10月の宿泊業倒産は8件 10月時点で78件、19年通期を上回る(東京商工リサーチ調べ)
2021年11月10日(水) 配信
東京商工リサーチがこのほど発表した2021年10月の宿泊業倒産は8件(前年同月は13件)だった。2カ月連続で前年同月を下回った。このうち、新型コロナ関連倒産は5件。倒産全体の6割(構成比62・5%)を締めた。また、21年1~10月の累計倒産件数は78件で、前年同期の105件を下回っている。一方で、コロナ禍前の19年通期(1~12月)の75件を既に上回る結果となった。
□宿泊業の倒産状況
10月の宿泊業倒産の負債総額は85億4300万円(前年同月比45・1%増)で、2カ月ぶりに前年同月を上回った。今年1~10月の累計負債総額は1387億5300万円で、前年通期(1~12月)580億1200万円のおよそ2・4倍。
原因別として、販売不振が5件で6割を占めた。形態別では、破産が6件のほか、特別清算が2件となり、すべて消滅型で占められた。地区別では中部が4件、九州2件、関東と近畿から各1件発生した。
おもな倒産事例として、「ホテル長泉ガーデン」を経営していた長泉ガーデン(静岡県・長泉町)が10月22日(金)、債権者から破産を申し立てられ破産開始決定を受けた。負債総額は、長泉ガーデンと関連企業の長田事業併せて約187億円。
同社は、会員制リゾートホテル「ホテル長泉ガーデン」の経営を手掛けていたほか、関連企業の長田事業は同ホテルの建築主であり、会員権の販売などを行っていた。しかし、建設費の支払いが遅れるなど当初から資金面で問題が生じていた。
近年は会員とのトラブルが発生するなか、関連企業のAWH(旧・淡島ホテル)が19年12月に破産開始決定を受けた。ホテル会員権や貸付金、預託金などの債権者が結成した「淡島ホテルグループ債権者の会」が、会員の権利や金銭問題の解決のほか、グループ内での資産流出の抑止策を講じた。
今年3月10日(水)に静岡地裁沼津支部へ両者の破産を申し立て、10月22日(金)に破産開始決定を受けた。負債は、長泉ガーデンが債権者約30人に対して約75億円。長田事業が債権者約30人に対して約112億円となった。
□旅行業の倒産状況
今年10月の旅行業倒産は20年12月以来、10カ月ぶりに発生しなかった(前年同月6件)。21年1~10月の累計倒産件数は25件(前年同期24件)で、前年を上回って推移している。
10月に入り緊急事態宣言などが全国で解除され、国内旅行が活発化する動きや「Go Toトラベル」の再開も議論されている。同社は、「入国制限もビジネス旅客の緩和が取り沙汰されていて、コロナ禍で疲弊した旅行業の回復に期待が集まる」と分析した。