【特集No.609】SUWAガラスの里 人と文化をつなぐ拠点に
SUWAガラスの里(岩波太佐衛門尚宏社長、長野県諏訪市)は1月14日(金)、旅行新聞新社が取材活動などを通じて見聞きした観光業界の取り組みの中から、創意工夫の見られるものを独自に選び、表彰する「日本ツーリズム・オブ・ザ・イヤー2021」の優秀賞を受賞した。コロナ禍で作品を発表する機会を失ったアーティストや商店を救済する目的で設置した「アーティストスクエア」が評価につながった。人と文化をつなぐハブとして施設を提供する「クラフトツーリズム」の考え方と、今後の展望について岩波社長に話を伺った。
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□「クラフトツーリズム」の醸成へ
──「アーティストスクエア」を設置したきっかけは。
新型コロナの影響で団体バスが激減し、それに伴って来館者数も減少しました。団体客の穴埋めが必要な状況で、個人のお客様に目的を持って訪れていただくのを一番の狙いとし、アーティストスクエアを始めました。
コロナ禍において極力接触を控えなければいけないなかで、アーティストの作品を紹介し、お客様と作品をつなげられるようにコーナー展開を行いました。
ガラスの里の売店フロアに、ハンドメイドによる制作活動を行っている作家さんを対象に公募し、90㌢四方のスペースを提供して自由に展示販売をしてもらえるよう整えました。
作品はガラスだけではなく、石や木工、漆工芸、陶器など、ハンドメイドであることを条件に、好きに並べてもらいます。点数や値段にも制限は設けていません。
展示スペースには、アーティストのメールアドレスや電話番号など連絡先を記載することで、お客さんが直接アーティストに連絡が取れるようになっています。
また、最近は作品に出会える場をリアル以外にも作り、間口を広げる目的で、オンラインストアも開設しました。アーティストスクエアを知ってもらうだけではなく、ガラスの里に来ればこういった作品を直接目にして出会えるのか、ということも知っていただければ幸いです。
また、ネームバリューがない若いアーティストは、作品を発表する場に参加しても展示販売するのがなかなか難しいようです。若い作家を育てるという意味では、どういったものがお客様に好まれるのかを分析してもらい、またより良い作品を作ってほしい願いも込めて、アーティストスクエアへの参加を歓迎しています。
作品を気に入って購入してくださったお客様には、その作家さんのファン、パトロンになっていただきたいですね。
──参加したアーティストやお客からの評判は。
正直に言いますと、コロナ禍なこともあり、ここまで作家さんが集まるとは思っていませんでした。
現在は52作家(3月2日時点)が参加し、10作家が待機しています。募集展示は3カ月交代で入れ替え制としています。作家さんからの問い合わせが多く、参加したいという声を寄せていただいており、需要の高さを感じました。ここ長野県で展示を行うにも関わらず、一番遠方では佐賀県のアーティストが参加しています。作家さんの間での口コミでアーティストスクエアが知られているようで、とても光栄です。
展示作品は作家さんの裁量に任せています。作家性をイメージングできるものがあれば、数点だけでも、数十点でも構いません。
どれも非常に質の高い作品ですので、お客様もじっくりと吟味し、場合によっては二度三度と見に来られて、購入を決める場合があります。
こうした出会いが、ガラスの里を訪れてくれるだけではなく、作家さんとお客様とをつなぐ動線づくりに寄与しているのだと考えています。
コロナが収まればアーティストスクエアに参加した作家によるワークショップや、作家交流会の開催、地方への出張イベントなども計画しています。
また、コロナ禍で試み始めた「クラフトツーリズム」の醸成を目指します。将来的には諏訪市内の宿泊施設と連携し、作品が出来上がるまでの滞在を楽しんでもらうようなコンテンツ作りを考えています。そのアクセスポイントとしてガラスの里を生かしていけるよう、今後も色々と考えていきたいと思います。…
【全文は、本紙1868号または4月28日(木)以降日経テレコン21でお読みいただけます。】