掘削許可の類型化を、地質構造調査など不要に (「温泉資源保護」ガイドライン検討会)
環境省は、「第2回温泉資源保護に関するガイドライン(地熱発電関係)検討会」(運営委託=パシフィックコンサルタンツ)を9月25日に同省で開いた。温泉地に関係する有識者を集め、温泉地での掘削作業について討議した。「地熱関係」と「その他」で掘削の種類を2分し、「地質・地熱構造調査のための掘削」など許可不要な事例を提示した。
【丁田 徹也】
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これまで環境省は「温泉の湧出が見込まれる場合は、温泉湧出の目的がなかったとしても、温泉法3条に基づき掘削許可が必要」としてきたが、昨年6月の内閣総理大臣の諮問機関「規制改革会議」で温泉法に関して「法律を拡大解釈して、不要の掘削に対して許可申請を求めるのは適切な対応ではない」との答申があった。この結果、湧出目的がない場合の許可は必要ないと整理され、その後の「規制改革実施計画」で「許可不要な掘削について類型化する」と示された。
これまでの掘削の許可申請は予防措置として一定の成果はあったと考えられているが、温泉法の運用の再整理として環境省は今年度中に対応する。
「規制改革実施計画」における掘削は、地熱発電開発関係のみを対象にしたものではないため、掘削行為一般についても整理する必要があるが、「温泉を湧出させる目的のない土地の掘削」をすべて類型化することは困難である。
そこで今回は、湧出目的ではない場合の地熱発電関係の掘削行為と、その他の代表的な掘削行為について、温泉法第3条の許可が不要なものを例示した。
地熱発電関係では「地質・地熱構造調査のための掘削」「地熱発電に供した温水を地中に戻すための井戸の掘削」「水位等をモニタリングするための井戸の掘削」が例として挙がった。
その他の掘削行為については「地下水採取を目的とした井戸の掘削」「ダムまたはトンネル等の掘削」「ビル建設等に関する掘削」「鉱物または土石類等採取の掘削」「地震観測のための井戸掘削」が例示された。
討議では、他の目的で土地を掘削した際に温泉が湧出した場合の対応や、掘削の影響をどうやって測るか、などが注目された。日本温泉協会常務副会長の佐藤好億氏は「モニタリングの申請の受付は地方の保健所の末端が業務を兼ねているので、法的な判断など現場対応ができるのか」と疑問を投げかけた。筑波大学名誉教授の田中正氏は「現状で主体的に活動している地域の事例を出していき、これをガイドラインにして地元で対応していくことはどうか」と提案した。
東京大学大学院法学政治学研究科教授の交告尚史氏は「温泉法第12条と第14条のような行政の掘削制限命令や措置があるので、これをうまく使えるように、掘削が多い地域は届け出制にすることが好ましい」と述べた。
また、第1回検討会の課題に挙がった、温泉法の「ゆう出させる目的」の定義については、環境省側は共通の解釈として「温泉法第3条においては温泉を地表に取り出す意図を持つこと」と答えを示した。
次回の検討会は10月27日を予定しており、今後は社会的課題や経済的課題などについて検討していく。また、現地調査も2カ所ほど予定している。