「もてなし上手」~ホスピタリティによる創客~(135)一杯のコーヒーを美味しくの想い 「心」を育てる教育
2022年4月4日(月) 配信
数年前ですが、新幹線から乗り換え予定の在来線が遅れ、時間調整のため新幹線改札内の喫茶店で過ごし、支払いをして店を出るときのことです。レジ係が自動ドアのボタンを素早く押して開け、「行ってらっしゃいませ」と送り出してくれたのです。
そのときの言葉と、ウキウキする気持ち良さを忘れられず、翌月から新幹線を1本早くして、その喫茶店に月1回は立ち寄るようになりました。しばらく通ううちに、「今日もありがとうございます。コーヒーでよろしいですか」と、スタッフが声を掛けてくれるようになりました。
ただ、コロナの影響でその後店は休業となり、私自身もしばらく出張がなく、その店に立ち寄ることもなくなりました。数カ月後、久しぶりにその店に立ち寄る機会がありました。休業中にリニューアルした店は、残念なことにスタッフも全員替わってしまい、また馴染み客になることからのスタートとなりました。
それから何度か店を訪ねましたが、その度にスタッフが替わり、以前のような固定スタッフでの営業ではなく、多くのスタッフから日々どの店に出るかを決めているようでした。
ベンチマーク自体を止めようと思いながら行ったとき、「もう少し行ってみたい」と思わせるスタッフの行動に出逢えたのです。入口の消毒機械に手をかざして入店すると、「ご協力ありがとうございます」と元気な声で迎えられました。
「今日は何か違う」、と期待感を膨らませて着席しオーダーしたとき電話が入ったので、いったん店を出て対応しました。
席に戻ると、テーブルに置かれたコーヒーの上に、ナフキンが載せられていたのです。
「感染対策」か「冷めない様に」かと考えていると、スタッフが私に気付きやって来て「少し時間が経ってしまったので、新しい温かいコーヒーに変えましょうか」と声を掛けてきたのです。
淹れたてのコーヒーを持って来ても、お客様が席を外していたら、そのまま置かずに引き返し、お客様が戻って来てから改めて持ってくる店もあります。時間が経っていたら「すぐに淹れ直しますので、少しお待ちください」と声を掛けてくれます。
店のやり方はそれぞれですが、オーダーされた商品が出来上がったら、そこにお客様が居ようと居まいと関係なくテーブルに運ぶ、という店も多いなかで、こうしたコーヒー一杯にも「美味しく飲んでもらいたい」と考えるスタッフに出逢えると、本当に心がウキウキとして来ます。
サービススタッフの心を育てることで、こうした「考動」のできる人を創って行くことが教育であり、企業の力です。
コラムニスト紹介
西川丈次(にしかわ・じょうじ)=8年間の旅行会社での勤務後、船井総合研究所に入社。観光ビジネスチームのリーダー・チーフ観光コンサルタントとして活躍。ホスピタリティをテーマとした講演、執筆、ブログ、メルマガは好評で多くのファンを持つ。20年間の観光コンサルタント業で養われた専門性と異業種の成功事例を融合させ、観光業界の新しい在り方とネットワークづくりを追求し、株式会社観光ビジネスコンサルタンツを起業。同社、代表取締役社長。