煙草を吸わない、体を清潔に保つ、適度な運動の3つ以外は、緑黄色野菜を食べる、ゆっくり噛んで食べる、熱いものは食べない、などすべて食に関するもの。「国民の健康を守るのは、医者ではなく食に携わる人。だからいいかげんな食事の提供はいけない」。

 具体的な食事法についいては、脂質が少ない和食中心の食事で、細胞の酸化を押さえられることや、サラサラ血液にお茶、魚、海藻、納豆、酢、キノコ、野菜、ネギがいいと紹介。とくに咀嚼については、よく噛むことで肥満防止、味覚の発達、言葉の発音、歯の元気、ガンの予防、胃腸快調、全身の体力向上の8大効用があるという。

「口に入るまで責任持つべき」

 伊澤氏は小学校で食事の前、食べ物に感謝して歌った歌を披露。最近のお金さえ払い、ただ食べればいいという安易な発想を否定し、「私たちは生命のあるものから命をもらい、自然の恵みをいただいて生かされている。そうであるならばきちんと調理して、口に入るまで責任を持つべき。感謝の気持ちを持つ。これが食べる基本でないか」と話した。

 食産業全体の問題については「自給率の話は極めてナンセンス。今は幸いに国家として貯金があるから買えるが、なくなれば黙っていても数字は変わってくる」とし、「1次産業の従事者は60歳以上がほとんど。一大プロジェクトでもしない限りあと5年もすれば食産業は人的なもので崩壊する。これに対して誰も言わないのはなぜか」と語った。

 合成添加物については「1つでは安全でも毎日、複合的に入ってくる。皆さんがモルモットになっている」と危険性を指摘。「一切摂らないのは難題だが、自分で食材を探し、自分で調理する、その精神が必要。お客様の生命、安全を一食でもお預かりしている私たちは、食の安全を考えたとき、添加物は排除する方向で行くべきではないか」と話した。

 また、淡路島の五色町で体験した20日間にわたる低カロリーによる絶食療法を紹介。肉体面、精神面ともに劇的に変化が現れ、食に対する発想が変わったという。「食べ方、食べ物をどうやって自分で選んで自分を守るのか。自然のものをいかにありがたくいただき、それを活用してお客様の健康に役立つように実践するか。『一食懸命』の心がけを広げていただきたい」と語った。