JATAが経営者向けコンプライアンス研修 髙橋会長「コンプラなくして経営なし徹底を」
2022年3月29日(火) 配信
日本旅行業協会(JATA)は3月下旬に東京と大阪、愛知で経営者向けのコンプライアンス研修を開いた。昨年から続く旅行会社の不祥事の再発防止に向けた対策の一環。3月28日(月)に開催し、中小の会員企業を中心に85人が参加した東京会場では、髙橋広行会長がコロナ禍での各社のさまざまな経営努力に理解を示したうえで、「コンプライアンスはすべてのことに優先される。“コンプラなくして経営なし”を徹底してほしい」と呼び掛けた。
あいさつに立った髙橋会長は「会員企業による雇用調整助成金やGo Toトラベルの不正受給が疑われる事案が発生し、業界全体の信頼が大きく揺らぐ事態となり誠に遺憾だ。これまでコンプライアンス経営に取り組まれてきた経営者は、憤りを感じていると思うが業界全体で襟を正す好機と捉え、信頼回復に前向きに取り組んでいきたい」と力を込めた。
一方、先般 JATAが会員に実施したアンケートでは、約3割の会社で社内にコンプライアンスの仕組みが構築されていないことも明らかになった。これを受け、JATAでは多様な雛形や、Webでの研修システムを整えた。「これらは無料なので、ぜひ積極的な活用を」とし、「コンプラを再構築する契機にしてほしい」と強調した。
研修は、観光庁に勤務した経験もある御堂筋法律事務所の谷口和寛弁護士と同事務所の大谷秀美弁護士が講師を務め、総論を軸に解説した。谷口弁護士は、「コンプライアンスの本来的な意味は法令遵守だが、企業に対するコンプライアンスは法令に加え、社会倫理・社会規範を遵守し、株主や社員、取引先、一般消費者含めた社会から認められる行動や状態かどうかまで概念が広がっている」と紹介。「経営者が意識を持つことが最も重要だ」と基本的な考え方を示した。
また、不祥事の隠ぺい自体がコンプライアンス違反であり、結果企業のリスクや損害を拡大させることや、通報窓口の設置やSNSの普及などで、内部告発や匿名通報されやすい環境になっていることから、違反や不祥事は発覚するものとの認識を持つべきだと訴えた。