【特集No.606】 鼎談 地域ファンの作り方 地域と観光客“相思相愛”の関係を
2022年3月18日 (金)配信
アフターコロナの観光は、「テーマ」のある旅が好まれると予想されている。一方で、その地域ならではの魅力の発掘、発信を多くの自治体が十全に行えていないという指摘もある。カギを握るのは、「シティプロモーション」。市長自らが先頭に立ちシティプロモーションの陣頭指揮を執る長崎県島原市の古川隆三郎市長と、全国で地域活性に取り組むロケツーリズム協議会の藤崎愼一会長が、観光庁観光地域振興部観光資源課の星明彦課長と「地域のファンづくり」、「地域ブランドの生かし方」について話し合った。
――新型コロナウイルス感染症の収束が見通せないなか、疲弊する地域経済の立て直しが喫緊の課題になっています。このような状況のなか、観光庁は「稼げる地域づくり」を目的に掲げ、「第2のふるさとづくりプロジェクト」を進めています。始めにこの政策について教えてください。
星:「第2のふるさとづくりプロジェクト」は、観光庁が進めている施策の柱の1つです。
コロナ禍で旅をする人、大都市圏に住む人のマインドが変化し、「自分だけの旅」を求める動きが顕著になりつつあります。これに加え、リモートワークを通じ、今一度自分自身の生き方や暮らし方、仕事との関わり方を見直し、本当に自分にとって必要なこと、家族にとって大切なことを求めて東京から地方に出ていく人も増えています。
コロナ禍から立ち直るにあたっては、こうした需要に応える旅のスタイルの提示と、それに即した宿や交通手段などを地域に実装し、何度もその地域を「ふるさと」に帰るように訪ねるファンづくりが必要と考え、仕組みづくりのための支援を進めています。
――「自分だけの旅」というキーワードが出てきました。島原市では「ロケ」や「ジオ」などさまざまな切り口でシティプロモーションを展開しています。
古川:島原市は歴史ある城下町で、海や山、温泉、グルメなど人を惹きつけるさまざまな素材を持っています。しかし、これまで本市ではテレビ番組や映画のロケを多く受け入れておりましたが、ロケ後の有効活用ができていませんでした。
そこで2019年度からロケツーリズム協議会へ参画し、シティプロモーションを強化しています。21年度はロケ実績が18件、広告換算効果約15億5千万円(市独自の試算)、宿泊費や交通費などの直接経済効果も約460万円という成果を上げることができました。
島原という言葉と風景が、映像作品やSNSを通じ拡散され、関心を持っていただけていることはさまざま数字からも見ることができます。例えば、番組で紹介された島原の特産品、農水産物などを返礼品としたふるさと納税は、ふるさとプレミアムの全国自治体ランキングで5位、納税額も過去最高額となり10億円を突破しています。
また、映像作品に取り上げられることで町の魅力が再認識され、住民の地域に対する誇りを生むきっかけにもなっています。そういった面でも「映像作品」に取り上げられることはありがたいです。
――その地域ならではの魅力に気付いていない地域、うまく活用できていない地域は多いと思います。各地で地域活性に取り組まれている藤崎会長は、こうした現状をどう見られていますか。
藤崎:いくら地域に魅力的な素材があったとしても、それを有名にする、また継続的に人を呼び続けるということは簡単なことではありません。私がかつて所属していたリクルートが「市場を分析し、誰に向けてという視点で地域に貢献する」ために調査研究機関じゃらん総合研究所(現在のじゃらんリサーチセンター)を05年に立ち上げたように、大事なのは「誰に向けて」という視点です。それに加え、「どう発信するか」、ここも疎かにしてはいけないところです。
【全文は、本紙1864号または3月28日(月)以降日経テレコン21でお読みいただけます。】