日本修学旅行協会、教育旅行シンポ開く 産業観光を修旅に位置付ける
2022年1月12日(水) 配信
日本修学旅行協会(竹内秀一理事長)はこのほど、教育旅行と産業観光~産業観光を教育旅行にどのように位置づけるか、SDGsの視点も踏まえて~」をテーマに、第16教育旅行シンポジウムを開いた。SDGsを学ぶ学校が増えるなか、産業観光が生徒の勤労観などを育み、持続可能な社会の創り手に育てられることを確認した。
はじめに、全国産業観光推進協議会の須田寛会長が基調講演「今、何故教育旅行に『産業観光』か」を行った。
冒頭、コロナ禍での観光について「緊急かつ重要な行為だ。長期化することで倒産した事業者が続出し、今後も増加する可能性がある」と訴えた。
また、生産現場の訪問が中心となる産業観光は、大勢で見学することが危ないため、グループに分けたうえで実施していることから、「コロナ禍で最も適した観光」と力を込めた。農業や漁業現場については、屋外で実施するため、「さらなる感染防止につながる」とした。
SDGsについては、「17のゴールのうち、12項目を学べる」と持論を展開。SDGs12番目の〝つくる責任、つかう責任〟では、職人の真剣な眼差しを見ることで、「(生徒は)モノを大切に使うようになる」と説明した。
9番目〝産業と技術革新の基盤をつくろう〟は「生徒が産業観光を通して産業を知り、将来産業を担う人材に成長できる」と語った。
パネルディスカッションには、東京都立中野工業高等学校統括校長守屋文俊氏と、東京大学教育学部附属中等教育学校副校長の淺川俊彦氏、全国産業観光推進協議会副会長の丁野朗氏、大阪モノづくり観光推進協会専務理事兼事務局長の足立克己氏、JTB事業基盤機能人事チーム調査役の長島誠人氏の5氏が登壇。コーディネーターは日本修学旅行協会理事長の竹内秀一氏が務めた。
討論の冒頭、竹内氏は「SDGsの内容を指導する学校が増えるが、校内だけでは学びきれない。それだけに、今後は修学旅行の役割が増すだろう。また産業観光は、より深く勉強することができる」と述べた。
教育旅行における産業観光の事例を問われた守屋氏は、工場見学のほかに、インターンシップを実施したことを報告。効果については、毎年同校に在籍する約7割の生徒が就職することに触れ、「会社でコミュニケーションをはかることで、仕事のイメージを具体的に掴むことができる」と話した。
淺川氏はコロナ禍でリモートでの授業が増えたことを振り返り、「他者との交流機会が減少し、五感を養う機会が減っている。ICTでの授業が増えるほど、体で感じる学習が欠かせない」と主張した。
産業観光を推進する立場から丁野氏は「産業が発展したストーリーなど全体像もレクチャーすることで効果的な教育になる」と意見。具体例として、新潟県・燕三条では米を育てることできないため、食器の生産を始めたことなどを挙げた。
足立氏は東大阪にある多くの工場は、若者に仕事を伝えたい思いから、修学旅行生を受け入れていることを紹介。「より深くモノづくりを教えるため、伸ばしたい能力や資質などを明確にしてほしい」と要望した。
学校と受入施設を結ぶJTBの長島氏は入社から24年間、教育旅行に携わった経験を振り返り、「生徒の伸ばしたいことなどを理解して、多様な素材を提供できる」と旅行会社の意義を説いた。