JTB「徐々に人流回復続く」、観光産業は感染対策を前提に
2022年1月19日(水)配信
JTB(山北栄二郎社長)は1月13日(木)、事業パートナーを対象に「JTBニューイヤー パートナーシップ ミーティング2022」をオンライン形式で開催した。山北社長は、コロナ後の変化やデジタル化の加速に対応するために策定した中期経営計画「『新』交流創造ビジョン」が、このほど開始してから1年半が経過したと説明し、この1年間に事業パートナーと進めてきた3つの取り組み事例を紹介した。
山北社長は冒頭、2022年も「コロナの拡大と収束は繰り返すものの中長期的に捉えると徐々に人流の回復が続いていく」との見立てを示した。このうえで、総務省の家計調査によると黒字幅がコロナ前と比べて大きく拡大していると指摘し、抑制されてきた消費が一気に盛り上がる「先送り需要の裏付け」と捉えていると言及。「経済の波及効果が大きなツーリズム産業としてもしっかりとした感染対策を前提に、交流を通じて社会に貢献していきたい」と意気込んだ。
□21年の中期経営計画、取り組み事例を紹介
スタートしてから1年半が経過した中期経営計画「『新』交流創造ビジョン」について、改めて説明を行った。山北社長は「国内だけでなく、世界中の法人や個人のお客様と事業パートナーとのつながりを作れることが、リアルとデジタルを併せ持つJTBの強み」と強調した。さらに「JTBだけではない幅広い販売チャネルと事業パートナーをつなげる仕組みや、お客様の日常シーンともつながる仕組みを整えている」と述べ、この1年間に事業パートナーと進めてきた3つの取り組み事例を紹介した。
取り組み事例の紹介は山北社長を含む、JTB協定旅館ホテル連盟会長の大西雅之氏、東日本旅客鉄道常務執行役員の髙橋弘行氏とのディスカッション形式で行われた。
□体験価値向上の取り組み、オンライン旅行相談で
1つ目の取り組み事例は、今年度から全国で始めている「リモートコンシェルジュ」の仕組みを活用した旅行相談、申し込みによる事例。オンライン旅行相談や、JTBのWebサイトとアプリを活用して情報を発信することで、「旅マエ」「旅ナカ」「旅アト」「日常」と周期する持続的関係性と体験価値の向上につながると示した。
お客の日常からさまざまな情報提供を行い、訪れたい地域の地元スタッフが旅行体験や地域の魅力を提案し、旅行終了後も訪問先とのつながりを持てる仕組みを提供している。
□体験型商品を一元管理、MaaSの取り組みも
2つ目の取り組み事例では、観光地デジタル化支援事業のサービスである「JTB+BOKUN」とMaaSについて事例をもとに紹介した。
「JTB+BOKUN」は、日本人観光客だけでなく訪日外国人観光客も対応したツアーや、体験アクティビティの予約在庫管理システム。具体的な取り組みとして、新潟県・六日町温泉の「ryugon」の取り組みを紹介した。同システムを活用することで、自社ホームページでの販売や地域内での総合販売、海外OTA(オンライン旅行会社)での流通を可能にし、在庫の一括管理を実現した。
MaaSは、地域と観光客をデジタルでつなぐ観光型MaaSのサービス。①商品登録販売機能②決済機能③複数モビリティ経路検索機能④利用ニーズに合わせた配車・AI運行策定機能――を搭載し、地域における周遊を促進し、滞在時間の拡大や消費支出向上につなげていく。導入事例として、実証実験を行っている「やまなし観光MaaS」を紹介し、山梨県全体で課題としていた2次交通の整備に向けて活用。周遊促進や消費の向上に加え、得られたデータを利活用して、観光地の磨き上げとファンづくりに役立てていく。
□大町市との共創事業、「みずのわプロジェクト」
3つ目の取り組み事例では、長野県大町市やサントリーらと発足した、「水」を起点としたまちづくりを進める連携組織「信濃おおまちみずのわプロジェクト」を紹介。プロジェクトに関わる事業者からの共創モデルへの期待や地域との関わり方、人流の創出に向けて連携に期待することなどを語った。
最後に、山北社長は「コロナの影響はまだまだ見通せないなかだが、中長期的には国内での人流は確実に回復していく。交流や旅を求めるのは人の本質であり、状況が整えばまさに『新』交流時代が一気に押し寄せてくると確信している。明るい未来を信じて事業パートナーなど皆様と、『新』交流時代を切り拓いていく1年にしたい」と締め括った。