2020年4月10日(火) 配信
群馬県・上野村は人口1200人に満たない小さな村でありながら、「挑戦と自立」を掲げる。30年前から若い世代の移住・定住対策に注力し、Iターン者は20%を超える。村の総面積の約95%を占める森林を活用する林業や、観光事業など「村が産業を興し、雇用を生み出す」姿勢を貫く。村営としてスタートした「きのこセンター」は経営意識の変革により、黒字化を達成。「過疎ではなく、『適疎』(てきそ)の村という新しい価値観を生み出したい」と語る黒澤八郎村長に、村内循環型社会の構築などの取り組みを聞いた。】
【増田 剛】
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□エネルギーや経済を村内で循環
――黒澤村長が地域づくりに強い想いを持たれたきっかけを教えてください。
私は上野村に生まれてからずっと村内で生活してきました。地元の高校を卒業後、村役場に就職しました。色々な業務に携わるなか、群馬県庁に1年間派遣されたことが転機となり、地域づくりに面白さを感じました。
それぞれの地域で「自分の村や町をなんとか良くしたい」とアイデアを出しながら、一生懸命取り組んでいる人たちと共に仕事ができたことが大きな財産となりました。単なる行政ではなく、村の未来を見据えた考えが身に付いたと思います。
上野村は「挑戦と自立の村」という基本姿勢が引き継がれています。私も与えられた職務の中でトップの理解を得ながら、さまざまな企画を出し、試行錯誤を繰り返していました。たまたま3年前の村長選挙で「お前やってみろ」という声があり、立候補させていただきました。結果、無投票で当選しました。
――1期目に取り組んだことは。
前村長と一緒に仕事を進めていましたので、きっちりと引き継いでカタチにしていくのが最初の目標でした。そしてハード、ソフトの両面で「全体を底上げする」ことに注力しています。必要な部分には手を入れて、施設の機能も、サービスも上げていくことが重要だと考えています。
今は2021年度からスタートする10年間の総合計画を作成しています。団塊世代の高齢化など人口構成を含め、構造変化が予想され、中身を深く考えていくことが必要だと考えます。
観光の事業は移住・定住などすべての政策につながっており、「観光政策=総合計画」といっても過言ではありません。さまざまなデータを駆使して「訪れる人は上野村に何を求めているか」を理解したうえで、「人の流れを引き込む」計画を作っています。
――多くの過疎地では地域社会を維持することが困難になりつつあります。
最近、私は“適疎”という環境を維持することが大切なのではないかと考えています。
「過密」の対極に「過疎」がありますが、どちらもマイナス面があります。新型コロナウイルスの感染が拡大しているなか、安心・安全な生活や快適性を考えると、これから人々が求める環境は、それほど過密ではない、「疎」の方に近づいているのではないでしょうか。であるならば、「過疎=マイナス」のイメージではなく、「適した疎=適疎」という新しい価値観を提供していきたいと考えています。……
【全文は、本紙1792号または4月16日(木)以降日経テレコン21でお読みいただけます。】