〈旬刊旅行新聞1月11・21日合併号コラム〉ウィズコロナ時代の観光へ―― 旅がもたらす「学び」の大きさを再認識
2022年1月14日(金) 配信
「2022年は観光業界にとって力を発揮できる年になってほしい」と願って年を越したが、年始早々に新型コロナウイルスの感染が急激に拡大し、第6波が襲ってきた。さまざまな観光施設や宿泊施設、旅行会社もキャンセルが増えていると耳にし、胸が痛くなる。
Go Toトラベル事業の再開は当分延期される見込みである。水際対策強化のため、訪日外国人旅行者の受入再開も2月末まで先送りされる。政府は3回目のワクチン接種も前倒しで実施していく考えだ。
感染症が拡大するなかでは、旅行控えの流れになるのは仕方がないが、第6波の主な要因とみられる変異株「オミクロン株」の特性をしっかりと理解して、過剰にも過小にもならず、適切な対応によって乗り越えていきたいものだ。
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新型コロナウイルスとの付き合いは丸2年を経過し、3年目を迎えた。“ゼロコロナ”を目指しても、なかなか防ぎ切れるものではない。さまざまな意見があるなか、最悪のケースを避けながら、新型コロナウイルスと付き合っていく「ウィズコロナ時代の観光」にシフトすべき時期になったと感じる。
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コロナ禍の間に、色々なことを考えた。そのなかで、旅行や観光がもたらす「学び」の大きさを再認識した。コロナの感染状況などを見ながら、近場や遠方にも旅行した。思い返すと、旅の前には、訪れる地域の歴史についても自分なりに勉強していたように思う。
宿泊する温泉地の旅館やホテルも大体すべて閲覧してから、旅の目的や懐具合と相談しながら、宿を選ぶ。宿泊地には美味しい蕎麦屋やカフェ、居酒屋がないかも調べる。その土地の名産品や郷土料理、お土産になるものはないかとガイドブックやネットなどでチェックする。
途中の高速道路や鉄道の路線図なども前日までに頭に入れる。サービスエリアやドライブインに立ち寄って、昼ごはんをどこで食べるかを考えることも楽しみの1つである。デジタル時代だが、旅をすると決めたら、ガイドブックを必ず買い、隅から隅まで読み込む。
このように考えると、私は一つの旅行をすることで、たくさん勉強していることが分かる。普段、ほとんど頭を使わない、ずぼらな自分が、自発的に旅先の地理や歴史を調べ、覚えようとする意志や行為に驚く。未だに観光を単なる「遊び」以上でも以下でもないと捉える人もいるようだ。これは物事の捉え方のセンスが悪い人だなと思う。
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私はこれまで団体旅行よりも個人旅行を好んで実行してきたが、近いうちに優秀なガイドさんと巡る旅もしてみたいと強く思うようになってきた。
この世の中は広い。知らないことばかりだ。野生動物や植物についても自分は何も知らない。北海道や沖縄、可能であれば、東南アジア、アフリカにも行って、新たな発見をしたい。絵画や音楽、建築についても無知だ。欧州や中国の古い街を歩いて学びたいと思う日々である。
コロナ禍では、観光業界は自らの存在意義について、声を上げづらい。だからこそ、本紙は旅の力の大きさを発信していきたい。オンラインの利便性を知ったうえで、旅の価値を改めて感じる。
(編集長・増田 剛)