津田令子の「味のある街」「子育てもなか」――ときわ木(東京都豊島区)
20221年6月3日(金) 配信
かつて41系統もの都電が走っていたというが、唯一現役で走り続けているのが荒川線(東京さくらトラム)だ。全長12・2㌔を1時間ほどかけてのゆっくり電車旅は、神社仏閣、下町グルメなど、ぶらっと途中下車しながらめぐるのがおすすめだ。
車窓から、新しく生まれ変わった豊島区役所・高層マンション群・昔ながらの住居が軒を連ねるサマを眺めながら、鬼子母神前駅で下車。安産・子育ての神として江戸時代から信仰を集める雑司ヶ谷鬼子母神堂の参道で100年続く老舗和菓子店「ときわ木(ときわぎ)」(創業1919年)を訪ねた。
店内は、間口も広く清潔感漂う上品な雰囲気だ。入ってすぐのショーケースに最中などの和菓子、左側の壁際には煎餅、その向かいには贈答用の菓子が並んでいる。
看板商品の子育てもなかは、出産祝いに用いる人も多いというが、「鬼子母神に詣でた帰りにお土産に」にと観光客からも人気だ。「安産と子育てのご利益を願い、“子育てもなか”を製造させていただいております」と店の方はおっしゃる。
餡作りからすべての行程が手作りなので、限られた数しか製造できないとのこと。たくさんお買い求めの場合は予約をしておいた方が安心だ。
かわいらしい女の子のイラストが描かれた包装紙を優しく開けると、皮に子育ての守り神であるみみずくの型が浮きあがっている。こぼれおちそうなつぶあんがぎっしりと詰まっている。
さっと取り出し2つに割って口に入れる。皮のパリット感と、しっとりとしたあんとのコラボが絶妙だ。「これぞ、最中の王道」という感じで1度食べたら、また買いに来ようと思う1品だ。
つぶあんとこしあんがそれぞれ入った二味最中や、季節ごとの生菓子などがケースを彩っていて、どれもこれも買いたくなってしまう。
東京メトロ副都心線の雑司が谷(ぞうしがや)駅からも歩いて1分もかからないので、都電の旅を愉しみながら横浜方面から買いに来てみてはいかが。
(トラベルキャスター)
津田 令子 氏
社団法人日本観光協会旅番組室長を経てフリーの旅行ジャーナリストに。全国約3000カ所を旅する経験から、旅の楽しさを伝えるトラベルキャスターとしてテレビ・ラジオなどに出演する。観光大使や市町村などのアドバイザー、カルチャースクールの講師も務める。NPO法人ふるさとオンリーワンのまち理事長。著書多数。