〈旬刊旅行新聞12月11・21日合併号コラム〉2021年の観光業界を振り返る――「日本ツーリズム・オブ・ザ・イヤー」創設
2021年12月11日(土) 配信
2021年の観光業界は、20年に引き続き、新型コロナウイルスの影響を大きく受けた。本紙6~7面で「見出しと写真で振り返る2021年の観光業界」を掲載しているので、ぜひ紙面を開いてみてほしい。
振り返ってみると、緊急事態宣言に明け暮れた。東京都では、新年早々の1月8日から3月21日まで2回目の緊急事態宣言が発令された。
3月22日~4月11日まで束の間、解除されたが、ゴールデンウイークを目前に、4月12~24日までまん延防止等重点措置が適用され、翌25日から6月20日まで、3回目となる長い緊急事態宣言下の生活が続いた。
その後、6月21日~7月11日までまん延防止等重点措置が適用。翌12日~9月30日まで4回目の緊急事態宣言が出された。
1年延長された東京オリンピックは緊急事態宣言下での開催となった。「開催するのか、否か」、「有観客か無観客か」で結論が直前まで先送りされた。IOC(国際オリンピック委員会)など国内外のさまざまなしがらみや、批判的な声に思い切った決断ができず、不完全燃焼のまま幕を閉じた印象だった。
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緊急事態宣言が全面的に解除された10月以降は、新型コロナウイルスの感染者数は激減した。「どうして急速に減少したのか」専門家ですら明確な答えが出ないなか、現時点では感染者数は少ないままだ。
一方で、「このままコロナが終息してほしい」という人々の願いが実を結ぶかに思われた11月に、新たな変異株「オミクロン株」が南アフリカで見つかった。日本政府は水際対策措置の強化策として、11月30日以降、外国人の新規入国を原則停止している。
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こうしてみると、緊急事態宣言とまん延防止等重点措置の繰り返しで、2年連続でコロナに翻弄され続けたが、コロナ禍でもできることはやった。
12月1日には瀬戸川礼子氏が記した書籍「おもてなしの原点 女将さんのこころ その三」を出版した。55人の女将の生き方や考え方がぎっしりと詰まっており、多くの観光業界の方々に読んでほしい1冊だ。
また、旅行新聞新社はこのほど「日本ツーリズム・オブ・ザ・イヤー」を創設した。日々の取材活動を通じて創意工夫の見られる取り組みを独自に選び、毎年12月に表彰する試みだ。
2021年のグランプリには「リーガロイヤルホテル東京」を選出した。コロナ禍であったが、同ホテルはドラマ撮影などロケ誘致に力を入れるとともに、撮影時の独自ガイドラインを作成するなど、窮地を逆手に取った取り組みで大きな成果を上げた。
優秀賞には「札幌観光バス」と「SUWAガラスの里」の2社を選んだ。
「札幌観光バス」は、乗務員と事務職が1つの「チーム」をつくり、「バスガイド付き貸切バスの楽しさを伝え、北海道のファンになってもらう」ことを目的に、アイデア溢れる取り組みを継続している。
「SUWAガラスの里」は、感染症拡大で作品の発表機会が激減するなか、展示販売スペース「アーティストスクエア」を新設し、地域交流や活性化にも貢献した。
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厳しい経営環境でも観光業界には、アイデアや知恵を出して頑張っている人たちがいる。日々の取材で見つけていきたいと思う。
(編集長・増田 剛)