「最大の使命は観光の再生」JATA、髙橋会長が新年会見開く
2022年1月12日(水) 配信
日本旅行業協会(髙橋広行会長、JATA)は1月12日(水)、東京都内の本部で2022年新春会見を開いた。昨年12月、急遽会長に就任した髙橋会長は「会長としての最大の使命は観光の再生にある。元の状態に戻すのではなく、新時代にふさわしいツーリズムのカタチを作るため、提供のあり方や連携の仕方、産業全体の有り様を新たに追求する。全身全霊を掛けて取り組んでいく」と意気込みを力強く語った。
□業界全体でコンプライアンス向上を
髙橋会長は冒頭、昨今の旅行会社による一連の不祥事に触れ、「会員による信用を失墜させる事態は遺憾で重く受け止めている」とした。対象の会員へは報告を求めており、GO TOトラベル事務局の調査結果と合わせて注視する。
また、JATAは全会員へコンプライアンスに関するアンケート調査を実施しており、今週末にも結果がまとまる予定。調査により、コンプライアンス規範を持たない会員にはJATAがスタンダードを作り、徹底してもらう。経営者の認識不足もあるため、経営者向けに重要性を説く機会や従業員向けのイーランニング研修などを検討する。
髙橋会長は「内部通報窓口がない会社もある。国土交通省内の公益通報(内部告発相談)窓口の周知をはかりたい。全国旅行業協会(ANTA)と共有できることは行い、業界全体でコンプライアンスを高めていく」と強調した。
□旅行市場の動向
21年の市場は新型コロナウイルス感染拡大に伴う断続的な緊急事態宣言の発令などもあり、低迷したと報告。旅行取扱額は19年比で8割減となった。「各社、ギリギリの経営状態。国内は感染状況が落ち着いた段階で、できるだけ早いGO TOの再開を求める。大きな効果があると認識しており、国内旅行復活には不可欠だ」と訴えた。
昨年、観光庁が実施したワクチン検査パッケージのツアー実験で参加者から陽性者が出なかったことから、「安全対策を徹底すれば、必ずしも旅行が感染を広げるものではないということが実証できた」と述べ、データに基づく施策の実施を求めた。
また、オミクロン株により感染が再拡大するなか、旅行のキャンセルも増加している。「キャンセル料負担の問題もある。飲食業のような補償もなく、誰かが泣き寝入りしなければならない状況だ。国に強く要望したい」と苦境を訴えた。
現況、国際交流は完全にストップしており、海外旅行と訪日旅行の再開の目途は立たない。オミクロン株の流行により、JATAが計画していた海外への視察団や、国が予定していたインバウンド実証実験は中止された。
髙橋会長は「視察は然るべきときに必ず実施し、突破口にしたい。安心安全な海外旅行の仕組みをつくる。インバウンドの実証実験も感染状況をみて、実施の方向と聞いている。コロナ後に日本に訪れたい外国人は多い。今はコンテンツの磨き上げを行っていく」とした。
国際往来に関しては諸外国との温度差があるため、「バランスを取ってほしい。鎖国か開国かではなく、状況を見ながら感染が落ち着いた地域などから少しずつでも再開を望みたい」と述べた。
日本観光振興協会と日本政府観光局(JNTO)と共催するツーリズムEXPOジャパンは今年、4年ぶりに東京で開催する。「旅行需要歓喜に大きな役割を果たす。ニューノーマルに則した旅行の提案や、目指すべきツーリズムのあり方を世界に発信していく」と意気込んだ。
□観光業の再生とは
観光業はコロナ禍で大きな痛手を負った。一方で髙橋会長は「立ち止まって未来を考える機会にもなった」とし、SDGsやDXへの対応、従来からの収益性の改善などの課題を列挙。「コロナ禍の多様なニーズにどう応えられるか、真価が問われる。生産性、体質改善の契機にしたい」と語った。
現状、企業ごとに展開しているサービスやシステムの共有など「協調と共創」を検討する。具体例として、ハワイで各社が運行している循環バスの一本化を挙げ、「ハワイ側から対応を求められている交通渋滞や、排気ガスの問題にも応えられる」とした。システムについても、共有することで生産性を向上できると前向きだ。
髙橋会長は「新しいツーリズムを作るにはすべての関係者との連携をさらに深める必要がある。すべてのベースはコンプライアンス。意識と行動の改革へ真摯に取り組んでいく。何とか雇用を維持するため、国による支援策に頼らざるを得ないが、本意ではない。自立して事業が行えるよう、自助努力を続けていく。お客様の声に答える為、再生に向け全力を尽くす」と語気を強めた。