津田令子の「味のある街」「求肥入り一元最中」――一元屋(東京都千代田区)
2022年3月5日(土) 配信
半蔵門駅のすぐ上にある半蔵門ミュージアムとイギリス大使館の裏手にある、国内外の貴重なカメラや写真を展示している日本カメラ博物館を訪ねた帰りに、1955(昭和30)年創業の「一元屋」さんに立ち寄った。
特製きんつばはとくに有名で、雑誌の特集記事などでお馴染みの「おもたせ」ランキングでも常に上位に名を連ねる老舗の名店だ。
場所柄、ビジネス需要が多く、最も混雑するのは午前中の比較的早い時間だ。売り切れることもあるというが、予約も受けてくれるのでありがたい。
これからの季節は、千鳥ヶ淵の花見のお客が買いに求めに来るので早めに予約を入れた方がよさそうだ。
今回は、特製きんつばではなく「求肥入り一元最中」を紹介しよう。個包装から取り出し口に近づけると皮が香ばしく香る。香ばしさが前面に出るようにもち米を焼いて皮を作っているという。
皮とあんを一体にするために作ってすぐには売らず、あんのみつが皮の裏に徐々にしみこんで馴染んでから店頭に出すという拘りようだ。あんは北海道の十勝産の大納言を使った塩気を効かせた粒あんで粒の食感も十分楽しめる。
1つ食べると、とにかく芳しい皮の香りが漂いもう1つ食べてしまうのだ。甘みを抑えた看板商品の特製きんつばとは異なり、パンチのある甘さが特徴である。
もちもち感あふれる求肥と、パリッとした皮の対比が実にマッチする。大きさは、やや小ぶりの一辺5㌢くらいの正方形サイズ。個包装されているので皮と皮がくっつくこともない。おもたせや進物に最適の一品なのだ。
バラ売りもしてくれるので、疲れたときには1個買って、そのまま店の近くにある、縁結びの梅で知られる平河天満宮に参拝したのちに境内で食べさせていただくことも……。
桜の季節も近いので、この機会に東京一評判の高いきんつば屋さんの求肥最中で「花より団子」というのも乙ではないか。
(トラベルキャスター)
津田 令子 氏
社団法人日本観光協会旅番組室長を経てフリーの旅行ジャーナリストに。全国約3000カ所を旅する経験から、旅の楽しさを伝えるトラベルキャスターとしてテレビ・ラジオなどに出演する。観光大使や市町村などのアドバイザー、カルチャースクールの講師も務める。NPO法人ふるさとオンリーワンのまち理事長。著書多数。