津田令子の「味のある街」「あんずジャムS」――沢屋(長野県・軽井沢)
2022年4月6日(水) 配信
雄大な浅間山の裾野に広がる軽井沢は、日本のみならず世界を代表する高原リゾート地だ。子供のころ両親に連れて行ってもらって以来訪ねた回数は200を超えている。軽井沢好きを自称する私が毎回必ず買ってくるのが沢屋のジャムだ。軽井沢といえば沢屋のジャムというぐらい有名かつ人気のある一品だ。「新鮮な果実の美味しさそのままに」をモットーにイチゴ、リンゴ、白桃、イチジク、ラフランスなど季節の味を楽しめる。
毎朝欠かさずヨーグルトに載せて食べている信州の代表的な果樹「あんず」を皮ごと使い、さわやかな酸味と風味が特徴の「あんずジャム」を紹介しよう。125㌘入りのSサイズは1瓶540円とありがたい価格だ。この店のジャムはフルーツそのものの風味を生かすよう、淡白な甘みの北海道産ビート(甜菜)100%のグラニュー糖を使っている。糖度は40度を目安に一般のものより低糖度で仕上げ、さらに保存料等無添加なのでヘルシーでもある。開栓後は必ず冷蔵庫に入れ2週間ぐらいで食べきるようにしているのだが、ヨーグルト以外にもパンやパンケーキ、デザート、アイスクリームと何に合わせてもしっくりくるので、あっという間に空瓶が並ぶことになる。
1952年に旧軽井沢テニスコート通りに看板を掲げた小さな青果店は、今や日本を代表するジャム屋になった。店の歴史には「滞在する外国人宣教師や外国大使別荘の方々へ新鮮な野菜や果実を納めていた沢屋では、お客様のご要望で無添加、低糖度の手作りジャムを作り始めます。当時は甘いジャムが多いなか、低糖度で甘さ控えめのジャムは口コミで評判を呼び、いつしかジャム専門店に生まれ変わりました」と記されている。
すべて手作りをモットーに、イチゴのヘタ取り、白桃の皮むき、きんかんの種取りなど、一つひとつ人の手で丁寧に下作りし加工している。新鮮な果実を使い衛生管理の行き届いた自社工場でジャムにするという。沢屋ジャムファクトリーは製造のようすを見ることもできる。春の軽井沢を訪ねたら、ぜひ沢屋に立ち寄ってほしい。
(トラベルキャスター)
津田 令子 氏
社団法人日本観光協会旅番組室長を経てフリーの旅行ジャーナリストに。全国約3000カ所を旅する経験から、旅の楽しさを伝えるトラベルキャスターとしてテレビ・ラジオなどに出演する。観光大使や市町村などのアドバイザー、カルチャースクールの講師も務める。NPO法人ふるさとオンリーワンのまち理事長。著書多数。