〈旬刊旅行新聞1月1日号コラム〉オフピークの旅―― 老桜の傍で満開の姿を想像する境地に
2022年1月1日(土) 配信
帝国データバンクが企業に対して実施した「2022年の景気見通し」調査によると、22・3%が「22年は景気が回復する」と見ている。18年(20・3%)以来の2割超えで、「旅館・ホテル」業は32・6%(前年比17・4ポイント増)を占め、他業界に比べても新年への期待は大きいようだ。
他方、懸念材料として82・5%が「原油・素材価格の上昇」をあげている。
観光業も原油高の影響を大きく受ける産業だ。旅館・ホテルは冬期には大浴場の加温、館内の暖房、水道料などの光熱費、送迎バスのガソリン代など、一つひとつが重く圧し掛かる。「いくらお客様に来ていただいても、旅館は利益が出ない」という声を何度も聞いてきた。
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世界は脱炭素社会に向けて、本格的に動き始めた。CO2削減のために、エネルギー消費における石油や石炭など化石燃料の比率を下げ、再生エネルギーが代替できるまでの間、「成長痛」の時期ともいわれ、当分原油高の状態が続きそうだ。
このため、本紙では何とか旅館・ホテルの経営を圧迫するコストの削減にお役に立てないかと、新春企画として全国の主要旅館・ホテルを対象に、「省エネ」についてアンケート調査を実施した。48軒から有益な回答をいただいた。
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同調査では、全体の3分の2に当たる66・7%が何らかのかたちで「省エネ」に取り組んでいることが分かった。一の坊グループの「ゆと森倶楽部」(宮城県・蔵王町)では、排熱利用システムを導入。廃棄する温泉の熱で、シャワーなどで使用する水を加温している。「重油の年間使用量の17・4%に当たる2万5千リットルを減らし、約160万円を削減。二酸化炭素排出量は68㌧を削減した」(同館)という。
このほかにも、多くの宿がさまざまな工夫をして光熱費の節減に取り組んでいる。なかでも「節水」は最多の30・4%の宿があげた。既に「節水シャワーヘッド」や「トイレの水の節水」などに着手している。
一方、「取り組む予定はない」(6・7%)と回答した宿の主な理由としては、「費用対効果が不明」などがあった。本紙としては、22年はコスト削減の先進事例などを取材させていただき、具体的な数値なども示しながら「旅館・ホテルのコスト削減」を紙面の柱としたいと考えている。
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約2年に及ぶコロナ禍では、「密にならない」ことが観光業界のキーワードの1つだった。コロナの状況次第だが、いずれGo Toトラベルの再開や、インバウンドの受け入れも始まるだろう。そのときに、交通渋滞や観光地の混雑、旅館やホテルの満室なども予想される。
新年を迎えるにあたり、私も22年の旅のテーマを決めている。「オフピークの旅」だ。既に取り組んでいるのだが、さらに極めたいと思っている。
一例をあげると、旅の出発は早朝の3時台である。渋滞知らずのため、本州であれば、自宅の神奈川からどこでも夕方までに到着することができる(実験済み)。
人気リゾート地には人っ子1人いない閑散期に過ごす。ダムには真冬にオートバイで行く。
もっと言えば、花のない桜の老木の傍に佇み、満開の姿を想像する。私はもうそれで満足できる境地に達してしまったのだ。
(編集長・増田 剛)