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「観光ルネサンスの現場から~時代を先駆ける観光地づくり~(208)」創造農村と観光まちづくり (兵庫県丹波篠山市)

2022年5月29日(日) 配信

丹波焼立杭登窯(最古の登窯)

 丹波篠山と言えば、皆さんは何を連想されようか。まずは「デカンショ節」、「丹波焼」、それに栗や黒豆、「ぼたん鍋」といったところであろうか。

 丹波篠山は少しわかりにくい地域である。古くは旧丹波国として、京都への交通の要衝として栄えた。だから町並みや祭りなどに京文化の影響が色濃く残る。

 しかし、市内を縦貫するJR福知山線や舞鶴若狭自動車道が開通してからは、大阪や京阪神へのアクセスが劇的に改良され、大阪都心から1時間という通勤圏にもなった。だから県庁所在地の神戸市よりも大阪経済圏のイメージが強く、また、京都府の福知山や舞鶴など北近畿経済文化圏にも近い。

 その丹波篠山に年度末の3月、「創造農村」ワークショップなるシンポジウムにお招きいただいた。創造農村とは聞き慣れない言葉だが、「コミュニティが持つ豊かな創造活動により、文化と産業の創造性に富み、ローカルな地域社会とグローバルな環境問題などの課題に対して、創造的問題解決を行えるような地域」といった定義がなされている。

 その元になった「創造都市」は、ユネスコ(国際連合教育科学文化機関)が2004年に採用したプロジェクトである。文学・映画・音楽・工芸・デザイン・メディアアート・食文化の創造産業7分野から世界の特色ある都市を認定。21年末時点で世界295都市、日本でも神戸市や名古屋市(ともにデザイン)など10都市が認定されている。丹波篠山市は15年にクラフト&フォークアート分野で創造都市の仲間入りをした(認定当時は篠山市)。国内では7番目の認定であり、クラフト&フォークアート分野では金沢市に次いで2番目の認定である。

陶芸家・加古勝巳さんの工房兼ギャラリー

 丹波篠山といえは、850年の歴史をもつ日本遺産「六古窯」の1つ、丹波焼が有名だが、今田町上立杭に現存する我が国最古の登窯にも久々にお邪魔した。近年は「里山暮らし4泊5日ツアー」といった暮らし体験型観光の新たな試みも始まっている。また、篠山の豊かな風土を好み、内外から数多くの工芸家も集まっている。陶芸、木工、ガラス、染色、革、彫金など多様な分野の工芸家たちで、既に50人を超えるという。昨年秋からは「丹波篠山クラフトヴィレッジ」というオープンファクトリーの催しも始まった。

 丹波篠山には、篠山城を中心とした篠山地区のほかに、農村風景が広がる福住地区の2つの伝統的建築物群がある。福住は宿場町として発展した町並みと、隣接する農村集落の歴史的風致を良く伝える地域であり、ある意味新しい丹波篠山のシンボルでもある。

 各地の農村集落が限界化で疲弊するなか、丹波篠山の取り組みは、新しい農村の可能性を示唆する優れたモデルでもある。「創造農村」の今後に期待したい。

(日本観光振興協会総合研究所顧問 丁野 朗)

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