休暇から休活へ――。「観光地域経営フォーラム」はこのほど、未取得有給休暇完全取得の試算結果を発表した。有給休暇を完全に取得した場合、15兆6300億円の経済波及効果と、187万5千人の雇用創出が可能になるとした。そのうえで、「休暇から休活へ」とする提言をまとめ、休暇法制の見直しや、計画年休制度の活用促進、サービス経済下の休暇の受け皿づくりなどの必要性をあげる。
「公立病院、行政窓口は年中無休を」
民間と地域が連携し、観光を中心とした地域活性化を推進する「観光地域経営フォーラム」は麻生渡福岡県知事、須田寛東海旅客鉄道相談役、福川伸次機械産業記念事業財団会長、望月照彦多摩大学教授の4氏が代表幹事を務める。
「GDPの約3%」
試算では、日本の労働者が未取得である年次有給休暇の約4億3千万日を完全に取得した場合、余暇消費支出額の増加や雇用増による消費支出の増加、投資による効果などを合算すると、約15兆6300億円の経済波及効果が得られるとした。日本のGDP(国内総生産)の約3%に相当する。
さらに、「約187万5千人の雇用が創出され、完全失業者の52%を解消できる」としている。 これを受けて、同フォーラムは、「休暇」から「休活へ」――をテーマに、有給休暇の活用による内需拡大と雇用創出に向けて、提言を発表した。
「有給2週間を保証仏のバカンス法」
1936年にフランスのレオン・ブルム内閣が大恐慌後の長引く不況に対して、「もっと働くこと」ではなく、「もっと休むこと」を推進し、全労働者に年2週間の有給休暇を保証するマティニョン法(通称・バカンス法)を制定。その後、サービス産業が大きく成長し、内需主導型経済に脱皮を果たすとともに、雇用も拡大しフランス経済の回復に大きな役割を果たした。
「工業社会モデルからサービス経済型へ」
提言では、「サービス産業がGDPの約7割を占める現在の日本でこそ、休暇取得拡大によって経済に活力をもたらす」とし、国民のライフスタイルを従来の「一斉に働き、一斉に休む」という工業社会モデルから、「もっと休む」「分散して休む」というサービス経済型社会のモデルに転換していく必要があると強調する。
「休暇法制の見直し」
なかなか進まない有給休暇の完全取得を実現するためには、休暇に関する法制の見直しが最も効果的とする。日本では主として労働基準法が有給休暇について定めているが、同法は国際労働機関(ILO)132号条約第8条2項が定める2労働週の連続休暇に言及していない。「これがグローバルスタンダードからかけ離れた細切れの休暇を容認する原因となり、休暇取得拡大を阻害している」と指摘。提言では、2労働週の連続休暇を労働者に保証し、取得時期については「労働者の希望を聞いたうえで、使用者が決定するのが望ましい」としている。
「計画年休制度の活用促進」
そのほか、計画年休制度の活用促進をあげる。現行法制下では、使用者側が連続休暇の取得時期を決定するには、「計画年休」制度の充実がある。これは、企業と労働組合の協定によって、有給休暇日数の5日を超える部分については、時期を計画的に定め、職場で一斉、あるいは交替で休暇を取得できる制度。この制度を活用すれば、平均付与日数18日のうち、13日については連続休暇とすることができ、休暇の分散化促進効果も期待できるという。しかしながら、実際に計画年休制度がある企業は16・3%に留まり、1企業当たりの計画的付与日数は4・5日に過ぎない。
「サービス経済下の休暇の受け皿づくり」
博物館や美術館などのレジャー施設の多くは平日に休業日を設けているが、有給休暇取得時の活動の受け皿とするため、公共施設については年中無休化を求めている。さらに、多くの労働者が、病院への通院や行政機関窓口利用のために有給休暇を充てている現状を指摘。「休暇を明日への活力につなげるためには、これら所用に充てることは望ましくない」とし、行政機関窓口や公立病院などの公共サービス機関に関しては、年中無休化を求めている。また、観光分野についても「国民の休暇取得に対応した、廉価で滞在型の休暇を楽しめる環境やプログラムを整備することも不可欠」としている。