「提言!これからの日本観光」 「定員」を考える
2022年4月16日(土) 配信
鉄道の車両には、それぞれ「定員」が定められており、車側にその人数が明記されている。
しかし、鉄道車両の「定員」は航空機や船舶などの「定員」と異なり“サービス上の目安”を示す人数である。従って、定員以上の乗り込みが安全上から禁止されている保安上の「定員」ではない。
東京都など大都市圏のいわゆる通勤時間帯の電車は毎日、各社とも「定員」の倍近い人数の人々が乗り合わせても定員オーバーによる事故はない。
また、そうでもして乗車していただかないければ、大都市の通勤時の混雑に対応できない。しかし、極力楽な乗車をしていただけるようにと、最混雑時でも定員の5割増以下の混雑度に下げるよう鉄道各社は、増車や増発などの努力をしているところである。
鉄道車両の「定員」の算定方はJR各社(共通)の場合、中長距離用車両は座席数(進行方向に向いているクロスシートで80~90人)、近距離用車両(扉数が片側3~4扉で、窓を背にして座るロングシート)は、立席者数も加算するため床面積を0・32㍍で割った人数(約100人程度)を「定員」として表示している。
最近のコロナ禍のため「密」回避が求められるようになった新幹線などでは空席の多い場合、指定席の座席の隣接席を空けて(両窓側席と3列席の通路側席から)発売して、喜ばれている。
一歩進めて私見であるが、コロナ警戒態勢が当分続くと考えられるので何号車かを指定して、このような「密回避」の座席指定車を定め常時隣席空きの席が予約できるようにしてはとも考える。
テレワーク可能な〝S Work車両〟を設定することによって、車内でビジネスの場を提供するべく隣席との間に仕切りを仮設したり、コンピューター使用で隣席者の注意をそらさないようカバーを用意するなどして(東海道新幹線の一部)忙しい乗客に歓迎されている。この場合も隣席客なしの指定席車とすれば同じ効果が得られるはずである。
「特定席車」とか「安全席車」とかネーミングに工夫のうえ、常設商品化を考えてはどうかと思う。対コロナのためのみでなく、またビジネス客の場合でなくても隣接席客には、それなりに気を使う人も多い。従って、座席数以下のゆとりある指定席の予約を求める人も少なくないと思われる。
ただ、新幹線普通車の場合、隣接席なしでは約60%の乗車が限界となる。従って仮に満席近い需要があった場合、うべかりし収入を鉄道側では失うことになる。
このような場合、例のGo To資金のような公的補助が得られればとも思う。
コロナとの戦いが長期化すると見られる現在、鉄道車両のサービスの「目安」となる耐コロナ対策としての「特別定員」ないし「臨時定員」があってもよいのではないかと考え、あえて私見を披露させていただいた次第である。
日本商工会議所 観光専門委員会 委員