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「観光人文学への遡航(17)」 国を開くのなら団体旅行にしませんか?

2021年11月23日
編集部

2021年11月23日(火) 配信

 
 「ポストコロナはどうなっていくのか」ということを最近色々なところから聞かれる。「コロナ前の世界がまた戻ってくるのか」とも聞かれる。この質問をもらうとき、いつも違和感や、もどかしさを感じる。果たしてコロナ前の世界は、良かったのだろうか。

 
 オーバーツーリズムで自国内の観光が苦痛になり、生活圏まで踏み荒らされたコロナ前の世界になんか戻ってほしくない人は多いのではないだろうか。

 
 旅行を捨てた(大手の)旅行会社たちが憧れ、目指している広告代理店ビジネスは、実はぐだぐだだったということがこのオリ・パラで白日の元に晒された。

 
 補助金に巣喰い、中抜きをし、自分たちは上澄み液をたっぷりいただいて、仲間内に仕事を分配することで、自分たちの存在意義を示し続ける。実際のオペレーションは、孫請け、ひ孫請けが安価で請け負うから、イベントとしてのクオリティはびっくりするほど低レベルだったが、実際のオペレーションもぐだぐだだった。孫請け、ひ孫請けが実施しているから、そこに当事者意識などさらさらなく、いわゆる「バブル」を抜け出す人がいても、誰も注意もできないし、見て見ぬふりをする。その結果がこの感染大爆発だ。安心安全な大会とは程遠い代物だった。

 
 旅行会社がフツーに参加者の人数を常にカウントし、健康状態も確認し、行く先々のサービスが適切に行われているかも確認し、時間管理もする。そして、にこにこと笑顔を忘れず、お客様が常軌を逸したときは角を立てずにうまく軌道修正をする。これはにわかでできるものではない。他業種から見たらこれは神業の域だ。

 
 にもかかわらず、旅行会社は、この神業を、世の中が求めているのは個人旅行だからといって、いとも簡単に捨ててしまった。

 
 我が国において、最多の感染者を発生させ、自宅療養という名の医療崩壊を招いた第5波は、もう明らかにオリ・パラに伴う入国者の増加と、当初関係者が主張していたバブルが形成できなかったことによる。

 
 感染が収まったら間髪入れずに制限緩和の流れが加速しているが、海外は再拡大している国も多いのが現状である。インバウンドは個人旅行ではなく、確実にバブルを形成できる団体旅行で再開することを再度ここで改めて強く主張したい。インバウンドのいち早い再開を求めている国民は一体どのくらいいるのだろうか。自国民に負荷がかかるインバウンドの復活を多数の国民は求めていない。

 
 団体旅行は、今まで旅行会社やホテルに蓄積された数々のノウハウが生きてくる。お題目ではない真の安心安全を、旅行者にも、そして、とくに旅行者を受け入れる観光地に住む地元の人々に対して提供するために、観光産業が今までのノウハウを結集して、団体旅行で実施してもらいたい。

 

コラムニスト紹介 

島川 崇 氏

神奈川大学国際日本学部・教授 島川 崇 氏

1970年愛媛県松山市生まれ。国際基督教大学卒。日本航空株式会社、財団法人松下政経塾、ロンドンメトロポリタン大学院MBA(Tourism & Hospitality)修了。韓国観光公社ソウル本社日本部客員研究員、株式会社日本総合研究所、東北福祉大学総合マネジメント学部、東洋大学国際観光学部国際観光学科長・教授を経て、神奈川大学国際日本学部教授。日本国際観光学会会長。教員の傍ら、PHP総合研究所リサーチフェロー、藤沢市観光アドバイザー等を歴任。東京工業大学大学院情報理工学研究科博士後期課程満期退学。

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