ゲストハウスを開設、バス会社・平成エンタープライズ
バス事業を中心に展開する平成エンタープライズ(田倉貴弥社長、埼玉県富士見市)はこのほど、東京・東日暮里に宿泊施設「ゲストハウス WASABI わさび」をオープンした。運輸から宿泊まで複合展開することで付加価値を創造し、サービスの向上をはかる。同社の狙いや施設の概要を紹介する。
【飯塚 小牧】
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複合展開で付加価値、サービス向上はかる
同社は東京―大阪などを中心に高速バス「VIPライナー」を運行するほか、貸切バスや埼玉県内での路線バス、旅行事業などを手掛けている。もともと同社はバス利用者などへの休憩所として全国6カ所でラウンジを展開しており、宿泊業への参入もバス利用者へ休憩所を提供したいという発想から生まれた。狙いはサービス向上だ。
田倉社長によると、昨年の新高速バス移行後、高速バスは競争が再度激化したという。「パイが減っているのか分からないが、最低価格が下がっている。リピーターを増やすため、別のサービスを展開して、利用価値を生み出したい」と語る。高速バス利用者は休憩所として無料で「わさび」を利用できるほか、宿泊者が同社バス以外の交通手段で移動しても、旅先の同社ラウンジでサービスを受けられる。
当初、大阪のVIPライナー停留所の前に宿泊施設をオープンしようと動いていたところ、東京にも物件が見つかり、先に東京が開業することになった。施設は「格安で提供でき、高速バス利用者とリンクする」とドミトリータイプの施設にした。「わさび」は男女別の相部屋で、料金は1人2800円。
訪日外国人観光客が増えていることも追い風だ。「旅行会社には高速バスとドミトリー、東京から成田の空港リムジンバスが付いたユニットとして販売し、ツアーの一部に組み込んでもらうかたちにしたい」と意気込む。また、個人の外国人観光客で高速バスを使う場合、ゴールデンルートの東京―大阪間が最も多い。同社もこの路線を多く持っており、バスと宿泊をパッケージにして売り出したい考えだ。「貸切バス事業もあるので、宿泊者に富士山の日帰りツアーに参加してもらうことなどもできる」と展望する。宿泊施設で集客し、そのほかの事業へつなげていくことが目標だ。「わさび」の内装は大浴場に“銭湯絵”の富士山を描いたほか、化粧室の壁紙もそれぞれ和を感じられるものに仕上げ、個人のSNS発信なども集客ツールとして期待する。
外国人だけではなく日本人の家族旅行なども取り込んでいく。「わさび」にはドミトリータイプのほか、個室も用意。8部屋のうち、和室の3部屋は3人まで宿泊可能で、料金は3人利用で9千円。「地方から家族で東京ディズニーリゾート(TDR)に行くととてもお金が掛かってしまい、カプセルホテルに泊まる家族もいるそうなので、そういった人たちにも利用してもらいたい」と話す。
今後は、9月の開業を予定する大阪のほか、国内外の観光客の多い浅草や富士山、京都、TDR周辺の葛西などに宿泊施設の展開を検討しているという。「東京もラウンジを含め山手線内に転々と拠点を作っていきたい。その各施設の前にバスの停留所も作れるように努力していく」と夢は広がる。なお、宿泊施設のコンセプトはそれぞれで、大阪はイタリア風の造りになる予定という。