2020年3月4日(水) 配信
日本旅行業協会(JATA、田川博己会長)は2月21日(金)、東京都内で「JATA経営フォーラム」を開いた。分科会A会場では「海外旅行2000万人時代を迎え、次なる旅行商品とは!」をテーマに、添乗員同行型ツアーの価値向上などを議論。海外OTA(オンライン旅行会社)が台頭するなか、旅行会社の役割を探った。
登壇者は、クラブツーリズム取締役テーマ旅行本部長の吉岡敬泰氏、ベルトラ取締役海外旅行事業部執行役員の萬年良子氏、ANAセールス取締役旅行事業部長の浅田康夫氏の3氏。モデレーターはJTB執行役員個人事業部長の遠藤修一氏が務めた。
討論の冒頭、JTBの遠藤氏は日本における海外旅行の歴史を振り返った。そのなかで、2000年以降、海外旅行者数が1800万人前後で推移した時期を「成熟期」との認識を示した。増加が止まった要因の1つとして、若者を集客できなかったことを挙げた。
さらに、15年にインバウンドとアウトバウンド人口が逆転したことを「転換期」と強調。「外国の航空会社の就航増加で、日本を出発する航空機の座席も増え、気軽に海外旅行に行けるようになった」状況を説明した。
一方、「日本の海外旅行者数が2000万人を超えたが、我われ旅行会社が扱う人数は全体の伸びと比較して低い」と課題を指摘。06年から海外OTAが進出したことで、インターネットでの購買率は約8割を占めたことを大きなポイントとし、「海外旅行の75・8%はインターネットから予約されている。店舗利用率は15年から、ほぼ変わらない。インターネット販売は必須になった」と危機感を示した。
FIT(海外個人旅行)化率の向上についても触れ、「初めての海外旅行は旅行会社を使う傾向があるが、2回目以降は使う人が少ない」と旅行会社の課題を挙げた。そのうえで、旅行企画の重要性や添乗員の役割などについて意見を求めた。
□クラブツーリズム
吉岡氏は旅行企画の重要性について、OTAが台頭している状況を踏まえたうえで「我われの価値は人にしか企画できないツアーの提供」と強調した。具体例として「新しい旅の目的とスタイルの提案」や「新しいマーケットの創造」、「顧客との関係づくり」、「知識・経験に基づくコンサルティング」などを挙げた。
ツアーを催行するうえで、旅行会社ならではの価値として、添乗員の重要性を挙げ「リアルエージェントの生き残る方策のひとつ」との認識を示した。
添乗員の役割としては「お客様同士の交流を促す盛り上げ役」や、「旅行テーマについてアドバイスなどができるナビゲーター」とした。
一方、課題は①添乗員同行型のツアーのシェアが4・5%だったこと②添乗員全体の約70%が40~50代と高齢化しており、20~30代の若年層が添乗員に就かない2つの悪循環に落ちいっていること―を挙げた。
今後は、多様なニーズに応えるため、添乗員を現地だけに、同行させるツアーの検討をするべきとした。
□ベルトラ
ベルトラの萬年氏は個人型フリーパックの需要拡大について話した。
はじめに旅ナカの市場規模について「20兆円の市場規模があり、開発の余地がある」との考えを示した。
さらに、30歳以下に対する旅への意識に関するアンケート結果も示した。アンケートでは「家を買う」や「高収入を得る」よりも「旅をしたい」という回答が多かったという。
萬年氏は「当社のビジネスは若い人に向けて提案するポテンシャルを持っている」と自信を見せた。
□ANAセールス
ANAセールスの浅田氏はこれからが旅行会社が成長するヒントとして、「30歳以下のミレニアム世代は失敗を恐れ、旅行会社に頼る傾向がある。旅のプロからの提案は旅行会社の利用につなげられる」と強調。失敗を恐れる理由としては、「旅マエに、旅行先をSNS(交流サイト)で確認すること」と、「グループ旅行において幹事を断る傾向にある」ことを挙げた。
また、ミレニアム世代の旅の特徴は、「インスタ映えが流行するなど、目的は多様化している」と説明した。
SDGsについては「旅に行くには健康が必要」とし、「旅で癒されるより、健康になれるツアーなどのテーマを追求する」と語った。