観光庁は9月30日、「訪日外国人旅行者2000万人時代に対応した宿泊施設のあり方に関する検討会」を開いた。国際観光ホテル整備法の見直しも含め、全体の枠組みを議論し、今後月1回のペースで6回開き提言案をまとめる。
委員会のメンバーは、大学教授や観光関係団体者代表、YOKOSO!JAPAN大使などで構成される。 日本政府観光局(JNTO)の板谷博道理事は、「島国で2千万人を超える外客があるのは、イギリスの3千万人しかない。受け入れに際して基礎的な宿泊施設データがいる。独自路線で行くか、星印でランキングしていくか」と国際規格の必要性を訴えた。
日本旅行業協会の奥山隆哉理事・事務局長は、「2千万人に対応するキャパシティーをどう用意するか。単純に考えて、今の2・5倍の施設がいる。また、地方の施設がそろっても、そこまで到達できない。2次交通の整備も課題」と指摘。これに対し、全国旅館生活衛生同業組合連合会の島村博幸専務理事は「組合ホテル・旅館の会員数は、1991年の約3万件をピークに、現在約1万8千件まで減っているが、部屋数は約155万室でほぼ一定。その間、需要が激減して、稼働率は4―5割と指摘されている。キャパシティーは十分にある。東京など、都市部に集中する外客をいかに地方に分散させるかが重要」と語った。
日本旅館連盟の中村義宗専務理事は「外客受入でいつも行き詰まるのは決済の問題。試験的に取り組んだFITのカード決済は為替手数料が高く、不可能だった。制度的に受け入れができるシステムがいる。また、旅館としては対応で何か困ったときに、助けてもらえるバックヤードがあれば安心できる」と語った。
観光庁側からは、訪日外国人旅行者の宿泊現状や整備法登録のホテル・旅館の外客接遇などの実態調査を報告。
それによると、08年の訪日外国人の延べ宿泊数は、従業員集10人以上の宿泊施設(ホテル、旅館、簡易宿泊所)が2225万人泊。これは全体の3億970万人泊に対し、6・7%。10人未満の宿泊施設の2284万人泊を含めると合計で4509万人泊。「施設タイプ別」にみると、シティホテルが1139万人泊(構成比は51・6%)、ビジネスホテルが552万人泊(同25・0%)、リゾートホテルが2950万人泊(同13・4%)、旅館が223万人泊(同10・1%)。都道府県別にみると、東京都が750万人泊で全体の約3割を占め、以下、大阪府の256万人泊、北海道の213万人泊と続く。
国際観光ホテル整備法登録は、宿泊施設の外客の接遇を充実させ、国際観光振興に寄与することを目的に1950年に制定された制度。09年3月現在で、ホテルは1100施設、旅館は1957施設、合計で3037施設が登録。この数字は、旅館業法による営業許可を受けた全体のホテル・旅館6万1686施設(ホテル9427、旅館5万2259)に対して5%にとどまっている。また、実態調査によると、義務づけられている外客接遇主任者の選任について、前任者の退職などが理由で選任していない、外客にわかりやすい館内の案内表示が英語にかたよっているといった、形骸化している制度の現状も見えてくる。とくにホテルに比べ、旅館の対応が遅れている。