大規模な海外プロモーション展開、ビジット・ジャパン・イヤー2010(09.10.11日号)

 観光庁と日本政府観光局(JNTO)は、ビジット・ジャパン・キャンペーン(VJC)最終年の2010年を「ビジット・ジャパン・イヤー(VJY)」と位置づけ、大規模な海外プロモーション事業を展開する。

 今年10月からは、訪日旅行の海外重点12市場を中心に、1市場最低3000万円をかけたオープン懸賞をスタートする。同キャンペーンは海外政府観光局や外国の航空会社などの協力を得て、ウェブサイト上で広く応募者を募り、簡単なアンケートに答えると、日本への往復航空券や東京ディズニーリゾート(TDR)やユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)などの入場券が当たる。

1-8月で倒産は73件、ホテル・旅館経営業者の倒産動向調査(09.10.11日号)

「業歴30年以上が半数」

 今年1月から8月までのホテル・旅館の倒産件数は73件となり、2005年以降で過去最多を記録した08年(1―8月で84件)に次ぐ2番目のペース――帝国データバンクがまとめた「ホテル・旅館経営業者の倒産動向調査」によるもので、世界的な不況により観光やビジネス需要が低迷し今まで以上に競争の激化を招き、ホテル・旅館業者を取り巻く環境は厳しさを増しているという。

 調査によるとホテル・旅館経営業者の倒産は、06年から08年にかけて3年連続で増加している。09年1―8月は前年同期に比べ13・1%減少しているものの、08年に次ぐペースで推移している。

 一方、負債総額をみると、年々減少基調にあり、倒産の小型化が進んでいる。従業員数別でも10人未満が53・4%と半数以上を占めている。  負債額別にみると1―5億円未満が25件と最も多く、次いで10―50億円未満が17件、1―5千万円未満が12件。ここ数年は負債1億円未満の小規模倒産が増えており、全体に占める割合は増加傾向にあるという。なお、100億円以上は1件の発生で、大型倒産は減少している。

 従業員別では、10人未満の小規模業者が39件で最も多く、続いて10―50人未満が25件、50―100人未満が7件の順。300人以上の大規模業者は05年以降、発生していない。

 業歴別にみると、業歴30年以上の事業者が37件(構成比50・7%)となり、いわゆる「老舗倒産」が半数を超えていることが分かった。次いで20―30年未満が14件、15―20年未満が7件。なお、業歴10年未満も10件発生している。  地域別では関東が18件でトップとなり、次が中部の14件、東北の12件。トップの関東のうち最も件数の多いのは東京で6件、続いて茨城、群馬の各4件になる。

 今後の見通しについては、高速道路のETC割引や民主党がマニュフェストに掲げている高速道路の無料化などの好材料はあるとしながらも、「新型インフルエンザ流行による旅行客減少の影響が懸念されるうえ、出張などのビジネス需要も大幅な回復は見込めない」とし、「倒産は高い水準で推移していく」とみている。 

ふじのくにから海外へ、富士山静岡空港パスポートCP(09.10.11日号)

 日本旅行業協会(JATA)のVWC2000万人推進室は12月31日まで、富士山静岡空港と静岡県空港部就航促進室と連携し、地域発のパスポート取得キャンペーン「ふじのくにから海外へ」を実施している。パスポートの取得率向上と空港の利用促進が狙い。

 キャンペーン内容は、期間中に同空港から海外旅行に出発した人を対象に、応募者の中から174人に海外パッケージ旅行などが当たるというもの。賞品は海外旅行ペア3組のほか、海外航空券、静岡県内ホテル宿泊券など。ダブルチャンスとして県内に住民登録があり、今年4月1日以降にパスポートを取得して期間中に海外へ出発した人には、もれなくオリジナルグッズをプレゼントする。応募は同空港ターミナル1階の旅行会社団体受付カウンターにある応募箱などで受付ける。

 澤邊宏VWC2000万人推進室長は、取り組みを通して「1人でも多くの人に海外に出かけていただきたい」と語った。なお、同空港には大韓航空とアシアナ航空、中国東方航空が国際定期路線として乗り入れているが、路線が限られていることから「ほかの国内空港で乗り継いで海外に出るケースも応募可能」という。 

感染症風評被害対策、マスコミの「報道」も議論(09.10.11日号)

 観光庁は9月29日、有識者などで構成する「感染症発生時における観光関連産業リスクマネジメント検討会」を開いた。第2回となる今回は、同庁が作成した「観光関連産業における感染症風評被害対策マニュアル」の素案や、マスコミの報道姿勢などについて意見を交わした。

 同会は、観光団体や各省庁、地方自治体、学識者、報道機関などが委員となり、新型インフルエンザ発生で影響を受けた観光関連産業が、今後の感染症発生時の影響を最小限に食い止める方策を検討するのが狙い。感染症に対する業界共通のマニュアルを作成し、関係者がとるべき対策を共有する。  会議は、まず類似事例の調査結果や対策マニュアルの素案について観光庁側が説明した。また、マニュアルができるまでの対策として「観光関連産業において直ちに取り組むべき対策」(案)も発表し、(1)情報収集の徹底等(2)さらなる感染拡大に備えた対応の検討(3)予約客等に対する的確な情報提供――を提案した。

 これを受けた意見交換の場では、日本旅行業協会(JATA)理事・事務局長の奥山隆哉氏がマニュアルについて、「旅行者の過剰反応への対応」や「取消料収受の原則の確認」などを盛り込むことを要望した。また、「お客様への情報発信をどのように行っているか、旅館・ホテル側と旅行会社でお互いに協調して共有する場が現在ないので、BtoCに関する情報交換にも触れてほしい」とした。パームコンサルティング・グループ代表の伊原正俊氏は、「知識の部分とアクションプランが混在している」と指摘。とくにアクションの部分は「もっと具体的にしないと、マニュアルにならないのでは」と述べた。

 また、読売新聞東京本社編集局社会部次長の原口隆則氏は「『風評』というのは、ありもしない噂のことでマニュアルのなかで『繰り返される報道による風評被害』と記すのは、マスコミが助長して報道する前提で書かれている。現場の観光関係の方が、風評被害と感じて作成するマニュアルならいいが、国が出すマニュアルで記すと、報道機関は反発を覚える」と語った。これに対し、全国旅館生活衛生同業組合連合会厚生委員会委員長の野澤幸司氏は「実際に報道で被害に遭ったと感じている側からすると、発生当初は仕方ないが、その後、収縮する報道も考えてほしい」と意見した。また、新型インフルエンザに対しては「通常の季節性インフルとの比較などを併せてだしてもらうと分かりやすい。皆が安心するような発表、情報を」と要望した。

 一方、NHK報道局社会部デスクの小林潤氏は「とくに新型インフルエンザの場合は、当初は得体が知れなかった。国民を守る報道の視点からすると、最悪の事態を想定した報道にならざるを得ない」と語った。マニュアルのなかでは「平時の対応を充実させるべき。平常時に報道機関とのパイプや話し合いの場を作るというような具体的なことを記したほうがいい」とアドバイスした。 

従来の枠組み払い新規も 政権交代、概算要求見直しで 本保長官(09.10.11日号)

 観光庁の本保芳明長官は10月1日に開いた業界紙との定例会見で、政権交代による観光立国実現に向けた政策推進の影響ついて「基本計画もあるので、現状では変わりないと思っているが、政治主導で進めていくということなので、ある意味で事務方の仕事が変わる」と述べた。

 概算要求の見直しについては「シーリングがなくなり、これまでと違う形の予算要求が求められている。大臣の支持を含め政務三役からもらっている感触を踏まえ、材料を整え、相談していく段階。一言でいえば、成立したものと、連続性のない不連続なものになる」と語った。

 「事務方は材料を整えるだけ。具体的なことは言えないが、全分野において、従来の枠組みにとらわれない相談をしなければいけない。まったくの新規もあり得る。取り上げるかの判断、結果がどうなるかは政務三役次第」と語った。  観光庁発足1周年については「数字を出すのが求められていること。国際会議の誘致以外は、いずれも厳しい数字となった。厳しい環境下ではあったが、努力の余地はあったのではないか。他方で、アクションプランについて手は打ってきた。努力が一程度は評価され、総体として認知度向上につながったのではないか」と振り返った。

 なお、官僚の記者会見は原則禁止という政府の方針で、継続が危ぶまれた定例会見については「大臣の了承を得た」と、今後も継続して行う。 

4435件発給、上海過半数、7―9月中国個人観光ビザ(09.10.11日号)

 今年7月1日に中国の個人観光ビザ制度が創設され、7―9月までの3カ月間のビザ発給件数は4435件に上った。  外務省によると、月別のビザ発給件数は7月が1033件、8月が1294件、9月が2108件と順調に伸びている。

 また、3つの在外公館別にみると、北京は1346件、上海は2390件、広州は699件。上海が半数を超えていることについて、日本政府観光局(JNTO)海外プロモーション部の平田真幸部長は、個人観光取扱い指定旅行会社が上海は33社、北京は10社、広州は5社と圧倒的に多い点を指摘。「JNTOとしても、北京や広州の指定旅行会社を拡大するよう北京観光宣伝事務所などを通じて働きかけていきたい」と話す。

 観光庁の調査によると、中国の個人観光客は東京や北海道への訪問率が高い。理由としては、東京は公共交通機関の利便性が高く、ショッピングやグルメなどのソフト面の充実、さらに箱根など近郊のレジャー施設や温泉に恵まれていることをあげる。一方、北海道は中国の大都市にはない大自然を楽しめるリゾート地として人気を集めている。

 中国の訪日観光市場は09年4月までは順調に推移していたが、日本国内での新型インフルエンザ流行の影響によって5月以降減少に転じた。6月は前年同月比40・2%減、観光客に限ると同66・7%減と大幅な減少とを記録したものの、8月には同17・3%増と再び増加している。

国際観光ホテル整備法の見直しも、外客2000万人検討委 来年2月に提言案(09.10.11日号)

 観光庁は9月30日、「訪日外国人旅行者2000万人時代に対応した宿泊施設のあり方に関する検討会」を開いた。国際観光ホテル整備法の見直しも含め、全体の枠組みを議論し、今後月1回のペースで6回開き提言案をまとめる。

委員会のメンバーは、大学教授や観光関係団体者代表、YOKOSO!JAPAN大使などで構成される。  日本政府観光局(JNTO)の板谷博道理事は、「島国で2千万人を超える外客があるのは、イギリスの3千万人しかない。受け入れに際して基礎的な宿泊施設データがいる。独自路線で行くか、星印でランキングしていくか」と国際規格の必要性を訴えた。

 日本旅行業協会の奥山隆哉理事・事務局長は、「2千万人に対応するキャパシティーをどう用意するか。単純に考えて、今の2・5倍の施設がいる。また、地方の施設がそろっても、そこまで到達できない。2次交通の整備も課題」と指摘。これに対し、全国旅館生活衛生同業組合連合会の島村博幸専務理事は「組合ホテル・旅館の会員数は、1991年の約3万件をピークに、現在約1万8千件まで減っているが、部屋数は約155万室でほぼ一定。その間、需要が激減して、稼働率は4―5割と指摘されている。キャパシティーは十分にある。東京など、都市部に集中する外客をいかに地方に分散させるかが重要」と語った。

 日本旅館連盟の中村義宗専務理事は「外客受入でいつも行き詰まるのは決済の問題。試験的に取り組んだFITのカード決済は為替手数料が高く、不可能だった。制度的に受け入れができるシステムがいる。また、旅館としては対応で何か困ったときに、助けてもらえるバックヤードがあれば安心できる」と語った。

 観光庁側からは、訪日外国人旅行者の宿泊現状や整備法登録のホテル・旅館の外客接遇などの実態調査を報告。

 それによると、08年の訪日外国人の延べ宿泊数は、従業員集10人以上の宿泊施設(ホテル、旅館、簡易宿泊所)が2225万人泊。これは全体の3億970万人泊に対し、6・7%。10人未満の宿泊施設の2284万人泊を含めると合計で4509万人泊。「施設タイプ別」にみると、シティホテルが1139万人泊(構成比は51・6%)、ビジネスホテルが552万人泊(同25・0%)、リゾートホテルが2950万人泊(同13・4%)、旅館が223万人泊(同10・1%)。都道府県別にみると、東京都が750万人泊で全体の約3割を占め、以下、大阪府の256万人泊、北海道の213万人泊と続く。

 国際観光ホテル整備法登録は、宿泊施設の外客の接遇を充実させ、国際観光振興に寄与することを目的に1950年に制定された制度。09年3月現在で、ホテルは1100施設、旅館は1957施設、合計で3037施設が登録。この数字は、旅館業法による営業許可を受けた全体のホテル・旅館6万1686施設(ホテル9427、旅館5万2259)に対して5%にとどまっている。また、実態調査によると、義務づけられている外客接遇主任者の選任について、前任者の退職などが理由で選任していない、外客にわかりやすい館内の案内表示が英語にかたよっているといった、形骸化している制度の現状も見えてくる。とくにホテルに比べ、旅館の対応が遅れている。 

「観光は成長戦略の核」訪日外客2000万人前倒しも、観光庁1周年(09.10.11日号)

 国土交通省は10月1日、観光庁発足から1周年を記念して、前原誠司大臣や辻元清美副大臣、藤本祐司大臣政務官ら観光政策を担う国のトップと民間の観光関係者が意見交換を行う場として、「今後の観光庁及び観光政策に関する懇談会」を開いた。前原大臣は関係者を前に、「観光は日本の成長戦略の核」とし、改めて観光立国を推進していくことを表明した。

 懇談会は、国交省から大臣ほか観光庁の本保芳明長官など7人が出席。民間から観光庁アバイザリーボードの生田正治氏、鳥羽若女将うめの蕾会会長の江崎貴久氏、日本経済団体連合会観光委員長の大塚陸毅氏、由布院温泉観光協会会長の桑野和泉氏、日本ツーリズム産業団体連合会(TIJ)会長の舩山龍ニ氏、日本政府観光局(JNTO)理事長の間宮忠敏氏の6人が参加した。

 本保長官は冒頭、集まった関係者に「観光行政のトップの直接的な考えに触れて、今後の展開や活動に生かしていただきたい」とし、「私ども事務方は懇談会の内容を踏まえて、しっかり三役のサポートをしていきたい」とあいさつした。

 前原大臣は「日本が置かれた状況を考えたときに、いかに成長分野を育てていくかが重要だと思う」とし、「観光立国を進めるうえで皆さんの役割は極めて大きい」と期待を寄せた。また、「先日、本保長官に『訪日外客数の目標が2020年に2千万人ではだめだ。すぐにでもできるような案を考えてほしい』とお願いした。皆さんにもどうしたら早く達成できるか意見をいただき、これを生かした政策立案をしていきたい」と述べた。

 続いて、民間側の意見を求められた生田氏は、「観光はほとんどの省庁に関係しているが、行政は縦割りで観光庁が持っている権利や責任範囲では限度がある。政治の力で観光庁には幅広い権限を与え、整合性のある施策ができるようにしてほしい」と要求した。また大塚氏は「観光は、単に観光産業だけではなく、製造業や流通業、第一次産業までオールジャパンで取り組んでいくべきものだ」と主張。さらに舩山氏は、「家族旅行を考えたときに、子供の夏休みや親の有給休暇などそれぞれ休暇に大きな壁がある。休暇制度について大きく転換してほしい」と語った。

 これらの意見を聞いた藤本政務官は「私も15年間、シンクタンクで地域振興に携わってきたが、観光はリーディング産業として非常に重要だ」とし、「資源は多くあるが、どう生かし、どうPRして商品化するのかという点が大きな課題」と語った。休暇制度については「柔軟に休みを取れる仕組みが重要。メリハリのある休暇がいかに企業経営にプラスになるか訴えていかなければならない」と述べた。

 また、懇談会の後半はインバウンド振興について意見が集中したが、生田氏は「2千万人はすぐにでも達成できると思っているが、観光にも負荷がある。国内でも外国人が増えることに抵抗がある人もいる。数が増えたときに、いかに秩序ある成長を果たせるのか、今から考えていく必要がある」と訴えた。一方、江崎氏は「観光に携わっていない国民のおもてなしの心をいかに育てるか。誘客のPRも大切だが、人の心を育てるPRも大切では」と語った。

 すべてを受けて、辻元副大臣は「縦割り行政の廃止というご意見を多くいただいた。大臣も、観光が日本を変える牽引の1つと捉えている。私も副大臣会議に出席するなかで各省に問題提起しながら、横のつながりとして関係省庁との連絡会議などができるように、相談していきたい」とまとめた。