〈旬刊旅行新聞3月21日号コラム〉激動期に入った―― 平和は能動的に築かなければ存在しない
2022年3月18日(金) 配信
新型コロナウイルス感染拡大対策として18都道府県に適用中の「まん延防止等重点措置」が3月21日をもって全面解除される見通しである。
3月15日、斉藤鉄夫国土交通大臣は4月から「県民割」を近畿や東北など地域ブロックに拡大するようなステップを踏み、感染状況を見極めたうえで、Go Toトラベルを再開していく見解を示した。コロナ禍の停滞ムードから抜け出す契機にしたいところであるが、事態はそう簡単にはいかない。
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2月下旬からロシアのウクライナへの軍事侵攻により、国際情勢は一気に緊迫化している。日々、戦火を交える映像や情報が流される。原発への攻撃や市街戦の激化、米国や英国、EU、日本などによる経済制裁に対する、ロシア側からの報復などのニュースも伝わってくる。
貨物を含む航空機はロシア領空を迂回するため、ノルウェー産サーモンやウニなどの輸入にも影響が表れ、小麦や蕎麦などの価格高騰も予想される。併せて、既に高止まりしていた原油の高騰も当面続くことが見込まれ、日本の経済も大きな打撃を受けることは間違いない。
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暗雲垂れ込める状況ばかりだが、百年単位で歴史を眺めると、激動期に入ってしまったことを実感する。
前世紀(20世紀)をみると、1904年日露戦争、14年には第一次世界大戦が始まった。18年からスペイン風邪(パンデミック)、23年9月1日に関東大震災、29年10月24日(暗黒の木曜日)から世界大恐慌、37年日中戦争、39年ドイツによるポーランド侵攻、さらに41年から独ソ戦、太平洋戦争など、第二次世界大戦が45年まで続く。
21世紀初頭は2001年9・11米国同時多発テロ、08年リーマン・ショック、11年3月11日に東日本大震災、19年末から新型コロナウイルス(パンデミック)、22年ロシアのウクライナ侵攻と続く。リスクとしては、世界的なロシアへの経済制裁が引き金となっての金融危機や、戦火拡大という、最悪のケースの想定も必要だ。
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1990年8月のイラク軍によるクウェート侵攻から湾岸戦争が勃発した。同年11月にイラクへの武力行使容認決議を米ソが一致して可決。冷戦終結の象徴的な出来事となった。
日本は人的貢献の代わりに、35カ国が参加した多国籍軍に135億㌦(約1兆7500億円)の財政支援を行った。当時バブル経済の絶頂期にあり、世界第2の経済大国(金満国家)であった日本は、巨額な資金的な支援を行ったにも関わらず、国際社会から「お金だけか」という誹りも受けた。
91年のソビエト連邦崩壊への過程にあり、唯一の超大国・米国は世界の警察官を自認し、英国、フランスなどのプレゼンスは現在よりも強大で、当時の日本は経済大国でありながら、「どこかの国が平和への道筋をつけてくれるだろう」と他人事で、やり過ごすだけだった。
しかし、あれから30年が経過した。中国の台頭の一方、米国や英国、フランスなどの相対的な国力低下を鑑みて、日本は好むと好まざるとに関わらず、国際社会の表舞台で一定の役割を果たさなければならない立場となった。平和というものは受動的に与えられるものではなく、能動的に築き上げなければ、「そもそもこの世には存在しない」という覚悟を持たなければならない。
(編集長・増田 剛)