2024年7月9日(火) 配信
会場のようす
東京都旅行業協会は7月8日(月)、東京都内で「急成長するインバウンド市場に参入するための実践講座」を開いた。多くの会員が得意とする団体旅行の需要が減るなか、活況な訪日市場への事業拡大を促進した。
冒頭、小松信行副会長は「1つでも有益なことを掴んで帰ってほしい」と呼び掛けた。
小松信行副会長
第1部の「旅行事業者向け支援メニュー・補助金について」では、東京観光財団の松岡孝治主査が登壇した。同財団の東京観光産業ワンストップ支援センターでは、観光商品の開発や情報発信の方法などの相談を受けているほか、アドバイザーを活用した観光事業社支援事業などの補助金を紹介した。
松岡孝治主査
同制度は、補助対象者がアドバイザーの助言を受けて経営の改善や新事業の展開をすることに対し、200万円を上限に経費の3分の2を補助する。訪日市場への参入に向けたホームページの多言語化などが対象になる。
活用事例として、ウェブ広告のアクセス解析ツールを導入したことで、ターゲットを絞ってより効果が表れたことを説明。さらに、これまで代理店に任せていた広告運営を自走し、費用の削減にもつなげた。
松岡主査は、このほか14種類の補助金制度を紹介し、「今後取り組みたい事業を相談してもらうことで対象となる補助金を紹介できる」と同センターの利用を呼び掛けた。
第2部の「インバウド旅行業務の始め方」ではジャパンドリームツアーの山野浩二社長が講師を務めた。
山野浩二社長
山野社長は2014年に訪日専門旅行会社として、ジャパンドリームツアーを設立。東南アジアなどからの旅行者を受け入れてきた。
現在、免税店を中心に巡り、安いホテルや食事を提供しているツアーを催行する外国の観光事業者が増えているという。これを踏まえ、「日本へ再び来たくない気持ちにさせるツアーを減らしたい」と話し、信頼と実績のある旅行会社の新規参入を強く要望した。
そのうえで、具体的なターゲットとして東南アジアを挙げた。韓国や台湾などは個人での手配が主流となる一方で、東南アジアの一部富裕層はビザの申請に煩わしさを感じ、旅行会社に手配を依頼しているという。
集客に向けては、ホームページを多言語化し、問い合わせフォームを設けることを勧めた。「これまで取り引きがなくても、外国の旅行会社からの連絡がある」と説明した。理由として、「日本で訪日旅行を扱う会社が(旅行者に対して)少なく、すべて対応できていない。困っている外国の旅行会社は多い」と話した。外国語の問い合わせに対しては、翻訳サイトなどを用いて日本語に翻訳している自社の例を示した。
また、「旅に必要な交通手段や宿泊施設などすべてを手配する必要はない」と説明。「始めはできることを明確にしたうえで、自社の得意分野から始め徐々に広げてほしい」と呼び掛けた。
日本にある新興の訪日旅行会社は歴史が浅いことから「地方の温泉旅館は長い付き合いのある旅行会社を優先にしており、予約が取れない」とも語った。このため、国内旅行を強みとするANTA会員をはじめとした旅行会社を通じて、旅館を手配したい訪日旅行会社は多い。
コースについては「多くの外国人は定番コンテンツを求める。日本人向けのツアーの言語を変えるだけで十分」と強調。具体的には、浅草で着物を着ながら、和食を食べることが人気となっている。
最後に山野社長は「コロナ禍で訪日旅行会社の数は大きく減った。現在は需要が急増している。政府の後押しもあり、始めやすい」と参入を強く促した。