4月の宿泊業倒産は11件 倒産件数8カ月ぶりに10件超え(東京商工リサーチ)
2022年5月12日(木) 配信
東京商工リサーチがこのほど発表した2022年4月の宿泊業倒産は11件(前年同月3件)だった。8カ月ぶりに前年同月を上回り、10件超えとなった。このうち、新型コロナ関連倒産は7件。負債総額も、25億1300万円(前年同月比31・1%増)となり2カ月ぶりに前年同月を上回った。負債10億円以上の大型倒産は発生しなかったが、5億円以上の倒産が2件、1億円以上が7件と、ともに増加した。
地区別では関東の3件が最多となり、次いで東北と中部が各2件で続いた。
4月の宿泊業倒産のおもな倒産事例として、枕水館(山口県長門市)が4月28日(木)、山口地裁から破産開始決定を受けた。負債総額は約5億円。
同社は、温泉宿として1831(天保2)年創業の記録があり、山口県の伝統ある湯本温泉の中でも歴史の長い温泉旅館の1つだった。中国縦貫道の開通後には、関西からの団体旅行客や修学旅行需要が増加し、1987年には施設の増築で収容人数を200人に拡大。翌年の12月期は売上高約4億8000万円を計上した。
しかし、バブル崩壊後は徐々に旅行客が減少。改装などで集客の回復をはかるものの赤字が散発し、信用保証協会の代位弁済を受けるなど厳しい資金繰りが続いていた。
2020年以降は新型コロナ禍で回復が見込めず、事業継続を断念した。
北海道帯広市でビジネスホテルを運営していたビジネスホテル宮崎は3月31日(木)に事業を停止し、釧路地裁帯広支部から破産開始決定を受けた。負債総額は約1億9000万円。
同社は、北海道外の大学やスポーツ団体とのつながりで、スケートや自転車競技などの合宿需要で売上を伸ばし、ピーク時の1997年11月期には、売上高約2億4000万円を計上していた。
その後、施設の老朽化や競合のビジネスホテルとの競争激化で客足が減少。食事や弁当などのサービス面の改善や、設備改修を行うなどで再建をはかったものの、2019年11月期には7910万円、21年11月期は6500万円まで売上高が落ち込んでいた。22年に入り、借入金の返済の目途が立たないことから事業継続を断念し、今回の措置となった。
今年4月の旅行業倒産は3カ月ぶりに発生しなかった(前年同月は3件、負債総額10億1700万円)。
同社は、「長引く海外への渡航制限などの影響による先行き不透明感は色濃いものの、雇用調整助成金などの支援策の継続で、旅行業の倒産が抑制された」と分析する。
また、まん延防止等重点措置解除後初めての大型連休があり、宿泊需要は回復基調にあった。同社は、「訪日観光客の受け入れ解除については今後も段階的制限が続くと見られる。インバウンド向けを主力とする施設を中心に、本格的な復調には時間が掛かる」との見方を示した。