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「もてなし上手」~ホスピタリティによる創客~(137)お客様の動きの変化を捉えるおもてなし 視野を広く目配せを

2022年6月5日(日) 配信

 

 いつも多くの人が席待ちする、人気の店に行ったときです。フロアスタッフが忙しく働くようすを眺めていると、私の順番が来て店内に案内されました。

 感動体験をしたのは食事のあとのことです。薬を飲もうとポケットから取り出したとき、スタッフの1人が近寄り、スッと氷の入っていない水を差し出してくれたのです。

 オーダーを取って料理を運び、お茶のおかわりを勧めるなどの数々の忙しい業務のなかで、薬を飲もうとした私の動きをしっかり見て、対応してくれたのです。思わず振り返って見たスタッフの笑顔は、最幸のおもてなしでした。

 これまでは、食事中の追加オーダーも、スタッフを呼ぶために手を振ったり、声を張り上げたりするのが当たり前でした。

 多くのお客様がいる中で、大きな声を上げるのを、ためらわれるお店もあります。「まぁいいか」と、オーダーをあきらめた経験は、一度や二度ではありません。美味しい食事でも、それは非常に残念なことです。

 私がよく行くレストランに初めて行ったとき、飲み物を頼もうとメニューから顔を上げた途端に、遠くにいたスタッフがその動きに気付いて、さっと手を上げて来てくれました。

 「すぐに伺います」というサインですが、それまでのお店との違いに、うれしさを感じた瞬間でした。

 あとから聞いた話によると、その店ではフロア全体に目配せをして、お客様の動きに何か変化があると、何を望まれているのかを読み取ることに長けているスタッフを置いているということでした。

 食事中に席を立つお客様は、お手洗いや電話を掛ける目的で立ったのだと想像して、その場所を案内するために、近付いて声を掛けているということでした。

 さらに、2人連れのお客様であれば、席に残ったお客様の側に行って話し掛けるのです。少しの時間でも楽しくお過ごしいただくため、という心遣いによるものです。

 ふつうお店では、フロアを見渡すスタッフを特別に配置するのは難しいですが、スタッフ一人ひとりがお客様の動きを注視すれば、同じようなおもてなしができるようになるのではないのでしょうか。

 早く、丁寧に接客することやテーブルでの食事の説明といったことだけをスタッフに求めて、スタッフもその実行にだけ一生懸命になっていたら、本当のおもてなし行動が生まれることはないでしょう。

 食事の美味しさとは、心地よい時間を過ごすことで感じるものです。お客様をしっかりと観察すれば、まだまだおもてなしによる美味しい食事の提供は実現できるのです。

 

コラムニスト紹介

西川丈次氏

西川丈次(にしかわ・じょうじ)=8年間の旅行会社での勤務後、船井総合研究所に入社。観光ビジネスチームのリーダー・チーフ観光コンサルタントとして活躍。ホスピタリティをテーマとした講演、執筆、ブログ、メルマガは好評で多くのファンを持つ。20年間の観光コンサルタント業で養われた専門性と異業種の成功事例を融合させ、観光業界の新しい在り方とネットワークづくりを追求し、株式会社観光ビジネスコンサルタンツを起業。同社、代表取締役社長。

 

 

 

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