観光庁、スノーリゾート改革へ投資課題を議論 3回目の検討会開く

2020年3月12日(木) 配信

スノーリゾートへの投資課題や投資モデルなどを議論した

 観光庁は3月5日(木)、国際競争力の高いスノーリゾートへの改革を進めるなか、3回目の検討会を開いた。スノーリゾートへの投資課題を明らかにし、解決策を探ったほか、投融資の条件や投資環境モデルなどを議論した。

  長野県や新潟県・湯沢町、地場の銀行、地域経済活性化支援機構などが出席。金融庁や農林水産省なども名を連ねた。

 今回は国内外でスノーリゾートを経営する索道メーカーの日本ケーブルが、収益確保の方法などを説明した。また、スキー場事業者を対象に、収支状況や設備更新投資などの経営状況を把握するために行ったアンケートの結果も報告した。

 過去の検討会では、構成員がスノーリゾートの現状と課題、解決策を提案したのち、出席者が意見交換を行った。1回目は、地域経済活性化支援機構と銀行が発表。2回目は、地方自治体とスノーリゾート事業者が報告した。

 次回は3月17日(火)に、これまでの議論を踏まえたとりまとめ案を検討する

エアトリ、代金後払いアプリの名称を変更 運営サイトに合わせ認知度向上へ

2020年3月12日(木) 配信

「TRAVEL Now」を「エアトリ Now」に変更した

 エアトリ(柴田裕亮社長兼CFO)は3月11日(水)、後払い専用のオンライントラベルサービスアプリ「TRAVEL Now」の名称を「エアトリ Now」に変更した。運営するウェブサイト「エアトリ」とサービス名を統合し、認知度向上をはかる。

 同社は昨年10月に、「TRAVEL Now」をバンクから事業を譲り受けた。エアトリ Nowのコンセプトは「いま行く!あとで払う!」。特徴は、①10万円以下の旅行に申し込める②支払いは2カ月後③国内外含む約6万5千種類の旅行商品を用意している点--が挙げられる。利用できる商品は「航空券+ホテル」、「高速・深夜バス」、「遊び・体験」などとなっている。

〈観光最前線〉滋賀初のストリートピアノ

2020年3月12日(木)配信

ブルーメの丘に設置されたストリートピアノ

 滋賀県・日野町の「滋賀農業公園ブルーメの丘」はこのほど、誰もが自由に弾けるピアノ、通称「ストリートピアノ」を園内に設置した。同県初のストリートピアノという。

 ここ数年、全国各地の駅や商業施設などに設置され、にぎわいづくりに一役買っているストリートピアノ。その演奏風景は動画配信サイトでも注目を集める。

 ブルーメの丘は中世ドイツの農村をイメージした体験型農業公園。広大な敷地に牧場や各種体験施設、アスレチックなどが広がる。

 ストリートピアノは、土・日・祝日の午後2時から3時までの日時限定で、自由に演奏が楽しめる(混雑時は1人5分)。4月上旬には、満開になるチューリップ畑の真ん中に期間限定でピアノを設置する予定だ。

【土橋 孝秀】

観光庁、36億円の予備費使用 世界各地に正確な情報発信と、新型コロナ終息後の観光需要回復に向けた基盤整備に

2020年3月11日(水)配信

岐阜県高山市の宮川朝市をめぐる外国人旅行者ら(19年3月撮影)

 政府は3月10日(火)、2019年度観光庁関係予備費の使用を閣議決定した。同予備費から合計35億7200万円を充てる。新型コロナウイルスの感染拡大により、大きな影響を受けての対応。日本政府観光局(JNTO)による新型コロナウイルス対策の正確な情報を世界各地に発信するほか、終息後に訪れる観光需要の回復期に向けた基盤整備などの取り組みを支援する。

 使途の柱は3つ。「JNTOによる正確な情報発信」に10億700万円、「観光地の多角化等のための魅力的な滞在コンテンツ造成」に6億8000万円、「訪日外国人旅行者受入環境整備緊急対策事業」に18億8500万円を充てる。

訪日旅行控えに対策、新型コロナ対応を発信

 「JNTOによる正確な情報発信」では、政府が行っている新型コロナウイルス対策の取り組みなどを世界各地で正確に情報発信する。訪日旅行を検討している人が誤った情報で訪日旅行控えが起きないよう、訪日旅行者数が多い重点20市場に、多様な媒体を活用した情報発信を実施する。

 重点20市場はアジアや欧州、北米、オセアニアで今後もインバウンド(訪日外国人旅行)の成長が見込まれる市場。JNTOがプロモーションを重点的に行っている。

 具体例として、流行地域からの入国規制措置の実施、24時間対応の多言語コールセンターの周知、感染症対策の実施要請などを挙げている。

 残り2つの柱は、新型コロナウイルスの終息

後に訪れる観光需要の回復期に向けた取り組みだ。感染拡大の防止期間を、将来の観光需要回復に向けた積極的な「助走期間」と位置づけ、反転攻勢に転じるための基盤整備をはかる狙い。

滞在コンテンツの造成、新規市場の開拓を支援

 「観光地の多角化等のための魅力的な滞在コンテンツ造成」では、多様な魅力のある滞在コンテンツを造成。これにより観光地の高付加価値化や、訪客先の多角化を促す取り組みを支援する。

 外国人有識者などを実施地域に派遣するマーケティング調査を行い、市場別の旅行者の構成、消費額、観光資源のポテンシャルを精査。これらを踏まえた新規市場の開拓・多角化などに係る戦略を策定する。

 調査・戦略の策定後、コンテンツ造成や多言語解説文の作成など、観光資源の創出と磨き上げを行い、滞在型旅行商品の企画などの販路開拓を支援する。

 補助率は、調査・戦略策定が定額、滞在コンテンツの造成などが2分の1となる。

観光地を面的に支援、訪日客の受入環境整備に

 「訪日外国人旅行者受入環境整備緊急対策事業」は、経済産業省の「中小企業生産性革命推進事業」に基づく支援との組み合わせ。施設のバリアフリー化などの設備投資や、キャッシュレス化整備などを支援する。

 観光地での一体的・面的な訪日外国人旅行者の受入環境整備を支援。観光名所のほか、飲食店や小売店、宿泊施設、公共交通機関、外国人観光案内所などの整備に活用できる。

 補助率は3分の1や2分の1などで、事業主体は民間事業者や地方公共団体など。

「クールジャパン・マッチングアワード2019」各賞決定 ANAの歌舞伎をテーマにした機内安全ビデオがグランプリ受賞 

2020年3月11日(水) 配信

 クールジャパン官民連携プラットフォームは3月10日(火)、「クールジャパン・マッチングアワード2019」の受賞者を発表した。グランプリは、全日本空輸(ANA、平子裕志社長)と松竹(迫本淳一社長)の取り組み「歌舞伎がテーマの機内安全ビデオ」が受賞した。そのほか準グランプリなど、計8つの取り組みが選ばれた。

 ANAは松竹の全面協力のもと、日本の伝統芸能である「歌舞伎」をテーマとした約4分間の機内安全ビデオを制作。17カ国対応の字幕付きで2018年12月(国際線は19年1月)から上映している。

 ビデオを視聴することで安全の重要性を理解してもらうとともに、日本文化を国内外に広く伝えることを狙いとしている。

 審査員長を務めた夏野剛慶應義塾大学大学院特別招聘教授は「歌舞伎という日本の伝統芸能の要素をふんだんに取り入れ、かつ、安全周知という機能を全く損なうことなく、非常に完成度の高い作品である」と評価した。

 「クールジャパン・マッチングアワード」は、内閣府が進める「クールジャパン戦略」の観点を軸に、日本の魅力を深掘りし、分野や地域、海外との連携を通じて世界の共感を得た取り組みを募集、表彰している。

 なお、3月10日(火)に予定していた表彰式は、新型コロナウイルスの感染拡大防止策の一環として、延期が決まった。

 受賞者は次の通り。

グランプリ(1件)

取り組み分野/取り組み名:航空によるインバウンドと歌舞伎/「歌舞伎がテーマの機内安全ビデオ」

受賞者(応募者/連携先):全日本空輸/松竹

準グランプリ(1件)

取り組み分野/取り組み名:パラスポーツ×テクノロジー/「CYBER SPORTS(サイバースポーツ)」

受賞者(応募者/連携先):ワントゥーテン/RDS、千葉工業大学 未来ロボット技術研究センター fuRo、清水建設コーポレート企画室コーポレート・コミュニケーション部東京2020推進グループ

奨励賞(3件)

取り組み分野/取り組み名:ハンコ×キャラクター・自動車等/「痛印(いたいん)」

受賞者(応募者/連携先):TOSYO/日産自動車、講談社、アニプレックス

取り組み分野/取り組み名:テクノロジーと伝統によるナイトタイムエコノミー/「夜会 by 1→10」

受賞者(応募者/連携先):ワントゥーテン/東京都公園協会、名古屋テレビ放送、竹芝エリアマネジメント、NREG東芝不動産、名古屋城光のイベント実行委員会

取り組み分野/取り組み名:上海と東京で放送・配信/「侬好、東京(のんはお、どんじん)」

受賞者(応募者/連携先):ジャパンエフエムネットワーク/上海東方広播有限公社

特別賞(3件)

取り組み分野/取り組み名:ホテル×商店街の空家/「商店街HOTEL 講 大津百町」

受賞者(応募者/連携先):自遊人/木の家専門店谷口工務店、大津市商店街連盟

取り組み分野/取り組み名:地域観光×食/「下北ジオ・ガストロノミー・ツーリズム」

受賞者(応募者/連携先):しもきたTABIあすと/本田屋本店

取り組み分野/取り組み名:アパレル × 地域の伝統産業、体験/「LOCAL WEAR by snow peak」

受賞者(応募者/連携先):スノーピーク/佐渡棚田協議会、浅記、京屋染物店

7月21日、「ザ・ゲートホテル京都高瀬川 by HULIC」開業

2020年3月11日(水) 配信

外観全体(イメージ)

 ヒューリックホテルマネジメント京都は7月21日(火)、図書館やホール、商業店舗を有する複合施設「立誠ガーデン ヒューリック京都」内に「ザ・ゲートホテル京都高瀬川 by HULIC」(京都府京都市)を開業する。

 京都市が推進する元立誠小学校跡地の活用事業として、既存校舎の一部を保全・再生。伝統文化・地域文化を積極的に取り入れた、まちと共に歩む新しいホテルを目指す。

 客室は、築93年の歴史を持つ校舎を活用した「Schoolhouse棟」の20室と、新築棟の6タイプ164室、合わせて184室を用意。東山の緑豊かな大パノラマを堪能できるロビーやレストラン&バー、畳60畳が敷き詰められた大広間など、四季と時間の移ろいを感じられる空間が広がるホテルとなる。

星野リゾート、軽井沢でワイン飲み比べイベント開催

2020年3月11日(水) 配信

軽井沢星野エリアで「軽井沢ナチュラルワインテラス」を開催

 星野リゾートは5月23日(土)・24日(日)、「軽井沢星野エリア ハルニレテラス」でナチュラルワインを味わうイベント「軽井沢ナチュラルワインテラス」を開く。輸入業者が厳選した70種類以上のワインの飲み比べや、フードメニューの販売などを行う。

 イベントで飲み比べできるナチュラルワインには市場に出回らない貴重なワインも含まれる。輸入業者と会話をしながら好みのワインを見つけることができる。

 ワインに合うフードメニューとして、ソーセージやベーコンなどを手軽にグリルで味わえるバーベキューセットや、オーガニックチーズなどのテイクアウトフードが登場する。

 専用のペンでガラスに手彫りを行うガラス工芸「グラスカービング」も行う。ワイングラスに軽井沢の草木や文字をその場で彫ってもらい、自分だけのオリジナルグラスでワインを楽しめる。

「軽井沢ナチュラルワインテラス」概要

開催日:2020年5月23日(土)、24日(日)

場所:軽井沢星野エリア ハルニレテラス

時間:午前11:00〜午後5:00

料金:1日券 6,500円(税込、フリーフロー・ワイングラスとグラスホルダー付)
グラス5杯券 2,500円(税込、好きなワイン5杯・ワイングラス付)

予約:ホームページより前日午後11:00までに要予約。1日券を前日までに予約すると、星野エリア内共通利用券500円分をプレゼント。

じゃらん、「この春行きたい桜風呂ランキング」発表 1・2位は桜のピンクと海のブルーが広がる絶景風呂が獲得

2020年3月11日(水) 配信

ホテル京急油壺観潮荘(神奈川県)

 リクルートライフスタイル(淺野健社長)が企画・編集する旅行情報誌「じゃらん」は3月10日(火)、「この春行きたい桜風呂ランキング」トップ10を発表した。

 1位は「ホテル京急油壷観潮荘」(神奈川県)が、2位は「天空海遊の宿 末広」(愛知県)が選ばれた。いずれも桜のピンクに加え、海のブルー楽しめる宿泊施設が上位を獲得した。トップ10のなかには、桜と山間の新緑が望める施設や間近に桜鑑賞ができる施設などもランクインした。

 1位に選ばれた「ホテル京急油壷観潮荘」(神奈川県)は、小網代湾が望める露天風呂に浸かりながら、桜と海のコラボレーションを望むことができる。海水を沸かしている湯も魅力だ。

 2位は「天空海遊の宿 末広」(愛知県)。屋上にある露天風呂からは、眼下に広がる300本のソメイヨシノと海の壮大な景色を眺めることができる。

 3位の「湯元 宝の家」(奈良県)は、桜の名所として名高い吉野山の中腹にあり、露天風呂から桜の絶景が堪能できる。

 同誌は2020年2月19日(水)~2月20日(木)の2日間、47都道府県在住の20~50代男女を対象に同誌に掲載されたスポットなどをインターネットで画像選択する方式でアンケート調査を行った。有効回答数は1077人。

 ランキング結果は次の通り。

「この春行きたい桜風呂ランキング」ベスト10

【1位】ホテル京急油壷観潮荘(神奈川県)

【2位】天空海遊の宿 末広(愛知県)

天空海遊の宿 末広(愛知県)

【3位】湯元 宝の家(奈良県)

湯元 宝の家(奈良県)

【4位】滝見苑けんこう村ごりやくの湯(千葉県)

露天風呂の目の前にあるソメイヨシノと養老渓谷の山々を望める日帰り温泉施設。

滝見苑けんこう村ごりやくの湯(千葉県)

【5位】風雅の宿 長生館(新潟県)

男女合わせて1000坪と県下最大級の露天風呂の周りに約10本のソメイヨシノが花開く。夜はライトアップされ、幻想的な雰囲気に。

風雅の宿 長生館(新潟県)

【6位】ホテル神の湯温泉(山梨県)

大浴場以外に、日帰り入浴も可能な貸切家族風呂の花見風呂がある(当日の電話予約も可能)。

【7位】藤野やまなみ温泉(神奈川県)

11本の桜をはじめ、季節の花々に彩られた庭を眺めることができる。日帰り入浴も可能。

【8位】泡の湯旅館(長野県)

5本のソメイヨシノをミルク色の野天風呂から堪能できる。

【9位】岡山いこいの村(岡山県)

桜の風景を独占できる3つの貸切風呂がある(要予約)。

【10位】信貴山観光ホテル(奈良県)

大浴場の露天風呂では間近に咲く桜を、内湯では絵に描いたような桜が楽しめる。

〈旬刊旅行新聞3月11日号コラム〉消費市場が変わる 新型コロナの水面下で進む構造的変化

2020年3月11日(水) 配信

新型コロナの水面下で進む構造的変化

 小田急線の車両の音が軽い。通常であれば平日の朝の通勤時間は多くの乗客がいるために、車両の走行音は地響きのように重いのだが、最近は空の貨物列車が走っているような乾いた音がする。

 
 新型コロナウイルスの感染拡大により、政府は3月2日から全国の小学校・中学校・高等学校や、特別支援学校を春休みまで臨時休校としたほか、時差通勤やテレワークの実施などで、東京都心に向かう電車の中は日曜日の朝のように空いている。経済への影響を考えると、不安になる。

 
 さまざまなスポーツや文化イベントも中止や延期、無観客試合などの措置が取られている。発災から9年を迎える東日本大震災の追悼式も取りやめとなった。さらに、3月9日から中国と韓国からの入国を制限した。近年の「インバウンド重視政策」の要に位置している観光業界には大打撃となる。
 
 日本旅館協会(北原茂樹会長)が緊急融資制度の創設などを求める「新型コロナウイルス感染症対策に関する要望書」を赤羽一嘉国土交通大臣に提出するなど、政府や国会議員、首長への陳情活動も活発になってきた。「声を上げなければ無いものとされる」世界においては、観光関連の業界団体は正確な経営状況を把握し、国に伝える使命がある。
 
 一方で、個々の旅館やホテルでは、従来の「作業プロセスのムダを見直す絶好の機会」と、改革に着手する施設もある。苦境によって見えてきた自館の課題に対して改革に着手できるか、陳情活動に終始するだけで時が過ぎていくのか。新型コロナウイルスの感染が終息したときに大きな差が出てくる。
 
 人間は観光や外食を楽しみたい文化的な生き物である。旅行需要は、必ず回復する。中国人観光客もいずれ大きな波となって戻ってくる。延期になったコンサートイベントやスポーツイベントも再開される。戦争や大恐慌、パンデミックが起こっても、人間はいずれ旅をする。拡大と縮小を繰り返しながら、観光産業は成長を続けてきた。
 
 その意味では楽観視しているが、もう一つ厳しい現実を直視しなければならない事態がある。新型コロナウイルス感染拡大のニュースに隠れて、水面下で進む大きな動きがやがて姿を現すだろう。
 
 というのも、年明けに本格的に新型コロナウイルスの感染が拡大する以前から、「今年の2月、3月の予約がかつてないほどに悪い」と言う声を耳にしていた。昨年10月に実施した消費税率のアップの影響もあるかもしれないが、もっと根本的な理由がありそうだ。つまり、旅行や消費する層が、まさに今、大きく変化している、「構造的な問題」を真剣に考える時期に来ているのではないか。
 
 本紙は2019年6月21日号の1面で「注目の消費市場『70代シニア』」を特集した。国立社会保障・人口問題研究所によると、2020年に日本で最も多い世代は70代となり、1634万4千万人(17年推計)を見込んでいる。しかし、その70代も後半になると、海外も、国内旅行も行く回数が減っていく。
 
 新型コロナウイルスの感染拡大が終息したあとに、従来と同じ客層が戻ってくるとは限らない。これらの構造変化を理解することで、新たな顧客層を開拓していくうえでの基礎資料としたい。
 (編集長・増田 剛)

【特集No.548】全国被災地語り部シンポin東北 世代を超えて「KATARIBE」つなぐ

2020年3月11日(水) 配信

 東日本大震災からまもなく9年を迎える2月24~25日の2日間、宮城県・南三陸町の南三陸ホテル観洋と、同町内で「第5回全国被災地語り部シンポジウムin東北」が開催された。「『KATARIBE』を世界へ」をテーマに、全国から約400人の「語り部」らが参加。語り部としての取り組みと課題、震災遺構、記憶と記録、語り部の未来について話し合った。「被災地」と「未災地」を結び、次の世代や第2の語り部の育成に努めていくと宣言し、次回の開催地・兵庫県神戸市につなげていく活動を取材した。

【長谷川 貴人】

「未災地」と未来に伝わるため 次世代の育成に努めていく

 第1回、第3回全国被災地語り部シンポジウムは、同じ南三陸ホテル観洋で行われた。第2回は兵庫県・淡路島の淡路夢舞台国際会議場、前回(第4回)は熊本県熊本市などで開かれた。

 5回目を迎えた今大会の冒頭、阿部隆二郎実行委員長(南三陸町地域観光復興協議会会長)があいさつを行った。はじめに過去の大会を通じて、「全国被災地の方々とネットワークを作り、語り部の勉強会や震災遺構の大切さなどを学び合い、情報交換と共有に努めてきた」と振り返った。

 このような活動が評価され、南三陸ホテル観洋は昨年、第14回マニュフェスト大賞で最優秀コミュニケーション戦略賞を受賞したことを報告。「震災の風化を防ぎ、震災の教訓を次の世代、そして未災地の人々に伝えていかなければならない」と力強く語った。

 基調講演は、政策研究大学院大学客員教授で元国土交通省事務次官の徳山日出男氏が登壇した。「教訓が命を救う―『語り部』のもつ尊い使命」をテーマに、津波の爪痕を伝えるため、伝承施設や震災遺構を通じた情報の発信について語った。

 外国にも存在する津波博物館の取り組みや、昨年開催した「日米津波フォーラム」など、災害の伝承事例を紹介した。「災害は知識と備えで乗り越えることができる」と述べ、「世界中からの支援を受け、復興に向かうことができたのでは」と指摘。「復興するのと同時に恩返しをしようではないか。教訓を世界に伝えることで大変な貢献ができる」と考えを語った。

多くの語り部が講演 未来に語り継ぐべきこと

 オープニングプレゼンツとして、地元・宮城県内の小学生2人が登壇した。2年生の奥田梨智さんが市のコンクール受賞作品の詩「あいたいよ パパ」を朗読。6年生の佐藤光莉さんはプレゼンテーションを行い、「震災を未来に語り継いでいける語り部になりたい」と発表した。

 その後、パネルディスカッション「語り部の未来」を開いた。

【全文は、本紙1789号または3月17日(火)以降日経テレコン21でお読みいただけます】