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津田令子の「味のある街」「だんご2本盛」――新宿追分だんご本舗(東京・新宿)

2022年5月15日(日) 配信

新宿追分だんご本舗の「だんご2本盛」605円~▽東京都新宿区新宿3-1-22▽☎03(3351)0101。

 新宿追分だんご本舗は花園神社から徒歩3分の新宿三丁目駅近くにある。「追分だんご」の由来は、1455年に太田道灌が江戸城を築城中、品川の館から武蔵野に鷹狩りに行った帰り道、高井戸で中秋の名月のもとで宴を催していたところ、地元の名族から手つきの団子が献上され道灌は大いに喜んだ。その後も団子を所望したと記されている。のちに高井戸宿が甲州街道の始駅となり、団子屋は柳茶屋と号し茶屋として大いに繁盛。1698年に内藤新宿が伝馬の宿駅となり、道灌団子をあつかっていた柳茶屋も新宿追分に移転。「追分だんご」と呼ばれるようになったという。

 

 現在の追分だんご本舗の始まりは、1947年の夏、終戦間もない新宿三丁目に掛けられた「やなぎ家」という白い暖簾だという。創業者の藤井藤右ヱ門は、町の老輩に「追分だんご」の成り立ちを聞き、新宿追分の地にその味を復活させようと思い立ち店を開いた。伝統の味の継承と時代とともに変化する味覚を合わせた追分だんごは徐々に広まり、今では東京名物と呼ばれるほどになったのだ。

 

 先日、久しぶりに正午の開店時間を待って追分だんご本舗喫茶室に寄ってみた。いつものように「だんご2本盛」を注文すると、ほどなくして丸皿に2本が行儀よく載せられて運ばれてきた。毎回、一番人気の「みたらし」と定番中の定番「こしあん」をと決めているので、今回も同じものをいただいた。串に刺さっただんごが3つ。みたらしがたっぷりまぶされた1つ目のだんごを口に入れる。「なんというやわらかさだろう」と言いながら2つ目、3つ目と一気に平らげた。これほどまでにやわらかく、しかも美味しく、見た目も美しいだんごにお目にかかったことがない。向かうところ敵なしといっただんご界の王者の風格が漂っているのだ。

 

 勘定を終え、持ち帰り用のだんごを選びお土産用に包んでいただいた。春のお花(桜)見をすませた人々は、この店のだんごを持って今度は何を愛でにどこへ出掛けるのだろう。「季節の花と追分だんご」何とも素晴らしい組み合わせではないだろうか。

(トラベルキャスター)

津田 令子 氏

 社団法人日本観光協会旅番組室長を経てフリーの旅行ジャーナリストに。全国約3000カ所を旅する経験から、旅の楽しさを伝えるトラベルキャスターとしてテレビ・ラジオなどに出演する。観光大使や市町村などのアドバイザー、カルチャースクールの講師も務める。NPO法人ふるさとオンリーワンのまち理事長。著書多数。

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